ニュース
次世代USB「USB4」ではDisplayPort出力対応が“必須要件”
~DisplayPort 2.0はThunderbolt 3並の速度へ
2019年11月15日 17:45
Video Electronics Standards Association(VESA)は都内で記者会見を開催し、同団体が規格する「DisplayPort」の最新状況などを説明した。
登壇したVESA コンプライアンスプログラムマネージャのジム・チョート氏は、VESAについて290以上の企業が参加する世界的なアライアンスであり、技術のライフサイクルや仕様などすべてがオープンな団体であると説明。
DisplayPortについて、以前はPCやゲーム機などでの採用が目立っていたが、現在ではスマートフォンやタブレット、自動車、プロジェクタ、サイネージやキオスクなどでの採用実績があるとし、とくに2019年ではUSB Type-CのAlternate Mode(以下DP Alt Mode)への対応でモバイルノートPCやスマートフォン/タブレットなどでの採用が増え、市場普及率が大きく高まったとした。
DisplayPort 2.0対応ケーブルは高価格に
6月に発表(既報参照)された「DisplayPort 2.0」では、4レーン時の最大帯域幅がDP 1.4aの25.92Gbpsから77.4Gbpsへと約3倍に拡張され、60fpsで8K(7,680×4,320ドット)以上の解像度を伝送できる。
視覚的損失を抑えて映像を圧縮伝送する「Display Stream Compression (DSC)」のサポートで、16K(15,360×8,460ドット)HDRの60fps伝送も可能となった。
そのほか、「Multi-Stream Transport(MST)」が標準プロトコルとなったほか、省電力性を高める「Panel Replay」も追加。
Panel Replayは、組み込み向け規格のEmbedded DisplayPort(eDP)で「Panel Self Refresh(PSR)」として実装されているのと同種のもので、ディスプレイコントローラ側にGPUから送られてきたフレームを保持しておき、次のフレームが送られてこなくともディスプレイ側は表示をし続けられるという技術。ディスプレイとGPUとのリンクを切断しても画面表示を続けられるため、表示に変化があるまでGPUをスリープさせるといったことが可能となり、システム消費電力を大きく削減できるという。
Display Alt Modeの普及などを受けて、Type-Cコネクタなどの共有インターフェイス使用への最適化も図られている。
認証試験は2020年より開始される見込み。チョート氏によれば、実製品が市場投入されるまでは認証試験開始から通常は1年程度かかるが、DP 2.0に関しては既存技術であるThunderbolt 3とPHYの実装が近いため、もう少し早いタイミングで製品が登場するかもしれないとのことだ。
VESAではケーブルの仕様と認証も策定しており、DP1.4aのアップデートとして、「DisplayPort 8Kケーブル」も策定。DP 8K認証ケーブルでは、高いリンクレートでの円滑な操作と完全な仕様遵守の保証が行なわれている。
ケーブルに関連して、チョート氏にDP 2.0のケーブルでは長さに制約があるのか尋ねたところ、Thunderbolt 3ケーブルと同じような制限がかかるだろうという回答が得られた。
Thunderbolt 3ケーブルの場合、伝送レートの高さから一般的なメタル(金属)ケーブルでは長さに制限があり、40Gbpsに対応するケーブルでは、ICを内蔵しないパッシブケーブルの場合1m未満、伝送距離延長のためイコライザなどを組み込んだアクティブケーブルの場合で2m前後という製品が多い。
DP 2.0の最大77.4Gbpsというデータレートは、Thunderbolt 3の80Gbps(双方向40Gbps)に匹敵し、レーンあたり伝送レートも最大20Gbps(ともに最大4レーン接続)で共通している。
パッシブケーブルは安価に製造できるが、80cmのケーブルはディスプレイ接続には実用性に欠けるため、フルスペックのDP 2.0対応ケーブルはアクティブケーブルが主流となると見られる。とすると、現状のThunderbolt 3アクティブケーブルと同様に相応の価格となりそうだ。
なおDisplayPortでは、フルサイズのDisplayPortコネクタやMini DisplayPortコネクタといった独自の規格が存在するが、チョート氏は2017年の記者会見(VESA、DisplayPortコネクタのフェードアウトを示唆)で、同氏は「USB Type-Cが主流となり、Mini DisplayPortはフルサイズのDisplayPortも含めて少なくなっていくだろう」としていた。
しかし今回の会見で同氏は、モバイルデバイスにおいてType-CによるDPが普及するという視点は変わらないものの、フルサイズのDPコネクタは根強い需要があることなどを挙げ、VESAとしてType-Cコネクタへの1本化を進めていくという考えはないことを示した。
USB4はDisplayPort伝送の対応が必須
8月に発表された次世代USB規格「USB4」では、Thunderbolt 3プロトコルの仕様が採用され、それにともなってDisplayPortの対応も組み込まれることとなった。
チョート氏は、USB4はType-Cコネクタを採用し、USB3とPCIe、DisplayPortプロトコルによる接続をサポートすると述べ、エンドユーザーの混乱を最小限にするため、Type-Cコネクタエコシステム内での変換を支援することを掲げているとした。
DisplayPort向けの製品タイプとしてはUSB4 Host、USB4 HubおよびUSB4 Deviceがあるが、このうちUSB4 HostおよびUSB Hubでは、DPプロトコルトンネリングのサポートが必須であるほか、ダウンストリームポートでのDP Alt Modeのサポートも必須になっているとした。なおUSB4 Deviceの対応はオプションとなる。
DP Alt ModeとDPプロトコルトンネリングは、レーンをDP接続が専有するのか、ほかのプロトコルと共有するかの違いで、トンネリングの場合はUSB3やPCIeなどと非排他的に接続できる。DP Alt ModeはUSB 3.1、プロトコルトンネリングはThunderbolt 3の仕様が継承されている。
簡潔に言えば、Type-Cポート経由で映像出力をする場合、USB 3.1まではHostやHubがDP Alt Mode対応か否かを確認する必要があったが、USB4ではその必要がない。
とくにUSB4のHost側実装でDP出力への対応が必須となったことで、PCのようなGPU搭載で映像出力機能のあるホスト側デバイスにおいてType-C経由でのDP出力サポートが大きく進むと考えられるため、PCユーザーにとっては朗報と言えるだろう。
自分で確認もできるDisplayHDR
DisplayHDRについては、業界初のオープンな液晶および自己発光素子ディスプレイ向けのHDR仕様であると紹介。試験項目やツールも完全にオープンで、VESAメンバーでなくとも確認することができるとした。
実際にMicrosoftストアで認証試験に使われているアプリが配信されている。
製品の認証試験などを行なっているグラナイトリバーラボ・ジャパン株式会社 エンジニアリングマネージャ 永田学氏によれば、DisplayHDRの認証試験は暗室内で前述のアプリケーションとWindows PC、照度計と測色計で実施しているとのことだ。
もし暗室と照度計/測色計を所有しているなら、(認証ロゴはもらえないが)自分で機材の評価を実施することもできる。