笠原一輝のユビキタス情報局
iPhone紛失!でも冷静に対処できたワケ
2025年4月3日 06:13
先々週、筆者は出張で渡米していたのだが、その初日に「やっちまったな」としか言いようがないトラブルに直面した。日本から渡航先のラスベガスへ向かう途中で、メインのスマートフォンとして使っている「iPhone 15 Pro」を紛失してしまったのだ。メインのスマートフォンをなくすと誰もが動揺するだろうし、場合によっては筆者のように出張しているビジネスパーソンならそこで仕事中断となってしまうかもしれない。
しかし、ちゃんと備えておくことで、たとえそうなっても仕事を継続することは可能だ。恥ずかしながら告白すると、実は1年前にも同じようにiPhoneをなくして、数日仕事にならなかったことがあった。そこからちょっとずつ備えをしてきた結果、今回は割と慌てずにすぐにバックアップとして持っていたスマートフォンに仕事に必要な環境や電話番号などを復活させ、その数時間のうちに通常モードに戻して出張業務を継続できた。
本記事ではそうしたメインのスマートフォンをなくした時に、何が問題となり、何が迅速な復旧の鍵になるか、筆者の実体験から紹介していきたい。
iPhoneを紛失したことに帰国するフライトの乗り継ぎ地で気がつく、さてどうする?
事の起こりは昨年(2024年)の3月末に行なわれたAdobeの年次イベント(Adobe Summit)に参加した後、帰国する時に発生した紛失事件だ。イベントが行なわれるラスベガスからロサンゼルスに飛行機で飛んで、ロサンゼルスに着いたときに、「あれ、iPhoneがない」となった(当時はiPhone 13 Proを使っていた)。飛行機に乗るときには搭乗時などに機内モードにするのだが、よく思いだしてみたら前日ほぼ徹夜状態で飛行機に乗ったこともあり、そういえば機内モードにした記憶もないな、となった。
飛行機を降りてから慌ててPCを開いてAppleのWebサイト「デバイス探す」にアクセスして、iPhoneやiPadなどのAppleデバイスの位置情報を確認するサイトで確認すると、ラスベガスの行ったこともない場所にあることが分かった。おそらく、飛行機を乗る前に宿泊先から空港まで利用した、Uberの車両の中に忘れてきた可能性が高いと言える。
しかし、そのUberのドライバーに連絡するためのアプリは、そのなくしたiPhoneの中にしかないし、かつ再インストールするためにはSMSでの2段階認証がかかっているので、iPhoneに物理的にアクセスするか、SIMカードを再発行してもらわない限りはアクセスできない。「詰んだ……」というのがその時の気持ちだ。
といっても、「なくしちゃった、あああ」と嘆いていても何も解決しないし、数時間後には日本行きの飛行機に乗らないといけない。仮にどこにあるか分かっても、このiPhoneは取りに行くのは不可能だと判断し、紛失したとして対応を進めていくことにした。幸いなことに、スマートフォンは常時3台持って歩いている。iPhone 13 Pro以外にはカメラの代わりに使っていた「Galaxy S23 Ultra」、ICレコーダーの代わりに使っていた「Pixel 6a」とあったし、PCにもセルラーモデムが入っていてPC単体で通信もできる。
そのため、まずAppleの「探す」からそのiPhoneを紛失モード(一時的にiPhoneをロックするモード、位置情報の確認だけができるようになっているモード)にして、仮に誰かがそのデバイスを物理的に手にしても何もできないようにした。
もちろん、iPhoneに関しては、ピンコードは16桁以上と時々忘れそうになってしまうぐらいのピンコードでガチガチにしてあり、普段はFace IDの顔認証でログインするようにしてある。それに、それに加えて紛失モードにしておくことで、たとえピンコードを知っていてもアクセスできなくなる。こうしておけば、このなくしたiPhoneから情報が漏洩するという事態を防ぐことができるし、その後はアクティベーションロックがされることで、仮に初期化できても、筆者のApple IDでアクティベーションしない限りは初期化して新しいApple IDでアクティベーションできなくなる。
だから、ちゃんとロックされているiPhoneは盗んでも拾っても部品取り程度にしか価値がなく、Appleのこの仕組みはある意味犯罪の抑止になっていると個人的には評価している(もちろん中古で販売する業者の方などには頭が痛い仕組みであるとは思うが……)。
不測の事態に備える強い味方「AppleCare+ 盗難・紛失プラン」
次に、保険の請求を行なった。対象となったiPhone 13 Proは「AppleCare+ 盗難・紛失プラン」という保険に購入時に入り、購入から2年が経過した後は、それを延長し月額料金を払っていた。
このAppleCare+ 盗難・紛失プランは元々のAppleCare+に比べてわずかな追加料金(現行モデルのiPhone 16 Pro/128GBモデルでは、24カ月分でAppleCare+が3万1,800円、AppleCare+ 盗難・紛失プランは3万4,800円と3,000円差)で盗難、紛失時に手数料(1万2,900円)を支払うことで代替機を送ってもらえるという保険だ。このサービスを利用するには、iPhoneの「探す」機能が有効になっている必要があり、1年間に2度まで利用できるという制限はあるが、その範囲内であれば、直ちに代替機を送ってきてくれる仕組みだ。
申請はAppleのWebサイトから保険会社のサイトに飛んで、紛失したことを申請し、手数料の1万2,900円をクレジットカードで支払うと、数分で申請が通り代替機が日本の自宅に送られることが決定しメールで通知があった。紛失届を出せとか、盗難届を出せとか言わずに、すぐに申請が通るのは素晴らしいユーザー体験だ。
また、その紛失保険が適用された代替機は、日本時間の土曜日の深夜に申請して、日本時間の月曜日にはもう自宅に届いた。正直に言って、これからiPhoneを買うビジネスユーザーは「AppleCare+ 盗難・紛失プラン」に加入することを強くお勧めしたい。
なお、そんな紛失届や盗難届もなく受け入れられてしまうなんて、不正使用されないのかと心配の向きもあると思う。しかし、そこは心配ご無用。この保険を使った後、元のデバイス(つまりなくしたデバイス)の所有権は保険会社に移る。従って、仮に後からデバイスが見つかっても、もはやそれはAppleなり保険会社の所有物になるので、紛失機が手元に戻ってきても保険会社に返却する必要がある。仮に持ち続けたり、売ってしまったりすれば立派な詐欺罪で刑事事件だし、所有権が保険会社に移る以上、それ以降は先方が場所の追跡をしても何も問題がないことを考えると持っているだけで不利益しかない。
また、既に述べた通り、紛失モードになっているiPhoneは保険が適用された瞬間にすべてのデータは消されて使えなくなり、アクティベーションロックと呼ばれる、アクティベーション時に元の持ち主のApple IDをいれない限りはアクティベーションができない状態になる。もし、仮に第三者が紛失されたiPhoneを物理的に入手しても、アクティベーションロックがかかっているため、再アクティベーションできない、いわゆる「文鎮」状態になるということだ(保険の適用時に、今後はその紛失したデバイスは元の所有者であってもロックを解除できないと通知される)。そのため、不正利用のやりようがない仕組みになっている。
保険会社がその紛失されたデバイスを取り返しているのかまでは分からないが、少なくともApple自身しかそのアクティベーションロックは外せないことを考えれば、率直に言って非常に合理的な仕組みだと思う。
・AppleCare+ for iPhone
・iPhone の盗難・紛失に対する補償請求方法
筆者の場合は、回線と端末は紐づけないで、その時々にSIMフリー機を含めて一番良いモノを買うようにしているので、MNO(Mobile Network Operator/移動体通信事業者)4キャリアからは端末を買っていないため利用できないが、MNOキャリアから端末を購入している場合には、通信キャリアが用意している保険を契約することを強くお勧めしたい。
たとえば、NTTドコモであれば「ケータイ補償サービス」、KDDIであれば「故障紛失サポート」、ソフトバンクであれば「あんしん保証パック」などがそれに該当し、月額契約でそれぞれ用意しているので、必要であればそれを端末購入時に契約しておくといいだろう。
・NTTドコモ ケータイ補償サービス
・KDDI 故障紛失サポート
・ソフトバンク あんしん保証パック
なお、Samsung、Google、XiaomiなどのSIMフリー機を販売している端末メーカーは対応が異なっている。Samsungの「Galaxy Care」は端末の故障(画面割れ)や盗難は2年間保証されるが、AppleCare+ 盗難・紛失プランのような紛失は保証されないし、紛失をサポートした拡張プランは用意されていない。
Googleの「Preferred Care」は事故による故障(画面割れ)などはカバーされるが、紛失・盗難は対象にされないし、そうした拡張プランも用意されていない。
Xiaomiに関してはそもそも追加で契約できる拡張保証のプランが用意されていない。
その意味で、Apple以外の各社にもそうした盗難や紛失などもカバーする保険プランの拡充に期待したいところだ。そうしたプランが用意されることは、通信キャリアによる販売からSIMフリー機の市場拡大へと変化していく市場環境の中で、今後重要になっていくと思う。
クラウドストレージを活用して端末とデータは分離しておく、それが大事な備え
本体の方は、そうした保険を適用することで特に大きな問題もなく新しい端末を入手して、それを利用することが可能になり、もう一度Apple IDを利用してアクティベーションして、必要なアプリなどをインストールすれば元の環境を構築できる。
筆者は端末とデータを分離していて、端末にしかないデータというのを残さないようにシステムを構築している。難しいことを言っているようだが、要はクラウドストレージにすべてのデータを置いておいて、スマートフォンやPC上にはそこにしかないデータを1つも残さないよう運用しているということだ。こうしておけば、PCを含めてどのデバイスをなくした場合でも、直前のファイルのうち同期が済んでいないものはなくなるかもしれないが、被害は最小限で済ませられる。
筆者の場合は、「Microsoft 365 E3」というMicrosoftの企業向けの業務ツールを契約しており、それに付随するOneDrive for Businessというクラウドストレージに業務用のデータを置いている。PCにはその全データを同期しておき、スマートフォンは必要なデータだけをローカルに置いておく、ないしは必要に応じてインターネット経由でアクセスするようにしており、ローカルにだけしかないファイルというのが出ないようにして運用している。
また、iPhoneの探す機能(Apple側の機能)やMicrosoft 365 Business/Enterpriseで提供されているモバイルデバイス管理ツール(MDM)のIntuneなどを利用することで、リモートでデータの消去(リモート・ワイプ)をどちらからでも行なえるようにしている。
もちろん厳格なロック設定(16桁などの桁数の多いピンコードなどを設定して通常は生体認証を使う)をしておくことは大前提だが、そうしたリモート・ワイプを行なえる仕組みを用意しておけば、いざという時にデータの流出などを防ぐことが可能になる。
通常はAppleの「探す」機能に用意されているリモート・ワイプ機能で十分だと思うが、筆者のようにビジネスのデータを保護したいという場合にはそうしたビジネス用のツール側のMDM機能も利用できるようにしておくべきだろう。
人間だから、ちょっとした油断でデバイスをなくすなどが当然想定される。その時に根性論で「なくさないようにすべきだ」というのは簡単だが、それができないでミスするのが人間の本質だと筆者は考えている。だから、ミスすることを前提にして(つまり自分は信用しないで)システムを構築しておくことは大事だと思う。今回もそのおかげでお金では回復できない「データをなくす」や「データの流出」などを避けることが可能になったと考えている。まず、こうしたシステムを構築しておくことが、デバイスをなくしても慌てないで済むという大前提だ。
そうした備えをしていたため、あとは送られてきたiPhoneをアクティベートして、必要なアプリをインストールすればいいだけだ。人によってはiPhoneのバックアップをiTunesなどでPCに保存している人も少なくないだろう。その場合はバックアップからiPhoneを書き戻せばいいと思う。筆者はそういうバックアップツールを使わずに、新しい環境を作り直している。その方がシステムの安定性などの点でいいと思うからだ(そのあたりは好みの問題だろう)。
意外な大きなハードルだったのが、SIMカードやeSIMの再発行
そこまではよかったのだが、再セットアップしようとしたところ、1つだけ大きな課題があった。それが、物理SIMカードの再発行だった。というのも、この当時筆者はNTTドコモの回線を契約しており、NTTドコモの物理SIMカードをiPhoneに入れて活用していた。このため、物理SIMカードの再発行はNTTドコモの実店舗(ドコモショップ)にいって再発行してもらわないとならない。
当初、これを機にeSIMに切り替えて再発行してもらうかと思ったのだが、NTTドコモのWebサイトで要件を確認すると、ドコモの回線で再発行をするサイトに接続しないとeSIMへの切り替えができないと分かった。SIMカードがないからドコモの回線に接続できない、ドコモの回線に接続できないからeSIMに切り替えられない……と堂々巡りで、とにかく実店舗にいかないとどうにもならないことはよく分かった。
そこで、帰国してすぐにドコモショップに行ってみたのだが、自宅がある東京周辺のドコモショップでは本日の枠はいっぱいで対応できない、対応できるのは5時間後だと言われて、これはダメだとその日は諦めて帰宅することにした。帰宅して、改めて都心のドコモショップの空き状況を調べると、年度末であるためかどこもいっぱいで予約は取れないし、そもそも予約しようとするとドコモ回線につながっていないと、予約すらできない仕組みだった……。
セキュリティを高めるためにそうした仕組みになっているのは理解するのだが、筆者のようにSIMカードをなくした人は詰む仕組みだなと思いながら、結局電話しまくって郊外のお店に予約の空きを見つけて、車で1時間近くかけてそこまでいって、ようやく翌日にSIMカードを再発行してもらえた。
今回は帰国時にSIMカード入りのiPhoneをなくしたため、キャリアショップの混雑により1日発行が遅れるというトラブルはあったが、少なくとも翌々日にはSIMカードを発行してもらえている。しかし、逆に言えば、たとえば出張の初日にSIMカード入りのiPhoneをなくしたら、その出張中はメインの電話番号を使えないまま1週間なり、2週間なりを過ごさないといけないことになる。
別にSIMカードがなくてもiPhoneはアクティベーションできるし、SIMカード再発行までWi-Fiなど別の手段でインターネットにつないでおけばいいじゃん、と思うかもしれない。実際、筆者もそう思っていたのだが、iPhoneの再セットアップをかけているうちに、メインの電話番号がひもづけられているSIMカード(あるいはeSIM)がないとめちゃくちゃ困ることが分かった。
その最大の要因は、多要素認証の認証要素としてSMSが設定されていて、そもそもSMS以外には対応していない場合が多いことだ。筆者は多要素認証の認証要素として、できるだけSMSは避けるようにしているのだが、アプリによってはSMSでの認証が当たり前になっていたりして、自分のメインの携帯番号に紐づいてしまっている。
Amazon、Facebook、X、Googleなどのサービスにログインする場合は、SMS以外にも認証要素(たとえばメールやMicrosoft Autherticatorのような認証コードを生成するアプリ)を利用できるため、できるだけそちらを設定している。iPhone用Microsoft Autherticatorの場合、iCloudに認証データをバックアップできるため、元のiPhoneをなくしてもバックアップから書き戻せば、認証コードも復旧できる。
また、筆者にとってはPCにおける2大アプリケーションであるMicrosoft 365アプリ(いわゆるOfficeアプリ)とAdobeの2段階認証にはそれぞれに用意されている認証アプリを複数のスマートフォンに入れておくことで対応している。Microsoft 365ならMicrosoft Autherticatorだし、AdobeならAdobe Account Accessというのがそれに該当する。それらを持って歩いている複数のスマートフォンに入れておくことで、最悪1つをなくしても業務を継続することが可能になるようにしている。
しかし、SMSによる2段階認証にしか対応していないサービスやアプリではSIMカードを復旧してもらわない限り、サービスにログインできなかったり、使えなかったりするので不便だ。仮に海外に出張でいって、その途中でなくしてしまった場合、SMSで認証できないサービスには帰国してSIMカードを再発行してもらうまで使えない状況が続く、ということだ。
MNOキャリアはeSIMの再発行にセキュリティ上の懸念から高いハードルを課している
このため、SIMカードを、物理的にではなく、バーチャルに復旧する仕組みが重要だと判断し、これ以降はeSIMに切り替えることにした。eSIMであれば、キャリアショップにいかなくても仮想的に再発行が可能になり、キャリアショップが混んでいようが、そうでもなかろうが再発行できるだろうと考えたのだ。
しかし、その考えは甘かった。なぜなら、eSIMの再発行はオンラインで申請できるが、元のSIMカード(ないしはeSIM)をなくしてしまっていると、再発行できない仕組みを通信キャリアの多くは採用しているからだ。
たとえば、筆者が昨年3月時点で契約していたNTTドコモのeSIMはオンラインで再発行する場合には、ドコモの回線に接続していなければならないという制約があることが分かり、その制約がある限りは、たとえば海外でもう一度メインの電話番号が入ったiPhoneをなくした場合には、日本に帰るまで復旧は難しいことになる。
そこで別の通信キャリアを試すことにして、au(KDDI)にMNPすることにした。auの場合は、au IDというauのアカウントサービスにログインできていれば、My auというサービスポータルからeSIMの再発行ができると同社のWebサイトに書いてあったからだ。
しかし、実際にauと契約して気付いたのだが、そのMy auにログインする時に、その電話番号にSMSで送られてくる2段階認証をクリアしない限り、ログインできないという仕様になっていた。つまりeSIMが入ったiPhoneをなくすと、やはりeSIMの再発行ができないということだ。
かつ、その2段階認証の要素は、auの電話番号だけで、電子メールなどには設定できない仕様(電話回線ではなくデータ専用回線の場合には電子メールも可能)。auのサポートセンターに問い合わせたところ、それを解除するにはSIMカードをなくしたことが確定した場合のみで、その場合には本人確認を電話でした上で2段階認証が一時的に解除される仕組みということだった(なお、My auで2段階認証をしてログインしてあるマシンでCookieなどのデータが残っていれば、2段階認証がなくアクセスできる。しかし、何らかの拍子にCookieが消えたりしていると、アクセスできなくなるので、SMSによる2段階認証が使えなければ確実にアクセスできるとは言えない)。このため、残念ながらauでもショップに行かないでの再発行は、確実にはできないと判断せざるを得なかった。
なお、MNOがこうした厳しい2段階認証や自社ネットワークからのみという制約などを設定している背景には、そうした電話番号を乗っ取ろうとするサイバー犯罪が増加しており、それから加入者を守るためだということは付け加えておきたい。
ITに慣れ親しんでいないユーザーがよくやりがちなのは、IDとパスワードだけでセキュリティは十分だと考えているということではないだろうか。しかし、実際にはIDとパスワードを使い回していると、それが何かの拍子に漏れた時に、MNOのアカウントにアクセスされてしまい、eSIMを不正に再発行されてしまう危険性がある。それを避けるために、こうした厳しい2段階認証やSMS認証をかけるのは、一般消費者向けのサービスだと考えれば致し方ないだろう。携帯電話の番号がある種の社会インフラになっている以上、通信キャリアがそうした厳しいセキュリティを導入するのは社会的に考えて十分意味があることだ。
……それは理解できるのだが、筆者のようにそれだと困るというユーザーもいなくはないし、そのなくしたSIMカードがないとアクセスできないというのは堂々巡りになってしまい、通信キャリアショップに行ったりしないと解決できなくなってしまい、復旧までに時間がかかってしまいビジネスが中断されることにつながりかねない。auの場合であれば、せめて電話番号のSMSだけでなく、電子メールでも認証できるなどの対策をしてもらえればよいのだが、そうなると一般消費者にはややこしくて……と通信キャリアが判断するのも理解はできる。一般消費者向けのITとは難しいな、と再度実感させられた。
将来的には日本政府が推進しているマイナンバーカードの電子認証を通信キャリアも採用していくことになると筆者は考えている。要するに、筆者が筆者であるとデジタル的に公的に証明できるものは何かと考えれば、マイナンバーカードを利用した電子認証しか今のところは考えられない。そうした仕組みを早く採用してもらって、こうした堂々巡りを解消してほしいと願っている。
再発行がWebサイトから容易にできるMVNOのIIJmioに移って、すぐに再発行できるように備えた
と、嘆いていてもなんともならないので、別の通信キャリアを探すことにした。最終的に落ち着いたのが、MVNOであるインターネットイニシアティブ(以下IIJ)のIIJmioだ。IIJは、インターネットの黎明期に高品質で高コスパなインターネット回線を提供するISP(インターネット・サービス・プロバイダー)として知られており、近年では有力なMVNOとして知られている。
そのIIJmioのギガプランは、NTTドコモのMVNO、KDDIのMVNOとして両社の回線からどちらかを選ぶことが可能で、複数の回線のデータ量を1つにまとめて使える機能(データ容量シェア機能)が用意されており、筆者のように人間の数以上にSIMカード(ないしはeSIM)が入る端末がある(筆者の場合はスマホ3台、タブレット1台、PC1台)ユーザーにすると、低コストで複数回線が使えるということが大きなメリットだ。
また、eSIMの再発行も簡単で、会員専用のWebサイトにアクセスして、mioIDと呼ばれるIDとパスワードを入力してログインし、メニューから「SIMカードの再発行・交換」から、対象となるSIMカードを選んで再発行の手続きをすると、簡単に再発行できる(再発行の費用は、ドコモ回線の場合は434.4円/税込、KDDI回線の場合は220円/税込)。
なお、IIJmioではログイン時に2段館認証の仕組みがないため、仮にIDとパスワードが流出すると、簡単にアクセスできてしまう。しかし、逆に言えば、ほかのサービスとIDとパスワードを使い回さなければいいわけなので、筆者の場合は自分でも覚えていない最長のパスワードを設定して、ログインするようにしている(もちろんパスワードはメモしてあるが……)。
さらにIIJmioではログインすると、ユーザーに電子メールで通知する仕組みになっているし、eSIMカードを再発行する場合にはその都度電子メールでの2段階認証が行なわれる仕組みになっており、実質的にはログイン時に2段階認証が行なわれるのと近いセキュリティレベルになっていると考えられるので、今の時点ではこれでいいだろうと判断している。
ただ、MNOからMVNOのIIJmioに移っていくつかの点で制約がある。大きく3つあり、Apple Watchのセルラーが使えなくなること、APN設定するために「APN構成プロファイル」という設定ファイルをいれなければいけないこと、そしてデータの国際ローミングが使えないことの3つだ。
iPhoneとペアで使っているApple Watch向けのプラン(メインの番号を同じ電話番号がApple Watchで使える仕組み)がMVNOでは利用できない。もっとも、MNOで契約しているときには、一応Apple Watchのプランには入っていたが、どうしてもそれがないと困るというシーンが1回もなかったので、結局宝の持ち腐れになっていたので、それはなくてもよいと判断した。
もう1つは、通信キャリアのAPN設定などがiPhoneの設定からは行なえず、「APN構成プロファイル」という設定ファイルを、iPhoneにダウンロードしてインストールする必要がある。ほかのeSIM事業者のeSIMに切り替えると、それが正しく設定できなくなり、海外から帰国するたびにこのAPN構成プロファイルをインストールする必要がある。一手間増えるので面倒ではあるが、IIJmioのアプリからローカルファイルとしてインストールできるようになっているので、帰国したらおまじないとしてそれをやるようにしている。
最後に、IIJmioでは、電話回線だけは国際ローミングできるが、データ回線に関しては国際ローミングできない。このため、MNOが用意しているような1日1,000円弱で、1日無制限でデータ通信ができるといったサービスは利用できない。
ただ、ここ数年は海外のeSIM事業者が提供しているアプリで現地のeSIMを購入してから海外にいくのが当たり前になっており(日本の番号を電話回線として利用して、海外用のeSIMをデータ通信に使うという設定で利用している)、こちらも利用できなくても大きな問題はないと判断した。
1年後には渡米初日になくしたが、バックアップ機とeSIM再発行ですぐに復旧してビジネスには支障なし
1年前にそうした備えをする前にiPhoneをなくしてしまった反省から、紛失や盗難にあっても大丈夫なような体制を徐々に構築してきた筆者。そして、その1年後になる先々週のことだが、やはりAdobeの年次イベントに向かっている旅程の途中で、再びiPhone(iPhone 15 Pro)を紛失するというトラブルに遭遇した。
なお、一度目に懲りて、Apple WatchがiPhoneから10m離れると通知が出るという設定にしてあったのだが、全く通知されなかった(設定が間違っていたのか、それとも別の理由なのかは分からない……)。正直盗難なのか、紛失なのか……それすらも分からないぐらいに気がついたらiPhoneが手元からなくなっていた。いずれにせよ、ラスベガスの宿に着いた時には、iPhoneは完全に紛失したと認めざる得ない状況だった。
そんな1年で2度もなくすなんて……という非難は甘んじてお受けするが、大事なことはメインのスマホをなくしたとしても、ビジネスが継続できることだ。今回は前回のように、日本に帰る途中ではなく、これからミーティングなどがあるイベントに参加するという状況でメインのスマホがないと連絡が滞るなど、いろいろ困るし、場合によっては取引先に迷惑をかけて「信用」というお金では変えられない何かを失う可能性すらある。
ただ、今回は紛失も2度目で、かつ1年前に学習したことを生かせた。まずiPhoneを「紛失モード」に設定し、中のデータなどにアクセスできないようにした。その上で、「AppleCare+ 盗難・紛失プラン」の紛失の申請を行ない、手数料の1万2,900円をクレジットカードで支払うと、今回も数分で保険が適用されたという連絡がきた。保険会社からはAppleから代替デバイスを送るという連絡がきて、実際筆者が帰国するよりも先に、申請から中1日でデバイスの方が自宅に届いていた(実際には帰国前で不在だったので受け取れず、受け取ったのは帰国後)。
そして、現地ではそのままメインのスマホがないと仕事に差し支えるので、昨年なくした教訓から出張時などにスーツケースに入れておいたバックアップ機「iPhone SE(第3世代)」を引っぱり出してきた。それに仕事をするのに必要なアプリ(電子メールやOneDriveのツールなど、ある程度はいれてあった)を入れて、Apple Watchを初期化してバックアップのiPhoneに接続して同期させればほぼ終了だ。
なお、iPhoneの場合、最悪バックアップデバイスを忘れても、現地でiPhoneを買う手段(多くの大都市にはApple Storeがだいたいある)があるというのが海外出張勢にとっては大きなメリットだと指摘しておきたい。今回筆者が渡航したラスベガスなら、複数のApple Storeがあり、イベント会場から10分程度のところにApple Storeがあったので、もしバックアップデバイスを忘れても現地調達が可能。これは世界中どこでも同じiPhoneが買えるというのは、iPhoneを選択するメリットと言える(もちろん、対応バンドが同じなど日本向けのモデルが買えるわけではないので、緊急避難的な措置として、という意味だ)。
その後、前出のIIJmioの会員専用WebサイトにPCからアクセスして、eSIMカードの再発行を行なった。10分程度でアクティベーションコード(QRコード)などの準備ができたというメールが来るので、それを利用してeSIMカードをiPhone SE(第3世代)にインストールすれば電話番号も復旧できた(と同時にiPhone用のアプリでアメリカ向けのeSIMを買ってインストールした)。着信やSMSなどが問題なくできるかをほかの番号からテストして、問題がないことを完了してとりあえずの復旧は完了だ。
IIJmioのWebサイトによれば、そうしたeSIMが短時間で再発行してもらえるのは、日本時間の朝9時から20時半までとなっており、日本時間の夜中に申請した場合には翌朝(朝9時)に発行される形になる。今回はちょうど、日本が9時になってから再発行を申請したので、迅速に発行されたが、そうではない場合には日本が朝になるのを待つ必要があるので、それは注意点と言える。
あとは日本に帰った後、代替のiPhone 15 Proを受け取り、そこにバックアップに移動したのと同じ手段でeSIMを移動すれば、元の環境を構築できて、元通りの環境に復元できた。今のところ何の支障もなく利用できている。
備えあれば憂いなしのためにやっておくべき5つのこと
今回筆者が経験したことからまとめると、出先、特に海外など、日本の通信キャリアショップなどには行けない出張中などにスマートフォンをなくしても慌てずに対応するためには、以下の5つの点がポイントだと思う。
- データはすべてクラウドストレージに置いておき、ローカルにだけあるデータは残さない。また、Appleの探す機能やMDMなどを有効にして、リモートでデータを消せるようにしておく
- SIMカードごとなくすと、SMSが受信できなくなっていろいろ詰むので、eSIMにしておき、ネット上で再発行できる体制を整えておく
- SMSでないと認証できないアカウント設定をできるだけ減らしておく、Microsoft Autherticatorなどの認証ツールの活用を強くお勧め
- 端末をなくしてもお財布への最小限のインパクトで済むように、保険にはちゃんと入っておく。SIMフリーのiPhoneなら購入時などに加入できるAppleCare+ 盗難・紛失プランが強くお勧め
- 長期の出張などに行く場合には、バックアップのスマートフォンをスーツケースなどに入れておく
この5つをクリアしておけば、今回の筆者がそうであったように仮に出張の初日にスマートフォンをなくしても、何の動揺もなく平然とビジネスを継続できるだろう。もちろん紛失しないに越したことはないし、筆者も2度もなくしてさすがに懲りたので、今後はなくさないようにアナログ的な対策(ストラップをつける、かばんの入れる場所を決めて、常時そこにしまうようにする、など)をするなどさらに気をつけたいと思っている。
今回出張に同行している同僚に「実はiPhoneなくしちゃって」と告白してみたら、「それなのに全然動揺していないですよね」と逆の方向に驚かれた。もちろん2度目だから、対処の方法が分かっていたというのが一番大きいが、この記事で説明してきたような準備を重ねてきたことも大きいと思う。
いろいろ面倒なので、そもそもメインのスマートフォンは絶対になくさない方がいいが、万が一を考えて「備えあれば憂いなし」としておくとそのインパクトを最小限にできるということをこの記事のまとめとしたい。
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