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10台のネコ型配膳ロボットが自動連携。房総最大級の食事処で活躍

 ネコ型配膳ロボット導入など、飲食店向けDXソリューションを展開する株式会社DFA Roboticsは3月14日、千葉県富津市の食事処「漁師料理 かなや」にて、配膳ロボット10台が同時に自動連携する様子を公開した。

漁師料理かなや、DFA Roboticsによる10台のBellaBot自動連携

450席の食事処で配膳ロボット10台が自動連携

「かなや」で活躍中のネコ型配膳ロボット「BellaBot」

 「漁師料理 かなや」は海を見ながら食事ができる、房総最大級450席の食事処。豊富なメニュー、200台以上の駐車場、天然温泉「海辺の湯」、そしてお土産処が併設されている複合観光施設だ。オーダーはタッチパネルで行なう。最新技術はどんどん取り入れるようにしているといい、配膳ロボットもその一環。

「漁師料理 かなや」450席の大型飲食店
店のすぐ横は海で、特に土日は賑わって満席になるとのこと
海鮮丼やフライ、天ぷらなどが食べられる
社長が新規技術に積極的でオーダーはタッチパネル
配膳の約半分をネコ型配膳ロボットが担う
ネコ型配膳ロボット10台を活用中

 「かなや」では、2022年3月からDFA Robotics経由でPudu Roboticsのネコ型配膳ロボット「BellaBot(ベラボット)」を8台使っていた。繁忙期には1日最大900回の配膳をロボットが行ない、人の配膳数は約5割〜7割減少した。

 そこで、同年12月にはさらに配膳ロボットを活用できるように店舗を改修。ロボットが通れる幅を確保しつつ、料理を載せるための距離を短くし、出入りを整理して出口を1カ所にし、常時近くに3台程度が待機できるようにした。

クラウド等で統合制御しているわけではなく、ロボットそれぞれが独立して動きつつルートを共有することでリルートする
ロボット同士が譲り合う。20台までの相互連携が可能。
揚げ物担当、刺身担当がいる
こちらは刺身担当。分け方は店舗側が考えた

 配膳ロボットは検証中の1週間で、3,919食の配膳を実行。ホールスタッフの代わりに1日平均16km走行して、スタッフの労働負荷を軽減した。

 「漁師料理 かなや」店⻑代理の小坂歩氏は「ロボットがいないときは、全部人力だったのでサービスが低下したこともあった。富津にあるため、人材募集を出しても高齢者が多くスタッフが集まらなかった。求人を出しても本当に人が来ない。ロボットを導入することでサービスが維持できるようになった」と語った。また、ロボットがない時代はホールに15人が最低で必要だったが、ロボットを入れることで10人くらいで回せるようになったと改善効果を紹介した。

ロボットの導入経緯
配膳ロボットは1日平均16kmを走行。「およそ半分程度の配膳をロボットが担当」しているとのこと。
店舗改修前のオペレーション
導入効果を高めるための改修前後の違い。ロボットの出入りを整理した

 ロボット導入当初は、機械に慣れていないスタッフが多かったこともあり、使いこなし方を考えるのも大変で「ストレスしかなかった」そうだが、その後、現場での改善を続け、「今はストレスはまったくない」とのこと。

 そして今回、台数を増やし10台とした。ロボットは揚げ物と刺身でそれぞれ5台ずつ、2組に分かれて運用されている。店長代理の小坂氏によれば「4台ずつ合計8台で運用していたときには『Bellaちゃん』が客席に出払ってしまい、運んでもらいたくても運んでもらえないことがあった」という。そこで、もともと社長が「10台導入したい」と考えていたこともあり、追加導入となった。

ロボットが常に待機できるように
厨房とロボットとの距離も近くに
スタッフの業務効率が向上。持ち場を離れずに業務がこなせるようになった
「かなや」担当のDFA Robotics セールス&フィールドサポートDiv. 太田翔氏
常にロボットが待機できるよう10台体制に

ネコ型配膳ロボット「BellaBot」

ネコ型配膳ロボット「BellaBot」

 ロボット「BellaBot」のサイズは565×537×1,290mm。本体重量は55kg。バッテリ持続時間は12~24時間。マーカーを使った位置決めとLiDARを使った位置極めの2種類を組み合わせて自己位置推定を行なって移動し、70cm以上の通路幅があれば通ることができる。

多様なインタラクション

 障害物は下部にあるRGB深度カメラで認識/回避する。最大走行速度は1.2m/s。トレイサイズは41×50cm。積載量は1トレイあたり10kgで、4トレイ使うことで最大40kg運べる。一度の配送で最大4カ所に届けることができる。

 特徴は大きなディスプレイによる表情と音声によるインタラクション。2022年末時点で世界60か国で使われているという。

ネコ型配膳ロボット「BellaBot」
障害物を回避しながら店内を走行。70cmの通路幅で走行可能
段差では減速してビールもこぼさずに運ぶ

DFA Robotics経由で導入されたネコ型配膳ロボットは約3,500台

株式会社DFA Robotics COO 松林大悟氏

 株式会社DFA Roboticsは、大型産業用ドローン事業を手掛ける「Drone Future Aviation」として2017年9月に創業した。その後、ノルウェー製の陸上配送ロボットの実証経験などを経て、屋内で運用できるロボット事業へピボット。2020年9月には中国のサービスロボット企業のPUDU Robotics(普渡科技)と提携し、2021年6月に配膳ロボットを販売開始した。

 同年7月には社名を現在のDFA Roboticsに変更。東芝テック株式会社、シャープマーケティングジャパン株式会社を販売パートナーとし、本格的に飲食店向け配膳ロボットを展開し始めた。現在、サービスロボットの認知拡大、導入店舗へのサポート、店舗に合わせた活用提案を3本柱として事業を進めている。

認知拡大、サポート、活用提案の3本柱で事業を推進中
DFA Roboticsによるこれまでのロボット導入

 2023年1月にはネコ型配膳ロボット「BellaBot」のすかいらーくグループへの全国導入代数が3,250台を突破。Pudu Robotics Japan株式会社から「BelloBotベストセラー賞」と「代理店最優秀賞」を授賞した。なお、2022年10月にはコンサルティング会社の株式会社チェンジの完全子会社となっており、現在はロボティクスを活用して店舗運営のコンサルティングなどを含む事業を手掛け、人口減少と高齢化による日本社会の課題解決に取り組んでいる。

すかいらーくグループに配膳ロボットを3,000台以上導入済み
シャープマーケティングジャパンと提携し全国140ヶ所以上に保守拠点を設置

 「BellaBot」の累計導入台数は2023年1月のリリースでは、国内大手レストランチェーンを中心とした全国2,300店舗の飲食店へ、3,250台導入したとされている。すかいらーくグループ以外にも250台くらい販売しているという。日本で一番、配膳ロボットを導入している企業だ。ドローンでの取り組みの経験から、信頼性やメンテナンスする仕組みを構築することの重要性を重視している点が他社との違いだという。

 現在では、配膳ロボットのオペレーションは「なくてはならない」存在となっているという。DFA Robotics COOの松林大悟氏は「配膳ロボットを入れることで腰痛がなくなったといった具体的エピソードも聞いている。ロボットは人とビジネスの可能性を伸ばすソリューションだという我が社のミッションの価値を実感している」と語った。

ロボット活用からロボット前提での業務改善、システム連携等を通じて店舗運営改善を目指す
DFA RoboticsによるPudu Robotics社製の取り扱い機体の一覧。中国では「PuduBot2」が一番人気とのこと