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一ヶ谷兼乃の

ハイコストパフォーマンスなWindows CE機

ゼロハリバートンの「シグマリオン」は完成度高し!!


■メモらなくても、Windows CEでモバイルインターネット検索

 インターネットがすっかり身についた生活をおくっていると、ほとんどメモをとらない悪い習慣が身についてしまった。というのも、インターネットの各種検索エンジンで検索して、その結果リストのURLにアクセスすれば情報が載っているので、いちいち情報をメモする必要がないからだ。

 そうやって、いったん身についた悪癖はなかなか抜けないもので、それを補うためにWindows CEマシンを使っているといっても過言ではない。もちろん、Windows CEマシンを持ち歩く理由には、戸外でのメールチェックといった理由もあるのだが……。

 そんな筆者がこれまで愛用してきたのが、Windows CE Handheld PC Professional Edition Version3.0(以下、H/PC Pro)を搭載する、ハーフVGAの画面にキーボードがついたWindows CEマシン「HP Jornada 690」だ。本体にはCFスロットと、Type2のPCカード用スロットを装備。通常、CF用のスロットには、CFメモリを入れてストレージとして利用し、PCカードスロットにはEthernetカードや、PCカードタイプのPHS、携帯電話通信アダプタなどを使い、Jornada 690を活用している場合が多い。

 Windows 98マシンと比べても、アプリケーションの選択肢の幅が狭いなどのプラットフォームの相違による根本的な部分以外では、さして不都合を感じることなく今までJornada 690を利用してきた。あえて不満点を挙げれば、動作が遅いこと、液晶画面に表示ムラが感じられることろだろうか。しかし、Jornada 690の特徴であるサイズや機能、入力しやすいキーボードなどによって、これらの不満を実感することは少ない。

 このように、Jornada 690は初めて購入したWindows CEマシンだったのだが、満足度が高く、ほかのWindows CEマシンに興味を持つことはほとんどなかった。

 しかし、最近になってWindows CE 3.0をベースにしたHandheld PC 2000(以下、H/PC 2000)対応のWindows CEマシンが発表されてきたこともあり、買い替えを検討し始めていた。


■そして、突然発表されたシグマリオン

 その矢先に、NTT DoCoMoからWindows CEをベースにした「sigmarion(シグマリオン)」が発表された。シグマリオンは、大きさがJornada 690並のコンパクトサイズで、カラー液晶、32MBの内蔵メモリを搭載。キーピッチ14.1mmとJornada 690よりも広いキーボード。など、大いに気になる仕様を持ちながら、さらに標準価格が59,800円という低い設定になっている点も注目される。

 早速、ケータイWatchのコラムでもお馴染みの法林氏に、この製品について色々相談してみた。そして、筆者がたどり着いたのは「概ね私のニーズを満たす製品であるが、拡張スロットとしてCFスロットが1つだけであることがネックになるのではないか」という結論だった。

 しかし、この唯一ネックになりそうな拡張スロットの少なさも、よく考えてみればJornada 690でもあまりアプリケーションをインストールせずに使っていることもあって、「内蔵の32MBだけで十分足りるのではないか?」という気もしてくる。

 こうなると、実際に触ってみたい欲求が抑えられず、結局近所の量販店に予約を入れてしまった。予約したのは、法林氏の強い薦めにより、ゼロハリバートンのケースがセットになった限定版である。

 発売日の前日になると、予約した販売店から「入荷してますが、明日からの販売になります」との連絡があり、結局発売日に購入できた。発表されてから発売日(9月20日)までの期間が2週間と短かったこともあって、早く触ってみたいという欲求が冷めないうちに実機を手にすることができた。本体の購入時にオプションとなるPC接続ケーブルも同時に購入しようと思っていたのだが、取り寄せになるということで、その場で予約。その甲斐あってか、品薄のPC接続ケーブルをその2日後に手にいれることができた。

上がJornada 690、下がシグマリオン。横幅はほぼ同じであるが、シグマリオンのほうがバッテリの分だけ奥行きが長い
 早速自宅に持ち帰り開梱。シグマリオンを手にしてみると、Jornada 690を使っていたため、想像していたものよりも若干大きい感じを受ける。実際にJornada 690と並べてみると、シグマリオンのほうが後部バッテリの分だけ大きい。しかし、それ以上に大きく感じさせたのはデザインや色によるものと思われる。ただ持った感覚は、シグマリオンのほうが軽い。実際、30g程度軽いのであるが、それ以上の軽さを感じる。

 早速画面をタップしたりちょっと触ってみると、シグマリオンの軽快さが、すぐに体感できた。Windowsキーを押して、スタートメニューが表示されるときのスピードが速いというか、表示のキレが違うのだ。触った瞬間感じるほどに、操作感に差がある。また、液晶画面はにじみ感やムラがなく、明るくとても見やすい。キーボードも浅いストロークながら、適度なクリック感があり、快適なタイピングを行なうことができる。

 たった、5分ほどシグマリオンを操作すると、逆に今まであまり実感していなかったJornada 690の不満点が鮮明になってしまった。こうなってしまえば、もう持ち歩くインターネット環境を、Jornada 690からシグマリオンに移し変えなくてはならないと思い、周辺機器も揃えることを決意した。

ACアダプタ。左からJornada 690純正、シグマリオン純正、ジョルミニ。Jornada 690純正だけが230V圏でも使用できるワールドワイド仕様になっている
 また、純粋な使い勝手といえないかもしれないが、付属のACアダプタが小さいこともありがたい。Jornada 690を使っていたときには、付属のACアダプタが大きいために、わざわざジョルミニと呼ばれる小型のACアダプタを別途購入した。シグマリオンのACアダプタは、このジョルミニほどは小さくないが、いざというときに持ち歩くことが苦にならない程度の大きさだ。


■P-in Comp@ct、CFネットワークカード、ソフトケースも購入

 シグマリオンを活用するために揃えた周辺機器は、前述したPC接続ケーブル以外に、CFタイプのネットワークカードとCFタイプのPHS、持ち歩くときに入れるソフトケース。

 シグマリオンには、携帯電話やPHSを接続するためのインターフェイスが用意され、オプションのケーブルさえ購入すれば、携帯電話やPHSを使って通信を行なうことができる。しかし、ケーブルを持ち歩いたり、通信するときにいちいちケーブルを接続するのは面倒なので、CFタイプのPHS「P-in Comp@ct」を購入した。P-in Comp@ctをシグマリオンに挿した状態のまま持ち歩くと、ちょっとした電車の待ち時間や喫茶店の中などでもすぐに取り出して、通信できる手軽さは非常に便利である。ただ、Jornada 690と一緒に使っていたPCカードタイプPHS「P-in」と比べると、感度が落ちるような印象を受けた。しかし現在、CFタイプのPHSは一機種しかなく、必然的に「P-in Comp@ct」を選択するしかない。

 一方CFタイプのネットワークカードは、近所の量販店で3製品が販売されており、いずれもWindows CE対応であった。そのうちの1つプラネックスコミニュケーションズの「CF-10T」は、カードの横にRJ45のコネクタが直接挿せる形状のもので、価格も他の製品より安かったので、これを購入することにした。販売されているパッケージの状態では確認できなかったのだが、購入して開けてみるとH/PC Proに標準で用意されているNE2000互換ドライバで動作するため、専用ドライバを別途インストールすることなく、挿すだけで使い始められることがわかった。CF-10Tをしばらく使っているが、RJ45のコネクタを挿す部分の大きさが目立つが、コネクタを直接させる手軽さのほうにメリットを感じている。

「P-in Comp@ct」と「CF-10T」 シグマリオンにP-in Comp@ctを挿したところ。色もマッチしており、見た目もバランスが良い CF-10Tをシグマリオンに挿したところ。ネットワークケーブルのRJ45コネクタを挿しこむ部分が大きく飛び出してしまう

 H/PC ProはWindows PCとシリアルポートや赤外線ポートで接続して、ActiveSyncを使うことでデータの同期やバックアップができる。ActiveSyncはLAN経由でも可能で、LANの方が当然高速で快適なのだが、LANで接続する場合でも、最初の一回だけはシリアルポートや赤外線ポートを使って、H/PC ProとWindows PC間でパートナー関係を築いておく必要がある。

 一度パートナー関係を結べば、同期やバックアップ以外にもLANを経由してダイヤルアップルータでインターネット接続するといったことも可能になる。全てのH/PC Proユーザーにネットワークカードが必要というわけではないだろうが、筆者にとってはH/PC Proには欠かせない周辺機器の1つになっている。

 P-in Comp@ctとCF-10Tの次に購入したのが持ち歩き用ケースである。シグマリオンは、綺麗なメタリックシルバーの樹脂製のボディであり、そこに魅力を感じる人も少なくないだろう。しかし、明るい色だけにキズがつくと、とても目立つのではないかという危惧があり、カバンなどに入れて持ち歩くときにも何かしらケースに入れておきたい。セットになっていたゼロハリバートンの専用ケースは、非常に頑丈でシグマリオンの保護という点では申し分ないものなのだが、持ち歩くにはためらわれるほど大きく重い。余談だが、この専用ケースには、ゼロハリバートンの国内正規代理店である大沢商会のギャランティカードがしっかり添付されていた。

 そのため、いわゆるソフトケースを購入しようと考えた。ショップに展示されているケースをチェックしたり、同時期にシグマリオンを購入した知人との情報交換で、結局ミドリのSPモバイルケースにした。

 シグマリオンにはちょっと余裕がある大きさだが、P-in Comp@ctやCF-10Tを一緒に入れて持ち歩くには丁度良い。また、シェルに衝撃吸収フォームが採用されており、比較的衝撃への保護性が高い。なお、衝撃吸収フォームは、最近流行しているテンピュールといった枕に使われている低反発性のスポンジをスライスしたもののようだ。

 今回新規に購入したのは以上だが、もちろん手持ちのコンパクトフラッシュなどもシグマリオンで利用している。


■シグマリオン完成度高し!!

 まだ、4日間しか触れてないものの、持ち歩くインターネット環境としてシグマリオンは非常に完成度の高い製品である。様々なソフトをH/PC Proにインストールして利用している人には、さすがに32MBの内蔵メモリだけでは足りなくなり、コンパクトフラッシュを駆使する必要がでてくるだろう。しかし、単にインターネットメールの送受信やインターネットサーフィンを行なうだけであれば、十分なメモリ容量である。出来のいいキーボードや描画速度の速さなど、快適な操作性は目を見張るものがあり、それを補って余りある。

 筆者は、現在その操作性の良さを享受するべく、Jornada 690から環境の移行を行なっているところだ。Jornada 690のように常設のストレージを拡張することができないため、空き容量に注意しながらインストールするアプリケーションを選択している。ただ、インターネット接続に特化した構成にすれば、32MBという容量に十分収めることができるという感触を得ている。

 個人的には、あまりゼロハリバートンというブランドに思い入れがないために、「ゼロハリバートンデザイン」という点には興味をもてないのだが、それを差し引いても魅力ある製品に仕上がっている。このシグマリオンは製造はNECとなっているが、NECからも、このサイズでH/PC 2000対応端末が発売されることを期待したいところだ。

 出先でメールを読んだり、情報検索をするときに、多機能携帯電話では物足りないと感じているのであれば、シグマリオンを検討してみてはいかがだろか。この冬から来年にかけて、H/PC 2000対応のWindows CEマシンが登場することになっているが、筆者はしばらくこのシグマリオンと付き合っていきたいと思っている。

□NTT DoCoMoのホームページ
http://www.nttdocomo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0911.html
□製品情報
http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/sigmarion/
□関連記事
【9月11日】ドコモ、ゼロハリバートン風のCEマシン「sigmarion」(ケータイ Watch)
http://k-tai.impress.co.jp/news/2000/09/11/sigm.htm
【9月21日】法林岳之の週刊モバイル CATCH UP
 ゼロハリーバートンなハンドヘルドPC「シグマリオン」(ケータイ Watch)
http://k-tai.impress.co.jp/column/catchup/2000/09/21/
【1月25日】一ヶ谷兼乃のデジタル de Go! GO!
 '99年の最も満足度の高い買い物「Jornada 690」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000125/dgogo09.htm

[Text by 一ヶ谷兼乃]

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