Click


一ヶ谷兼乃の

~ 久々に出た使い込みたくなるマザーボード「P3B-F」 ~


■珍しく長期間使ったマザーボード「ABIT BH-6」

 メインに使っているパソコンは自作PC。というより平成に入ってからは、ノートPCかMacintoshぐらいしかブランドの付いた完成品のPCは所有していない。

 またその自作PCも、仕事に使うメインマシンですら、部品構成が安定している時がない。例えばビデオカードはメインマシンに半年間ささっていたものはないし、あまり変化がないと思われるNICやSCSIホストアダプタさえも、1年間連続して使っているものはない。比較的長期間利用するのは、PCケースやキーボード、マウスといったものぐらいだろう。

 このような典型的な自作PCユーザーの筆者にしては、珍しく長持ちしたパーツがある。それがABITのマザーボード「BH6」だ。もちろんBH6を使い始めた後も、気になるマザーボードが出てくると、とりあえずテストマシンを組んで試してきたが、結局BH6から乗り換えようと思わせてくれるマザーボードには出会うことはなかった。BH6以前は、ASUSブランドのマザーボードが好みで、ASUS製品から、ASUS製品に乗り換えたということも、何度かあった。また、BH6を使ってからもASUSの人気マザーボード「P2B-F」を使ってみたが、わざわざ使い慣れたBH6から乗り換えるまでの魅力は感じなかった。

 マザーボードを乗り換えなかった理由としては、チップセットが440BX以外の選択がなかったというのも大きい。というのも、これまでマザーボードを交換する時には、新しいチップセットに乗り換えるという大きな理由があったからだ。2カ月前には「もしかするとIntel 820(Camino)が出てくるまで、マザーボードはBH6のままかな」なんて考えたぐらいだ。

 しかし、最近どうもBH6のシリアルポートの動作がおかしいのである。たかがシリアルポートではあるが、マイクロソフトのMoneyを使ってホームバンキングなどを行なっているため、TAが使えなくなるシリアルポートの不調は直接生活に関係してくる不具合で、極めて不便。もちろん原因を探ってみたが、いっこうにわからず、いっそのことこれを機会にマザーボードを交換してみようかという気持ちになった。

 さらに丁度タイミングよく、ここ1カ月くらいの間にSocket 370タイプのCPUを2個搭載できるABIT BP6などの気になるマザーボードがいくつか登場してきた。もちろん、気になったマザーボードは、すぐに購入してWindows 98やWindows NT、Windows 2000β3などをインストールして試している。


■定番P2B-Fの後継P3B-F

 そうやって、いろいろ試してみたマザーボードの中で、“これは!”と思わせるものがあった。それがASUSの最新マザーボードP3B-Fだ。Slot 1対応マザーボードで、チップセットとしてIntel 440BXを搭載。搭載されている440BXは、ノースブリッジもサウスブリッジも、新しいリビジョンのチップとなっている。

 名称でわかるとおり、P2B-Fの後継機種となる位置付けの製品であるが、非常に魅力的な仕様になっている。

 ASUS P3B-F。Slot 1マザーボードの定番となったP2B-Fの後継モデルだ  今回購入したASUS P3B-Fのリビジョンは1.03  コネクタは標準的なダブルデッカータイプ
 チップセットの440BXは82443BX SL37Mと82443BX SL2VHにそれぞれリビジョンが上がっている

 PCIバスを6本装備し、そのうち1本をISAと排他使用できる。十分な拡張性を備えている
 1つ目の魅力は、拡張バススロットとして、AGPスロットが1つ、PCIバススロットが6つ、PCIバススロットと排他使用のできるISAバススロットが1つ装備されている点だ。SCSIホストアダプタやNICなどのおなじみの拡張カードに加えて、最近は動画キャプチャカードやサウンドカードまでPCIバスに実装しなければならくなっているため、PCIバススロットは多い方がありがたい。とはいっても、ISAバスが1つも無いと多少不安が残るため、1つだけでも残っているという仕様もうれしい。ただし、6つあるPCIバススロットも、1番と2番のスロットはIRQを個別に割り当てることができるが、3番と6番、4番と5番はIRQが共有される。

 2つ目は、マザーボード上のジャンパピンによって、3.3V系の電圧を3.5Vと3.65Vに切り替えることができる点だ。これまでもASUSのマザーボードは、3.3V系は電源ユニットから供給されるものを直接使うのではなく、マザーボード上のレギュレータで生成していた。また、生成された電圧は3.3Vでなく3.5Vなので、クロックアップしても比較的安定して動作するといった効果が得られる。P3B-Fではさらに高い電圧3.65Vにも設定できるようになった。この設定がどれだけの人に有用かはわからないが、簡単に設定変更できるところは評価したい。

 PLL ICはICS 9350CF-08を採用している
 3つ目に魅力的に感じたのが事細かな設定が可能なBIOSセットアップである。FSBクロック周波数を16通り(66/75/83/100/103/105/110/112/115/120/124[PCI 31MHz]/124[PCI 41.3MHz]/133[PCI 33.3MHz]/133[PCI 44.3MHz]/140/150MHz)に細かく指定できるところや、CPUのコア電圧を細かく指定できるところは、オーバークロックを楽しみたいユーザーにとって非常に便利な機能だろう。さらに、拡張スロットごとにIRQを割り当てたりできるのも、ありがたい。

 もちろんACPIに対応しているが、これまでのACPI対応のマザーボードと異なりSuspend-to-RAMもサポートして差をつけている。やっと本格的にACPIをサポートしたマザーボードが登場してきたことになる。


■P3B-Fの気になるところ

 前述のようにP3B-Fは、Single CPUのマザーボードとして、最も魅力を感じるマザーボードである。しかし、まったく気になる点がないわけではない。それは、一部の拡張カードと相性が悪いという現象があることだ。代表的な事例では、Creative LabsのSoundBlaster Live!を装着すると、シリアルポートに不具合が発生するといった問題がある。また、パーツの組み合わせなどの環境によっては、ACPIがうまく動作しないといった問題もユーザーからあがっている。

 どのマザーボードでも、相性問題というものは多かれ少なかれ抱えているのだが、やはり出荷されて間もない製品はこの手のトラブルが起こりやすい。ただ、ASUSは、頻繁にBIOSのバージョンアップを行なっており、拡張カードとの相性問題は、いずれ解消されていくはずである。実際、SoundBlaster Live!との問題も、現在公開されているバージョン1002のBIOSで、ほぼ解決されるという。今後も、BIOSバージョンアップで、完成度の高いマザーボードになっていくだろう。

 なお、今のところ、筆者の環境では問題らしい問題は発生しておらず、個人的には絶好調なマザーボードとして働いている。


■メインマシン用として採用決定!

 実際にP3B-Fを購入した後、Windows 98やWindows NT、Windows 2000β3といったOSをインストールしてみたが、マザーボードが原因となるトラブルは、今のところ発生しなかったので、メインマシンに組み込んだ。BH6からP3B-Fに交換したからといって、それほどの違いがあるわけではないのだが、全く同じ機器構成でも以前のようなシリアルポートの不調もなく、快適に動作している。そのため、シリアルポート不調の原因はマザーボードであったのではないかと判断している。

 なお、P3B-Fには端末の情報を一元管理できるIntel LDCMやウィルスチェック用のPC-Cillin98といったもののほかに、BIOSのアップデートユーティリティやマザーボードの状態をチェックするユーティリティが添付されている。この添付ユーティリティの「ASUS PC Probe」がなかなか良くできており、ファンの回転速度やCPUやマザーボードの温度、電源の状態などが、ただ数値を見ることができるだけでなく、時系列のグラフ形式で表示されるほか、メモリの使用量なども見ることができる。

 P3B-Fは、最近話題のATA/66インターフェイスなどは搭載していないが、筆者のニーズにピッタリで、基本的な部分がしっかり押さえられているマザーボードだ。また、ASUSはBIOSのバージョンアップに定評があるだけに、いろいろな拡張カードと組み合わせた時にも安定動作が期待できる。

 このように、P3B-Fは久々に使い込んでみようかと思わせるマザーボードとなっており、PC100環境である間はこのマザーボードを利用していくことになりそうだ。

□ASUSTeK COMPUTERのホームページ
http://www.asus.com.tw/
□「P3B-F」の製品情報
http://www.asus.com.tw/Products/Motherboard/Pentiumpro/P3b-f/index.html

[Text by 一ヶ谷兼乃]

I
バックナンバー
バックナンバーインデックス

【2001/1/30】
第21回:「ドリキャス用ブロードバンドアダプタとCR2000」
パソコンでなくてもブロードバンドは楽しめる!!

【2000/12/26】
第20回:「CAS2040」
高コストパフォーマンスIPルータ

【2000/11/28】
第19回:「BlackICE Defender」
インターネットアタックからPCを守る

【2000/10/31】
第18回:「Shuriken Pro」
隠れた銘品メーラー

【2000/9/27】
第17回:シグマリオン
ハイコストパフォーマンスなWindows CE機

【2000/8/22】
第16回:MFC-8300J
地味だけど隠れた(?)名機 FAX複合機は満足度高し

【2000/7/26】
第15回:DynaBook SS DS60P
“コレだ!”というノートPCを探して

【2000/6/27】
第14回:ICOM WaveMaster編
無線LANの互換性を検証する

【2000/5/24】
第13回:AirStation
「AirStation」で11Mbpsの高速・快適な無線LAN三昧

【2000/4/28】
第12回:ADSL
【ADSL活用編】OCN常時接続からADSLへの完全移行を目指す

【2000/3/28】
第11回:ADSL
【ADSL導入記】開通まで待たされても、つながれば快適!

【2000/2/22】
第10回:MP3プレーヤー「NOMAD II Sports」
NOMAD II SportsはMP3のベストバイだが、ポータブルCDも捨てがたい

【2000/1/25】
第 9回:Windows CEマシン「Jornada 690」
'99年の最も満足度の高い買い物「Jornada 690」

【'99/12/27】
第 8回:ダイヤルアップルータ「MN128-SOHO Slotin」
お勧めのルータ「MN128-SOHO Slotin」 後編(無線LAN編)

【'99/12/1】
第 7回:ダイヤルアップルータ「MN128-SOHO Slotin」
お勧めのルータ「MN128-SOHO Slotin」 前編

【'99/10/26】
第 6回:Macintosh「iMac DV Special Edition」
見れば見るほどカッコイイ「iMac DV Special Edition」

【'99/9/29】
第 5回:CPUクーラ「アルファ P3125SM60」
純正のCPUクーラじゃ満足できない アルファ P3125SM60

【'99/8/24】
第 4回:RASサーバー/IPルータ「NetGenesis Dual」
「NetGenesis Dual」でアナログ回線用RAS環境を構築

【'99/7/27】
第 3回:マザーボード「ASUS P3B-F」
久々に出た使い込みたくなるマザーボード「P3B-F」

【'99/6/22】
第 2回:無線LAN「AIRCONNECT」
無線LANでもっと“ごろごろ”インターネット

【'99/5/25】
第 1回:iMac用SCSIカード「iProRaid」
ボンダイブルーiMacユーザーの嘆きを解消!?


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp