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一ヶ谷兼乃の

~ 純正のCPUクーラじゃ満足できない「アルファ P3125SM60」 ~


■純正クーラじゃ、なんとなく不安……

 現在、秋葉原のPCショップに行くと大きく分けて2種類のCPUが販売されている。1つはバルク版と呼ばれるCPU単体が剥き出しで販売されているもの、もう1つはパッケージに入って売られているリテール版である。リテール版には純正のCPUクーラが付属していることが多く、価格もほとんどの場合バルク版とクーラを別々に購入するよりお買い得になっている。

 そこで、久々に純正CPUクーラを装着したPentium IIIやPPGAタイプのCeleronをメーカー規定の動作周波数で使ってみたところ、CPUクーラのヒートシンクが想像していた以上に熱を帯びた。ヒートシンクが熱を帯びているということは、CPUからCPUクーラに熱が移動していることに他ならないが、やはり純正CPUクーラ自体の温度が気になる。指で触れない温度でもないので、実際の動作には影響はないはずだが、ちょっと気になる出来事であった。

 そういったこともあり、なんとなく純正のCPUクーラに不安を感じて、Pentium IIIに装着するSECC2用と、PPGAタイプCeleronに装着するSocket 370用2種類のCPUクーラを購入してみた。


■価格と性能でアルファ

 秋葉原のPCショップに行くと、様々なCPUクーラが発売されている。その中でも廃熱効果が高いことで絶大な人気を誇っているのがエヌ・ワイ情報通信のBlizzardシリーズである。これは、一般的にCPUクーラに使用されるアルミよりも熱抵抗の低い銅を使ったCPUクーラである。

 ラインナップも非常に多く、特にSECC2用の製品にはL2キャッシュチップも廃熱する構造になっており、まさしくオーバクロッカー御用達といってもいい製品である。しかし、性能的には申し分ない製品なのだが、銅製ということもあってか他社の製品に比べて高価であるのがネックだ。Blizzardシリーズの性能は非常に魅力的であるものの、今回は装着するCPUを極度なオーバークロックで使用する予定がないために、価格だけのメリットを生かしきれないと判断して別な製品を探すことにした。しかし、なかなか気分的にコレというものが見つからないのである。

 まず価格の上限としては、1個あたり5,000円程度をイメージした。今回、SECC2用を2個、Socket 370用を2個購入する予定だったので、合計で20,000円程度ということだ。それとSECC2用はL2キャッシュの廃熱まで考慮したデザインのものという条件で製品を探してみた。

 そうすると、アルファのCPUクーラ以外の選択肢が見つからなかったのである。アルファはヒートシンクメーカーとして実績のあるメーカーで、そのホームページを見るとわかっていただけると思うが様々な形状、機器のヒートシンクを製造している。CPUクーラは、その中の1分野となるわけだ。同社のホームページに各製品の性能表をチェックしてみたところ、より高価な製品と比べても遜色のない値が記されている。ということで価格と性能を考慮すると、最も自分の希望に沿ったCPUクーラであるという結論に達した。

 「PFH6035MUC」の内容物。ヒートシンク、インテークカバー、ファン、ビス類、電源コネクタ、ドキュメント  「P3125SM60」の内容物。ヒートシンク、インテークカバー、ファン×2、ビス類、電源コネクタ、ドキュメント、グリス
 実際に購入したのは、SECC2用にデザインされた「P3125SM60」(直販価格5,760円)とSocket 370用にデザインされた「PFH6035MUC」(同3,180円)の2種類。この2つの製品はどちらもヒートシンク、インテークカバー、ファン、グリース、ビスなどがセットになっており、これだけでCPUクーラとして機能する。アルファでは、これらのパーツがバラバラでも購入できるため、ファンは別なものを使いたいといった利用方法も可能である。

 ファンの電源ケーブルの先につけるコネクタのキット。これを取り付けるのが面倒
 購入はアルファのページのオンラインショッピングを利用した。納期も短く、週末を挟んだにもかかわらず翌週には手元に届いた。P3125SM60、PFH6035MUC共にCPUクーラとして利用できるパーツのセットになっているだけで、実際に利用するには組み立てる必要がある。これが意外に手間のかかる作業で、特にファンのケーブルに電源コネクタをつける作業は時間をとられてしまった。


■工夫が凝らされた「P3125SM60」

 早速、購入したのはいいのだが、必要に迫られて純正のCPUクーラと交換したのは、SECC2用のP3125SM60だけ。Socket 370用に購入したPFH6035MUCは、Celeronを搭載したサブマシンに利用する予定であったが、サブマシン自体が本格的な稼動が必要となっていないため、まだ装着していない。ただ、読者のなかでPFH6035MUCのような底面積の大きなCPUクーラの購入を検討している場合には、自分のマザーボードで利用できるかどうかを事前にチェックすることをおすすめする。マザーボードによっては、CPUソケットの周りに数多くの電解コンデンサがレイアウトされているために、それらが物理的な障害になり、CPUに装着できないことがあるためだ。PFH6035MUCもSocket 370よりも面積の広いサイズなので、組み合わせるマザーボードによっては利用できない機種が存在してもおかしくない。

PFH6035MUCをPentium IIIに装着したところ。かなりがっしりした作りだ

PFH6035MUC。ヒートシンクが6角柱になっているのが特徴的だ

 P3125SM60を見て、まず目に止まるのが、CPUと触れる部分が銅になっているところだ。この部分を銅ヒートスプレッダーといい、周りのアルミ部分とは金属的な接合となっており、大幅な放熱特性の向上が計られているらしい。性能が良くなっている点ももちろんうれしいが、個人的にはアルミと銅のハイブリッドであるというコトだけで、モノとしての魅力を感じる。

 また、ヒートシンクのCPUパッケージ上に配置されたL2キャッシュチップ部分に穴が空いているのも特徴だ。これは穴を空けることで、空気の流れが発生し、L2キャッシュチップの熱を奪う働きがある。L2キャッシュチップに直接ヒートシンクが触れているわけではないが、冷却効果が期待できそうである。

P3125SM60のPentium IIIに接する面は、銅とアルマイトのハイブリッドとなっている L2キャッシュモジュールの位置には穴が開いている。この穴で空気の流れを作りチップを冷却する構造だ


■その実力は?

 さて、そこでこのP3125SM60を使った場合、どの程度のメリット、デメリットがあったかを述べておこう。P3125SM60を装着したのはリテールパッケージ版のPentium III 550MHz。マザーボードは、ASUSTeKのP3B-Fである。まずデメリットとしては、DIMMスロットが1本利用できなくなった。Slot 1ソケットとDIMMスロットの距離によっては、CPUクーラがDIMMスロットにかぶさってしまい、いくつかのDIMMスロットにメモリを増設することができなくなるのだ。しかしP3B-Fに装備されている4つのDIMMスロットを全て利用する予定はなく、現在でも128MBのDIMMを2枚装備しているだけなので、実際に不便を感じることはない。

 メリットは、しっかりした作りのいかにも冷えそうだなというCPUクーラを装着しているという安心感である。筆者の環境では、550MHz動作のPentium IIIをベースクロック120MHz程度で動作させるだけではあるが、メインで使用しているマシンだけに安心感が重要なのだ。

 さらに、実際にこのCPUクーラによってどれくらいCPUの温度が下がっているのかチェックしてみた。ただし、あくまで筆者のマシンでの値なので、参考程度にみてほしい。3.3V系の電圧は3.65V、CPUのコア電圧は2.0V、Pentium IIIはFSB100MHzの5.5倍動作で、CPU温度の測定にはP3B-Fに付属のPC-Probeを使用した。550MHz動作のPentium IIIに純正CPUファンを装着して、オフィスアプリケーションを使ったり、インターネットアクセスを行なったり、各種ベンチマークソフトなどを使ってみたりと、いろいろなプログラムによってCPUに負荷をかけてみたところ43度から53度まで変化した。CPUクーラをP3125SM60に変更した場合には35度から42度という変化幅であった。想像以上の効果である。購入したままのPentium IIIに装着したのだが、CPUクーラと接する面を研磨するなどの加工を施せば、さらなる冷却効果が期待できるはずだ。

 アルファのCPUクーラは決して低価格だとはいえないが、期待できる冷却効果を考えるとコストパフォーマンスは高い。ヒートシンクの専業メーカーというブランドイメージも良く、お奨めのCPUクーラだ。

□アルファのホームページ
http://www.micforg.co.jp/jp/indexj.html
□「P3125SM60」の製品情報
http://www.micforg.co.jp/jp/c_p3125_shop.html
□「PFH6035MUC」の製品情報
http://www.micforg.co.jp/jp/c_pfh_shop.html

[Text by 一ヶ谷兼乃]

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