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筆者のような仕事をしていれば、インターネット環境は既に当たり前のような感覚となっている。もちろん、インターネットへアクセスするときは、パソコンを利用している。具体的には、Windows PC、Windows CE機、Macintoshなどだ。パソコンの他に、インターネットを利用するものとしては、PDAや携帯電話、PHSをたまに利用しているくらいである。 ご存知のとおり現在では、家庭用ゲーム機やセットトップボックス、ブラウザ機能を搭載したFAX機など、様々な機器でインターネットを利用することができるようになっている。 ただ筆者は、これまで家庭用ゲーム機などでインターネットアクセスすることはほとんどなかった。自宅にいる時には、これらの機器を利用しなくても、自宅にあるパソコンを使えばいい。また、プラグインやJavaを駆使したページを見ることができないといったこと以外にも、アクセスラインがアナログ回線に限定されているというのもネックだ。 インターネットを使いたいときに、すぐ利用できる常時接続の環境で数年過ごしていると、アナログ回線を使ったダイヤルアップ接続するときの、ダイヤル/ネゴシエーション/PPPでのログオンで必要になる数十秒の時間が長く感じてられてしょうがないのだ。 しかし、家庭用ゲーム機では、インターネットを使った様々な独自の魅力的なサービスが存在するのも事実。そのため、パソコンではCATVやフレッツISDNといったアクセスラインを利用している方でも、家庭用ゲーム機ではわざわざアナログ回線を使ってインターネット接続をされている方が多いのではないだろうか。
話しは変わるが、昨年あたりからインターネット誌やパソコン誌、さらに一般誌でも「ブロードバンド」というキーワードを見る機会が増えてきている。これからは、CATVやフレッツADSLといった高速なインターネット接続サービスが充実し、数年後にはインターネットアクセスの標準になってもおかしくない。読者の方でも、すでにブロードバンド・インターネットを楽しんでいるかたも多いだろう。 しかし、ケーブルモデムやADSLモデムと端末を接続するには10Base-Tや100Base-TX用のインターフェイスを利用し、ネットワークケーブルを使う。要するに端末に10Base-Tや100Base-TX対応のネットワークポートがないと、ブロードバンド・インターネットは楽しめないということなのだ。パソコンであれば標準でネットワークポートが装備されていたり、NICを増設してネットワークポートを用意することができる。しかし、家庭用ゲーム機やセットトップボックスには、ネットワークポートが標準で搭載されているものは少なく、そのためせっかくのブロードバンドインターネットも利用できないことになる。 そこで今回は、パソコン以外の機器でブロードバンドインターネットを利用できるようにする製品を2種類紹介したい。
最初に紹介するのは、セガの家庭用ゲーム機「Dreamcast」にネットワークポートを増設する「ブロードバンドアダプタ」(8,800円)だ。Dreamcast自体、インターネット接続を考えられたゲーム機で、モデムが内蔵されている。そしてネットワークに対応したゲームタイトルも発売されている。 ブロードバンドアダプタは、簡単に説明するとDreamcast用のネットワークアダプタで、ブラウザなどが収納されたGD-ROMが付属。Dreamcast本体への接続は、標準で内蔵されていたモデムユニットを外し、そこにブロードバンドアダプタを装着するだけ。あとは、ブロードバンドアダプタに、10Base-T/100Base-TX対応ネットワークケーブルを使って、ISDNルータやケーブルモデム、ADSLモデムと接続する。もちろん、既にインターネット接続が実現されているLANが構築されている環境であれば、そのままそのネットワークに接続すればいい。 IPの設定は、付属のGD-ROMで起動し、オプションのプロバイダメニューから設定する。設定する内容もパソコンと同じで、IPアドレス、デフォルトゲートウェイ、サブネットマスクなど。DNSサーバーやProxyサーバー、ホスト名、メールアドレス、メールサーバーといった設定もここで行なうことになる。 設定が終われば、付属のGD-ROMに収められているブラウザでインターネットサーフィンを楽しむことができる。このブラウザは、NTT DoCoMoのiモード端末や各種携帯電話にブラウザを提供しているアクセスのものだ。実際に様々なページをアクセスしてみると、極めて快適にホームページを見ることができる。いままで、ゲーム機やセットトップボックスでのインターネットアクセスは、遅いというイメージがあったが、それは単純に回線の太さによるものであることを再認識することができた。しかし、ゲーム機なので基本的にはジョイパッドなどで操作することになり、さすがに操作性が良いとはいえない。Dreamcastの場合、キーボードやマウスのオプションがあるので、これらを利用するとより快適な操作が可能だ。
なお、ブロードバンドアダプタ自体には、PPP over Ethernetには対応していないので、PPP over Ethernetでログオンが必要なプロバイダに接続するときには、ブロードバンドルータなどを利用する必要がある。また、すべてのネットワーク対応タイトルがブロードバンドアダプタを利用できるとは限らないが、最近発売された「ファンタシースターオンライン」などは対応している。
次に紹介するのが、「スモールモデムブリッジ」とカテゴライズしているルートテクノロジの「CR2000」(実売価格29,800円程度)である。どのような機器なのか簡単に説明すると、パソコンや各種機器に内蔵もしくは接続されているモデムポートを利用して、Ethernetに接続する機器である。
LANなどにCR2000を接続し、CR2000のモデムポートとパソコンなどの端末のモデムポートを、RJ-11のモジュラーケーブルで接続する。あとは、端末側で、モデムを使ったダイヤルアップ接続を行なうと、CR2000を介してネットワークに接続することができるのだ。ネットワーク自体がCATVやADSLなどを使って、インターネットへ常時接続している環境であれば、Ethernetポートが無い端末でもモデムを使って常時接続環境を利用することができるというわけだ。CR2000のモデムポートは、最高33.6kbpsまでの通信速度をサポートしている。 CR2000を使うには、CR2000のシリアルポートからログインするか、telnetを使ってログインして設定を行なう。個人向けルータのようにWebブラウザを使っての設定は行なうことはできない。そのため設定は、コマンドラインから、テキストベースで行なうことになる。設定は、CR2000自体のアドレスの他に、モデムを使ってPPP接続してくる端末に提供するIPアドレスやDNSサーバーのアドレスなども入力する。GUIに慣れているユーザーにとっては、多少とまどいを覚えるかもしれない。 CR2000を実際に使ってインターネットに接続するには、端末側にすでにダイヤルアップ接続するための設定があれば、その設定を使ってダイヤルアップ接続を行なえば、あたかも電話線が接続しているようにネットワークにつなげることができる。端末側で設定してある、プロバイダにログオンするための電話番号やユーザーID、パスワードはそのままの状態でかまわない。 今回はとりあえず、ノートパソコンの内蔵モデム、Dreamcastの内蔵モデムを使って、自宅LAN経由でインターネット接続の確認を行なった。まったくトラブルなく接続し、自宅のLANを介して、ADSL経由でインターネットへ接続することができた。実際にどの程度のパフォーマンスなのかを、ノートパソコンでファイル送受信して試したところ、CR2000とノートパソコン間の上限の速度である33.6kbpsで安定した通信を行なうことができた。 パソコンとCR2000はモデム経由で繋がるために、33.6kbpsという速度自体は決して高速とは呼べないものである。しかしNICを増設できない機器やモデムしかない機器で、LANのリソースへのアクセスを可能にしたり、既存のインターネット環境を利用できるメリットは大きい。ダイヤルアップ接続するための電話料金やプロバイダ料金が別途発生しないというだけでなく、本来ネットワークに接続できない機器が、ネットワークに接続できるようにできるというメリットは重要だろう。 一般的な手順でモデムを使ったダイヤルアップ接続ができる機器であれば、CR2000を利用することでネットワークを利用することができるようになる。誰にでもCR2000を薦められるとは言わないが、このような機器を求めていたユーザーは少なくないだろう。
「パソコン = インターネット」と考えられるようになって、既に5年程度の歳月が過ぎている。しかし、インターネット対応と言われているパソコンと、それ以外のパソコンとは何が違うかというと、ブラウザやメーラ、プロバイダに接続するための設定プログラムがインストールされている程度。ハードウエアの違いといえばせいぜいモデムが内蔵されていたりする程度であった。 この傾向は、ISDNが普及し始め、安定した64kbps通信ができるようになっても、ISDNルータが発売されても続いていた。CATVのインフラやADSLを利用した高速で常時接続を定額で実現したインターネット接続サービスが提供されるようになってきた2000年になって、やっとEthernetポートを標準で装備した家庭向けパソコンが徐々に登場し始めた。 しかし、Ethernetポートが標準装備されるようになってきたパソコンはまだマシな状況で、インターネット接続に対応したPDAやインターネット家電、ゲーム機では、まだまだアナログ回線を利用するモデムしか装備してないものがほとんどである。逆に、オプションとはいえブロードバンドアダプタといったネットワークアダプタが用意されているDreamcastが、進んでいると言ってもいいだろう。 おそらくこれから発売されるインターネット対応の機器には、Ethernetポートを標準装備するものが多くなっていく可能性が高い。しかし、既にモデムしか装備していないインターネット対応機器が存在するのも事実であり、これらの機器でも定額制のブロードバンドインターネットサービスを利用可能にするということは、それなりに意義があることではないだろうか。
□ルートテクノロジーのホームページ
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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