~ お勧めのルータ「MN128-SOHO Slotin」 前編 ~
NTT-MEの「MN128-SOHOシリーズ」といえば、国内市場で常に上位の人気を得ているダイヤルアップルータだ。このシリーズのこれまでの流れについては、ここで説明するまでもないが、新しい機能を率先して取り入れたファームウェアを早いタイミングで既存ユーザに提供してきたことで定評がある。BOD/BACPやPIAFSへいち早く対応したのもMN128-SOHOシリーズであった。 筆者も初代のMN128-SOHOを所有しているが、この初代MN128-SOHO向けにも新機能を追加したファームウェアが提供され続けている。そのため、初代NM128-SOHOは現在でも現役で、リモートアクセスサーバーとして利用している。 そのMN128-SOHOシリーズの最新機種として、11月16日に発表されたのが「MN128-SOHO Slotin」(標準価格59,800円)だ。発売日は12月8日なのだが、発売日前に触れることができたので早速レポートする。なお、今回は無線LANカードの入手が間に合わなかったため、前編として無線LAN以外の機能についてレポートしている。無線LAN機能については、カードが入手できしだい後編として追って掲載する予定なのでご了承いただきたい。
MN128-SOHO Slotinは当然の事ながら、最近のダイヤルアップルータが持つ基本機能はほぼ全て網羅。それに加えて様々な機能が追加されている。目立つところでだけでも、背面に2個のPCカードスロットが用意されているとか、前面のカバーの中にEthernet/USBポートが装備されているなど、たくさんあるが、それだけでなく心臓部も大幅にパワーアップされている点も注目される。 搭載CPUとして、PowerPC MPC860EN(50MHz)を採用しているのだ。今まで、MN128-SOHOや他社のダイヤルアップルータで多く使用されてきたのがMotorolaのMC68系のCPU。しかし、最近のダイヤルアップルータの高機能化により、CPUパワーが不足気味となってきた。そこで、富士通NetVehicle-GX5といった最新機種ではPowerPC化が進んでいる。その点で、MN128-SOHO SlotinのPowerPC化は非常に心強く感じる。 MN128-SOHO Slotinの大きな特徴である2基のPCカードスロットは、当面は2.4GHz帯の2Mbpsの無線LANカードしかサポートされないが、今後10Mbps対応の無線LANカードやFAXモデムカードの発売も予定されている。様々な機能をとりこんできたMN128-SOHOシリーズだけに、これら以外のPCカードもサポートされる可能性も考えられる。 実際にMN128-SOHO Slotinを手にとると2個のPCカードスロットよりも、前面にある8つの操作ボタンと液晶画面の方により興味を持った。というのも、これまでもいろいろなダイヤルアップルータに触れる機会があったのだが、8つもボタンがある機種は初めてだからである。さらに、全角8文字×4行の漢字も表示できる液晶画面にも新鮮な印象を受けた。 この液晶画面とボタンを使えば、基本的な設定を行なうことができる。特にIPアドレスを設定できるのはありがたい。というのも、ダイヤルアップルータで最も面倒なのが、既存のネットワークに接続するときなのだ。一度、ネットワークに接続できてしまえば、PCのWebブラウザで様々な細かい設定が可能になるが、ネットワークに接続できないと何も設定ができない。専用ユーティリティをインストールしたPCをシリアルポートに接続したり、アナログポートに電話機を接続したりする手間なく、ダイヤルアップルータ本体だけの操作でIPアドレスが設定できるのは、とても便利だ。
MN128-SOHOシリーズは外観のデザインも大きな変化を続けてきたが、今回のMN128-SOHO Slotinのデザインは気に入っている。ただ、パーソナルユースでは、縦置きで使うことがほとどだと思うのだが、高さの取れない場所でも設置できるように横置きでも使えるようなデザインの方がより便利なのではないだろうか。
実際の自宅のネットワークへの接続は、前面のボタンを使って、本体のIPアドレスやサブネットマスクを登録して完了と、非常に簡単だった。設定して感じたのが、液晶の漢字表示であることの判りやすさだ。アルファベットだけだと「これって何のこと?」と戸惑うことがあるが、漢字表示だとそのようなこともない。 ネットワークに接続したら、後はWebブラウザを使ってMN128-SOHO Slotinの設定画面から、細かな設定を行なっていく。設定画面は、MN128-SOHOシリーズの最新ファームウェアでの設定画面と同じイメージのものだ。MN128-SOHOシリーズを使ったことがれば、それほど戸惑うことなく設定を進めていくことができる。ダイヤルアップルータの設定に慣れていないユーザーでも、クイック設定を使えば、とりあえずプロバイダへの接続までは迷うことなく行なえるだろう。ダイヤルアップ接続までであれば、2、3分程度もあれば大丈夫だ。 多機能のMN128-SOHO Slotinの設定項目は非常に多いが、設定画面は見やすくレイアウトされており、それほど迷うことはない。一度に設定するのは大変だが、最初は使いたい機能を絞って、徐々に利用する機能を増やしていけばいいだろう。
基本機能であるLAN上のPCのリクエストからプロバイダに自動発呼し、1Bもしくは2Bチャネルで接続。インターネットアクセスを実現するといった機能は、各種BODやBACPに対応し、十分なパフォーマンスを見せてくれた。一度に4台のPCからネットサーフィンを行なっても、おかしな挙動は見られなかった。今回は自宅内で評価したために、数十台からのアクセスといった環境での動作は確認していないが、ダイヤルアップルータとしての機能は、十分満足いくものだ。
また、アナログポートに関しても、フレックスホンだけでなく、i・ナンバーといった新しいINSネット64のサービスにも対応している。設定のしやすさなどもあって、アナログ機器を接続するTAとしても完成度は高い。なお、アナログポートは本体背面に3ポートあるが、2と3番目のポートは同時に利用することはできない。また、前面のボタンを押すだけで、回線を接続/切断できるのは、初心者にはありがたいだろう。
まず、最初は電子メールの着信通知機能。MN128-SOHO Slotinに搭載されたメール着信通知機能は、プロバイダの固有の機能を利用するものではなく、MN128-SOHO Slotinが設定した時間にダイヤルアップ。メールサーバーにアクセスして、メールを受信するという機能だ。着信メールがあると本体前面のメッセージランプが点滅して教えてくれる。最大の特徴は、受信したメールを設定画面や本体の液晶パネルで読むことができることだ。受信したメールは、他のメールアドレスに転送したり、PHSメールに送信することもできる。さらに、受信してくるメールはSubjectなどの項目でフィルタリングできるため、必要なメールだけを対象にできる仕組みとなっている。 次は、PHSメール送受信機能である。Webブラウザで設定画面を表示させ、その画面上からPHSメールを送信することができる。送信できるPHSのNTTドコモのキャラトーク対応端末。送信だけでなく、MN128-SOHO SlotinでPHSメールを受信することも可能で、受信したPHSメールは設定画面や本体の液晶パネルで読むことができる。前面の液晶パネルでは、メールの内容だけでなく、MN128-SOHO Slotinが搭載している簡易掲示板の書き込みも読める。
また、本体前面には転送ボタンが装備され、転送ボタンを押すだけで、擬似着信転送やフレックスホンの着信転送で設定された転送先に電話を転送することができる。事前に携帯電話やPHSの番号を設定しておけば、出かけるときにボタン1つで着信転送モードに切り替えることができため非常に便利である。頻繁に使う機能なので、ワンタッチ操作というのは評価できる。
さらにMN128-SOHO Slotinには、RVS-COM Liteが標準添付されているので、LAN上のWindows PCからG3 FAXの送受信ができるのも便利だ。なお、RVS-COM Liteの上位アプリケーションであるRVS-COM 2000にも対応している。 面白いのがモーニングコール機能。指定した時刻に、指定したポートの電話機を鳴らし、受話器をとると「おはようございます」「おはよー」「おきて」といったメッセージを流す機能である。MN128-SOHO Slotinは、NTPサーバーと時刻を同期する機能があるため、正確な目覚ましとして使うことができる。 その他にも、いろいろな機能があるが、とりあえず試した上記の付加機能だけでも、しばらく楽しむことができそうだ。
ただ、些細な点ではあるが、気になるところも皆無ではない。その1番がマニュアルである。本体に添付されてくるのは「導入/設定ガイド」と「リファレンス・ハンドブック」の2冊と、添付CD-ROMにPDF形式で「活用ガイド」が格納されている。簡易マニュアルしか添付されない機種に比べるれば、評価できる。が、その製本されている2冊のマニュアルの字が小さく見づらいのがマイナスポイントだ。また、Webブラウザ上での設定画面で、以前はオンラインヘルプが設けられていたが、MN128-SOHO Slotin Ver.1.02のファームでは、無くなっている。筆者は、MN128-SOHOシリーズの設定では、オンライヘルプを多用していたので、非常に残念である。本体メモリの容量とも関係するとは思うが、なんとかオンラインヘルプを復活して欲しい。 2番目の気になるとこは、前述したように横置きできないことである。横置きが必要なユーザーも存在するということを認識してもらいたい。 3番目は、ほとんどのユーザーにとっては関係の無いことかもしれないが、メール着信通知を行なうときにダイヤルアップのみで、Ethernet経由でメールサーバーに確認に行けないところである。せっかくのメール着信通知機能なので、LAN上のメールサーバーに届いたメールの確認もできるとありがたい。 4番目はさらに不満に思うユーザーは少ないかもしれないが、V.110での非同期通信ができないことだ。今時V.110で通信を行なうユーザーは、極めて少数派だとは思うが、無くなってしまうと困るユーザーも存在するのではないだろうか。MN128-SOHOや他のダイヤルアップルータ、TAからMN128-SOHO Slotinに乗り換えを考えているユーザーの妨げになる可能性もある。しかし、ほとんど使われていない機能を切り捨てるメーカーの姿勢というのも、極めてまっとうなのだろうが……。 と、不満点を列挙したが、かなり重箱の隅をつつくような部分であり、MN128-SOHO Slotinが魅力的な機種であることに変わりはない。INSネット64の付加サービスへの対応も網羅しているので、パーソナルやSOHOユーザーが、INSネット64を導入し1台目の機器として選択するときには、MN128-SOHO Slotinを第一候補に上げてもいいのではないだろうか。また、PCカードスロットという拡張性があるので、今後どのような機能がサポートされていくのかも楽しみである。 MN128-SOHO Slotinには、来年発売されるWindows 2000に合わせて、DynamicDNSに対応したサーバー機能や前面パネルのUSBポート用Windows 2000対応ドライバの提供といったことも期待したい。
□NTT-MEのホームページ(販売元) [Text by 一ヶ谷兼乃] |
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