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延命か、買い換えか。5年前のノートパソコンを現行機と対決。どちらがお得か考えてみた
2021年1月26日 09:50
ノートパソコンを長く活躍させるためには、メモリやストレージを換装するのは有効な手段だ。実際、筆者自身も何度か愛機をアップグレードしている。
しかし、たとえば2~3年前ではなく、5年以上前のノートパソコンでも、メモリやストレージを換装したさいに費用に見合った効果は得られるのだろうか? いっそのこと新しいノートパソコンを購入したほうが満足感は高いのではないだろうか? そのような疑問の回答の1つとして、今回、新旧ノートパソコンを用意して検証を実施してみた。
最新パソコンと5年以上前のパソコンはスペックがこれだけ違う
さて、今回の記事を作るにあたり、現行マシンとして6万8,000円(税別)で販売されているドスパラの14型ノートパソコン「THIRDWAVE F-14IC」と、2015年に発売されたマシンとして15.6型ノートパソコン「NEC VersaPro VK25」を用意した。
両機種は画面サイズや光学ドライブの有無など製品カテゴリが異なっているが、「THIRDWAVE F-14IC」は第10世代(Ice Lake)のCore i5-1035G1(4コア/8スレッド、1~3.6GHz、TDP 15W)、「NEC VersaPro VK25」は第4世代(Haswell)のCore i5-4200M(2コア/4スレッド、2.5~3.1GHz、TDP 37W)を搭載している。
また、今回の記事は、メモリとストレージを交換できることが必須条件だ。というわけで両機種をノートパソコンという大きな枠組みで比較しつつ、Haswell世代の旧型マシンがメモリ、ストレージを交換することでどのぐらいパワーアップするのか?……という視点からもご覧いただければ幸いだ。
おもなスペックを比較すると、「THIRDWAVE F-14IC」はCore i5-1035G1/メモリ8GB/SSD 256GB/14型フルHD液晶、「NEC VersaPro VK25」はCore i5-4200M/メモリ4GB/HDD 500GB/15.6型HD液晶となっている。CPUの世代では「THIRDWAVE F-14IC」が第10世代(Ice Lake)、「NEC VersaPro VK25」が第4世代(Haswell)と6世代も異なっているわけだ。
また、メモリも「THIRDWAVE F-14IC」が8GB(DDR4-2400)、「NEC VersaPro VK25」が4GB(DDR3-1600)と容量だけでなく規格が異なり、ストレージも前者にはNVMe SSD、後者にはSATA HDDが搭載されている。標準仕様で両者に大きな差があるのは言うまでもない。メモリを増量、ストレージを換装することで「NEC VersaPro VK25」がどのぐらいのパワーアップを遂げるのか気になるところだ。
ディスプレイの解像度も「THIRDWAVE F-14IC」がフルHD(1,920×1,080ドット)、「NEC VersaPro VK25」がHD(1,366×768ドット)と異なっているが、スペック以上に重要なポイントが経年変化。5年以上使い続けていれば、バックライトなどの劣化によりディスプレイの画質が低下していることは間違いない。
使い勝手に直結する違いがインターフェイス。「THIRDWAVE F-14IC」がUSB 3.0 Type-C×2、USB 3.0×2、ヘッドフォン/マイク共用端子であるのに対し、「NEC VersaPro VK25」はUSB 3.0×4、USB 2.0、HDMI、ミニD-Sub15ピン、シリアルポート、Ethernet、ヘッドフォン端子、マイク端子、SDカードスロット、PCカードスロット……とインターフェイスの数自体は後者のほうが充実しているが、前者はUSB PD(Power Delivery)に対応するUSB Type-Cポートが搭載されている。最新モデルはメモリ、ストレージ以外のスペックも大きく進化している点を留意しておく必要があるのだ。
THIRDWAVE F-14IC | NEC VersaPro VK25 | |
---|---|---|
OS | Windows 10 Home | Windows 10 Home (元のOSはWindows 8 Pro) |
CPU | Core i5-1035G1 (4コア/8スレッド、1~3.6GHz) | Core i5-4200M (2コア/4スレッド、2.5~3.1GHz) |
メモリ | 8GB(DDR4-2400) | 4GB(DDR3-1600) |
ストレージ | 256GB(NVMe SSD) | 500GB(SATA HDD) |
光学ドライブ | - | DVDスーパーマルチドライブ |
ディスプレイ | 14型フルHD(1,920×1,080ドット、非光沢) | 15.6型HD(1,366×768ドット、非光沢) |
インターフェイス | USB Type-C 3.0×2、USB Type-A 3.0×2、ヘッドフォン/マイク端子、microSDカードスロット | USB 3.0×4、USB 2.0、HDMI、ミニD-Sub15ピン、シリアルポート、Ethernet、ヘッドフォン端子、マイク端子、SDカードスロット、PCカードスロット |
無線通信機能 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.1 | - |
Webカメラ | ○ | - |
バッテリ | 設計容量49,087mWh フル充電容量49,087mWh | 設計容量24,300mWh フル充電容量18,965mWh |
バッテリ駆動時間 | 約14.4時間(JEITA Ver.2.0) | - |
生体認証 | 指紋認証センサー一体型電源ボタン | - |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 321×216.5×17.3mm | 378×266×34.9mm |
重量 | 約1.2kg | 約2.4kg |
価格 | 6万8,000円(税別) | - |
古いパソコンに延命措置を施したら差は縮まるのか?
さて本題に入ろう。今回、NEC VersaPro VK25に増設するメモリはCFD販売の「D3N1600PS-L8G」(DDR3-1600、4GB)で、換装するストレージは同じくCFD販売の「CSSD-S6M512CG3VZ」(SATA 6Gbps 512GB SSD)を使用した。
メモリのD3N1600PS-L8Gの実売価格は記事執筆時点で3,000円前後、ストレージのCSSD-S6M512CG3VZの実売価格は6,000円前後(発売当時)。「CSSD-S6M512CG3VZ」は販売を終了している店舗が多いが、500GB前後のSSDの実売価格は7,000円前後。今回と同様のメモリ増設、ストレージ換装にかかる費用は合計で1万円前後ということになる。
まずは総合的な性能をチェックするために、「PCMark 10」のスコアを見てみよう。
THIRDWAVE F-14IC | NEC VersaPro VK25換装前 | NEC VersaPro VK25換装後 | |
---|---|---|---|
PCMark 10 Score | 3,610 | 2,168 | 2,806 |
Essentials | 7,888 | 4,624 | 6,680 |
App Start-up Score | 10,099 | 3,474 | 8,920 |
Video Conferencing Score | 6,690 | 5,546 | 5,820 |
Web Browsing Score | 7,265 | 5,133 | 5,744 |
Productivity | 5,389 | 3,462 | 4,558 |
Spreadsheets Score | 4,842 | 4,463 | 4,866 |
Writing Score | 6,000 | 2,686 | 4,271 |
Digital Content Creation | 3,005 | 1,728 | 1,970 |
Photo Editing Score | 3,794 | 1,918 | 2,066 |
Rendering and Visualization Score | 1,981 | 1,275 | 1,320 |
Video Editting Score | 3,612 | 2,112 | 2,804 |
「NEC VersaPro VK25」はメモリとストレージをアップグレード後に、PCMark 10 Scoreは約1.29倍に相当する「2,806」、Essentialsは約1.44倍に相当する「6,680」、Productivityは約1.32倍に相当する「4,558」、Digital Content Creationは約1.14倍に相当する「1,970」を記録している。メモリ容量が増えて、ストレージ速度が高速化されることで、性能が全体的に大きく底上げされていることがわかる。
一方、「THIRDWAVE F-14IC」のPCMark 10 Scoreは「3,610」と、「NEC VersaPro VK25」のアップグレード後の約1.29倍、アップグレード前の約1.67倍のスコアを記録している。
つまり、PCMark 10 Scoreだけで比較するならば、「NEC VersaPro VK25」はメモリ増設、ストレージ換装の1万円前後で約1.29倍の性能を得られ、6万8,000円(税別)の「THIRDWAVE F-14IC」に買い替えれば約1.67倍の性能を得られると言い換えられる。
バッテリ駆動時間については、「THIRDWAVE F-14IC」が49,087mWh、「NEC VersaPro VK25」が24,300mWhとバッテリの設計容量が異なるうえ、後者は経年劣化によりフル充電容量が18,965mWhに減っている。そのため、「THIRDWAVE F-14IC」が9時間26分、「NEC VersaPro VK25」が1時間33分と、約6.09倍もの差がついた。
THIRDWAVE F-14IC | NEC VersaPro VK25換装前 | NEC VersaPro VK25換装後 | |
---|---|---|---|
動作時間 | 9時間26分 | - | 1時間33分 |
両者を比較すること自体に意味はないが、5年以上前のノートパソコンのバッテリは大幅に劣化しており、また、とつぜん使えなくなる可能性もある点には注意しておこう。なお、計測はディスプレイ輝度50%で実施した。
新旧マシンでWindows 10の起動速度を比較
つぎに試したのは、Windows 10の起動速度。これはHDDからSSDへの換装の効果がてきめんで、57秒90から11秒90へと起動速度が大幅に短縮された。一方、NVMe SSDを搭載する「THIRDWAVE F-14IC」はさらに起動速度が速いと予想していたが、結果は15秒64。SATA SSDに換装した「NEC VersaPro VK25」より4秒74余計に時間がかかってしまった。
両マシンの起動する動画を撮影して下記に掲載しているが、メーカーロゴが出るまでの時間が明らかに「NEC VersaPro VK25」のほうが速い。この差が、ストレージ自体の速度差を覆して、勝負を決してしまったわけだ。
とは言え、「THIRDWAVE F-14IC」は指紋認証センサー一体型電源ボタンを採用しているので、パスワードを入力しなくてもすばやくログイン可能。今回は短いパスワードだったが、もっと長く、複雑なパスワードを使っていれば、「THIRDWAVE F-14IC」のほうが速く起動できるはずだ。
THIRDWAVE F-14IC | NEC VersaPro VK25換装前 | NEC VersaPro VK25換装後 | |
---|---|---|---|
デスクトップ表示までの所要時間 | 15秒64 | 57秒90 | 11秒90 |
実作業と実アプリの使用感に大きな差
ベンチマークソフトのスコアがどんなによくても、OSやアプリケーションの実際の動作が快適でなければ意味がない。そこで最後に、実際のパソコン作業を想定したベンチマークを実施してみた。
結果は下記のとおり。
THIRDWAVE F-14IC | NEC VersaPro VK25換装前 | NEC VersaPro VK25換装後 | |
---|---|---|---|
圧縮ファイルの解凍(解凍前249MB、解凍後631MB) | |||
解凍時間 | 46秒93 | 1分48秒59 | 1分10秒33 |
Lightroomの起動速度 | |||
カタログ表示の所要時間 | 8秒01 | 30秒23 | 15秒45 |
Lightroomで100枚のRAW画像を現像 (7,952×5,304ドット、カラ- - 自然) | |||
現像速度 | 15分34秒75 | 48分0秒12 | 17分57秒56 |
Microsoft Edgeを起動(10枚のタブをピン留めした状態) | |||
起動時間 | 11秒92 | 1分5秒23 | 25秒22 |
まず、「NEC VersaPro VK25」のアップグレード前後を比較してみると、「圧縮ファイルの解凍」は約47%の1分10秒33、「Lightroomの起動速度」は約51%の15秒45、「Lightroomで100枚のRAW画像を現像」は約37%の17分57秒56、「Edgeの起動時間」は約39%の25秒22へと所要時間が短縮されている。
しかし「THIRDWAVE F-14IC」とアップグレード後の「NEC VersaPro VK25」を比較してみると、「圧縮ファイルの解凍」は約67%の46秒93、「Lightroomの起動速度」は約52%の8秒01、「Lightroomで100枚のRAW画像を現像」は約84%の15分34秒75、「Edgeの起動時間」は約47%の11秒92へと所要時間が短縮されている。
なお、Edgeの起動時間については、今回用意した「NEC VersaPro VK25」に無線LANカードが内蔵されていなかったため、Wi-Fi 5対応無線LAN子機「GW-450D KATANA」を接続して、計測している。
安価に愛機を延命させるか、コスパ優れる最新マシンを手に入れるか?
今回、「NEC VersaPro VK25」のメモリを増量、ストレージを換装したことにより大幅な性能向上が確認できた。1万円前後の出費でこれだけの効果を得られるのだから、コストパフォーマンスが高いことは間違いない。
しかし、その一方で、CPUの性能、ストレージの転送速度の違いにより、最新ノートパソコンの「THIRDWAVE F-14IC」などとはまだ性能に開きがあるというのが率直な感想。また、ディスプレイ、バッテリの経年劣化、古い規格のインターフェイスなど、サイズや重量を抜きにしたとしても使い勝手に大きな差があるのも事実だ。
長年使っているノートパソコンを安価に延命させるべきか、それともコストパフォーマンスに優れる最新マシンで快適な環境を手に入れるべきか悩ましいところだが、今回の記事がその判断材料となれば幸いだ。