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東大、90億光年先にある単独の星の観測に成功。最遠方の星「イカロス」
2018年4月5日 12:40
東京大学の大栗真宗助教らは3日、これまでで最も遠方となる90億光年離れた「単独の恒星」の観測に成功したと発表した。
人間の目や、天体望遠鏡には1つの星のように見える天体が、じつは非常に離れた場所に存在する銀河であることが少なくない。典型的な銀河は100億個程度の恒星で構成されるが、数億光年先といった遠方に存在するような場合、高精度な天体望遠鏡でもようやく点として見える程度。そこにある1つ1つの恒星の光は弱すぎて単独では観測できない。
しかし、大栗助教らのチームは、ハッブル宇宙望遠鏡で50億光年離れた銀河団(銀河の集団)の観測を行なっているさいに、その背後にある90億光年離れた渦巻き銀河の中で増光する天体を発見。観測を継続した結果、これは単独の星の光が重力レンズによって増光されたものであることがわかった。これまで単独の星として観測された最遠方のものは1億光年先のものだったが、その記録が大きく塗り替えられた。
光は重力によって軌道を曲げられる。光が宇宙空間でブラックホールや銀河など、重力の大きな場所の近辺を通過するさい、大きく軌道が曲げられ、それがレンズの効果を果たすこともあり、これは重力レンズと呼ばれる。今回発見された星は、重力レンズによって2,000倍以上に増光されたと見積もられている。
現在、宇宙研究では、直接観測できないが、重力効果を持つ「暗黒物質」(ダークマター)の解明に注目が集まっている。近年、重力波の観測成功を契機に、暗黒物質の正体が太陽の数十倍の質量のブラックホールであるという仮説が提唱されていたが、すべての暗黒物質が太陽の数十倍の質量のブラックホールだった場合、今回の星の増光パターンを説明できないため、この仮説は棄却されることとなる。
新たに見つかった恒星は「イカロス」と名付けられた。