特集

コミックもテキストもイケる、可搬性に優れた小型タブレット3選+読書端末2選

小型タブレット3選+読書端末2選

 7~8型の小型タブレットは、国内で人気が高いカテゴリの製品だ。B5サイズで重量も500g前後はある10型前後のタブレットと異なり、コンパクトなため電車のなかなどでも使いやすいこと、コミックおよびテキストのどちらでも対応できるサイズであることが、電子書籍ユースにおいてはメリットだ。

 今回は、筆者連載の「山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ」でこれまで紹介した7~8型の小型タブレットのなかから、2019年上半期の時点におけるオススメ製品をピックアップして紹介する。また、画面サイズはこれらよりひとまわり小さくなるものの、E Ink電子ペーパーを採用した各社の読書端末についても、あわせておすすめを紹介する。

7~8型の小型タブレット、選ぶ上でのポイントとは

 7~8型クラスの小型タブレットについては、見開き表示をするか否かで、選ぶ製品がまったく変わってくる。見開きを行なうのであれば画面サイズは7型ではなく8型で、解像度は300ppiは欲しい。200ppiクラスでは細かい文字が読み取りにくく、見開き表示は実質的に不可能だからだ。一方、単ページ表示で十分ならば、解像度は300ppiにこだわる必要はなく、画面サイズも7型で十分なことが多い。

 重量については、このクラスの代表と言えるiPad miniシリーズ(約300g)を基準に、どの程度までの重量増を許容できるかが、1つの目安になる。300g台前半ならば許容範囲、350gを超えると長時間の片手持ちは厳しくなる。ちなみに300g未満のモデルも探せばあるが、スペック的にはローエンドか、あるいはモデルそのものが古く、選択肢には入りにくい。

 処理性能は、電子書籍利用がメインであれば、10型前後のタブレットと同じく、それほど高くなくとも問題ない。せいぜい多数のサムネイルが並んだ一覧ページのスクロールがカクつく程度で、読書への影響は軽微だ。ただし動画やゲームなど、電子書籍以外の利用目的がある場合は、ある程度余裕を持って製品を選ぶことをおすすめする。

 10型前後のタブレット以上にこだわりたいのが、ストレージの容量だ。このサイズの小型タブレットは外出先に持ち出して使うことも多く、Wi-Fi環境であらかじめコンテンツをダウンロードしておく機会も多い。ストレージに余裕がないと、空き容量を毎回やりくりしなくてはならず、運用が面倒になるため、旅行や出張など、長期間Wi-Fiを利用できないシーンが多いならば、ストレージ容量は極力重視したほうがよいだろう。

小型タブレット3機種と読書向け端末2機種を紹介

 ここで紹介する製品は下表のとおりだ。

【表1】小型タブレット3機種のスペック
iPad mini(第5世代)MediaPad M5 lite 8"Fire HD 8(第8世代)
発売2019年4月2019年5月2018年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ)203.2×134.8×6.1mm204.2×122.2×8.2mm214×128×9.7mm
重量300.5g310 g約369g
OSiOS 12Android 9Fire OS
CPU64ビットアーキテクチャ搭載A12 Bionicチップ
Neural Engine
組み込み型M12コプロセッサ
Huawei Kirin710 オクタコア(2.2 GHz×4 + 1.7 GHz×4)クアッドコア1.3GHz×4
メモリ3GB1.5GB
画面サイズ/解像度7.9型/2,048×1,536ドット(326ppi)8型/1,920×1,200ドット(283ppi)8型/1,280×800ドット(189ppi)
通信方式IEEE 802.11ac MIMO対応HT80IEEE 802.11acIEEE 802.11n
バッテリ持続時間(メーカー公称値)最大10時間(Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生)5,100 mAh(10.6時間のビデオ再生と62時間の音楽再生)10時間
コネクタLightningMicro USBMicro USB
メモリカード-○(400GBまで)
直販サイト価格(2019/7/18現在)45,800円(64GB)
62,800円(256GB)
24,710円(32GB)8,980円(16GB)
10,980円(32GB)
【表2】読書向け端末2機種のスペック
Kindle Paperwhite(第10世代)Kobo Forma
発売月2018年11月2018年10月
サイズ(同)167×116×8.18mm177.7×160.0×4.2~8.5mm
重量約182g197g
画面サイズ/解像度6型/1,072×1,448ドット(300ppi)8型/1,440×1,920ドット(300ppi)
ディスプレイモノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式IEEE 802.11n
内蔵ストレージ約8GB(ユーザー使用可能領域:約6GB)
約32GB(ユーザー使用可能領域:約27GB)
32GB
フロントライト内蔵内蔵(自動調整)
ページめくりタップ、スワイプタップ、スワイプ、ボタン
防水・防塵機能あり(IPX8規格準拠)
バッテリ持続時間の目安数週間
明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、一日30分使用時数週間
発売時価格13,980円(8GB、広告つき)
15,980円(8GB、広告なし)
15,980円(32GB、広告つき)
17,980円(32GB、広告なし)
34,344円

Apple iPad mini(第5世代)

縦向きを基本としたデザイン。ホームボタンが指紋認証を兼ねる

オススメポイント

 このクラスの製品の代表格と言えるAppleの「iPad mini」シリーズは、長らくモデルチェンジされないままだったが、今年(2019年)に入って待望の第5世代モデルがリリースされた。従来モデルも電子書籍ユースには問題なく利用できるスペックだったが、新モデルはCPUやメモリをはじめとしたスペックが強化され、より快適に利用できるようになった。

 本製品が電子書籍に向いている点としては、画面が紙の本に近いアスペクト比4:3であること、解像度が326ppiと高いこと、また重量も300.5g(Wi-Fiモデル)と軽量なことが挙げられる。一方でネックになるのは、容量が64GBもしくは256GBの二択とやや極端なこと、安いモデルでも4万円台からと高価なことだ。それらさえ問題にならなければ、新たにApple Pencilにも対応したことも含めて、性能、汎用性ともに文句のつけようのない製品だ。

縦画面での単ページ表示。幅が広いため、片手で両サイドを握って持つのは難しい
横画面での見開き表示。アスペクト比は4:3ゆえ、7.9型ながらも見開きでも1ページあたりのサイズは大きい

ファーウェイ MediaPad M5 lite 8

縦向きを基本としたデザイン。認証方式は顔認証のみ

オススメポイント

 Androidデバイスは、ストアアプリ内で電子書籍を直接購入できるほか、一部の電子書籍アプリでは音量ボタンによるページめくりが行なえるという、iOSデバイスにない利点がある。これらを理由に、Androidにこだわって7~8型クラスのタブレットを探すならば、2019年5月に発売されたファーウェイ「MediaPad M5 lite 8」は候補の筆頭に上がる製品だ。

 この製品、スペックは決してハイエンドではないが、実売価格はWi-Fiモデルで2万円台前半、LTEモデルでも2万円台後半(いずれも32GBモデル)と、このクラスの製品のなかではコストパフォーマンスが傑出している。解像度も283ppiと十分に高いため見開き表示での描写力も十分で、かつ重量は310gと、8型としては比較的軽量なのも電子書籍向けと言えるだろう。

縦画面での単ページ表示。片手持ちがギリギリ可能なサイズだ
横画面での見開き表示。アスペクト比4:3のiPad miniより天地が窮屈だが、解像度は足りており、よほど小さな文字などでなければ読み取れる

Amazon Fire HD 8(第8世代)

縦向きを基本としたデザイン。指紋認証や顔認証は搭載せず、ロック解除はやや面倒

オススメポイント

 このサイズのタブレットが自分に合うかどうか、かぎられた予算のなかでまず試してみたいという場合、Amazonの「Fire HD 8」は有力な候補となる。解像度は189ppiとやや低く、また電子書籍ストアはKindle専用となるものの、価格は8,980円からと、このクラスの製品としては群を抜いてリーズナブルだ。容量は16GBと32GBの2択だが、いずれもmicroSDで容量を追加できる。

 ただしGoogle Playストア非対応ゆえ、タブレットとしての汎用性はiOSやAndroidのタブレットには劣るほか、重量は約369gと、前出のiPad miniやAndroidの8型タブレットに比べて数十g重いことには気をつけたい。また画面サイズは、下位モデルの「Fire 7」より大きいとはいえ、解像度自体が低いため、コミックの見開き表示は期待しないほうがよいだろう。

縦画面での単ページ表示。片手持ちがギリギリ可能なサイズだが、筐体がやや重いのはネック
横画面での見開き表示。画面サイズおよびアスペクト比は前述のMediaPad M5 liteと変わらないが、解像度が低いため細部の描写はあまり得意ではない

Amazon Kindle Paperwhite(第10世代)

縦向きを基本としたデザイン。IPX8等級の防水機能を搭載する

オススメポイント

 目に優しいE Ink電子ペーパーを利用した端末は、バッテリが数週間単位で持つことから、常時バッグのなかに入れっぱなしにして外出先で使う用途に最適だ。電子書籍向けにこれらE Ink端末を発売しているのはAmazonおよび楽天の2社で、なかでもAmazonのKindleシリーズは、約10年にもわたって継続的に製品を投入するなど、E Ink端末に注力している。

 同社のラインナップは、エントリーモデルの「Kindle」、ハイエンドモデルの「Kindle Oasis」など多彩だが、日本上陸時からの定番であるミドルクラスの「Kindle Paperwhite」は、昨年(2018年)のフルモデルチェンジでIPX8等級の防水機能を搭載した。解像度も300ppiと高く、またWi-Fiがなくともテキスト本をダウンロードできる無料4Gモデルも魅力だ。モデルチェンジのスパンが長いことを考えても、いま購入して長く使うにはうってつけの製品だろう。

画面サイズは6型とコンパクトだが、アスペクト比は4:3と本に近いため無駄な余白がなく、解像度も300ppiゆえ、コミックの表示にも十分な品質だ
横向きに設定して見開き表示を行なうこともできるが、さすがに絶対的なサイズが不足しており、細かい文字が読み取れないことも

楽天 Kobo Forma

画面横にページめくりボタンを備えたグリップが付属する。IPX8等級の防水機能を搭載する

オススメポイント

 楽天Koboも、Amazon Kindleと同様に専用のE Ink端末をリリースしている。前述のKindle Paperwhiteの直接の競合に当たるのは、2018年発売の「Kobo Clara HD」だが、楽天KoboであえてE Ink端末を選ぶのであれば、ハイエンドモデルにあたる「Kobo Forma」はぜひチェックしておきたい製品と言える。

 「Kobo Forma」は画面サイズが8型、アスペクト比は4:3ということで、見た目のサイズはiPad miniとほぼ同等。解像度も300ppiと十分で、さらにこの手のE Ink端末としてはめずらしく、コミックの見開き表示にも対応する。また防水機能や前面ライト機能はもちろん、電子書籍には便利なページめくりボタンも搭載している。3万円台半ばという価格さえ問題にならなければ、おすすめしたい製品だ。

画面サイズは8型、アスペクト比は4:3とiPad miniに酷似する。左右を反転させて持つことも可能だ
8型ゆえ見開き表示も実用レベル。ただしページめくりボタンの配置の関係で、右綴じだと左手、左綴じだと右手と、持つ手は制限される