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一ヶ谷兼乃の

【特別編】:光ファイバー接続インターネット導入記 ~前編~

 ADSLやCATVなどのブロードバンドサービスの普及が進んでいますが、次世代のサービスとして期待されている「光・IP通信網サービス」(FTTH)の試験運用も始まっています。  今回は、一ヶ谷氏による自宅への導入記を3日連続の短期集中連載としてお届けします。(編集部)


■待ちに待った「光・IP通信網サービス」

 数年前まで、個人でも何とか手を出せる常時接続回線といえば、OCNアクセスラインを使ったサービスである「OCNエコノミー」くらいしか存在しなかった。だが、昨年あたりからは「フレッツ・ISDN」の正式サービスや、ADSLの試験サービスなどが始まり、2000年は常時接続元年とも言える年になった。特に昨年末には、「フレッツ・ADSL」という、高速インターネット接続サービスの大本命といえるサービスも開始され、現在、爆発的にユーザーを増やしている。

 その昨年末のフレッツ・ADSLの正式サービスと同時に開始されたのが、光ケーブルを使ったインターネット接続サービスである「光・IP通信網サービス」だ。これは6ヶ月の試験サービスではあるものの、筆者宅で受けられるサービスとしては初めて、光ケーブルを使ったものである。

 「光=高速」というイメージがあるだけに、筆者としては、噂のあった昨年初旬あたりから気になっていたので、昨年末にNTTからサービス開始のアナウンスがされた直後から、申し込むことを決めていた。サービスの内容を確認したところ、利用開始に伴う工事費や運用コストなど、まったく手が届かないという額でもないため、申し込み開始当日の朝に早速申し込みを行なった。それから数日してNTT東日本の営業担当者から電話をいただき、サービス内容の説明を行ないたいということだったので、年明けの1月12日に会うことになった。筆者は、もうこの時点ですっかり申し込みが終了した気分になり、早く光ケーブルが自宅に来ないかな~と、お気楽な気分でいた。


■コンサルティング開始。だが……

 年が明けて、1月12日にNTT東日本の営業担当の方に筆者の職場までご足労いただき、サービスの概要説明を受けたのだが、ここで1つ問題が発生した。筆者は現在賃貸マンションに住んでいるが、NTTでは集合住宅に暮らしているユーザーには、「集合住宅メニュー」をお勧めしている、と言われたのだ。この説明に関しては、正直言って当惑を覚えた。光・IP通信網サービスには、「基本メニュー」、「高スループットメニュー」、「集合住宅向けメニュー」の3つのサービスがあるのだが、筆者が昨年申し込んだのは「基本メニュー」だったからだ。

 「集合住宅向けメニュー」では、1本の回線を複数の世帯で共有するため、あまり高いパフォーマンスを期待できないし、同一の集合住宅内で10世帯程度の契約がないと工事をしてもらえない。そこで、こちらが希望しているのはあくまで基本メニューであるということを説明し、とりあえずそのまま申込書を書いて社内で調整してもらうことになった。

 その後、すぐに連絡をいただき、基本メニューで開通を進めることが決まった。まずは光ケーブルを筆者宅まで引き込めるかどうか、現場を調査(原調)することになった。当初、原調の日程は2月20日前後になる予定であったが、後日再び連絡が入り、当初よりも日程が早められることとなった。結局、筆者も立ち会う必要があることから、1月29日に決定した。


■まずは光ケーブルを引き込めるかを調査

 1月29日に筆者宅へ来たのは、NTT東日本の営業担当に加え、日本コムシスとNTT-MEの各社から1名ずつの計3名である。NTTが敷設している光ケーブル網のどこから光ケーブルを這わせ、どのように経由して、筆者の住むマンションの中に引き込むのかを話あった。その場ではなんとか光ケーブルを引き込めるということになり、ここでやっと光・IP通信網サービスを受けられる目処がはっきりしたわけだ。

 この後、今後の作業の流れや、注意点についても説明された。まず、賃貸マンションということで、新たに壁に穴を開けるのではなく、既設のエアコン用のダクトの中に光ケーブルを通して、部屋の中に引き込むということ。  もう1つは、光ケーブルを引き込むときに必要になる金属製のフックについては、ユーザー側で用意しなければいけない、とのことであった。筆者はあまりそういった工事業者に関して詳しくないので、NTTに工事業者の紹介や、工事の手配なども行なってもらった。この工事に関しては、NTT側に費用は発生しないため、業者の紹介や工事の手配は、NTTの無料サービスというわけだ。工事後の支払に関しても、筆者から直接業者へ振込みを行なった。

 もしも、エアコンのダクトなどが無い場合には、新たに壁面に穴を開ける必要がでてくる。このような場合も、工事費はユーザー負担になるが、場合よっては、10万前後の費用が発生するケースがあるようだ。同じ壁に穴を開ける工事でも、エアコン購入時の工事なら2万円以下の場合が多い現状で、果たしてこの価格差がナゼ生まれているのか、非常に疑問を感じる。

 最後に、光ケーブルの手配などもあるので、早くてもサービス開始は3月以降になることも、ここで確認された。この時点で、NTT東日本の担当者と直接会ったのは2度目、申し込みをしてから1ヶ月が経過している。賃貸マンションのため、外壁にフックを工事する許可をマンションオーナーに確認がとれ、問題なくコトは進んでいった。


■光ケーブルを引き込むためのフックを設置

外壁に取り付けられたフック。予想していたものより小型

 その後、NTT東日本の営業担当者から、フック工事業者の紹介を受けた。こちらから工事業者に連絡をとり、工事日は2月16日に決定した。もちろん、今回も筆者が立ち会うことになる。これで立ち会うのは2度目。ひとり住まいの身には、いちいち立会いが必要な工事が何日も行なわれるのは、なかなか辛いものがある。

 2月16日の朝、フック工事業者が自宅に入る。筆者がこの建物を退去するときには、フックを撤去する必要があることを業者に伝え、大体の場所を決めて、フックを取り付けてもらった。所用時間は約30分。フック自体は、予想より大きくなく、わりと小さいものであった。工事が終ると請求書が手わたされたが、今回の費用は合計で33,000円ちょっと。部材は2,000円程度でその他は工賃という内訳だった。これまでNTT以外で電話系工事の費用を負担したことがなかったので、なんとも言えないが、安いとは言いがたいだろう。

 ちょうど同じ頃、光ケーブルの引き込み工事日が、3月4日になるという連絡を受けた。この工事にも立会いが必要だという。ONUの納期は3月5日になるということを事前にNTT東日本の営業担当者から連絡を受けていたので、引き込み工事が終っても最低あと1回は立会いの工事が必要になるということになった。なんとか1日にまとめられないかものかと思ったが、試験サービスということで、なかなか難しいものなのだろう。


■選択肢の少ないプロバイダ

 ところで「光・IP通信網サービス」では、フレッツ・ISDNや、フレッツ・ADLS同様、光・IP通信網サービスを利用するためのプロバイダに加入しておく必要がある。

 筆者はまだこの時点で、利用するプロバイダをまったく決めていなかった。その理由は、光・IP通信網サービスに対応するという予定を発表しているプロバイダは11社あったものの、実際に正式サービスを開始しているプロバイダはその半分にも満たない数であったからだ。筆者が検討している時期にサービスを開始していたのは、「ASAHIネット」、「ぷらら」、「DION」、「リムネット」の計4社のみで、その後まもなくSo-netもサービスを開始していた。しかし、6ヶ月間の試験サービス期間のうち、半分程度を過ぎた3月上旬の時点でもこの状態であった。

 フック工事から1週間後、NTT東日本の営業担当者から工事日のスケジュールについて連絡があり、次回の工事は3月8日に行なうことに決まった。以前予定していた、3月4日の工事は行なわず、3月8日に光ケーブルの引き込みとONUの設置を同時に行なうことに変更したとのことであった。予定では一日作業になるということで、終日立ち会えるような準備をしておいて欲しいということであった。立会いの日が1日減っただけでも、筆者にはありがたいことだ。この時点で既に2月下旬に入っており、いよいよプロバイダの選択を真剣に検討することにした。

 プロバイダの検討を始めた時点で、光・IP通信網サービスへの対応を開始している会社が4社しかないため、4社全てが検討対象になった。まずは各社のホームページをチェックすることにした。

 最初にチェックしたのは「ASAHIネット」。だが、ここは筆者が申し込む「基本メニュー」に関しては、法人会員だけしか申し込めないということであったので、あっさり候補から外れた。

 次にチェックしたのは「ぷらら」。ここは標準でメールアドレスを20個も作成でき、料金も比較的安いため、魅力的であったので資料を取り寄せたり、電話での問い合わせしてみた。まずは気になるスループットについて質問してみたが、どんな速度になるか分らないという返事。確かにベストエフォートのサービスであるので、帯域保障は期待していないが、ユーザーが判断できるような情報を多少は提供してもいいのではないだろうか。もしかすると、本当にどれくらいの速度がでるのか、事前調査していないのかもしれないが……。

 次に気になったのが契約内容である。一度契約を結ぶと、試験サービスが終了するまで解約はできないというものだった。どの程度の速度がでるのかまったく分らないのに、中途解約できないというのには納得がいかず、このプロバイダもボツになった。後日聞いたところによると、中途解約できないという表現は正しくなく、解約はできるのだが、違約金として結局同じ金額をぷららに支払わなければならないというものであった。

 3番目にチェックしたのが「リムネット」。ここは筆者がインターネットを始めたときに加入した、最初のプロバイダである。プロバイダとしても歴史が古く、個人的には信頼している会社だ。電話での問い合わせをしたところ、申し込みからサービス開始まで1週間以内だということと、中途解約しても違約金が要らないということなので、候補に加えた。スループットへの質問も投げてみたが、ここでも分らないという返事がきた。しかし、解約できるのであれば納得できるものだ。

 最後に「DION」。ここも以前、DIONスタンダートを利用していたとき、特に問題も発生せず、どの時間帯でもスループットは良好であったので、信頼を置いているプロバイダである。問い合わせをすると、ここも中途解約できるということであったうえ、サービスを開始するための初期費用などはかからないということであった。また、DIONに関しては、某雑誌で2~3Mbpsのパフォーマンス程度ではないかという情報もあり、他と比べて月々の料金はちょっとだけ高いものの、候補のひとつになった。

 筆者は、NTTの地域IP網を利用したインターネット接続サービスは、今回が初めてであった。そのため、プロバイダの違いでどれくらいスループットに差がでるのかということに興味があったので、結局、DIONとリムネットに申し込み、それぞれを評価してみることにした。数日後にはリムネットから光・IP通信網サービスを利用するためのアカウントが発行され、それから4、5日後にはDIONからも同様にアカウントが発行され、後は工事の完了を待つばかりとなった。

(中編につづく)

□NTT東日本「FLET'S Official Site」ホームページ
http://www.ntt-east.co.jp/flets/index.html
□NTT西日本「フレッツ・シリーズ」ホームページ
http://www.ntt-west.co.jp/flets/index.html
□関連記事
【2000年3月28日】ADSL導入記:開通まで待たされても、つながれば快適!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000328/dgogo11.htm
【2000年4月28日】OCN常時接続からADSLへの完全移行を目指す ~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000428/dgogo12.htm


[Text by 一ヶ谷兼乃]


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