パソコン工房新製品レビュー

RTX 4070 Tiの性能をミドルタワーでフルに発揮、しかも静か。パソコン工房のゲーミングPCを試してみた

LEVEL-R7X5-LCR57X-ULX

ミドルタワー型ゲーミングPCの最新機種

 パソコン工房を展開するユニットコムより、ゲーミングPCブランド「LEVEL∞」のデスクトップPC「LEVEL-R7X5-LCR57X-ULX」が発売された。価格は28万8,800円から。

 本機はミドルタワーケースを採用した「R-Class」に属する製品で、ハイエンドにも対応できる余裕のある冷却性能や、柔軟なカスタマイズ性が特徴。その中でも本機はGeForce RTX 4070 Tiを採用し、比較的コストパフォーマンスの高いモデルとなっている。

 実機を使い、性能はもちろん、高負荷時の静粛性や内部構造、外装デザインなどに関してもチェックしていきたい。

最新GPUでコスパ狙いの構成

 LEVEL-R7X5-LCR57X-ULXのスペックは下記の通り。

【表1】LEVEL-R7X5-LCR57X-ULX
CPURyzen 7 5700X(8コア/16スレッド、3.4~4.6GHz)
チップセットAMD X570(ASUS X570-PRO)
GPUGeForce RTX 4070 Ti(GDDR6X 12GB)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD1TB(M.2 NVMe、PCIe 4.0 x4)
電源850W 80PLUS Gold ATX
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.1 Type-C、USB 3.1×3、USB 3.0 Type-C、USB 3.0×6
映像出力HDMI、DisplayPort×3
有線LANGigabit Ethernet
その他PS/2、S/PDIF、音声入出力など
本体サイズ約220×493×465mm
価格28万8,800円

 CPUは8コア/16スレッドのRyzen 7 5700Xを採用。Ryzenではすでに7000シリーズが発売されているため、1世代前のものとなる。ただゲーミング性能はビデオカードによるところが大きく、また最近のCPUは発熱が大きかったり、メモリがDDR5必須になったりするため、コストパフォーマンスを考えて旧型を選択するのは十分あり得る。CPUクーラーとして120mmラジエータの簡易水冷を採用しているのもポイントだ。

 ビデオカードは最新のGeForce RTX 4070 Ti。現時点ではGeForce RTX 40シリーズの最下位となるが、単体では13万円前後からという高価格帯で、性能も前世代から大幅に向上している。ここも最新ビデオカードの中ではコストパフォーマンスを狙った製品となる。

 メインメモリは16GB、SSDはPCIe 4.0 x4接続の1TBと、昨今のゲーミングPCとして必要なラインは超えている。マザーボードはASUS製のATXマザーボード「PRIME X570-PRO」を採用。電源も80PLUS Gold認証を受けたものを載せており、価格や性能だけでなく品質への配慮も感じる。

 カスタマイズの幅も広く、メインメモリは最大128GB、ストレージは最大2TBのSSDを2基まで、最大6TBのHDDを2基まで増設可能。さらに、スリムタイプの光学ドライブの追加(ケース上部のスロットに内蔵)、80PLUS Platinum認証の1,200W電源への交換などに対応。また、CPUの簡易水冷クーラーを最大360mmラジエータのものに大型化、CPUグリスを高熱伝導率のものに変更するといったメニューも用意されている。

 電源やマザーボードがATX規格とされているのに加え、ケースはサイドパネルの開けやすさやマグネット着脱式のダストカバーなどもアピールされている。「元々は自作ユーザーで、PCを1から作るのは手間だけれど、後々の拡張くらいは自分でやりたい」という方にも向いた製品と言えそうだ。

落ち着いた外見と余裕のあるケース内部

全面ブラックのケースに、赤いラインが僅かに見える。ゲーミングPCとしてはかなりおとなしいデザインだ

 次に外見を見ていく。ケースはマットブラックをベースに、前面パネルの吸気口部分の側面にレッドのラインを配色。LEVEL∞のケースといえば、ブラックベースに鮮やかなレッドのラインという印象だが、本機はかなりおとなしい外見になっている。なお、派手めが好みの方に向けて、RGB Buildモデルもラインナップされている。

 前方の端子は天面の右側に並ぶ形で、USBが2基とヘッドフォン端子、マイク端子、その奥にUSB 3.0 Type-Cがある。また、天面にはマグネット式のメッシュシートが貼られており、その奥にファンが覗いている。左右はスリットもない平面パネルなので、天面を活用する縦方向のエアフローとなっているようだ。

 背面端子もシンプルな構成ながら、PS/2ポートを備えており、古いキーボードなども活用できる。長年愛用するキーボードがある人も安心だ。

前面はほぼフラット。端子類は設けられていない
背面は端子部のみマザーボードのホワイトカラー。出っ張りがなくすっきりしている
左側面パネルはフラットな一枚板
右側面パネルも一枚板。上部にあるネジで開けやすさを考慮している
天面右側に端子が並ぶ。マグネット式メッシュシートの奥にはファンが覗いている
底面も広くメッシュシートで覆われている

 左側面パネルを開けて内部を見てみる。ケースの内部までしっかりとブラックで塗装されており、そこにマザーボードやビデオカードのホワイトがコントラストとして効いている。側面パネルがクリアではないので内装にこだわる必要はないが、裏面を使った配線ですっきりとしていて美しい。

 CPUの冷却には、IN WIN製の簡易水冷ユニットを採用していた。水冷ブロックの上にファンを搭載した珍しい仕様で、IN WINによるとCPU本体よりもVRMやメモリなど周辺の装置に風を送るために搭載されているという。120mmのラジエータは前方上部に取り付けられている。

 ビデオカードはZOTAC製のものを使用。GeForce RTX 4070 Tiもかなり大型のビデオカードなので、上下をがっちり挟み込むサポートステイで支えられている。電源として必要な12VHPWRケーブルは、搭載電源では対応していないようで、3本の8ピン変換ケーブルを使用している。12VHPWR対応電源はまだ少なく、切り替わりの過渡期なので仕方ない。

左側面パネルを開けたところ。見える配線も少なく広々としている
CPUクーラーはIN WIN製。水冷ブロックにファンが付いた独特の形
120mmのラジエータは前方上部に取り付けられている。ほかのケースファンは見当たらない
ビデオカードはZOTAC製。大型のためかサポートステイも装着済み

 ストレージはM.2のSSDが1基のみということもあって、左側面から見えるドライブベイは前面上部にあるスリムドライブ用ベイのみ。右側面パネルを開くと、前方下部に2基の3.5インチベイと、マザーボード裏に2基の2.5インチベイが見える。いずれも未使用で、増設は可能な状態だ。

 ケースファンは上方に2基、後方に1基。前面から吸気(CPU簡易水冷ラジエータ含む)、上方と後方から排気というエアフローだ。電源ユニットがある下部は仕切りがあるため、電源ユニットは底面からの吸気になっている。ケース内の広々とした空間で、余裕のあるエアフローが組まれている。

上部と後方にケースファンがある
右側面パネルを開けたところ。マザーボード裏の下部に2.5インチベイが2基ある
前方下部にはトレイ式の3.5インチベイが2基
電源はENERMAX製「REVOLUTION D.F.」

4Kハイリフレッシュレートも実用的な高性能

 続いて実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2574」、「3DMark v2.25.8056」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。

 なお今回の試用機に使われているパーツのうち、ビデオカードやストレージなどのようにスペックシートで明確に製品の指定がないものについては、実際の製品では異なるパーツが使用される場合もある。あらかじめご理解の上、ご覧いただきたい。

【表2】PCMark 10 v2.1.2574のベンチマークスコア
PCMark 107,853
Essentials9,909
Apps Start-up score13,025
Video Conferencing Score7,972
Web Browsing Score9,372
Productivity9,667
Spreadsheets Score11,434
Writing Score8,174
Digital Content Creation13,721
Photo Editing Score19,342
Rendering and Visualization Score16,637
Video Editing Score8,029
【表3】3DMark v2.25.8056のベンチマークスコア
Speed Way
Score5,419
Port Royal
Score14,102
Time Spy
Score18,579
Graphics score22,536
CPU score9,313
Fire Strike
Score39,151
Graphics score54,894
Physics score28,549
Combined score15,086
Wild Life
Score118,254
Night Raid
Score62,668
Graphics score140,752
CPU score15,124
CPU Profile
Max threads6,804
16-threads6,808
8-threads5,997
4-threads3,594
2-threads1,837
1-thread923
【表4】VRMark v1.3.2020のベンチマークスコア
Orange Room
Score15,110
Average frame rate329.39fps
Cyan Room
Score20,983
Average frame rate457.43fps
Blue Room
Score6,735
Average frame rate146.82fps
【表5】各種ゲームのベンチマークスコア
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6)
2,560×1,600ドット15,764
1,920×1,080ドット41,308
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(最高品質)
2,560×1,600ドット15,952
1,920×1,080ドット30,013
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
3,840×2,160ドット8,651
1,920×1,080ドット15,394
【表6】Cinebench R23のベンチマークスコア
CPU(Multi Core)13,605pts
CPU(Single Core)1,533pts

 CPUは前世代のものだけに特別高性能とは言えないものの、3DMarkの「CPU Profile」では最大スレッドでも最大の4.6GHzまで上がり、その状態がほぼ維持できているのが確認できた。Cinebench R23のMP Ratioも8.88と実コア数を超えており、熱処理に関しては十分な対策が取られている。

 GPUはさすがの高性能で、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークの4Kでも「快適」の評価を出した。高負荷時のGPUの温度も70℃前後で、GPUクロックもかなり安定している。GeForce RTX 4070 Tiの性能を十分に引き出せている。

 そのほかのテストでも最高評価が並ぶ。3DMarkの最新テストである「Speed Way」でも5,000点超えの高いスコアで、実行中のGPUクロックの変動もほぼ見られない。CPUと同じく、こちらも冷却性能に問題はなさそうだ。

 ストレージはCFD製「CSSD-M2B1TPG3NF2」が使われていた。BiCS5 3D TLC NANDフラッシュを採用したゲーミング向けとされているPCIe 4.0 x4接続対応のSSDで、シーケンシャルリードは実測で5GB/sを超える。最速クラスの製品ではないとはいえ、実用上で気になることはないだろう。

CrystalDiskMark 8.0.4

 また実際のゲームプレイのテストとして、「フォートナイト」のバトルロイヤル1戦と、「エーペックスレジェンズ」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はフルHDと4Kで実施。画質はいずれも最高設定。

フォートナイトのフレームレート

 フォートナイトでは、DirectX 12でクオリティプリセットを最高、レイトレーシングは不使用とした。4Kでも平均約75fps、下位99%でも50fpsを超えており、リフレッシュレート60Hzの環境であればパーフェクトに近い。フルHDなら平均で120fps近くなるので、ハイリフレッシュレートでのプレイにも対応できそうだ。

エーペックスレジェンズのフレームレート

 エーペックスレジェンズでは、画質設定をすべて最高に設定し、144Hzのリミッター上限を解除している。4Kで平均160fpsを超えており、最近流行りの4K/120Hz超のゲーミングモニターでの使用にも適している。フルHDでいいなら平均約269fpsとなり、こちらも300Hzクラスの超ハイリフレッシュレート対応モニターでの利用に耐えうる性能を発揮している。

高負荷でも静かで快適。性能と使用感の両面で満足のいく1台

 使用時の騒音は、アイドル時には耳を近づけると低いファンの音がかすかに聞こえる程度でかなり静か。オフィスなど比較的静かな環境での利用も問題ない。

 CPUに高負荷をかけると、緩やかにファンの回転音が上がっていくのは簡易水冷ならでは。しばらく負荷をかけ続けても騒音と言えるほどの大きな音にはならず、音質も低音で耳触りな感じがしない。印象としては、扇風機を低速で回しているくらいの音だ。ベンチマーク結果から見ても、CPUの冷却については十分な能力があると言える。

 続いてGPUに高負荷をかけると、CPUよりははっきりとしたファンノイズが聞こえる。こちらも低音の風切り音で、長時間かけても音量の変化が見られず、安定してファンノイズは小さい。本体に耳を近づければ高負荷時の音量の変化を感じられるが、キーボードを叩く音の方がよほど大きい。ゲームプレイ時も騒音が気になることはほぼないだろう。

 逆にきちんと冷却できているのかと不安になるが、天面や背面の排気口に近づくと、しっかりと温風が出てきている。相応の発熱をきちんと処理しているようだ。

 本機の使用感はとても満足できる。ケースの剛性や使い勝手も申し分ないし、騒音もかなり小さく抑えられている。ハイエンド構成が可能な設計のミドルタワーケースに、比較的スペックを抑えた構成を組み入れたのが功を奏しているように思う。質実剛健なゲーミングPCを求めている人なら、買って間違いのない1台だ。