プロカメラマン山田久美夫のPhotokina2002レポート

200万画素Cyber-shot Uなど国内未発表モデルを展示
~富士の動画デジカメや松下の光学12倍ズーム機など

開催期間:9月25日~30日(現地時間)


 世界最大の写真機材ショーである「Photokina」(フォトキナ)が、25日(現地時間)より、ドイツ・ケルンで始まった。

 このイベントは、2年に一度開催されるもので、写真機材に関連する世界各国のカメラ、フィルム、家電メーカーが一堂に集う巨大イベントだ。そのスケールはCeBITほどではないが、PC系イベントで最大級のCOMDEX/Fallを楽に越えるスケールだ。

 毎年春に開催される、アメリカのPMAは米国中心の写真機材ショーだが、このPhotokinaは欧州というよりも、より広く、世界中に製品をアピールする場となっている。そのため、カメラ系メーカーは各社とも、この2年に一度の巨大イベントに焦点を合わせ、きわめて意欲的な新製品を発表し、新展開をアピールするのが通例となっている。

 今回は、事実上、21世紀初のPhotokinaであり、ショーのメインが完全にデジタルへと移行した、実に記念すべきイベントとなった。

 今回のレポート第1弾では、日本国内で未発表の新製品について紹介しよう。



●富士フイルム、30fpsのVGA動画を実現した“動画FinePix”「M603」

 Photokina直前に、日本で超薄型単焦点モデル「FinePix F402」を発表したばかりの富士フイルム。だが、新製品はこれだけではなく、従来のFinePixシリーズとは異なる“動画”をメインにした新シリーズを発表した。それがこの「FinePix M603」だ。

 このモデルは、VGA(640×480ピクセル)で秒30フレームのフルフレーム動画を実現した、本格的なムービー対応モデルだ。もちろん、これまでも動画デジカメである200万画素機「三洋電機 MZ3」シリーズで、VGAのフルフレーム動画を実現していたわけだが、本機では300万画素級のスーパーCCDハニカムを搭載することで、A3クラスの大型プリントにも十分耐える高解像度の静止画撮影と、本格的な動画撮影の両方を一台でカバーできるモデルに仕上がっている点が、最大の特徴といえる。

 スタイリングは、同社独自の縦型デザインを採用。しかも、液晶モニターはボディー幅いっぱいの大きな2.5型TFTを搭載しており、動画モデルで大切な“再生して楽しむ”という点と、撮影時の撮り易さの両方を両立させている。

 記録媒体は、巨大な動画ファイルに対応するため、MicroDriveが利用できるCF Type IIスロットと、規格上8GBまでの大容量メディアに発展する高速書き込みも可能な「xDピクチャーカード」のデュアルスロットになっている。なお、1GBのメディアで、VGAフル動画を撮影すると、約15分の撮影が可能になるという。

 バッテリーは、標準ではF401と同じ、薄型のリチウムイオンタイプ。だが、長時間の使用に耐えるよう、大容量タイプも別途用意されるようだ。

 CCDは「F601」と同じ、1/1.7型の310万画素タイプ。もちろん、メガピクセルモードではISO800/1600での撮影も可能。

 レンズは、光学2倍ズーム(38~76mm相当)と意外におとなしいもの。もちろん、動画撮影に対応するため、ズーミング時にレンズの作動音が入らないような静音設計になっている。

 サイズは64.5×93.3×31.6mmで、これまでの縦型スタイルFinePixに比べると、かなり厚みがある点は少々気になるところ。ただ、外観の割に重さは210gと、比較的軽量に抑えられている。

 手にして、まず感心するのは、2.5型液晶モニターの見やすさ。この大型モニターを一度体験したら、普通の小型液晶に戻れなくなるのでは……と思うほどの魅力を備えている。

 ホールド感は独特なもの。縦型スタイルで、右側面にシャッターボタンとズームレバーがあり、このあたりの雰囲気はとてもビデオカメラ的。シャッターの位置や形状の関係で、静止画撮影で微妙なシャッターチャンスを捉えるには、やや不向きな印象もあった。

 会場でのデモを見る限り、30fpsのVGA動画は、さすがにキレイ。画質的にはビデオカメラに匹敵するというよりも、並みのビデオカメラを越えるレベルを実現している印象だ。しかも、同じボディーで出力画素数600万画素の高精細な静止画撮影もできるため、旅先や子供の成長記録のように、動画も静止画も、両方欲しいという場合でも十分対応できるだろう。

 これまで、あくまでも静止画をメインに展開してきたFinePixシリーズの新展開として、今回の「M603」がどのようなポジションを獲得するのかとても興味があるところだが、確実にいえることは、従来のFinePixはもちろん、普通の動画対応デジタルカメラよりも、使う楽しさや、見る(再生する)楽しさを感じさせる新展開になるということだ。

 なお、日本国内での発表時期などは未定だが、そう遠くない時期に正式発表されることは、ほぼ確実だろう。

 また、今回同社は、日本での300万画素3倍ズーム機「FinePix A303」ベースの200万画素機として「A203」も欧州向けとして発表していた。こちらは、まさにCCDが異なるだけのモデルであり、より低価格化を指向したモデルといえる。こちらはおそらく、日本国内でお目見えすることはなさそうだ。




●松下電器、光学手ブレ補正式光学12倍ズーム搭載200万画素機「DMC-FZ1」を発表

 松下電器は今回、LUMIXシリーズの新製品を2機種、ブースに展示していた。

 なかでも注目されるのが、中堅機で初めて、光学手ブレ補正機能を搭載し、クラス最高の光学12倍ズームを搭載した200万画素モデル「DMC-FZ1」といえる。

 レンズはライカブランドとなる、35mmカメラ換算で35~420mm相当の超高倍率12倍ズーム。しかも、明るさはズーム全域でF2.8という大口径を実現。さらに、望遠撮影時のブレ軽減に絶大な威力のある光学手ブレ補正機能を搭載している。

 スタイリングも35mm一眼レフ的なもので、付属の花びら型フードを装着した姿は、なかなかカッコよく、インパクトのあるものに仕上がっている。ホールド感も35mm一眼レフ的で違和感がなく、なかなか機動性に富んだ撮影ができそうな雰囲気を備えている。これなら12倍ズームの望遠域での撮影も容易にできそうだ。

 CCDは、このサイズで12倍ズームを実現するため、小型で高密度な1/3.15型の200万画素の原色系タイプを搭載。おそらく一画素3μm以下になるわけだが、現在の技術では、ごく普通の感度で、ファミリーフォトを中心に撮影する限り、画質面を懸念するようなレベルではないだろう。

 ファインダーは、背面液晶と、一眼レフ的な感覚での撮影ができる液晶ビューファインダー(EVF)を搭載。ブースで見る限り、液晶ファインダーの視野が狭く、他社の最新機種に比べると、像が小さい点が気になったが、表示レスポンスは必要十分な速度を実現していた。

 電源は専用形状のリチウムイオン電池を採用。記録媒体はもちろんSDメモリーカードだ。

 さて、本機の最大の注目点は、やはりレンズ。もちろん、大口径F2.8の光学12倍ズームはクラス最高であり、それ自体魅力的だが、さらに、このサイズと価格帯(現地では600ユーロ。1ユーロは約125円)で、本格的な光学手ブレ補正機能を搭載している点にある。

 この光学手ブレ補正機能は、ビデオカメラに多いCCDの読み出し位置を変えて対応する電子手ブレ補正方式と違い、ブレをセンサーを感知して、それを補正する方向に光学系の一部を動かすことで、光学的にブレを補正するもの。そのため、ブレ補正をしながらも、画素数をフルに活用した撮影ができるわけだ。

 ブースには十数台の実働機が展示され、デモが行なわれており、自由に手にして体験することができる。実機を手にしてみると、そのあまりの軽さに驚いてしまう。たぶん、重さは300gくらいなのだが、スタイリングが一眼レフ風でやや重そうに見えるので、その分、とても軽く感じるのだろう。これなら、12倍ズーム機でも、いつでもバッグに入れておけるレベルだ。

 ブースで見た範囲では、光学手ブレ補正をONに設定しておけば、最望遠時でもファインダー像が微妙にブレることはない。とくに、ワイドから中望遠域では、ほぼ完全にファインダー像にブレがないため、覗いていて、ちょっと異様な感じさえ受けるほど。もちろん、安定したフレーミングも容易だ。また、実際にやや遅めのシャッター速度で撮影してみたが、その効果は絶大。さすがに過信は禁物だが、シャッター速度にして、2段前後の補正効果があるようだ。

 また、流し撮りモードも用意されており、このモードでは横方向の補正はせず、縦方向だけの補正をするため、ブレの少ない流し撮りができるように考えられている。

 基本的にファミリー向けの中堅機なので、機能的にはフルオートとシーン別モードのみというシンプルなもの。絞り優先やシャッター優先AEといった凝った機能は搭載されていないが、実用上は現状で十分だろう。

 画質は未知数だが、光学手ブレ補正はもちろん、レンズもF2.8と明るく、12倍ズームも大いに魅力的。しかも、マクロモードではワイド端でレンズ前3cm(最望遠側では1m)もの接写ができる。この中堅の高倍率ズーム機では300万画素10倍ズームの「オリンパス C-730UZ」といった強力なライバルがいるわけだが、光学手ブレ補正の魅力は大きく、実用上は200万画素でも十分なことを考えると、かなり魅力的で楽しめるモデルになりそうだ。

 日本国内での展開は未定だが、なるべく早い時期に、国内でも正式発表されることを強く望みたい。

 もう一台は、参考出品レベルだが、「DMC-F7」風デザインを採用した、300万画素CCD搭載の光学3倍ズーム機が出展されていた。本機はまだ型番もなく、ウインドー越しに2色のボディーが展示されていた程度。ボディーは浜崎あゆみのCMで有名な「DMC-F7」的なものだが、細部を見ると別物で、新設計されたものと思われる。レンズもF7が2倍ズームだったのに対して、こちらは3倍ズームになっており、今秋以降主流となる300万画素3倍ズーム機時代に対応したモデルといえそうだ。




●ソニー、キレイなカラーリングの200万画素版“Cyber-shot U”「DSC-U20」を発表

 人気の超小型モデル「Cyber-shot U」に、待望の200万画素モデル「DSC-U20」が登場した。

 もともと初代「DSC-U10」は130万画素ながらも、1/2.7型CCDを搭載していたこともあって、将来的には200万画素化は確実と見られていたが、意外なほど早い時期に、その姿を現した。

 欧米では、今回の200万画素版である「DSC-U20」と、国内既発売の「DSC-U10」は、今回のPhotokinaで同時発表されたもの。そのため、こちらでは当初から、130万画素と200万画素の2種類のラインナップとして発売されることになる。

 とはいえ、今回の「DSC-U20」は、基本的に「U10」のCCDを200万画素タイプに載せ代えたものであり、機能やデザインはそのまま踏襲されている。外観上で見分けが付くのは、200万画素版だけの魅力的なボディーカラーと、カメラ上部の2.0megaの表記だけといえる。

 今回、筆者の取材用カメラは「DSC-F717」と「DSC-F77」がメインで、予備機として「DSC-U10」というソニートリオ(?)で臨んでいる。私自身「DSC-U10」は発売初日にブルー系のモデルを購入したため、終日首からぶら下げて歩いていることが多い。

 実は130万画素でも実用十分なため、「200万画素になってもね……」という感じがあったが、ブースで現物を見たら、その美しいカラーリングに感動してしまった。

 今回、欧州でU20に用意されるボディーカラーは、メタリック調の深いブルーと、質感のいいシルバー系の2色。いずれも、外装がU10より高品位で、とても魅力的。つまり、「U20」は画素数が増えただけではなく、外観の仕上げからも「U10」の上級機という位置づけになっている印象だ。

 日本国内での展開は未定だが、ぜひとも早期に正式発表して欲しいモデルだ。

(2002年9月27日)

[Reported by 山田久美夫]

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