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一ヶ谷兼乃の

「AirStation」で11Mbpsの高速・快適な無線LAN三昧


■速度より無線のメリットは大きい

 前回、自宅でMN128-SOHO Slotinを使った無線LANを利用していることを紹介した。有線では、100Mbpsという速度でネットワークを組めるが、部屋の中にケーブルがひきまわされていると意外と気になるものである。特に大量のデータをネットワークでやり取りを行なう機会が少ない場合、10Mbps程度の速度でも無線でやり取りできることの方が快適に感じることが多い。

 1LDK住まいの筆者宅でもこのように感じるのだから、2、3階建ての住宅にお住まいであれば、より無線LANのメリットを享受できるのではないだろうか。

 このようにメリットの多い無線LANだが、現在使用しているMN128-SOHO Slotinと無線LANカード「MN128 SS-LAN Card 10」では、利用できるPCがWindows 98マシンに限られてしまうという問題がある。筆者宅では、様々なPCがあり、最近ではWindows 98よりも、Windows 2000やWindows CEから無線LANを利用したいと感じることが多くなってきている。

 そこで今回、無線LANでは定評のあるメルコのAirConnectシリーズの新製品「AirStation」を導入してみた。


■AirStationを選んだわけ

 AirStationシリーズの中で、実際に購入したのは、アクセスポイントの標準モデル「WLA-L11」と11Mbpsで通信ができる無線LANカード「WLI-PCM-L11」が2枚がセットになった簡単導入パック「WLS-L11W」(65,400円)である。WLA-L11には、すでに無線でデータ通信を行なうモジュールが組み込まれているので、この簡単導入パックを購入すれば、2台のPCから無線でアクセスすることができる。

 AirStationを選んだ理由をいくつか挙げてみると、まず11Mbpsでの通信がサポートされているところだ。通信速度が2Mbpsや1Mbpsの製品が非常に値下がりしたとはいえ、多少でも印刷データやファイルをやりとりするネットワークでは、11Mbpsの製品をチョイスしたい。

 次の理由としては、この無線LANカードには、Windows 95/98/2000/NT 4.0に対応したドライバが付属すること。筆者宅のネットワークでは、Windows 2000をインストールしたノートPCの稼動率が低くないだけに、特にWindows 2000対応ドライバの存在は大きい。

 さらに、AirMacとの通信がサポートされている点にも魅力を感じる。筆者宅にはAirMacを利用できるiMac DV Special Edition(SE)がある。デスクトップ型なので、持ち運ぶということはないが、リビングに設置しているため、ネットワークケーブルの存在が気になっていた。さすがに1台のiMa DV SEのために、AirMacベースステーション購入へは踏み切れなかったが、AirStationでAirMac関連機器が利用できるのであればと、iMac DV SEに内蔵するAirMacカードも購入することにした。これにより、結局、筆者宅に存在するPCで無線LANを利用できないのは、Windows CEマシンだけになったわけだが、結果的にはこの部分も解決できた。その解決方法は後述する。

 ほかにも、複数台設置しているAirStationのアクセスポイント間を行き来するローミング機能や、無線信号の暗号化を行なうWEP(Wired Equivalent Privacy)対応といったメリットもある。これらについては個人宅ではあまり利用する機会はないだろうが、企業などで採用するに場合には、非常に重要なチェックポイントとなるはずである。


■導入は簡単

AirStation「WLA-L11」。パールホワイトの丸みをおびたデザインで縦置きになっている
 既存のLAN環境へのAirStation導入はいたって簡単。設置場所を確保し、AirStationと既設のHUBをネットワークケーブルで繋ぐ。付属のACアダプタを接続して、電源を供給すれば設置は完了だ。ディップスイッチの設定などもなく、非常に簡単である。次にネットワークに繋がっているPCに、付属CD-ROMのエアーステーションマネージャをインストールする。後は、そのエアステーションマネージャを起動して、各種設定を行なうだけ。難しい手順などは一切なく、スムーズに作業が完了した。エアステーションマネージャでは、エアステーション名やグループ名、転送速度、IPアドレス、無線チャンネルを確認できる。なお、これらの項目はWebブラウザを使って変更・設定を行なうことが可能だ。

 アクセスポイントの設定に続き、Windows 2000をインストールしたノートPCに無線LANカードの導入を行なった。他のPCカードデバイスと何ら変わりなくドライバをインストールした後、クライアントマネージャをインストールする。クライアントマネージャでは、接続グループのAirStationの指定や、電波の状況を確認することができる。これらの作業も、マニュアルどおりに進めていけば、4、5分で終了した。

 ここまで終わってしまえば、無線LANカードを挿したPCで、有線のときと同じようにネットワークの設定を行なうだけである。このネットワークの設定が終われば、あっさりと無線LANを使ったネットワークが利用できるようになっていた。

AirStation「WLA-L11」正面に同じ5つのLEDを装備するほか、右側面にも同じLEDを備え、どちらからでも状況がわかるようになっている。下から2番目のLEDは何も書かれておらず、なにを表わすかは不明。一番下のDIAG LEDは、電源投入時の点滅の回数でトラブルの原因を判断することができる 背面には、上から設定を初期化するスイッチ、Ethernetポート、ACアダプタ接続用コネクタ、アース端子を装備する。Ethernetポートは10Base-T/100Base-TXのデュアルスピード対応。また、背面を覆うカバーも添付されている

 Windows 2000マシンの次に、iMac DV SEにもAirMacカードをインストールした。iMac DV SEを逆さまにしてカバーを開き、AirMacカードに本体内部に既に配線されているアンテナを接続。専用コネクタにAirMacカードを装着するだけだ。そして、iMac DV SEを元に戻した後、電源を入れてAirMacカード付属のCD-ROMでドライバなどをインストールするばいい。と、ここまでは順調だったのだが、うまく通信を行なうことができなかった。

 無線LANの標準プロトコルであるIEEE802.11bに対応した製品では、データをやり取りするための電波にチャンネルが割り当てられる。そのため、設定したチャンネルが異なると通信を行うことができないためだ。

 AirStationでは、標準の設定としてチャンネル14が指定されていた。これは既存の2Mbps対応の無線LANカードからでも通信を行うことができるのが14チャンネルに限定されているからである。しかし、AirMacでは1から13チャンネルまでのチャンネルしかサポートしていないために、14チャンネルと設定されたAirStationとは通信をができなかったのである。

 ここで、AirStationの通信チャンネルを14以外に変更することで、iMac DV SEから無線LANを使った通信を行なうことができるようになった。AirStationの通信チャンネルを変更しても、既に設定したクライアントでは自動的にチャンネルをサーチして通信を行なうために、既存の設定を変更する必要はない。とはいうものの、既存の2Mbpsの無線LANカードを利用した環境と、AirMacの環境は同居できないということになる。

AirMacカードと、それを構成するパーツ類 AirMacカードには、iMac DV SE本体内に敷設されているアンテナを接続する必要がある AirMacカードを増設する専用スロット。DIMMスロットの横に装備されている。増設作業自体は非常に簡単だ



■無線が2000年の大きなキーワードに

 今回、AirStationを導入して気づいたことがある。それは通信速度だ。AirStation導入前にも、MN128-SOHO Slotinで無線LANを利用していたが、AirStationでの無線LAN環境のほうが、データ通信時のレスポンスが良く、体感できるくらいの違いを感じる。これが、電波状態によるものなのか、はっきりした原因はわからないが、確実にAirStation利用時のほうが快適だ。また、WEPを使った無線信号の暗号化を設定した場合、データの通信速度が落ちることも体感した。

 AirStationの導入で、自宅にあるほとんどのノートPCや、iMac DV SEから無線LANが利用できる環境が完成。ソファーやベッドに横になってノートPCを開いて、インターネットにアクセスしたり、ちょっとした仕事ができるようになった。単にネットワークケーブル1本が消えただけではあるのだが、環境としては非常に改善されたと判断している。

 とはいうもの、1つが問題がある。それが、筆者宅で無線LANが使えない唯一のプラットホームとなってしまったWindows CEだ。しかし、結果的にこれも解決することができた。AirStationでは、無線LANのチップにルーセントテクノロジのものを採用している。メルコ以外の機器メーカーからもこのチップを使った製品が市場に投入されており、それらの製品にはWindows CEをサポートしているものが少なくない。要するにルーセントテクノロジのチップを使った他社製品のドライバを流用することでWindows CEマシンでも、無線LANカードを使えるようになったというわけだ。ライセンスの問題などがクリアされていないため推奨はできないのだが、Windows CEマシンでも無線LANのメリットを享受できるのは確かである。なお、実際の使用にはLinuxマシンやWindows CEマシンで無線LANを利用する情報が掲載されているページを参考にさせていただいた。

 Windows CEマシンは小型であるだけにケーブルを必要としない無線LAN環境は魅力である。早急にメルコからWindows CE用ドライバが正式に提供され、現在のグレーな状態が解消されることを期待したい。

 ちなみに、AirStationには、筆者が購入した標準モデル「WLA-L11」以外にも、モデムを内蔵した「WLAR-L11-M」が用意されている。WLA-L11は無線LANカードと既設ネットワークのブリッジとして動作するだけであったが、WLAR-L11-Mにはダイヤルアップルータの機能も含まれている。今後、シリアルポートを搭載して既に所有しているモデムやTAを使ってダイヤルアップするモデルや、ケーブルモデムやADSLモデムに直結できるモデルなども予定されている。

 このような製品が発売されてくると、まったくネットワークが無いような環境に、1からAirStationだけでネットワークを導入するというケースが増えていくのではないだろうか。この流れは、メルコだけに限ったことでなく、夏ごろまでには無線を使ったパソコン周辺機器が、各社から次々に発表され、パソコンショップで購入できるようになるだろう。無線は今年の大きなキーワードになるはずだ。


□メルコのホームページ
http://www.melcoinc.co.jp/
□無線LANのページ
http://www.melcoinc.co.jp/product/musen.html
□ぱお~ん氏による無線LANの設定についてのページ
http://www.ax.sakura.ne.jp/~pao-n/Computer/wlan/
□関連記事
【'99年6月22日】無線LANでもっと“ごろごろ”インターネット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990622/dgogo02.htm

[Text by 一ヶ谷兼乃]

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