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先日、NTT各社から一部地域で、フレッツADSLのサービスが開始されるとの発表があり、これまで試験運用であった「ADSL接続サービス」が正式なサービスとして提供されることが決定した。筆者が住んでいる地域は、ADSLなどの最新サービスや試験運用が他の地域より比較的早く提供される場所。実際、一足先に今年初めに開始されたADSL接続サービスの試験運用に申し込み、現在NTT-MEがプロバイダのWAKWAK ADSL接続サービスを利用している。 現在利用しているWAKWAK ADSL接続サービスでは、グローバルIPアドレスを4つ割り当てられているが、1つはネットワーク用のアドレス、1つはブロードキャスト用のアドレス、1つはADSLモデム用のアドレスとして利用している。そのため、ユーザー側の機器に割り当てられるアドレスは1つしかない。しかし、実際の使用では、インターネットへアクセスする機器が複数台ある。 そこで、1つのアドレスを共用するために導入したのが4月に紹介した「The Linksys Instant Broadband EtherFast Cable/DSL Router(以下Cable/DSL Router)」だ。このCable/DSL Routerは、2000年3月に個人輸入で手に入れたもので、入手に費やした費用は3万円台前半であったことを記憶している。現在では、この製品もLinksysの日本法人であるリンクシス・ジャパンから日本語マニュアルなどが完備され、実売価格28,000円前後で発売されており、簡単に購入できるようになった。
当時でも、いくつか同様な機器は発売されていたが、価格が5万円前後と高価で設定がGUIで行なえないものが多かった。しかし、その後国内でもケーブルTVのインターネット接続サービスやADSLの利用しているユーザーの増加により、Cable/DSL Routerのような機能とコストパフォーマンスを持った機器が、いくつか登場してきた。
個人やSOHO向けに提供されるADSLを使ったインターネット接続サービスでは、ほとんどの場合ユーザー側の端末に割り当てられるIPアドレスは1つである。つまり、この点ではモデムやTAを使ったダイヤルアップ接続と同様である。 このため、ADSLやケーブルTVでのインターネット接続でも、ダイヤルアップ接続時のダイヤルアップルータにあたる機器が必要となる。なお、このような機能をもった機器は「ローカルルータ」、「ブロードバンドルータ」、「NATボックス」、「IPシェアリングルータ」など様々な名称で呼ばれているが、ここでは1つのアドレスを共用するという意味から「IPシェアリングルータ」と呼ぶことにする。 現在、個人やSOHO向けに発売されているIPシェアリングルータで、3万円以下で購入できるものは、筆者が知る限りでも8製品存在する。これらの中から機能上で選択するために、いくつかのポイントがある。 まず1番目として、ケーブルモデムやADSLモデムに接続するWAN側のインターフェイスがDHCPクライアントとして動作し、PPP over Ethernetに対応していることだ。筆者宅のように決められたIPアドレスが割り当てられ、専用線のような利用方法の場合には、必要とならない機能であるが、東京めたりっく通信などが提供しているADSL接続サービスや、これからユーザーが増えてくるフレッツADSLでは、無くてはならない機能である。 2番目のポイントは装備されているLAN側のEthernetポートの数である。できる限り多いほうが望ましい。もちろん、Hubをカスケード接続することで、Ethernetポートの数は増やすことはできるのだが、Hubの価格や設置場所を考慮すると内蔵されていたほうが有利。この他のポイントとしては、特定のポート番号の通信を遮断したり、特定のポート番号の外からの通信をLAN側の特定の機器にフォワードする機能も、セキュリティやインターネットで提供されるサービスを楽しむには欠かせない。装備が必須であると言ってもいいだろう。 以上のようにポイントを列記したが、現在発売されているIPシェアリングルータのほとんどは、Ethernetポートの数以外の機能は装備しているといってもいい状況になっている。では、実際に製品を選ぶ基準とはなんだろうか? それは、やはり、ファームウェアのバグや不具合にちゃんと対応してくれるベンダーであることと、実売価格の安さなどではないだろうか。
以上のような観点から、今回選んだ製品がルートテクノロジー「CAS2040」だ。CAS2040は、WAN/LAN側のEthernetポートが全て10Base-T/100Base-TXに対応しており、LAN側は4ポートのスイッチングHubが装備されているIPシェアリングルータ。今まで、LAN側に10Base-T/100Base-TX対応のスイッチングHubを搭載している製品は存在していたが、WAN側のEthernetポートも10Base-T/100Base-TXに対応しいている個人/SOHO向け低価格IPシェアリングルータは、このCAS2040が初めてではないだろうか。 また、CAS2040はNAT/IPマスカレードを利用して1つのIPアドレスを複数の機器で利用するIPシェア機能、特定のポート番号やIPアドレスの通信を遮断するパケットフィルタ機能や、特定のポート番号の通信をLAN側の特定の機器にルーティングする機能など、IPシェアリングルータとしての機能はほぼ網羅されている。また、価格も4ポートのスイッチングHubを搭載している機器としては、現時点で最も安く、実売価格で16,000円弱となっている。
本体は、グレーとホワイトのトランスルーセントで、前面には7個のLEDが配置されている。これらのLEDは、本体や各ポートの100Base-TX/10Base-Tといった状態を知ることができる。向かって右側のLEDには現在は機能していないが、「Have Mail」と表示があり、今後のファームウェアのアップデートにより、メール着信機能が装備される予定になっている。背面には、ACアダプタのコネクタ、WAN側とLAN側のEthernetポートが装備されている。また、ありがたいことに、WAN側のポートとLAN側の4つめのポートは切り替えスイッチによりクロス結線に切り替えることができる。 CAS2040の設定は、一般的なWebブラウザからの設定のほかに、telnetを使ってコマンドで行なう方法、付属のGUIの設定ツールを利用する3つの方法がある。WindowsやMacintoshユーザであれば、Webブラウザからの設定だけでも十分だが、いろいろな手段で設定できるのはありがたい。
さらに、他のIPシェアリングルータには無い機能としては、現在通信を行なっている状況をモニタする画面がある。この画面は頻繁に自動更新されるため、どのアプリケーションがどういったポート番号を使っているか簡単にチェックできて便利である。
読者の多くのかたは、ルートテクノロジーという社名はあまり目にしたことがないかもしれない。しかし、少なくともIPシェアリングルータに関しては「CA2000」という製品を発売しており、実績のあるメーカーである。また、同社のホームページを見るとわかるのだか、様々なネットワーク機器をこれまでも開発、販売してきている。そして、同社製品に共通した特徴は高いコストパフォーマンスだ。このCAS2040も例外ではなく非常に高いコストパフォーマンスの製品に仕上がっている。 発売間もない製品のために、まだまだ使い込めていないが、十分な動作速度を実現している。筆者宅の環境では、インターネットアクセスがもたついたりすることもまったく無かった。常時電源を入れて利用する機器だけに、発熱なども気になるところであるが、このCAS2040は発熱も少なく、安定運用に問題がでることもないだろう。 設定項目もネットワークに詳しく細かいコントロールを行なうようなヘビーユーザーであれば、もっと多彩なものを望むのかもしれないが、ほとんどの個人/SOHOユーザには十分な仕様になっている。十分な仕様/パフォーマンスを持ち、実売価格も安く抑えられ、これから始まるフレッツADSLでも利用できるといったことなど、魅力的な部分を多く持ち合わせている製品だ。 そして、これからのルートテクノロジーには、「CAS2040」の本体に設けられている「Have Mail」をサポートするファームウェアの早期提供や、様々なアプリケーションごとの個別の設定などサポート情報の充実を期待したい。
□ルートテクノロジーのホームページ
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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