無線LANの互換性を検証する
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AP-3背面 PCカードスロット部分。SL-1100を挿入したところ | AP-3本体正面 |
ワイヤレスアクセスポイント「AP-3」は、無線LANと有線LANとのブリッジ機能を担う。AP-3の後部には、無線LANカードを挿入するスロットやRJ-45のコネクタ、リセットスイッチ、ACアダプタ用のコネクタなどが装備されている。RJ-45のコネクタは、もちろんLANポートで10Base-T/100Base-TXの両方に対応している。無線LANカードのスロットは、アイコムで発売されてきたPCカード型無線LANカードを全種類利用可能で、11Mbps通信が可能なSL-1100が1枚付属する。設定はWebブラウザを使い簡単に行なうことができる。無線LANで気になるセキュリティは、無線LAN機器で使用されるESS IDに加え、WEPによる暗号化、あらかじめ登録したMacアドレスの機器とのみ通信を行なうといった設定も可能だ。
SL-1100正面。PCスロットからはみ出している部分がアンテナ。2個のLEDが装備されている | SL-1100裏面 |
まず、AP-3を筆者宅のLANに接続、設定を既存のLAN上に接続されたデスクトップPCで行なった。AP-3の筆者宅の既設のAirStationで設定している周波数チャンネルと異なるチャンネル、ESS IDに設定する。続いてノートPCのPCカードスロットにSL-1100をセットして通信を行なったところ問題なく通信することができた。ちなみに、アイコムのSL-1100の製品情報ページでは、対応OSはWindows 95/98となっているが、付属のドライバFDには、Windows 95/98/NT/2000用のドライバが入っていた。また、SL-1100の付属のユーティリティは、ESS IDやWEP関連の設定を行なったり、電波状態の表示、通信速度や通信エラーを折れ線グラフで表示できる。
■メーカー間で異なるWEP機能
続いて異なるメーカーの機器間での通信を行なってみた。まずチェックしたのが、アクセスポイントがメルコAirStation、クライアントがアイコムのSL-1100という組み合わせ。ESS IDと周波数のチャンネルを合わせ、WEPは使用しない設定とした。
結果はあっけなく、まったく問題なく通信できた。ただし、WEPの設定を行なうと、どのように設定しても通信を行なうことができない。ここが、互換性の問題のようだ。
今度は、逆にアイコムのアクセスポイントに、メルコの無線LANカードの組み合わせを試してみたところ、こちらも同じ結果となった。WEPを使わない場合は通信ができ、設定すると設定値にかかわらず通信できなくなる。
どちらのメーカーの製品とも、ESS IDやMACアドレスでのセキュリティは確保できるが、やはり電波でやり取りしている信号自体を強力に暗号化しておくことが望ましいので、WEPを利用した通信ができないのは気になる。
■標準規格は目前!?
今回のテストでは、メーカー間による互換性の問題が明らかになった。しかし、無線LANの互換性に関しては、それほど遠くない将来に解決される可能性が高い。というのも、'99年に設立された無線LANの標準化団体「Wireless Ethernet Compatibility Alliance(以下WECA)」が、異なるメーカーの無線LANの製品間でIEEE802.11bでのデータをやり取りできるかという互換性を確認するテストを開発済みだからだ。このテストにより、基本的な通信はもとよりWEPなどの機能も含めた互換性もチェックされる。
なお、WECAによるテストをパスした製品には「WiFi」と呼ばれる認定シールが貼られる。このシールが貼られた製品であれば、メーカーを問わないし、さらにどこのメーカーのチップを使っていようとも、相互通信が保証される。国内で手に入るWiFi認定の製品は、現在のところ、3Com、シスコシステムズ、コンパックなどの無線LANシステムに限られる。
しかし、Appleや富士通、ソニー、メルコなどもWECAに加入しており、今後これらのメーカからWiFi対応の製品が発売される可能性が高い。すでに発売されている非WiFi対応製品も、理論上はファームウェアの書き換え程度の作業でWiFi対応になるといわれており、AirStationやAirMacのファームアップデートが将来行なわれるかもしれない。
今後、異なるメーカの無線LANシステム製品を導入する可能性が高い場合は、WiFi対応製品が出揃うまで待つのも手だろう。
■無線LAN対応ダイヤルアップルータ
最後に、無線LANアクセスポイントの機能も備えたダイヤルアップルータ「DR-1WL」を紹介しよう。DR-1WLは、AP-3の機能に加え、一般的なダイヤルアップルータとしての機能も一通り備えている。MPによる128Kbps通信、BACP/BOD、NAT、ProxyDNS、Syslogといった機能はすべて搭載されている。ただし、アナログポートは装備されていないので、1本のISDN回線で通話も行ないたいのであれば、アナログポートを装備したTAなどを別途用意する必要がある。
DR-1WL正面 | DR-1WL背面右側。ACアダプタ用コネクタ、ISDN U点、S/T点、イーサポートが並ぶ | DR-1WL背面左側にPCカードスロットが装備される |
1台で全てをまかないたいのであれば、MN128-SOHO Slotinに軍配が上がるが、DSU付きTAを導入済みの場合や、アナログが不要な場合は、1台でダイヤルアップルータとIEEE802.11b対応の無線LANを実現できるDR-1WLは魅力的な製品だ。こういう優れた機器を互換性の心配なく自由に使用できるように、各メーカーからWiFi対応のファームウェアなどが公開されるよう期待したい。
□アイコムのホームページ
http://www.icom.co.jp/
□無線LANのページ
http://www.icom.co.jp/pc/system/index.html
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【5月24日】「AirStation」で11Mbpsの高速・快適な無線LAN三昧
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000524/dgogo13.htm
【'99年6月22日】無線LANでもっと“ごろごろ”インターネット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990622/dgogo02.htm
[Text by 一ヶ谷兼乃]
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