【ADSL活用編】OCN常時接続からADSLへの完全移行を目指す
前回書いたとおり、3月からNTT-MEのWAKWAK ADSL接続サービスを受けるようになった。初めて利用するADSLというインフラがどれくらい快適に使えるのか、またWAKWAK ADSL接続サービス自体の接続速度がどの程度確保されていくのか、多少不安があったが、サービス開始から2ヶ月近く経過した今でも、インターネットへのアクセスは相変わらず快適だ。 ちなみにWAKWAK ADSL接続サービスで割り当てられるIPアドレスは、グローバルIPアドレスが4つである。しかし、ADSLモデムなどでもIPアドレスが消費されるために、実際にユーザーが自由に使えるのは1つだけだ。もちろん、1台のパソコンでインターネットアクセスするのであれば、これで十分。しかし、筆者としてはインターネット上に公開するサーバーなどを実験するときもあるので、少なくとも2、3台のPCが外部からアクセスできるようになっていないと都合が悪い。 とはいうものの、一昨年から利用していたOCNアクセスラインから、コストパフォーマンスが極めてADSLへ環境を移行したい。そこで、この1カ月いろいろ試して確認作業を積み、最近なんとか移行できそうな見通しがたち、OCNの常時接続サービスの解約を申し込むことができた。今回はその顛末をレポートする。
まず最初の課題は、1個のIPアドレスをどのようにして複数端末で利用するかだ。最近はケーブルモデムを使ったインターネットサービスユーザー向けに、以下のようなEthernet to Ethernetで、NATやIPマスカレードを実現する機器が発売されている。しかし細かい使い勝手は、実際に触ってみないと分らないというのが本音だ。
この中には、超小型のPCとUNIXベースのOSを組み合わせて機能を実現しているものもある。それらの機種であれば、機器にログインして、設定ファイルを書きかえることで、NATやIPマスカレード、フィルタリングなどの細かい指定ができるのではないかと考えられる。しかし、価格が高い上、ログインして設定ファイルを編集するには、ノウハウが必要になるだろう。 そんなこともあって、Windows 2000 Serverでも立ち上げて、インターネット接続共有で実現しようかと思っていたところに、見つけたのが「The Linksys Instant Broadband EtherFast Cable/DSL Router(以下Cable/DSL Router)」だ。当時、国内では未発売だったので、個人輸入して手にいれたが、現在は、国内でも3万円台で購入することができる。 このCable/DSL Routerは、一見、HUBのような外見で、インターネット側に接続する10BASE-Tのポートが1つ、ローカルのLAN側に10/100BASE-TXのポートが4つ装備されている。このLAN側のLANポートはスイッチングHUBとして利用できる点も特徴だ。各種設定は、一般のダイヤルアップルータと同様にWebブラウザを使って設定を行うことができるようになっている。価格も安く、見た目のデザインにひかれて、細かい機能がわからないまま購入してみた。
しかし、実際に使ってみると、NATやIPマスカレードを使って複数台のパソコンから同時にインターネットアクセスができるのは当然のことながら、IPアドレスやポート番号でのフィルタリング、インターネットからのICMPブロック、インターネットからのアクセスをポート番号によりLAN側アドレスへフォワードといった一通りの機能は備わっていた。UNIXベースの製品を利用しているユーザーから見れば、細かな設定は行なえないと指摘されそうなレベルの機能ではあるが、とりあえず個人が簡単に一回線のADSLモデムやケーブルモデムを複数のパソコンで使うだけなら、十分威力を発揮してくれるだろう。 実際、筆者宅でのインターネットに向けてサーバーを公開する実験も、ポート番号によりフォワードできる機能を使って、常時数台のPCを運用しているが、今まででのところ回線によるトラブルは皆無だ。また、既に1カ月以上このCable/DSL Routerを稼動させているが動作も安定している。なお、使用中に、PPP over Ethernetに対応したVer.1.22のファームウェアにアップデートしたが、特に問題も起こらずに安定運用できている。 あまり実現を期待していかなかったOCNアクセスライン常時接続環境のADSLへの移行が、現実になったのもこの製品のおかげである。非常に満足している一品だ。 今後、WAKWAK ADSL接続サービスのユーザーが増えてきて、パフォーマンスがどれくらい保てるのかは予測できないが、とりあえず完全にADSL接続サービスに環境を切りかえる決心がついた。
このダイヤルアップルータの一番のウリは、後ろに装備された2つのPCカードスロットである。しかし、このPCカードスロットは、どんなPCカードでも利用できるわけではなく、MN128-SOHO Slotin側で対応したものでなければならないという制約がある。
一番最初にサポートしたのが、通信速度が2Mbpsの無線通信カード「MN128 SS-LAN Card」。その次にサポートされたのが「MN128 SS-LAN Card 10」だ。これは、「MN128 SS-LAN Card」の10Mbps版にあたる製品で、MN128-SOHO Slotinのver.1.10のファームウェアで利用できるようになった。MN128-SOHO SlotinにMN128 SS-LAN Card 10を増設しておけば、MN128 SS-LAN Card 10からもMN128 SS-LAN Cardからもアクセスすることができ、いままでの投資が無駄にならないのがありがたい。 筆者も、今年初めは「MN128 SS-LAN Card」を使って無線LANを利用したインターネットアクセスを楽しんでいたが、一度無線LANの快適さを体験してしまうと、インターネットアクセス以外にも、ファイルのやり取りや印刷などでも頻繁に利用するようになる。そうなると、2Mbpsの速度は物足りない。そのころ、登場したのが10Mbpsをサポートした「MN128 SS-LAN Card 10」、早速MN128-SOHO Slotinのファームのバージョンアップを行ない10Mbpsでの無線LAN環境を手にいれた。 実際に2MBのファイルを転送するのにかかった時間は、2Mbpsの無線通信カードを使った場合に約16秒、10Mbps版で約6秒程度と1/3近くに短縮された。この速度であれば、無線LANをファイルアクセスや印刷などの普段の作業でも十分快適に利用できるという印象だ。また、MN128-SOHO SlotinにMN128 SS-LAN Card 10を増設しておけば、これまで使っていたSS-LAN Cardからもアクセスすることができるため、頻繁には使わないノートPCなどに挿している。 しかし、SS-LAN Card 10が全ての面において優れているとわけではなく、消費電力や通信距離が異なっているので注意が必要だ。2Mbps版が送信時700mA、受信時350mA、スリープ時80mAであるのに対して、10Mbps版は送信時870mA、受信時450mA、スリープ時190mAとなっている。また、通信距離も2Mbps版は野外見通し100mが送受信範囲であるのに対して、10Mbps版は50mとなっている。
さらに、SS-LAN Card 10は、AirMacなど他社の無線LAN製品との互換性がない独自仕様になっている。これは世間にあふれている無線LAN製品からアクセスできないという、セキュリティにもなるが、筆者宅のようにノートPCがWindows 98だけでなく、Windows NTやWindows 2000、Windows CEといった種類が存在する環境では、不便だ。そのため、近々IEEE802.11bに対応し、AirMacやWindows 2000、Windows CEでも使えそうな無線LANの機器の購入を検討している。
今回のアップデートで、個人的に最もありがたいと感じたのが、モデムカードのサポートだ。筆者は電話回線を使ってのリモートアクセス環境があるのだが、アナログモデムからのリモートアクセスを実現するためだけにマイクロ総合研究所のルータ「NetGenesis Dual」とアイワのアナログモデム「PV-BW5605」を利用している。今回のアップデートにより、モデムカード一枚をMN128-SOHO Slotinに増設するだけでこの機能を実現できるのだ。また、幸運なことに筆者宅には、インターネットオークションで安価に落札したTDK DF5633ESがあり、これがそのまま利用することができる。 早速、最新ファームウェアやユーティリティ、マニュアル一式をダウンロードして、MN128-SOHO Slotinをアップデート。MN128-SOHO Slotinの後ろにTDKのモデムカードを挿し、モデムカードのケーブルをそのままMN128-SOHO Slotinのアナログポートに挿しこみ、FAXも別のアナログポートに接続する。そして、それぞれのアナログポートに受信する電話番号などのアナログポートの設定、RASのための着信設定を行ない、別な電話回線からそれぞれの番号に掛けて、着信することを確認した。ちなみに、現時点でサポートされているのはTDKのモデムカード、NTT DoCoMoのPHSカードだけであるが、MN128-SOHO Slotinの設定画面の中では、ATコマンドを指定することもできる。そのため、知識がある人なら、他のカードでもATコマンドを直接記述して、稼動させることができると思われる。 現在、筆者宅ではネットワークからNetGenesis DualとPV-BW5605を取り外して、MN128-SOHO Slotinのみでテスト運用を行なっている。しかし、まだファームェアを更新してから数時間しかたってないので、どれくらいの安定性で動作するかはわからない。とはいえ、この結果しだいでは、2つの機器を整理することができるため多少なりともスペースが広がる上、機器が減ればトラブル時の問題も発見しやすくなるはずだ。
今回のアップデートで、PCカードスロットを持つMN128-SOHO Slotinのメリットがさらに増したわけだが、今後もサポートされるPCカードが増えて、他社の無線LANカードやNICを利用した新機能を取り込んでいってくれることを期待したい。
□「Instant Broadband EtherFast Cable/DSL Router」の製品情報
[Text by 一ヶ谷兼乃] |
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