パソコン工房新製品レビュー
8万円台でCore i5-12450H搭載。パソコン工房のスタンダードノート「STYLE-15FH127-i5-UHEX」はどう使うべきか?
2023年12月25日 10:00
パソコン工房を運営するユニットコムより、iiyama PCブランドの15.6型ノートPC「STYLE-15FH127-i5-UHEX」が発売された。
本機はCPUにCore i5-12450Hを搭載しつつ、標準構成で8万9,800円という安価なスタンダードノートPC。OSなしの選択も可能で、8万4,300円まで下がる。
Core i5-12450Hは旧世代のCPUながら、PコアとEコアを持つハイブリッドCPUで、ヘビーな用途でない限りは性能不足を感じることはないはず。それでこの低価格というのは魅力的だ。こちらの実機をお借りしたので、使用感をお伝えしよう。
CPUはHシリーズのCore i5で性能は高め
本機のスペックは下記の通り。
【表1】STYLE-15FH127-i5-UHEX | |
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CPU | Core i5-12450H(4-Pコア+4-Eコア/12スレッド、Pコア4.4GHz+Eコア3.3GHz) |
GPU | UHD Graphics(CPU内蔵) |
メモリ | 8GB DDR4-3200(8GB×1) |
SSD | 500GB(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 15.6型非光沢液晶(1,920×1,080ドット) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0、USB 2.0 |
カードスロット | microSD |
映像出力 | HDMI、Mini DisplayPort |
無線機能 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5 |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
その他 | 前面100万画素カメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン端子、マイク端子など |
本体サイズ | 約360.5×240×27.3mm |
重量 | 約2.06kg |
価格 | 8万9,800円 |
CPUは8コア12スレッドのCore i5-12450H。メインメモリは8GB、ストレージはM.2 NVMe接続の500GB。CPUは安価なノートに積むものとしてはかなりパワフルで、不足を感じることはまずないはず。
起動後のメモリ使用量は約4.6GBとなっていたので、ヘビーな用途は厳しいだろう。ただ、仮にメモリが溢れてもスワップ先がNVMe SSDなら、使用感はさほど損ねないかもしれない。
ディスプレイは15.6型。USB 3.1 Type-Cを2基搭載するなど拡張性が高く、Gigabit EthernetやWi-Fi 6Eも搭載しネットワーク周りも安心できる。重量が2kg超えなのはやや重いが、安価でも搭載機能が豊富なところがメリットとして勝てばいい。
なお、購入時のカスタマイズがほとんどできない点は知っておきたい。ハードウェア的な変更は天板のiiyamaロゴが外せるだけで、メモリの増設やストレージの容量増など、パフォーマンスに関わる部分は変更不可。このスペックを決め打ちで購入する形になる。
静音設定でも普段使いには十分な性能を発揮
次に実機のパフォーマンスをチェックする。本機にはカスタマイズツール「Control Center」がプリインストールされており、動作モードの切り替えができる。動作モードは標準の「エンターテイメント」のほか、「パフォーマンス」、「省電力」、「静音」の計4つが用意されている。
そこで「PCMark 10 v2.1.2662」と「Cinebench R23」のベンチマークで4つすべてのプリセットで実施してみた
CPU性能は、安価なノートPCとしてはシングルスレッド・マルチスレッドの両方で十分過ぎるほど高い。動作モードを「省電力」や「静音」にすると、マルチスレッドのスコアはほぼ半減するものの、それでもオフィスユースなどの軽い作業であればまったく問題ない範囲だ。
しかし内蔵GPUは弱いので、3Dゲームには適さない。試しに実施した「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、プリセットの中ではもっとも動作が軽い「標準品質(ノートPC)」の設定でも「設定変更を推奨」の評価となった。メモリが少ないことも合わせて、3Dゲームの利用は考えない方がいいだろう。
バッテリ駆動時間は、ディスプレイの輝度50%で実行し、アイドル時で7時間強、オフィスユースで6時間弱となった。外出時に持ち出して使うのに、充電なしでも十分に実用的だ。
SSDはSolidigm製「SSDPFKNU512GZ」が使われていた。PCIe 4.0 x4接続のエントリークラスの製品で、リードは3,500MB/s、ライトは1,625MB/sとされている。実際の速度もほぼその通りに出ており、実用上でも速度が遅いと感じることはない。
コスト削減の狙いは見えるが全体として堅実な作り
次に外観を見ていく。筐体はフラットな天面にオールブラックのカラーリングというシンプルなデザインを採用。良くも悪くも無難だ。厚さはサイズからすると特に分厚くはないが、薄型というほどでもない。まさにスタンダードなノートだ。
ディスプレイを畳んで持つと、素直な形状で持ちやすい。若干重めではあるが片手で持つのに苦労はしない。剛性も高く、持った時の頼りなさはない。天面もそれなりの強度はあるが、押さえると中央付近はへこみやすいので、満員電車等の圧迫には注意した方がいい。
ディスプレイは輝度は高めながらやや白っぽさがある。視野角は特に上下が狭く、色相反転も見られることから、コスト優先でTNパネルを採用しているようだ。正面から見ている限りは発色も悪くないので、個人で使う分にはやや明るめの平凡なディスプレイという印象ではある。
キーボードはアイソレーションタイプで、バックライトは非搭載。テンキー付きの素直なレイアウトで、主要なキーは概ね正方形を維持している。テンキーを含む一部のキーは縦長の形状になっている。
キータッチは浅めのストロークのわりにしっかりしたクリック感がある。騒音も少なめで使用感は良好だ。キートップのアルファベットのフォントが独特で、デザイン的にはおもしろい反面、タイピング中に目に入るとちょっと違和感がある。
端子類は、左側面にUSB 3.0と2.0が1基ずつと、ヘッドフォン端子、マイク端子。右側面にmicroSDカードスロット、USB 3.1 Type-C、Gigabit Ethernet。背面にUSB 3.1 Type-C、HDMI、Mini DisplayPort、電源端子を備える。マウスの使用を考えると、Gigabit Ethernetが背面にあるとよかったかなと思う程度で、豊富な端子を無難にまとめている。
スピーカーは底面の手前側左右に内蔵されている。音は人の声がクリアで聞き取りやすい。音楽は全体的に軽い音ながら、耳障りな感じを抑えつつ低音も鳴らそうという調整がなされているのを感じる。音楽鑑賞用としてはいささか頼りないが、音量はしっかり出るので、普段使いでは困らない。
エアフローは、底面吸気、背面と側面から排気。アイドル時は冷却ファンが止まっておりほぼ無音。「Cinebench R23」で高負荷をかけてみると、CPU温度が70℃付近まで上がってファンが高回転を始め、やや高めの風切り音が出るが、音量はそれほど大きくはない。
パフォーマンスモードにすると、CPU温度が100℃近くまで上がり、ファンノイズはさらに大きくなるものの、音質はホワイトノイズっぽく耳触りな感じは少ない。省電力や静音モードではファンの回転数が半分程度まで抑えられ、騒音はかすかに聞こえる程度まで減る。
高負荷時のキートップへの熱伝導はかなり少なく、特に左手のホームポジション付近はリストレスト部を含めてほぼ冷えている。右手側は若干の温かさが伝わる程度で、使用感を損ねるほどではない。
ACアダプタは120W出力。電源に関してはUSB Type-Cによる給電に対応するという記述はなく、付属のACアダプタからの給電のみとなるようだ。
メモリ8GBで足りる作業に割り切るか、より大容量なモデルを検討か
普段から弊誌をご覧いただいている方だと、「メインメモリ8GBは厳しい」と感じるのではないかと思う。そういう方は端から本機のターゲットではないので、それで構わない。
では本機の立ち位置はどこか考えてみると、あれこれ求めず仕事用や学習用と割り切って使うのがいいと思う。もっと安価で、取り回しのいい小型のPCも探せばあるはずだが、メインメモリ以外のパフォーマンス面で不安が残る。Core i5-12450HにNVMe接続のSSDなら、仕事や学習において処理能力で不満が出ることはまずない。実際に使っていても起動は高速で、各種処理もキビキビ動いてくれる。
メインメモリが8GBで困るかと言われたら、軽作業ならおそらく大抵は困らないのではないかと思う。それでもやはり将来的には不安……ということなら、実は最初から16GBを搭載したモデルが別にある。価格は4,000円上がるが、こちらはメモリやストレージのさらなるカスタマイズにも対応している。
あるいは後から自分でメモリを交換すればいいのではと思い、底面のネジを外して開けようと試みたところ、裏蓋がかなり開けにくい構造になっていた。メモリ部分にだけアクセスできる蓋もなく、購入後に内部に触れてほしくないという設計の意図を感じた。借り物でもあるので、それ以上は無理をせずに閉じた。
安価なスタンダードノートなら、各部に一長一短あるのは当然だ。あとは各々のニーズに合う製品を選んでいただきたい。本機は全体としては堅実に作られており、コストパフォーマンスに優れた製品であることは確かだ。