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Dynabook、今年度中に8K PC発売。5G PC/タブレットも開発中
2019年7月26日 13:26
シャープの戴正呉会長兼社長は、シャープ傘下のDynabook株式会社が、2019年度中に「8K PC」を発売する計画であることを明らかにした。また、5G内蔵PCやタブレットの開発を進めていることも明らかにした。
これは、シャープの戴会長兼社長が、7月25日に社内イントラネットを使って社員に発信したメッセージのなかで触れたもの。これまでにも8K PCを開発していることについては明らかにしていたが、発売時期を示したのは今回がはじめてだ(シャープが31.5型120Hz駆動の8K液晶やDynabookの8K一体型PCなどを披露参照)。
戴会長兼社長は、「Dynabook株式会社では、映像編集や広告制作、CAD設計など、さまざまな分野で8Kを活用できる環境を早期に構築すべく、8K PCの開発を進めており、これを、2019年度中を目標に発売する予定である」、「さらに、5G内蔵PCやタブレットの開発に加えて、独自のエッジコンピューティングデバイスであるdynaEdgeを活用した工場現場における8K+5Gソリューションの構築にも取り組んでいる」とした。
また、「通信事業本部においては、2020年春に、B2C向けに5Gスマートフォンの商品化を予定している。それに続いて、B2B分野への展開も検討している」と発言。加えて、「B2B分野では、5Gルーターの商品化を検討するとともに、ネットワーク事業者と連携し、イベント会場や工場などの特定分野における5Gネットワークソリューションの提供を目指す」とも述べた。
さらに、7月9日に、東京・新宿のベルサール新宿グランドで開催した「dynabook Day 2019」に関しても言及。「Dynabook株式会社は、世界初のノートPCである、Dynabook誕生30周年企画の一環として、dynabook Day 2019を開催した。このイベントでは、Dynabook株式会社が目指す方向性である『dynabook as a Computing』、『dynabook as a Service』を具現化した商品やサービスを一斉に展示し、来場した取引先や販売パートナーに紹介した。
同時に、メディアを対象にサービス事業拡大戦略発表会を開催し、Dynabook株式会社の覚道清文社長から、サービスやソリューション事業の拡大に向けた具体的な戦略について説明するとともに、クラウドサービス分野におけるMicrosoftとの連携強化について発表した。dynabook Day 2019は、目標人数を上回る多くの方々に来場していただき、『Dynabook株式会社の勢いが感じられるイベントだった』といった前向きなコメントを多数頂戴するなど、盛況を収めることができた」と報告。
「シャープが事業変革を成し遂げる上で、ICTグループは極めて重要な役割を担う。Dynabook株式会社の皆さんには、今回発表した戦略を1日も早く具体化し、事業のトランスフォーメーションを加速してくれることを期待している」とも呼びかけた。
シャープでは、7月1日付けで、事業推進体制を、「Smart Business」、「8K Ecosystem」、「ICT」の3つの事業グループに再編。10月に、それぞれの事業についての方針を発表する姿勢を明らかにしている。
戴会長兼社長は取材の場において、「シャープの弱みの1つがICTであったが、Dynabookの買収によって補完できるようになった」などと発言しており、今後のシャープの事業戦略において、Dynabook株式会社を中心としたICTグループの役割が重要になることを強調。PCの事業戦略だけでなく、シャープの8K+5Gエコシステムやスマートホームなどの事業戦略においても、Dynabook株式会社が持つICTの技術力などが貢献するとの考えを示している。
戴会長兼社長は、2016年8月にシャープの社長に就任以来、継続的に社員向けにメッセージを発信しており、そこでシャープの現状や、戴会長兼社長の経営に対する考え方、あるいは社員に対する要望などを発信している。
今回のメッセージは、「“プラス経営”の発想でつぎつぎと新たな価値を創出し、事業変革を加速しよう」と題し、戴会長兼社長が新たに打ち出した「プラス経営」について説明している。
ここでは、「私たち自身のマインドを、削減や効率化一辺倒の引き算の発想となるマイナス経営から、新たな価値や新たな事業を生み出していくという足し算の発想であるプラス経営へと変えていかなくてはならない。拠点の集約や閉鎖、不採算事業の見直しといった構造改革を実行するにあたっても、単なる削減や効率化ではなく、
『集約先の拠点で新たな化学反応を起こし、新規事業の創出に繋げるためにはどうすべきか』
『単に拠点を閉鎖するのではなく、事業拡大に向け再活用することはできないか』
『これまで蓄積した技術や販路を有効活用できないか』
といったプラス経営にマインドを転換することにより、より良い成果へとつなげていくことが可能になる。ひとりひとりが、経営信条である『誠意と創意』、『プラス経営』のマインドをしっかりと持ち、新規事業の創出やM&A、協業などを通じた新たな価値の創出を一層加速することにより、事業変革を早期に実現していこう」とした。
シャープでは、太陽光パネルの生産を行なっている奈良県葛城市の葛城事業所や、家電の修理などを行っている大阪市の平野事業所を閉鎖し、大阪府八尾市の八尾事業所に機能を集約することを検討しているほか、本社がある堺工場の有効活用、社員寮である早春寮の閉鎖にあわせて、新設した社員寮である創意館への入居者の移転、TV向け大型ディスプレイなどを生産する堺ディスプレイプロダクト(SDP)の子会社化の検討を開始したことなどを明らかにしており、再編に向けた動きが表面化している。今回のメッセージは、こうした再編においても、戴会長兼社長流の考え方を社員に示す狙いがあったといえる。