~ 見れば見るほどカッコイイ「iMac DV Special Edition」 ~
昨年、初代iMacの情報が流れ始めると、筆者の周辺でも頻繁に話題にのぼるようになった。個人的にもMacintoshは数台所有し結構使っていたが、iMacに関しては単に「インターネットにアクセスすることもできるインテリア」程度の認識であった。しかし、実際に発売初日に購入するとデザインがかわいいのはもはもちろんだが、想像以上に高速で快適だったので、かなり満足した。また、購入前にもiMacを置いて様になるテーブルを探して、楽しい気分が味わえた。 しかし数週間もたつと、結局iMacはリビングの置物となってしまった。メインマシンが自作のWindowsマシンであることに加え、iMac以外にもPower Macintosh G3を使っていたのが原因である。今でもMacintoshで行なう作業は、ほとんどPower Macintosh G3で行なっている。 その後、iMacはマイナーチェンジされて、ビデオチップが変更されたり、ビデオメモリが標準でフル搭載(6MB)された。このマイナーチェンジ版も、どの程度性能が向上するか知りたくなって、買っては見たものの、結局それほど使われることはなかった。また、初代のiMacのメザニンスロットにSCSIホストアダプタを増設することで、CD-Rライティング用として使う機会は増えたものの、“活用している”というほどには至っていない。 こういった経緯もあり、今年の春に、今秋に新しいiMacが登場するという噂が流れても、まったく気にならなかった。
まず目に留まったのが外観である。元々トランスルーセントであったボディが、より透明度を増した。新色のグラファイトにいたっては、完全に“クリア”なのである。Web上の写真を見たときには、電磁波の問題を考えれば、実機でシールド板が取り除かれて、ここまでスケてるとは信じてられなかった。 次に注目したのが、iMacでもっとも不満があったスピーカーが、なんとあのハーマンカードンデザインになっていることである。国内ではあまり知名度の無いブランドではあるが、個人的にはJBLやBOSEといった有名ブランドよりも、数倍気に入っているブランドである。その他にも、CPUが400MHzに強化されたり、ファンレスになったり、DVD-ROMを搭載していたり、新iMacは知れば知るほど非常に気になるマシンになった。 もちろん、これだけ気になるマシンになってしまったのだから、国内で急遽開催されることになったMacOS 9と新iMacの発表会に駆けつけた。そこでは、新iMacのスペック、国内での販売価格、発売時期などが正式に伝えられたほか、当然のごとく新iMacが展示されていた。この展示機をみて、Web上で見たグラファイトの透明度が現実であることを確認することができた。
発表会場で、聞いて・見て、自分が期待していたパソコンであるということがわかり、発表会のすぐ後に予約を行なっているショップを探して、すぐさま注文したのはいうまでもない。
購入理由としては、もちろん魅力的な新iMacを触ってみたいというのもあるが、メインで使っていたPower Macintosh G3とiMacから、まとめて新iMacに移行したいという目的があった。iMac DV Special EditionはPowerPC G3 400MHz、容量13GBのHDDを搭載している。このスペックであれば、現在行なっているMacintosh上での作業を十分処理できるだけの能力がある。また、部屋にあるパソコンの数を減らせるという、とてもありがたいメリットもある。先に発売になったPower Mac G4も価格性能比に優れているので、検討しなかったわけではないが、あの筐体の大きさが、購入にストップをかけた。 今回発表されたiMac、iMac DV、iMac DV Special Editionの3モデルあるが、その中からiMac DV Special Editionを選択したのは、いくつかの理由がある。まず、色である。既に発売されている5色は見慣れてしまったため、新色のグラファイトに新鮮さを感じた。また、これまでのどのパソコンにもなかった、透明度の高いボディには非常に興味がある。 次に搭載メモリである。iMac DVには64MB、iMac DV Special Editionには128MBのメモリが標準で搭載されている。メモリは旧iMacのSO-DIMMではなく、今回は168ピンの標準サイズのDIMMでメモリを搭載するようになっている。DIMMスロットの数は2つしかないため、後々メモリ増設のことを考えると標準で搭載されているメモリ容量の大きいほうがメリットがある。 その他にも、内蔵HDDの容量が13GBと3GB大きく、HDDは容量が大きくなるにともない高速になる傾向があるため、読み書き速度も若干向上しているのではないかという期待もあった。
18日になると、またショップから「23日に入荷予定だが、確実な入荷が決まり次第再度連絡を入れる」といった電話が入った。さらに直前の22日になると3度目の連絡があり、「予約したiMac DV Special Editionは、明日入荷します」ということで、一安心した。しかし、発売初日である23日を迎え、予想すらしていない4度目のショップからの連絡が入った。 それは「今日は入荷しなかったが、月曜に入荷する予定であるという」内容であった。このショップで、予約リストの1番目に名前を連ねていることは、以前確認済みであったので、「1台も入荷しなかったの?」と確認したところ、展示用の1台だけしか入荷しなかったというのだ。 このように頻繁に連絡を入れてくれるショップは、ユーザーにとっては、ありがたい限りであるが、どうもメーカーサイドの情報にユーザーやショップが、振り回されているとしか考えられない。そうだとすれば、iMac DV Special Editionの納期に関してのメーカーからの情報「月曜日に入荷する予定」は、まったく信憑性を感じない。そのため、無理を言って、その展示用に入荷した1台を購入させてもらった。 そのあと気になって、いくつか他のショップの情報を集めてみると、23日に手に入れられなかったユーザーが相当数いることが確認できた。少量でも出荷を行なえば出荷開始になるのであるが、発表会のときにアップルコンピュータの原田社長が「全ての機種は10月16日に発売しますと」正式な発表したのに、発売日直前になっての発売日延期、それに加えて今回のような出荷状況を体験してしまうと、ユーザーとして納得しきれないものを感じる。魅力的な製品を提供しているだけに、非常に残念に感じているのは、私だけではないはずだ。ちなみに、発表会当日に、旧iMacの価格変更などは予定をしていないとの発言もあったが、数日後には旧iMacの価格引き下げが発表された経緯にも、筆者は疑問を抱いている。 この件だけでなく、iBookの出荷、Power Mac G4の仕様変更など、最近のアップルコンピュータに関しては、熱心なAppleファンを含む既存ユーザーが頭を抱えてしまうようなことが多すぎるのではないだろうか?
実際に、届いたiMac DV Special Editionはやはり、見れば見るほどカッコいいのである。極めてクリアなスケ具合には、惚れ惚れしてしまう。筆者の廻りでは、中身が見えてミジンコみたいだとか、丸見えで下品だという意見もあるが、個人的には初代iMacを購入した時以上に満足感を得ている。
今回のiMacでは、メモリの増設が極めて楽になっているのも特徴だ。これまでは、ドライバーを使って、ネジを抜き、コネクタを外し、メインユニットを抜き、SO-DIMMを増設し、元のように組み立てなければならなかった。新iMacは、底面にある蓋のロックをコインで外して、開ければ、そこにメモリ増設とAirPort用のスロットが現れるという簡単さだ。 標準搭載されているDIMMは、168ピンの128MBでHYUNDAIのシールが貼ってある。どうもHyundai Electronics Industries製のようで、搭載チップはPC100仕様のSDRAMであるHY57V658020B TC-10Sである。DIMMスロットは2つで、このDIMMが既に1つに挿さっているために、空スロットは残り1つ。このスロットに、PC/AT互換機で使っていたPC-100仕様のSDRAM DIMMを増設してみたところ、そのまま認識して動作した。
自宅のLANに接続し、ネットワークの設定を行ない、これまで使っていたPower Macintosh G3から、一通り必要なファイルを転送し、インターネット環境などを整備。PowerPC G3プロセッサの400MHzを搭載する、このiMacは想像以上に高速で、Power Macintosh G3で行なっていた作業がこれまで以上の快適さで行なうことができた。 速度以上に驚いたのは、内蔵スピーカの音の良さである。パソコンに内蔵されていることや、スピーカーが小さいという悪条件を考えると、非常に高品質であるといってもいいだろう。これまでのiMacに内蔵されていたスピーカーの音は、はっきりいって悪かった。最も気になっていた点のひとつが、予想以上の改善されているのには、ほくそ笑んでしまった。
他にもいくつか驚かされた点があるが、最も評価したいのが動作音の小ささである。極めて静かなのだ。冷却用のファンを搭載していないために、操作中は「カラカラ」と小さなHDDへのアクセス音がするだけだ。DVD-ROMドライブにCD-ROMやDVDビデオのディスクを入れても、それほど動作音が大きくないのもうれしい。ただし、MPU自体はこれまでよりも高速になっているため、旧iMacと比べて、本体が熱くなる。本体が熱くなるということは、内部の各部品の放熱が上手くされているということなのだろうが、ちょっと気になるところだ。 そのほかに、知っている範囲で改善点を列挙してみると、本体横にあったコネクタ部の蓋がなくなった、リセットスイッチがちゃんしたボタンになった、今回は試すことができなかったがUSB機器から起動できるようになった、起動時にOPTIONキーを押して起動デバイスを選択できるアイコンが表示されるようになった。さらに、2個のFireWireポート、外部モニタ端子などが装備されて拡張性が向上したことなどである。また、スリープ時に電源ボタンがスヤスヤ寝息をたてているように点滅するという、かわいらしい改善点もある。
DVD Videoの再生に関しては、ソフトウェアデコードながら、コマ落ちのない再生が可能である。Windowsマシンでのソフトウェアデコーダと比べてもひけをとらないレベルである。しかし、個人的にはあまり使わない機能だ。それは、DVDビデオは専用プレーヤーのほうが綺麗な画質で鑑賞できるので、パソコンでの再生に関しては、あまり前向きな意見を持っていないからだ。
パソコンの低価化が急速に進んできているために、格安なイメージは無いにしても、画面の物理的な大きさといったサイズ的な部分以外では、初心者から上級者まで満足できる製品に仕上がっている。確かに、Power Mac G4などと比べると拡張性が劣るが、個人的には2個のUSBポート、2個のFireWireポートがあれば、それほど困ることがないという判断をしている。 また、動画編集ツール「iMovie」をはじめとした、様々な魅力的なアプリケーションが標準搭載されている点も見逃せない。今回はまだ使用時間が短いためアプリケーションの評価は見送ったが、発表会会場でのデモを見る限りでは、iMovieは操作も簡単で、それだけでもiMac DVを買う価値を十分感じることができた。今後、標準搭載されているアプリケーションを使う機会が増えれば、より新iMacの評価が高まっていくに違いない。 今まで書いてきたように、新しいiMacは非常に魅力的なマシンである。それだけにアップルコンピュータの発売にともなう一連の不手際が、残念に思えてならない。
□アップルのホームページ [Text by 一ヶ谷兼乃] |
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