相変わらずパソコンの売れ行きは順調だ。売上自体は多少の上下動をしてはいるのだが、他の電気製品や同じような数十万円の価格帯の商品と比べると、絶好調と表現しても差し支えないだろう。 そして、その多くの購買者の大半は、何を期待してパソコンを購入しているのだろうか? 一時期は、「ワープロや表計算といったアプリケーションを使う」とか、「パソコンでゲームを遊びたい」、「綺麗な年賀状を作る」といった目的のユーザーが多かった。しかし、現在のパソコン購入者のほとんどは、ホームページ閲覧とか電子メールの送受信が購入目的の1つになっているだろう。 もちろん、筆者もインターネットなしでは考えられない生活を送っている。普段使っているデスクトップパソコンのほとんどは自作のWindowsパソコンだが、それらで最も稼動時間が多いのは、Webブラウザと電子メールソフトだ。なお、数台Macintoshも所有しているが、これらはMac OS用のアプリケーションを動作させるためのパソコンとなっており、常用しているとは言いがたい稼働率となっている。 Windowsというプラットフォームに限ってみると、Webブラウザでは圧倒的に「Internet Explorer」が利用されている。電子メールソフトはというと、最大のシェアを持っているのは「Outlook Express」である。しかし、「Internet Explorer」ほどのシェアは占めているわけではなく、「Outlook Express」以外の電子メールソフトを利用しているユーザーも少なくない。また、ポストペットのような、電子メールに他の楽しみ方を付加した電子メールソフトも増えてきているのも、ご承知のとおりだ。 実は筆者は、その「Outlook Express」を利用していない少数派である。実際にここ数年使用しているのは、オンラインソフトの「Becky!」で、その機能に十分満足していた。ただし、管理するメールの数が千を超えてくると、多少動作が鈍くなってきていたのだが、それでも「Becky!」のパフォーマンスは十分であり、使い慣れたアプリケーションとしての快適さに満足していた。
このように「Becky!」を利用していて特に不満もなかったため、それ以外の電子メールソフトに対して、ほとんど興味がなかった。 しかし、ある原稿の執筆で電子メールソフトを調査していると、気になる機能を持ったソフトがあった。それがワープロソフトの「一太郎」や日本語入力IME「ATOK」で有名なジャストシステムの「Shuriken Pro」(5,800円)だ。
そこで、早速購入しようと思ったのだが、この「Shuriken Pro」は店頭では販売されず、インターネットなどを通じた直販でしか手に入れることができない。そのため、同社のホームページから注文して、パッケージを受け取った。 インストールして使おうとしたところ、機能の1つである既存の電子メールソフトからのアドレス帳やメールの変換がうまくできないという現象に陥った。これは何度やっても再現性があったため、これまでのメール資産の継承は諦めざるをえなかった。これでは、これまでのメール資産を使うためにメインの電子メールソフトを「Becky!」から変更するわけにはいかず、結局Shuriken Proは特徴ある各機能を確認しただけで、使わなくなってしまった。 それから数カ月が過ぎ、Shuriken Proのことをほとんど忘れていたのだが、9月に入ってShuriken Proのアップデータが公開されているのを見つけた。同時期にWindows 2000のサービスパックが公開され、いくつかのパソコンをWindows 2000へ移行作業を行なっていたこともあり、アップデータで更新したShuriken ProをWindows 2000で再度使ってみようと思い立った。
まずはShuriken Proを最新版にアップデート。最初にBecky!からのメール資産の変換を行なってみた。ファイルが添付されているメールなどで変換がうまくいかなかった現象も、ほぼ直っており完全とは言いがたいがとりあえず合格レベルの変換を行なうことができた。アドレス帳に関しても、おかしな変換結果となったアドレスがいくつかあったが、これも許せる範囲におさまり、大部分のメール資産をShuriken Proに引き継ぐことができた。
本格的にShuriken Proを使い始めたのは、10月に入ってからでまだあまり使い込んではいない。しかし、使い始めてすぐに、細かな便利機能が多いということ以外に、電子メールソフトとしての基本機能が優れていることが体感できた。 膨大なメールを管理したり、複数アカウントでのメール管理、メールを作成するためのエディタの使い勝手などの基本操作を、高速に行なうことができるのだ。特に筆者にとって、送受信したメールが、メールアカウント毎のフォルダにも、そのメールアカウント以外のフォルダにも、振り分けられる機能がありがたい。 筆者は目的に応じて、複数のメールアカウントを使い分けているのだが、主にメールマガジンの受信用に利用しているアカウントでは月に数千通のメールを受信している。そのため、大量のメールを抱えている状態でも高速に操作ができる電子メールソフトが欲しいとは常々考えてはいた。しかし、Becky!でも実際に不満と感じるほど困ってはいなかった。ところが、Shuriken Proの現バージョンでは、大量のメールを抱えた状態でも非常に快適にメール管理を行なうことができ、一度この快適な環境を知ってしまうと、後戻りできないと感じた。
2週間ほど使ってみて、これまでBecky!を使っていたすべての機能がShuriken Proで実現できていることや、Windows 2000やWindows MEへの正式対応がアナウンスされている安心感などもあって、完全に乗り換えることにした。乗り換えを決めてからは、メールやアドレス帳の変換が正しく行なわれているかの確認をする程度でしかBecky!を起動したことがない。 また、Windows 2000上での動作しか確認していないものの、これまで問題らしい問題はまったく起こっていない。特徴の1つであるPalm関連機能は、Shuriken Pro購入時には試したことがあるが、今のところ利用していない。単に必要性に迫られていないというのが理由だが、今後機会があれば利用しようと思っている。 Shuriken Proにはそれ以外にも、他の電子メールソフトにはない機能がいくつか用意されている。例えば、見た目のデザインを変更できることや、メールの送受信時のアニメーションである。ただ、筆者だけかもしれないが、それらの機能は使い始めたときには珍しさも手伝って利用していたが、道具のように頻繁に使う電子メールソフトでは、本質的な機能に関係ないものは使わなくなる傾向にある。しかし、新しいデザインがジャストシステムのホームページで公開されているので、この種の機能が好きな人は、いろいろと楽しんでみるのもいいだろう。 「Shuriken Proはココが便利!」といったことを、具体的にお伝えできればいいのだが、筆者がShuriken Proに感じている最も魅力的なところは、多機能であるにもかかわらず軽快な操作性に尽きるのだ。最も利用時間が長いと思われる電子メールソフトでは、やはり高い操作性というのが、最も重要なことなのだと再確認している。
現在、極めて気に入っている「Shuriken Pro」だが、次期リリースバージョンの「Shuriken Pro /R.2」が12月1日から、パソコンショップ店頭でも購入できるようになる。ニュースリリースを読む限りでは、現在の仕様は引き継がれ、各機能が煮詰められているようである。また、既存の「Shuriken Pro」ユーザーには、アップデートモジュールが無料で公開されることになっている。個人的にも、この次期リリースバージョンの公開は非常に楽しみである。 筆者は電子メールソフトは使い慣れたものが一番良いと考えている。現在、使っている電子メールソフトに不満が無いのであれば、無理に乗り換えを薦めはしない。しかし、何かしら不満があって、他の電子メールソフトを検討しているのであれば、この「Shuriken Pro」を候補の1つにしてみてもいいのではないだろうか。 ただ、近く店頭でも購入できるようなるとはいえ、現状では広く流通しておらず隠れたソフトになっているのが非常に残念なところだ。読者の方々に今使っているメールソフト以外にも、優れた電子メールソフトがあることを知っていただき、今後の参考にしていただければうれしい限りである。
□ジャストシステムのホームページ
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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