'99年の今ごろ、筆者宅にはプリンタ1台とFAXが1台設置してあった。カラー印刷の機会が極めて少ないために、プリンタはモノクロレーザー、FAXは幅広い転写フィルムを使った普通紙FAX。レーザープリンタは、以前PC Watchのコラムで紹介したプリントサーバー 「NPS530」を利用してネットワークに接続し、各パソコンから印刷を行なっていた。 その後、プリンタに内蔵する専用のネットワークカードが格安で手に入ったため、NPS530は引退。ネットワーク上のiMacからもトラブルなしに印刷が可能になり、快適な環境となっていた。 しかし'99年夏、この環境に変化が起こった。長年使ってきた普通紙FAXが完全に壊れたのだ。もうはっきり覚えてないが5、6年は使っていたのではないだろうか。完全に壊れる前に、ダイヤルインなどの機能が使えなくなったり、徐々に不具合が出てきてはいたのだが、センドバックの修理で数週間手元からFAXが無くなる状態になってしまうために、FAXの送受信ができる間はそのまま使っていた。しかし、さすがにFAXの送受信に支障がでてきたからには買い換えを早急に検討しなくてはいけなくなった。 買い替えにあたり必須条件は、既に慣れ親しんでいるので、普通紙FAXであることだ。しかし、普通紙FAXでも熱転写フィルムを使ったもの、インクジェット式、レーザータイプと種々あり、それらを検討していると、パソコンからも印刷可能で、FAX送受信もできるFAX複合機も候補に浮かんできた。
早速、新宿西口の量販店へ出向き、実際に販売している機種や価格をチェックしてみた。ぱっと見たところレーザー方式のFAXやFAX複合機は、やはり価格が高い。レーザー方式以外の機種は、どれも通話を行なう電話機としての機能を充実させたものが多い。しかし、筆者宅のFAXには留守番電話や子機といった機能はまったく必要ないために機種を決めかねていた。とはいえ、現状FAXの送受信ができない状態にあり、早急に何かの機種に決めなくてはいけない。 と、考えを巡らせていると、売り場の隅っこに追いやられていた富士ゼロックスのFAX複合機「LaserWindOffice 105W2」が目に入った。カタログや同社のページを見たところ、FAX送受信やWindows 95/98パソコンからの印刷のほかにもFAX受信したデータをパソコン上で管理したりすることができる機能を持っていた。もちろんレーザー方式で普通紙に印刷することができるもので、古い機種のためか価格も非常に安く6万円弱であった。とりあえず、FAX送受信ができるレーザー方式のFAXとしては、当時にしては格安であり、あまり情報も集めないまま購入した。 持ち帰り梱包をといて、設置を始めると、問題点がいろいろでてきた。まず本体だけではダイヤルできない。ダイヤルするためには外付けで電話機を接続するか、パラレルポートでWindows 95/98パソコンを接続し専用ソフトで行なう必要がある。これについては、とりあえず小型の電話機をつけることで解決することにした。次に問題になったのが本体の設定である。これもやはりパソコンから専用ソフトで行なわなければならないので、ノートパソコンを接続して、「LaserWindOffice 105W2」を管理する専用ソフトを付属のCD-ROMでインストールして設定を行なった。当面「LaserWindOffice 105W2」の近くには、パソコンを設置する予定がないので、パソコンの管理は行なわずに本体だけでFAX送受信ができる設定に変更したのだが、そのためにパソコンを接続しなければならないというのも不思議な仕様だ。 とりあえずしばらく使っていると、早くも給紙のトラブルが出てきた。仕様では何枚か用紙をセットしておけば、一枚ずつ順に紙を吸い込み印刷してくれるのだが、実際に紙をセットしておくと複数枚紙を吸い込んでしまい紙詰まりしてしまうようになってきた。すぐ横においてある設置して2年以上も経つレーザープリンタのには、そのような問題がでていないので環境が原因だとは考えにくい。結局、掃除もやっては見たものの、この紙詰まりは解消できなかった。 紙詰まりが起こると、カバーを開けて、詰まった紙を取り除くのだが、ほとんどの場合、電源をON/OFFしなければならない。そうすると受信していたFAXのデータも消えてしまう。これには非常に悩まされた。結局、通常は1枚だけ用紙をセットしておき、FAXの受信があったら、1枚ずつ手差しで印刷を行なうという原始的な方法をとるハメになった。 そうやって無理してLaserWindOffice 105W2を使っていたのだが、今年に入ってFAXまわりの整理を行ない、パソコンを設置する場所を確保。Windows 98パソコンと「LaserWindOffice 105W2」を接続し、画面で受信したデータを確認。必要に応じて印刷を行なったり、FAX送信先の電話番号を登録し送信の場合にもパソコンを使っての管理しようと考えた。 しかし、付属のCD-ROMから専用ソフトやドライバをパソコンにインストールしたのに、プリンタとしての機能が正しく動作しないのだ。印刷を行なうとプリンタバッファオーバーフローといったメッセージが表示され、用紙の数センチだけしか正常に印刷されず、それ以外はおかしな印刷が行なわれてしまう。 マニュアルをみると内蔵メモリを増設すれば解決できるとのことだったので、余っていた72ピンのSIMMを増設し、管理ソフトのステイタス情報でもきちんと増設されたことを確認。しかし、困ったことにそれでも現象は解決せず、パソコンを使った管理はあきらめるしかなかった。もちろんメーカーのページから最新のドライバやソフトをダウロードして、アップデートしようとしたが、それすらエラーになりできなかった。 これらのトラブルは製品の仕様を満たしていないものであり非常に不満がつのるものの、あまりにも酷い状態なので解決するためにパワーを向けるのもバカらしい。結局、現状でもパソコンを介在しない設定にしておけば給紙トラブルはあるもののFAX送受信はできるので、ゆっくりと次機種を検討することにした。
失敗に懲りもせず、またFAX複合機をいろいろ調べるにあたり、普通紙FAXであることは外せない条件のままだが、前回のトラブルが教訓となり、いくつか自分なりのチェック項目が見えてきた。 1番目は、給紙方式。現在、個人で手がだせるタイプの普通紙FAXのほとんどが手差しトレイとなっている。手差しトレイが給紙トラブルに直結するわけでは無いが、ビジネス向けのレーザープリンタやコピー機のように給紙の専用トレイを持っているのが使い勝手が良いと判断している。 2番目の条件は、筆者はパソコンを使って積極的にFAXに関する管理を行なう予定はないので、単体でもFAX専用機と同等なオペレーションができることだ。それ以外にも、Mac OSやWindows NT/2000、もうすぐ発売されるWindows MEといったOSでの印刷ができることも機種選択の条件に加えた。プリンタサーバーを接続しての印刷も、可能であればありがたいのだが、今回の機種選択では、それほどこだわりはもたなかった。 以上のような条件を考えたあと、とりあえず個人で購入できるパソコンからの印刷が可能で、FAXの送受信機能を持った機種という広い範囲で探してみると、実は検討するほど種類がないことが判明した。
しかし、そんな少ない選択肢の中、ラッキーなことに筆者の用意した条件をクリアする製品を発売しているメーカーが1社存在したのだ。それがミシンやパソコン周辺機器で有名なブラザー工業である。同社は、パソコンに接続できるラベルプリンタやレーザープリンタ、FAX専用機などの製品を発売しているが、国内ではそれほどFAXやプリンタのメーカーとしての印象は浸透していないのではないだろうか。しかし、海外でのFAXメーカーとしての知名度は高く、国内でも古くからパソコンに接続する周辺機器を手がけてきた老舗のメーカーでもある。 筆者の条件をクリアしていたのは、同社の多機能ファックスMFCシリーズだ。同社のWebページを参照すると、このシリーズには4機種ラインナップされている。その中から、給紙トレイを装備しているか否か、Macintoshからの印刷が可能かどうかという条件によって、比較的最近発売されている「MFC-8300J」(標準価格:99,800円、実売価格:8~9万円)と「MFC-9600J」(標準価格:160,000円、実売価格:12万円)の2機種に絞られた(ただし、Macintoshからの印刷はUSBポート経由に限定されている)。なお、どちらの機種にもWindows 2000用のドライバが公開されており、基本的にはどちらの機種を購入しても筆者のニーズは満たしてくれそうだ。 2機種は、プリンタエンジンは同じなので、印刷能力は変わらない。しかし、「MFC-9600J」にはカラースキャナ機能やビデオキャプチャ機能が付加されており、それにともない内蔵メモリが拡張されていたり、コピー専用機のように本体上部がフラットベットスキャナのようになっている。もちろん、実売価格も上位機種であるMFC-9600Jのほうが高く設定されていた。
この2機種のどちらかを選択するために、実際に設置場所の広さや高さを測ると、どちらも筆者宅には設置できるが、若干 MFC-8300Jのほうが余裕をもって設置できる。機能では、フラットベッドのようなスキャナ部分で可能になるカラースキャナ機能やコピー機能は一瞬魅力的に感じたが、よくよく考えるとA4サイズのコピーをとる機会は極めて少なく、ビデオ機器を接続してのビデオキャプチャ機能もまず筆者は使わないという結果に落ち着いた。その結果、筆者は「MFC-8300J」を購入することに決定した。
機種が決まると、早速西新宿の量販店に出向いたのだが、店頭在庫がないためメーカーからの直送となった。数日後には筆者宅にMFC-8300Jが届き、梱包をといて設置。いくつもボタンが並んだ上部パネルだけで、PCを接続しなくともFAX専用機と同じように扱えるため、LaserWind officeと比べ安心感が持てる。また、PCと接続しても、単純にプリンタとして機能させることができ、複雑な管理プログラムが必要になることもない。複雑な機能があっても、結局使わないままのことが多い筆者には、うってつけである。 カタログやブラザー工業のホームページでは細かな仕様が確認できなかったプリンタドライバの方も、プリンタ専用機のような複雑な設定項目は無いものの、筆者が必要とするようなページ割付機能や印刷解像度の指定は、きちんとサポートされており、まったく不満はない。実際に印刷を行なってみても、最高12ppmの印刷スピードは快適だし、印刷を行なっていない状態から印刷状態になるまでの時間も短い。プリンタとしても予想以上の満足度が得られた。 購入してから、いまだにiMac DV SEから印刷を行なう機会がないために、Macintosh用のドライバのデキは確認していないが、実際にそういう機会があったとしても、不満に思うことにはならないのではないかと感じさせてくれる。 現在MFC-8300Jは、パラレルポート経由でWindows 2000 Serverに直接接続されている。パラレルポートを選択したのは、iMacからの印刷が必要になった場合に備えてUSBポートを空けておくためだ。Windows 98 SEやWindows 2000 Professionalパソコンからの印刷は、このWindows 2000 ServerのMFC-8300Jを共有設定して、ネットワーク経由で行なっている。ここまでの環境が実現できると、これまで使っていたレーザープリンタも設置しておく理由がなくなり、知り合いのライター仲間に譲り受けてもらった。 既に、このMFC-8300Jを使い始めて数ヶ月経過しているが、これまでトラブルらしいトラブルに出会っていない。一度だけ紙詰まりがあったくらいである。その場合でも、受信したFAXのデータはフラッシュメモリに格納されている。そのため、電源を切っても喪失されることなく、電源を切って詰まった用紙を取り除いた後に、電源を入れると、何事もなかったように受信した内容が印刷された。 また、実際に利用する機会に出くわすかはわからないが、故障時はユーザーのところまで48時間以内に引き取りの手配が行なわれ、一週間以内に修理品を送り返してくれる「Service Express」といったアフターサービスも購入時のポイントとなった。必要とあれば、修理期間中に貸出機を用意してくれることが明記されているのも安心感がある。 このように昨年夏FAXが故障してから、数々の失敗や遭遇したトラブルは、このMFC-8300Jの購入によって、全て解消されてしまったのである。現在まで実際に使ってきてトラブルは皆無だし、筆者にとって必要なものは機能やアフターサービスなども含め全て装備されている。はっきりいって、MFC-8300Jは非常に満足度が高い製品である。単純にレーザーFAX機と考えても価格は安く、もっと広く注目されてもいい商品ではないだろうか。
□ブラザー工業のホームページ
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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