~ '99年の最も満足度の高い買い物「Jornada 690」 ~
個人的には、あまり注目していなかったWindows CEマシンだが、筆者のまわりのライターが実際に使っているところを見かけたり、強力なプッシュもあって、徐々に興味を持つようになってきた。しかし、昨年末までは、購入するキッカケを与えてくれる製品に出会うことはなかった。 自分の購入欲をかきたててくれる条件とは、まず小さいこと、画面がカラーであること、打ちやすいキーボードを装備していることだ。動作速度に関しては、実際にWindows CEマシンを使用していないため、どの程度の速度で満足するものなのかわからないので、それほど気にならなかった。最後は、Windows CEマシンが、どの程度実用になるのかというのが、ポイントとなっていた。 これらの点で、Windows CEマシンが「実用になるのではないか?」と感じたのが、昨年秋のCOMDEXである。同行したライターの法林氏が、HP(ヒューレット・パッカード)のJornada 680を持っており、会場のプレスルームなどで、メールチェックを行なっていたのを見て、メール端末としては「使えそうだなぁ」と実感したのだ。 今までイメージしていたものよりも小型、軽量で、これだったら、持ち歩きOKだなと確信。いろいろ質問していると、近いうちにJornada 680の後継機種が出てくるのではないかという。そして実際に11月15日、日本HPから「Jornada 690」(138,000円)発売のアナウンスが行なわれた。
Jornada 690は、ハードウェアとしてはJornada 680から標準搭載メモリが16MBから32MBに拡張されたという違いしかなく、その他はほとんど同じものである。添付されているソフトウェアなどに違いがあるものの、ハードウェアの違いは内蔵メモリ部分だけと考えていいだろう。他のWindows CEマシンを触ったことがあっても、使ったことがないので、他機種と比べてどこが優れているのかは伝えられないが、筆者にとってJornada 680/690は、購入に値するクオリティを持った製品であることは確かだ。 そこでJornada 690の発売日に、新宿のショップに連絡をして在庫を確認したところ、「前日入荷して、売りきれてしまった」というショップもあった。しかし、なんとか在庫のあるショップを探し出し、取り置きをお願いして、発売日に購入することができた。 同時にWindows CEマシンのストレージとなる64MBのコンパクトフラッシュとWindows CE対応のネットワークカードも手に入れた。Windows CEには、内蔵HDDというものはなく、内蔵メモリやフラッシュメモリ、コンパクトフラッシュが、マシンに内蔵されたストレージメディアとなる。実際にアプリケーションの動作などで使われるメモリ領域は内蔵メモリを利用するために、内蔵メモリが多いほうが有利である。また、コンパクトフラッシュやフラッシュメモリよりも内蔵メモリのほうがアクセス速度が速いので、ストレージとしても内蔵メモリが有利となる。 とりあえず、購入したJornada 690にコンパクトフラッシュを搭載し、電源を入れた。が、Windows CEを使ったことがないので、どこから手をつけていいのか分からない。そこで、近くに居合わせたWindows CEユーザーに、疑問に感じたことを、片っ端から質問。なんとかWindows CEの雰囲気だけは感じ取ることができた。 その後は、Windows CEやJornadaに関するWebページをチェックしたりして、必要なツールやオンラインソフトを集める日々が数日続いた。ツールやオンラインソフトは、目に付いたものからどんどん試してみて、自分の環境に合うものをチョイス。Windows CE対応のオンラインソフト自体、それほど数がないので、手当たり次第に試してみるという芸当ができた。数日後には、いろんなページで評判のいい「Pocket WZ EDITOR」(6,800円)と「ATOK Pocket」(6,800円)も購入して、なんとか自分で納得のいく環境が構築できた。
P-inは、Jornada 690に挿しこんだだけで認識され、通信を行なえた。しかし、数時間いろいろと試しているうちに、うまく発信できなくなってしまった。色々なソフトをインストールして、ストレージも散らかっていたこともあり、完全に工場出荷状態まで戻し、必要なソフトだけインストールし直して、再度環境を整えた。それ以降は、今日までPHS絡みでの問題は発生せず、安定している。
最終的に筆者の環境は、スケジュールやアドレス帳は「Pocket Outlook」で、ブラウザは「Pocket Internet Explorer」、メーラーはPocket WZ EDITOR付属の「Pocket WZ MAIL」、エディタはPocket WZ EDITOR、IMEはATOK Pocketという構成になった。それ以外は、オンラインソフトのアーカイバなどをインストールしている。 セットアップした環境は、想像以上に快適。電車やバスの待ち時間や乗車の間、食事や喫茶時、歩いて移動中などに、いつでもメールチェックができる。実際、傘をさしたりしてなければ、毎日のように歩きながら快適にメールチェックを行なっている。さすがに歩きながら、メールの返事を書くことはできないが、立ち止まっているときや、座っているときなら、快適にキーボードを打って返事を書くことができる。 本格的に持ち歩くようになってからは、むき出しで持ち歩くと傷などが気になるために、Jornada 690用の皮ケース「本革ボディースーツ」(5,100円)も購入した。最近は、毎日欠かさず持ち歩いている。
次に、起動してすぐや、サスペンドからの復帰時に、コンパクトフラッシュへのアクセスが極めて遅いということがある。また、コンパクトフラッシュ側にインストールしているファイルのアイコンが正しく表示されないこともある。ただ、そのまま5分程度使っていれば、「遅さ」は解消されるために、致命的とまではいかないが、画面を開いてすぐには快適に使えないというのは気になるところだ。そのため、頻繁に使うアプリケーションは、内蔵メモリのほうにインストールしている。 もう1つは、付属のACアダプタが大きいことだ。本体といっしょに持ち歩くのが嫌になるくらい重いし、大きいのである。これは、秋葉原のイケショップで販売されている小型のACアダプタ(販売価格3,980円)を購入することで解決することができた。このACアダプタは、手のひらにのるほどの大きさで、非常に気に入っている。純正のACアダプタは入力電圧の範囲が広く、容量も大きいといったメリットがあるが、都内の出先でちょっと取り出して、充電するといった使い方には小型のほうが便利だ。それ以外にも、様々な問題点はあるものの、筆者の利用方法では、それほど気にならない。 良い点の一番は、やはりそのサイズだ。電車内やホームで取り出して使うには、Jornada 690よりも大きいと使いづらいのではないだろうか。筆者にとってのモバイル環境では、ベストに極めて近いサイズである。 次に良い点は、キーボードである。非常に打ちやすい。個人的な好みもあるが、筆者の持っている他のB5サイズPCよりも快適である。名機HP 200LXと同様に適度に腰があり、間違ってキーを押してしまうことがなく、確実にタイピングを行なうことができる。3番目は、電池での駆動時間。出先で少しメールチェックをする程度なら、2、3日は利用でき、筆者の使い方では十分な容量を持っている。それに、Jornada 690固有のメリットではないが、いつも使い慣れたWindowsインターフェイスで操作できる点や、Windows PCと接続してWindows PCのデスクトップからWindows CEマシンのストレージを操作できるところ、ActiveSyncでWindows PCのOutlook 2000と同期がとれる点も、有りがたいものだ。
ただし、環境を作り上げるための費用は、Windows機と比べてもそれほど安いものではない。デスクトップPCなら1セット購入できる金額であるし、あと5万円ほど積めばアプリケーションを満載した最新ノートPCが手に入れられる。それを考えると、なかなか全てのユーザーにお勧めできるとは言えないが、価格以上のメリットを感じられそうな人であれば、Windows CEマシンも検討してみても良いだろう。ただ、Windows CE自体の問題もいくつか残されており、マイクロソフトの対応を今以上に期待したいところである。 細かな不満点はあるものの、筆者にとってHP Jornada 690は、'99年内で最も満足度の高い買い物となったことは間違いない事実である。
□日本ヒューレット・パッカードのホームページ [Text by 一ヶ谷兼乃] |
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