「原付チョロQ」ファーストインプレッション ~ 一見ゴーカート、実は意外とスポーツカー
1月22日に株式会社タカラから発表された「乗れるチョロQ」こと1人乗り電気自動車「Q-CAR」の製品版が9日、報道関係者に公開された。ごく短い距離ながら試乗もできたので、ファーストインプレッションをお届けしたい。
・まさに大きなチョロQ
試乗コースは発表会場近くの駐車場を1周(約500m)するもの。今回発表されたのはスポーツカータイプの「Qi(キューノ)」(11月発売、129万円)と、アルミボディのクラシックカータイプ「QQ(ナインナイン)」(2003年2月発売、199万円)で、いずれも屋根のないオープンボディだ。試乗車両はQiの赤だった。
Qiのフットプリントは全長2,110mm、全幅1,100mmと軽自動車の半分以下だが、全高は1,460mmもある。丸っこくデフォルメされたフォルクスワーゲン・ビートルのようなボディとあいまって、まさしくチョロQのスケールアップ版。後部に10円玉を乗せる台がないのが不思議に思えるくらいだ。
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スポーツタイプのQi。コックピットに座るのはタカラの佐藤慶太社長 |
Qiのボディーカラーは赤/白/黄が用意される。チョロQ誕生時のボディカラーと同じだそうだ |
ブガッティ風コーチワークのQQ。なんとボディはアルミ製 |
・MOMOにSPARCO……安っぽくない作り
QiにもQQにもドアはなく、車体左側の切り欠きから乗り込む。ドライビングポジションは足を前方に投げ出し、やや近いステアリングを抱え込むというもの。電気モーター駆動のためトランスミッションはなく、クラッチペダルやシフトレバーはない。
ダッシュボードには液晶表示のスピードメーターのほか、各種警告等や、前進/ニュートラル/後退を選択するセレクター、距離計のリセットスイッチがあるだけでいたってシンプル。だか、普通の乗用車のような樹脂の内装が施されており、安っぽさは感じさせない。なお、試乗車にはMOMOのステアリング、SPARCOのバケットシート、アルミホイールが奢られていたが、これらはすべてオプションだそうだ。
3点式のシートベルトを締めたら、ステアリングコラム右に自動車そのままのイグニッションキーがあり、これを一番奥まで捻れば電源が入る。レシプロエンジン車のようなクランキングもなにもなく、電源が入ったことは液晶メーターが表示されたことでわかるだけ。レシプロエンジンに慣れたドライバーにはあっけなさすぎて、物足りないかもしれない。
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Qiのコックピット。いたってシンプルだが安っぽくはない。ステアリングコラム上にはハザードスイッチ。ダッシュボード右下には小物入れがある。荷物スペースはこのほかシート下くらいしかない |
メーターパネルもシンプル。電気自動車でも燃料計のアイコンはガソリンスタンドマーク |
ペダルはアクセル&ブレーキの2本だけ |
・淡々としたスポーツカー
ダッシュボード左のセレクターで前進を選択し、昔の車に付いていたようなプル・リリース/ロックタイプのパーキングレバーを解除(この操作はやや慣れが必要だ)したら、あとはアクセルを踏むだけで両後輪に内蔵された0.29kw(×2)のモーターが回り、音もなくスルスルと前進する。加速はレシプロエンジン車よりも速い(ように感じる)。速いが暴力的ではなく、スムースだ。逆に言えば、レシプロエンジンのようなドラマチックな加速はしない。淡々と、静かにスピードが上がっていくだけだ。
そういうわけで、乗ってすぐに思い出すのは「遊園地のゴーカート」、しかも電気駆動の奴なのだが、ひとたびコーナーを曲がるとその印象は吹き飛ぶ。コーナーでは車体がしなやかにロールし、ダブルウィッシュボーンサスペンションの存在を思い出させてくれる。しかも、低い位置に積まれた6個の密閉型鉛電池バッテリ(12V/48A)のおかげで重心が低く、恐怖を感じない。ゴーカートにはない、自動車らしい乗り心地が味わえるのだ。
「原付相当の出力しかない電気モーター駆動では、退屈な車だろう」そう思っていた記者だが、その予想は覆された。最高速度は50km/hにすぎないが、ボディが小さいから体感速度は高い。屋根もなければウィンドウシールドも小さいから、風を体に感じることで、さらに体感速度は上がる。ステアリングはダイレクトかつクイックで、スポーティーなドライビングが楽しめる。レシプロエンジンとは異質なドライビングの喜びがありそうに感じられた。
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Qiの後輪。内蔵されたモーターが見える。左右のモーターはマイコンで制御される。ステアリングの動作を検知すると、左右の回転数を変えて内輪差を吸収する |
QQのフロントサスペンション。上下のアームでホイールを支える、典型的なダブルウィッシュボーン |
発表会で上映されたサーキット走行の様子。結構ロールしている |
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【動画】(MPEG-1/約1.4MB) Qiの走行 |
【動画】(MPEG-1/約1.4MB) QQの走行。ドライバーはタカラの佐藤社長 |
【動画】(MPEG-1/約1.4MB) Qiのコックピットからの風景 |
・今後は実用モデルやホビーモデルも
「Q-CAR」シリーズは国土交通省の型式認定を受けており、車両法で第一種原動機付き自転車として扱われ、公道を走行できる(道路交通法上は自動車として扱われるため、運転には普通自動車免許が必要)。トヨタ・ランドクルーザーなどの製造会社であるアラコ株式会社製の小型電気自動車シャーシーに、フォルクス・ワーゲンのチューナーとして有名なコックス株式会社がボディなどを架装、型式認定を取得したものだという。
現在用意されている「Qi」「QQ」は限定生産(Qiは初回99台/累計999台、QQは300台)のコレクターズアイテム的な製品だが、公道を走れるため、手軽な移動手段を求める高齢者や主婦の関心が高いという。そこで、屋根やトランクを付けて実用性を高め、99万円と価格を下げたモデル「U-CONCEPT」を、来年発売に向けて開発中とのことだ。また、過去・現在の名車を再現してより趣味性を高めたモデルも計画しているという。
Q-CARはお台場に開設されるショールーム「Qスクエア」のほか、キディランド、博品館などでも展示される。また、衣料品店のユニクロではOEMモデルが展示される。さらに、千葉三菱コルト販売、神戸マツダ、カルソニックなどは「Qディーラー」と称し、展示のほかメンテナンスを行う。
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U-CONCEPTのイメージCG。モジュール構造でボディなどの付け替えが容易 |
計画中のモデル。実在の車をQ-CAR化したもの。手前はQ-CARを製作・販売するチョロQモーターズ株式会社の田中氏 |
QQオーナーに送られるオーナー証明書とQQのチョロQ(ややこしい)ほか記念品 |
□タカラのホームページ
http://www.takaratoys.co.jp/top.html
□ニュースリリース(PDF形式)
http://www.takaratoys.co.jp/company/pdf/020709_1.pdf
□Qi諸元表(PDF形式)
http://www.takaratoys.co.jp/company/pdf/020709_2.pdf
□QQ諸元表(PDF形式)
http://www.takaratoys.co.jp/company/pdf/020709_3.pdf
□Q-CARのホームページ
http://www.takaratoys.co.jp/q-car/
□コックスのホームページ
http://www.cox.co.jp/
□アラコのホームページ
http://www.araco.co.jp/
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http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20020122/takara.htm