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一ヶ谷兼乃の

“コレだ!”というノートPCを探して
~ 道具として非常に満足なノートPC「DynaBook SS DS60P」 ~


■“コレだ!”というノートPCが見つからない

 現在、インターネットやゲーム、原稿の執筆作業などのパソコンで行なうほとんどの作業は、必要性と興味にまかせて組み立てたデスクトップパソコンを使っている。もちろん、自宅にはこれ以外にもサーバーの役割りを担っているパソコンや、Macintoshなども置いてはいるが、通常の作業はほとんどこのPCだけで事足りている。

 一方モバイル環境は、出先でのちょっとしたメールチェックなどには、Windows CEマシンも利用しているが、数日間の旅行や出張があるときには、さすがに力不足。くわえて、出版社などでの打ち合わせで、その場で原稿を書いたりするときには、Windowsアプリケーションの動作確認を行なったり、キーボードの打ちやすさやを重視するため、さらにWindows CEマシンを使う機会が少なくなってしまう。

 このように筆者の場合、モバイル環境でWindows CEマシンでは事足りないシーンが意外と多く、メインパソコンにできるだけ近く、カバンに入れて持ち歩けるとなると、やはりノートPCしかないことになる。しかし、今ままで何台かのノートパソコンを使ってきたのだが、“コレだ!”という機種になかなかめぐりあえていなかった。

 コンパクトさを求めて、A5サイズのPanasonic「Let's note mini」も買ってはみたものの、常用するまでにいたらなかった。光学式トラックボールの操作感がとてもよく、薄型ノートほど部品が詰め込まれていないためHDDの換装などのメンテナンス性も高く、わりと気にいっていたのだが、キーボードの配列や質感が、今ひとつ好きになれなかった。

 そして同じ年の'99年、ThinkPadというブランド、必要に応じてCD-ROMドライブなどを内蔵したドッキングユニットと合体させることができるところに魅力を感じて「ThinkPad 570」も購入。が、実際に購入して持ち歩くと「大きさ」が気になり始めた。自分のカバンに入れて持ち歩くまではいいのだが、出先での会議室などで打ち合わせする時に大きさが気になるのだ。テーブル上にはパソコンの他に資料なども並べるために、ThinkPad 570の大きさは筆者にとってはマイナスポイント。ただ、ThinkPad 570はドッキングユニットと組み合わせることでCD-ROMブートが可能であることと、様々なOSに対応したドライバが提供されているので、自宅で各種OSをテストする環境として大活躍している。また、ドッキングユニットのCD-ROMドライブをCD-Rドライブに換装しており、CD-Rマシンとしても便利に使っている。

 このような状況にあって数年前から使いつづけている機種がある。それが東芝の「PORTEGE300」だ。現在発売されているB5サイズパソコンと比べても、一回り小さなサイズでありながら、1,024×600ドットといった解像度、質感のいいキーボード、CD-ROMブート可能なドッキングベイと筆者の求める条件を全てクリアしている。

 その他にも、内蔵HDDの換装も本体を分解することなくできたり、極薄ではないが十分スリムなボディなど、魅力満載のノートPCだ。ただ、発売時期が'97年と古いことからCPUがMMX Pentium 133MHz、最大搭載メモリが64MBと、パソコンとしての処理能力がさすがに見劣りするようになった。CPUを166MHzにクロックアップして使ってはいるものの、さすがに最近のノートPCと比べると、パワーの無さは無視できない。ただし、CPUパワーを必要としない作業では、まだまだ現役であり、最も気に入っているノートPCの1つである。もし、このPORTEGE300の、CPUがモバイルPentium IIIやモバイルCeleronになり、10GBを超える内蔵HDD、最大搭載メモリが256MBとなれば、すぐにでも購入するのだが……。

□「PORTEGE300」の製品情報
http://www2.toshiba.co.jp/pc/catalog/oldpc/portege/p300a/spec.htm


■直感的にDynaBook SS DS60Pに決定

 以上のように、現在でもMMX Pentium 166MHz機を使いつづけるくらい、自分の使い方にピッタリあったノートパソコンが決まらない日々が続き、ノートパソコンが必要になる場合は、とりあえず何台かあるノートPCを組み合わせてしのいでいた。ただ、ノートPCをできるだけ整理したいという気持ちもあり、良い機種が出てくれば購入しようと思いつつ半年以上が過ぎ去っていった。

 とりあえず、今まで何台かのノートPCを使ってきた中で見えてきた、自分にあったノートパソコンの条件を整理してみた。まず、絶対条件は、大きさがB5ファイルサイズ以下であること。液晶画面サイズが12インチ以下で解像度はXGA以上であること。次にCPUは500MHz動作以上のモバイルPentium IIIやモバイルCeleron。Windows 2000での動作も考えると最大搭載メモリ容量が196MB以上であること。ポインティングデバイスが、トラックボールもしくはスティックタイプであることだ。これは、今まで製品レビューなどでタッチパッドを採用したノートPCに何機種も触れてきたが、やはり自分にはトラックボールやスティックタイプが使いやすいと感じているからだ。また、Windows 98やWindows 2000用の各種ドライバが公開されていることも重要なポイントになる。

 この他にもクリアできればありがたいという条件もいくつかある。例えば、CD-ROMブートできる環境を作ることができる、100Base-TXのポートが内蔵されている、HDDの換装に手間がかからないといったものだ。しかし、これらは、必要になる機会が少ないことや周辺機器の追加などでクリアできるため絶対条件ではない。

 そして、今春に筆者の希望をほぼ満たしている機種が登場した。それが、Toshiba USAの「Portege 3440CT」だ。残念ながら、機種名は似ていても、国内で発売されている「DynaBook SS 3440CT」とはまったく違う機種。しばらくの間、国内で発表されないか待ってみたが、結局国内発表は行なわれなかった。海外モデルを販売する東芝ダイレクトなどで購入はできたのだが、悩みに悩んだ末を最終的には購入を見送ってしまった。

 その後、しばらくすると国内のパソコンメーカーから新製品の発表が相次ぎ、その中から候補に上がったのがPanasonicの「CF-B5R」である。数多くの新製品が発表された中で、CF-B5Rのみが筆者のノートPCに求める条件をほぼクリアしており、真剣にCF-B5Rの購入を考えた。

 しかし、そのCF-B5R発売が近づいた6月20日、東芝からPortege 3440CTをベースにした「DynaBook SS DS60P」が発表された。元々購入を考えていたPortege 3440CTのCPUや内蔵HDDが強化されたDynaBook SS DS60Pは、文句無くノートPCの購入候補の1つになった。さらに、DynaBook SS DS60Pは発表の翌日の6月21日に発売になるという急なスケジュールで、発売日はCF-B5Rとほぼ同じ。

 CF-B5Rか、DynaBook SS DS60Pか、どちらの機種にするか数時間考えたのち、直感的にDynaBook SS DS60Pの購入を決定した。

□「Portege 3440CT」の製品情報
http://www2.toshiba.co.jp/tdirect/products/p3480/p3480.htm


■増設メモリが見つからない!

 なんとか機種が決まり、発売日にショップに向かったが、同時購入を考えていた増設メモリがそのショップにはなく、DynaBook SS DS60P本体のみを購入。

 早速、自宅に持ち帰り電源を投入。しかし、そこには液晶のドット抜けが……。ここしばらくノートPCを購入しても、ドット抜けの液晶にあたったことがなかったので、すっかり忘れていた。確かに、数個のドット抜けは製品としての不良でないことは理解しているものの、1ユーザーとしては残念な気分になってしまった。

ブラインドタッチ可能な十分な大きさのキートップ。スティック型のポインティングデバイスのキャップは指の引っかかりがいいThinkPad用のものを改造して利用している 画面を閉じたところ。シンプルで飽きのこないデザイン。最近のDynaBookに見られたサーフラインがそれほど目立たなくなっている。 本体前面には、各種インジケータ、赤外線ポート、ボリュームが配置されている

本体左側面。マイクイン、ヘッドホンアウト、USB、VGAアウト、オプションのマルチメディアポートリプリケータなどを接続する専用コネクタ、ACアダプタ接続コネクタ、IEEE-1394、モデムポートが並ぶ 本体右側面。電源スイッチ、電源のロックスイッチ、排気用のスリット、ケンジントンロック用のホール、Type2対応PCカードスロット 縦に2個ならんだPCカードスロットはCardBus対応

 その後、本体購入時に買い損ねた増設メモリを購入すべく、ショップを数店舗廻ってみたが、手に入れることができない。DynaBook SS DS60Pの増設メモリは、いわゆるMicro DIMMと呼ばれている比較的新しい規格のメモリモジュール。もちろんDynaBook SS DS60Pは、発売されたばかりのために周辺機器メーカーのカタログには対応機種として登場していない。しかし、東芝のカタログではDynaBook SS DS60P用のメモリとDynaBook SS 3440C用のオプションのメモリが同じ型番であったために、DynaBook SS 3440CT用に発売されているメモリであれば、そのまま流用できると判断した。

 それでも、店頭では見つけられず、アイ・オー・データ機器から発売されている製品を予約したのだが、今だに購入できていない。どうも、Micro DIMMに搭載するメモリチップの供給がまったく見通しのつかない状況で、Micro DIMM自体の仕様が非常にシビアであるというのが原因のようだ。SONYのVAIO SRシリーズなども、Micro DIMMを採用しており、今後採用機種は増えていく傾向にあることを考えれば、1日も早く順調にメモリが供給されることを期待したい。

 その他に周辺機器としては、まわりのライターの間でも人気のあるパソコン用のケースにEXTREME LIMITのボディスーツを購入。同社のホームページからは、以前JORNADA690用のケースを購入したことがある。今回もDynaBook SS DS60Pに対応したボディスーツがあるかどうか、同社のページを探してみるとDynaBook SS3300/3300V(3300/3330/3380)/3440用本革ボディースーツが掲載してあった。これもDynaBook SS DS60Pに流用できると思い、購入しようとしたのだが、直接同社が販売するのではなく、東芝ダイレクトPCでの販売となっていた。

 そこで、早速東芝ダイレクトPCに、Webブラウザからオンラインで申し込んだのだが、気になることがあった。多くのオンラインショッピングのサイトで行なわれている受注の確認メールがなく、問い合わせ先も平日の10時から17時までの電話のみとなっているのだ。24時間いつでも申し込めるオンラインショッピングだけに、時間に左右されない電子メールでの問い合わせ先があってもいいのではないだろうか。なお、商品自体は、申し込んだ翌日に入金し、数週間後に送られてきた。

 また、実際に購入するか迷っているオプションが「マルチメディアポートリプリケータ」。非常に多機能な周辺機器で、CD-ROMドライブ、LANポート、シリアル、パラレル、PS/2、USB、PCカードスロットといったものをすべて装備している。物理的に拡張性を制限されているサブノートPCにとっては、強力な拡張ユニットだ。残念なのは、これが専用コネクタでケーブル接続となっていることだ。個人的にはThinkPad 570のようなドッキングユニットのような形式になっていて欲しかった。

□EXTREME LIMITのホームページ
http://www.pc-room.co.jp/EX-LIMIT/J_index.htm
□「DynaBook SS3300/3300V(3300/3330/3380)/3440用本革ボディースーツ」
http://www.pc-room.co.jp/EX-LIMIT/MOBILEPC/Dynabookss3300.htm
□東芝ダイレクトPCのホームページ
http://shop.toshiba.co.jp/


■道具用途のノートPCとして非常に満足

 前述のようにまだメモリを増設していないので、標準メモリ64MBでの簡単な試用ではあるが、1カ月程度使用した結果としては、まずまず満足している。まず感じたのは、非常に手堅い作りであるということだ。見た目のハデさはないものの、ノートPCとしての質感や基本性能は非常に高い。しかし、目新しい機能が搭載されているわけではないため、新鮮さを求めるユーザーには向いていないかもしれない。

 実際にデフォルトのWindows 98 SE環境で使っていると、たまにフリーズしてしまうことがあった。まだ、原因は確定できていないが、ActiveDesktop環境で起こりやすいようで、ActiveDesktopは使わないような設定で利用している。また、この秋に発売が予定されているWindows MEのバージョンRC1のCD-ROMを使ってアップグレードしてみたところ、何の問題もなく動作させることができた。Windows MEは、Windows 98が動作するパソコン全てで動作するとは限らないと言われている。しかし、このDynaBook SS DS60Pであれば、Windows 98 SEの後継OSであるWindows MEへ、問題なく環境を移行できそうである。Windows 2000 Professional環境は、増設メモリを手に入れ次第、試してみるつもりである。ただ、Windows 2000を試すには、Windows 2000用のドライバや情報が東芝から提供されることが前提となるので、一日も早い公開が待たれるところだ。

 DynaBook SS DS60Pと同時に、企業向けの「DynaBook SS 3480」というモデルも発表されており、それにはWindows 95やWindows NT、Windows 2000モデルも用意されている。そのことを考えれば、技術的にはすぐにでもDynaBook SS DS60Pユーザーに対して、Windows 95やWindows NT、Windows 2000用のドライバを公開できるはず。今までも東芝は、他のパソコンメーカーと比べると、更新されたドライバの公開が遅い感があり、一日も早い改善を期待したい。さらに企業向けのDynaBook SS 3480には、DynaBook SS DS60Pに装備されている内蔵モデムの部分が、ネットワークインターフェイスに変更されている機種もある。このネットワークインターフェイスには、非常に魅力的。東芝独自のサービスであるアップグレードサービスで、内蔵モデムから内蔵ネットワークインターフェイスの交換ができるようになると非常にありがたい。

 DynaBook SS DS60Pは、発売されて間もないので細かな問題はBIOSやドライバの更新によって徐々に改善されていくはずであり、これまでも東芝はそのような対応を行なってきている。これから長い期間ノートPCを使っていく立場としては安心して購入できる製品である。本体のデザインも企業ユーザーも見据えた落ち着いたデザインのため、自己主張をして目立つ機種ではないものの、道具として使うノートPCとしては現時点では非常に満足している。


□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□「DynaBook SS DS60P」の製品情報
http://www2.toshiba.co.jp/pc/catalog/ss/ds60_50/index_j.htm
□関連記事
【6月20日】東芝、初の低電圧版モバイルPentium III 600MHz搭載B5ノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000620/toshiba.htm
【5月23日】松下、復活トラックボールのB5ノートなど「Let's Note」シリーズ一新
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000523/pana.htm

[Text by 一ヶ谷兼乃]

I
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