トピック

10万円台で買える在宅勤務向けお手頃ノート。デスクトップCPU搭載で高性能かつ静かなパソコン工房製

デスクトップPC向けのCore i7-10700を搭載する「STYLE-15FH040-i7-UHEX」(直販価格10万6,678円)

 IntelやAMDといったCPUメーカーは、ノートPCにはノートPC向け、デスクトップPCにはデスクトップPC向けのCPUを製造している。PCメーカーも、基本的にはそうしたカテゴリ分けにしたがってPCを作っているが、たまにこうしたカテゴリから外れたPCも出てくる。

 今回紹介する「STYLE-15FH040-i7-UHEX」も、そうした「カテゴリエラーのPC」だ。ノートPCとしてはとくに逸脱したデザインではないにもかかわらず、デスクトップPC向けのCPUを組み込んでいる。しかも採用するのは、上位グレードのCore i7シリーズに属する「Core i7-10700」だ。性能面はもちろん、発熱や消費電力がどうなるのかが非常に気になるところだろう。

厚みのあるデザインを採用し、性能の高いCPUクーラーを搭載

 STYLE-15FH040-i7-UHEXは、パソコン工房がラインナップするiiyama PCブランドのノートPCのなかでは、スタンダードな「STYLE∞シリーズ N-Class」に属している。非光沢タイプの15.6型液晶、使いやすいテンキーつきフルサイズキーボード、必要十分のインターフェイス構成など、ビジネスユーザー向けにキレイにまとめられたスペックながら、低価格で購入できることが特徴となる。

STYLE-15FH040-i7-UHEXのスペック
OSWindows 10 Home
CPUCore i7-10700(8コア/16スレッド、2.9~4.8GHz)
メモリDDR4-2666 16GB(デュアルチャネル)
ストレージNVMe SSD 500GB
液晶ディスプレイ15.6型(1,920×1,080ドット)
通信Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0、Gigabit Ethernet
おもなインターフェイスUSB 3.0×2(1基はType-C)、USB 2.0×2、HDMI、ミニD-Sub15ピン、ヘッドフォン、マイク
Webカメラ100万画素
バッテリ駆動時間約4.2時間
本体サイズ361.5×250×36.2mm(幅×奥行き×高さ)
重量約2.2kg
直販価格10万6,678円

 とは言え、搭載するCPUは、普通に自作PC向けのパーツショップでも購入できるデスクトップPC向けのCore i7-10700だ。コードネーム「CometLake」と呼ばれていた第10世代のCoreシリーズに属しており、8コア16スレッドに対応。動作クロックは2.9GHz、Turbo Boost時は4.8GHzまでアップする。

 同じアーキテクチャを採用するCPUであれば、ノートPC向けのCPUより、デスクトップPC向けのCPUのほうが性能が高くなる傾向がある。これは単純な話で、デスクトップPC向けCPUのほうが動作クロックが高めに設定されるからだ。

 薄型でコンパクトなノートPCでは、冷却性能の低いCPUクーラーしか組み込めないため、高い動作クロックでは利用しにくい。しかしデスクトップPCは内部に余裕があるため、CPUクーラーの自由度が高く、CPU本来の性能が発揮できるよう動作クロックを高く設定しやすいのだ。

 簡単に言えば、「性能が高い分、発熱も大きい」のがデスクトップPC向けCPUの特性と言える。こうした物理的制約に起因する問題を、STYLE-15FH040-i7-UHEXではどう解決しているのだろうか。

 箱から取り出してみると、側面の角をスパッと切り落としたような鋭角的なデザインが印象的だ。また幅は361.5mm、奥行きは250mmと、底面積は大手メーカー製のA4判ホームノートPCとほぼ同じサイズ感と考えてよい。

 しかし厚みは36.2mm。20mm以下のスリム筐体を採用することが多い最近のホームノートPCと比べると、やや厚みのあるデザインを採用していることがわかる。

最近のノートPCと比べると、やや厚みのあるデザインを採用する
背面や底面、左右側面などさまざまな部分に通風口を設けており、風通しがよい筐体を採用する

 STYLE-15FH040-i7-UHEXでは、底面のネジを外すことで内部にアクセスできるようになる。CPUソケットまわりやCPUクーラーを確認してみると、太いヒートパイプと大きめのシロッコファン、アルミのヒートシンクで構成されるかなり豪華なCPUクーラーを搭載していることがわかる。

底面のカバーを外すと、内部の様子を確認できる
CPUまわりの様子だ。自作PC向けのマザーボードと同じCPUソケットにCore i7-10700が固定され、その上に熱伝導用のヒートパイプが当てられている
ヒートパイプの熱をヒートシンクが吸収し、シロッコファンでその熱を筐体の外に排出するという流れだ

 さすがにCore i7-10700ともなると、一般的なノートPCで採用される薄くて小型のCPUクーラーでは冷却がうまくいかないということだろう。こうしたノートPCのサイズ感や、豪華な構成のCPUクーラーは、同じように高性能なパーツをしっかり冷却して性能を引き出す必要があるゲーミングノートによく似ている。

 また基板には、追加でGPUを載せるためとおぼしきスペースが残されており、追加でファンやヒートシンクを組み込めそうな場所もダミーとして用意されている。こうしたことを考えると、前述したゲーミングノートPCの設計を参考にしているのではないだろうか。

CPUソケットの左側にはパターンのみが残されており、近くには追加でファンやヒートシンクを組み込めそうなスペースもある

 保証対象外になるだろうが、底面のカバーを外すと、メモリスロットやM.2スロット、2.5インチベイなどにも簡単にアクセスできる。必要に応じてストレージやメモリのサイズをアップグレードしたりと言った作業を簡単にできるのは、上級者にうれしい仕様だ。

CPUソケットの下部には、メモリスロットとM.2スロットを装備。2280規格のNVMe対応SSDが組み込まれていた
2.5インチシャドウベイを搭載しており、2.5インチHDDやSSDを増設できる

 ただCPUの発熱が大きいということは、冷却ファンの動作音も大きくなる可能性がある。実際、今回行なったいくつかのベンチマークテスト中の動作音は、ここ数年テストしてきたノートPCのなかでもかなり大きなものであったのは事実だ。

 しかしアイドル時やWebブラウズ、書類作成、TeamsのWeb会議といったビジネスに関する軽作業中に、動作音が気になる状況はほぼなく、静かで快適に作業できた。こうしたファンの動作音が小さい状態でも、CPU温度は40℃~45℃で推移し、極端に温度が上がることもない。

 デスクトップ向けCPUを搭載しているため身構えていた部分もあったが、これは予想外の結果となった。

性能は十分。高クロックで動作

 それでは本製品の性能は以下のとおりで、デスクトップ向けCPU搭載ノートとして順当な性能が出ている。

STYLE-15FH040-i7-UHEXのベンチマーク結果
PCMark 10 Extended v2.1.2506
PCMark 10 Extended score3,282
Essentials9,738
App Start-up score14,129
Video Conferencing score7,615
Web Browsing score8,583
Productivity6,789
Spreadsheets score8,540
Writing score5,398
Digital Content Creation4,208
Photo Editing score4,948
Rendering and Visualization score3,263
Video Editting score4,616
Gaming1,128
Graphics score1,473
Physics score18,323
Combined score452
PCMark 10 Battery Test v2.1.2506
※バッテリ節約機能オン、輝度40%で計測
MODERN OFFICE6時間58分
3DMark v2.16.7113
Time Spy545
Fire Strike1,368
Night Raid6,984
Sky Diver-
Cinebench R23.0
CPU9,141 pts
CPU(Single Core)1,257 pts
Cinebench R20.0
CPU3,636 pts
CPU(Single Core)494 pts
Cinebench R15.0
CPU1,535 cb
CPU(Single Core)205 cb
Crystal Disk Mark 7.0.0h
Q8T1 シーケンシャルリード1,717.07 MB/s
Q8T1 シーケンシャルライト970.24 MB/s
Q1T1 シーケンシャルリード1,597.52 MB/s
Q1T1 シーケンシャルライト973.82 MB/s
Q32T16 4Kランダムリード350.56 MB/s
Q32T16 4K ランダムライト846.29 MB/s
Q1T1 4Kランダムリード62.73 MB/s
Q1T1 4K ランダムライト172.48 MB/s
TMPGEnc Video Mastering Works 7
※約3分のフルHD動画(ビットレート15~16Mbps)を使用
H.264/AVC2分32秒
H.264/AVC(Quick Sync Video/Video Coding Engine有効)40秒
H.265/HEVC4分47秒
H265/HEVC(Quick Sync Video/Video Coding Engine有効)1分4秒

 なお、本製品のType-CコネクタはUSB PDに対応していないので、充電するには付属のACアダプタを使用する必要がある。

専用のACアダプタを接続する充電ポートは、背面に搭載する
ACアダプタのサイズも、最近のUSB PD対応ACアダプタと比べるとやや大きめだ

 満充電状態にしてからACアダプタ経由の消費電力を計測してみると、軽作業時でも8~15Wの出力が行なわれている。さらにCinebench R23のマルチコアテストの実行時には、何と100Wを超えた。一般的な作業でここまでの負荷がかかることはまずないとは言え、普通のノートPCではなかなか見ない数値ではある。

 このCinebench R23を実行中しているときのCPU温度は最高で84℃、クロックは全コア3.4GHzまで上昇した。Core i7-10700の基本の動作クロックは2.9GHz、Turbo Boost時は4.8GHzまでアップするが、冷却性能による制限もありTurbo Boost時のクロックまでは上昇しないようだが、それでもなかなかのクロックだ。

低価格ながら在宅勤務に向いた1台

 液晶パネルのサイズは15.6型と幅に余裕があるため、ゆったりとした配列のキーボードを採用する。各キーも標準的なサイズを維持しており、タイピングで狭苦しさを感じさせることはない。

 右側にはテンキーを装備しており、Excelで数字を入力する機会が多いユーザーなら便利ではある。……のだが、ちょっとした落とし穴もある。というのも、カーソルキーの右キーがテンキー部分に張り出しており、[1]キーの下にある。

 ほとんどのテンキーボードでは、[1]キーと[2]キーの下には幅の広い[0]キーがある。そのため[0]を入力したつもりで、右カーソルキーを押してしまうということが発生しやすい。0はテンキーのなかでも入力の機会が多いので、注意したい部分ではある。

361.5mmという幅をゆったりと使って、それぞれのキーを配置している
問題のテンキー部分に張り出した右カーソルキー

 インターフェイス類は、左側面にミニD-Sub15ピンやHDMIといったディスプレイ出力端子、USB 3.0対応のType-CやType-Aコネクタ、USB 2.0ポートを装備。右側面にはSDカードスロットや有線LAN端子、USB 2.0ポートを装備。Type-CがUSB PDに対応しないのは残念だが、モバイルノートではないので問題ないだろう。

左側面にはディスプレイ出力端子とUSB端子を搭載
右側面には有線LANポートやSDカードスロットなどを搭載

 ノートPC向けCPUを搭載するライバルを大きく引き離す基本性能を備えながらも、10万円をちょっと超えるくらいという価格は、なかなか買い得感がある。外装の素材はプラスチックで派手さはないが、自宅で効率的に作業をこなすためのツールと考えれば十分だ。とくに在宅勤務を中心に考えたいユーザーであれば、有力な選択肢になるのは間違いない。

 またノートPCながらも拡張性が高く、容易にメンテナンスできることも見逃せないポイントだ。必要に応じてストレージやメモリを拡張していけば、長く利用していけるだろう。