~ 「NetGenesis Dual」でアナログ回線用RAS環境を構築 ~
インターネットはすでに生活の一部となって、欠かせない存在になっている。そうなってくると、自宅にいるときにはもちろん、戸外に出ていてもインターネットを利用したいと感じる場面が意外と多い。今や、メールチェックや情報検索など、ちょっとしたことでもインターネットに依存していることが改めて自覚できるのだ。 現在、自宅ではOCNアクセスラインを利用してインターネットに常時接続している。そのため自宅にいるときには、ダイヤルアップ接続に比べて快適にインターネットを利用できる環境にある。だから、自宅以外でインターネットアクセスを行なう場合でも、ほとんどの場合は自宅にダイヤルし、自宅を経由してインターネットにアクセスしている。 OCNアクセスライン接続用には富士通の「NetVehicle-I」を、RAS(Remote Access Service)用にNTT-TE(現在のNTT-ME)の「MN128-SOHO」を使用している。NetVehicle-Iは、購入してからというもの、まったくのトラブル知らずで、絶大な信頼をおいているダイヤルアップルータだ。そのため、24時間運用が前提となるOCNアクセスラインに使っている。RAS用のルータは、戸外からPHSを使って接続するため、PIAFS2.0に対応しているMN128-SOHOという選択となった。 これまでは、自宅にダイヤルアップしてインターネットアクセスする場合には、PHSやINS64経由だけだったので、それほど不自由は感じることはなかった。しかし最近、アナログ回線を使って自宅に接続しなければならないことが増えてきたため、新たに自宅にアナログ回線用のRASポイントを作ることにした。
実際、個人レベルで購入できそうな10万円以下の機器は、国内ではサン電子の「SUNTAC TS128GA-Pro」しかない。海外を探せば、「3Com U.S. Robotics Courier I-modem」といった機器も存在するが、国内では数年前に発売予定となっていたが、現在も出荷されている様子はない。唯一の選択肢であるSUNTAC TS128GA-Proにしてみても98,000円と、たまにしか利用しない機器としては、いささか高価である。ということで、今回はV.90のサポートは見送り、V.34の最高33,600bpsをサポートすることにした。そうと決まれば、モデムの選択肢は一気に広がり、最近ほとんど使う機会のなかった手持ちの「SUNTAC MS336AF」を受け側の機器として採用することにした。 次の問題は、受け側のモデムをどのようにしてネットワークに接続するのかということだ。設定や運用の自由度が高いWindows NT Serverマシンのシリアルポート接続という選択もあるが、今回はPCよりも故障が少なそうなマイクロ総合研究所の「NetGenesis Dual」(直販価格 25,800円)を選択してみた。同社にはRASに関して同様な性能を持った「NetGenesis4」(直販価格 17,800円)といった製品もあるが、筐体が金属製であることや、モデムを接続するコネクタが一般的なD-Sub 9ピンになっていること、内蔵のHUBが100Base-TXと10Base-TのDualスピードに対応しているといったことから、上位機種であるNetGenesis Dualを選択した。 このNetGenesis Dualは、モデムやTAをネットワークに接続するための機器である。一般的には、NetGenesis Dual+モデム(or TA)で、ダイヤルアップルータとして使用されることが多い。しかしNetGenesis Dualは、製品情報のページを参照していただければわかっていただけるように、ダイヤルアップルータだけにとどまらない極めて多機能な製品である。そこで今回は、数多い機能の中からRASサーバー機能を利用しようというわけだ。
NetGenesis Dualに接続したモデムに接続するアナログ回線は、いままでRASで使用してきたMN128-SOHOのアナログポートを利用することにした。MN128-SOHOのアナログポートにうまく着信するように設定を行なえば、まずはRASの受け口の設定はすべて終了だ。 さて、ここまで準備が終わったら接続テストだ。アナログ回線をノートPCの内蔵モデムに接続して、ダイヤルアップを試してみた。使用したモデムはV.90をサポートしている56Kモデムである。何度か接続を行なってみると、まったくネゴシエーションしないときもあれば、何とか接続できる場合もある。うまく接続したときでも、19,200bpsと接続速度が低いのが気になる。接続できなければRASポイントとしての意味がないので、とりあえず受信側のモデムを疑った。この手のトラブルでは、受け側のモデムのプロトコルを固定したり、接続速度を制限する設定を行なうのが常套手段なのであるが、今回はそれを行なわずに新規にモデムを用意することにした。新規モデムの購入を選択した理由は、1万円以下で購入できる手軽な価格と、最新モデムというものに実際に触れてみたかったということが大きい。
PV-BW5605の一般的なモデムと違う前面イルミネーションには、最初は戸惑ってしまった。モデムの状態がどのようになっているか判断するために、前面パネルを見るのだか、どれがCDやERといった表示にあたるのかわからなかったためである。単に、プロバイダに接続するのであれば、まったく問題にならないことであるが、この表示方法にピンとくるまで多少時間を要した。このような感覚も、きっと古いに違いない。ちなみに、添付マニュアルからATコマンドのマニュアルが省略され、CD-ROMにファイルとして入っていたことにも、ちょっとしたショックを感じてしまった。
早速、モデムをPV-BW5605に交換し、NetGenesis Dualのモデム設定を行なった。再度接続テストを行なうと、今度はほぼ問題なく接続でき、少なくともモデム同士がうまくネゴシエーションしないということは無くなった。接続速度に関しても、31,200bps以上での接続ができるようになり、まずは今回の目的は達成できた。
今回の一連の接続テストでは、NetGenesis Dualがモデムに対して送信するコマンドを記録するSYSLOG機能が威力を発揮した。SYSLOGのパケットを受信して、表示してくれるユーティリティが付属しており、着信時や回線切断時にモデムに対して送信されるコマンドを確認できる。
まだ、このRASポイントを用意して数日しか過ぎていないが、いまのところ安定して動作している。NetGenesis Dualは想像以上に熱を持つが、当然ながらこの熱によるトラブルもない。とはいうものの、実際に使う際には放熱に気を配ったほうがいいだろう。 今回、RASサーバーとして利用したNetGenesis Dualは非常に多機能だ。ルーティングやフィルタリングに関しても、事細かに設定することができる。内蔵しているファイアウォール機能の設定も非常に細かい。これまであまり注目していなかった製品であったために、意外な実力の高さに驚かされた。また、マイクロ総合研究所のホームページから、NetGenesisの最新マニュアルのPDFファイルがダウンロードでき、今回の製品の検討の際に、非常に役だった。実際に製品を購入して、目的が達成できるかどうかということが、このファイルで確認できたからである。これは、製品の機能や性能とは関係ないが、非常にありがたいサービスだ。 それ以外にもNetGenesisに関してのメーリングリストがあり、有用な情報が交換されているのも、ユーザーにはありがたい。NetGenesisを必要とする方は少ないかもしれないが、モデムやTAとネットワークを接続する必要性が出てきたらこの製品を検討してみるといいだろう。ほとんどのニーズを実現してくれるはずだ。
□「NetGenesis Dual」の製品情報
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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