特集
iPad miniを機内に忘れ、8,700km先から取り戻した話
2024年4月3日 06:19
「置き忘れ」や「紛失」というのは誰もが人生で一度は経験したことがある失敗だろう。
今日もどこかで誰かが忘れ物をしている。
いきなりだが、2024年の1月に筆者はiPad miniを日本から約8,700km離れたデンマークのコペンハーゲンに忘れてしまった。
人の不幸は蜜の味という言葉があるが、残念ながら今回は筆者自身であるため泥水を飲まされている気分である。
そんな恐ろしく離れたデンマークから、iPad miniを取り戻す話である。
まずは現状把握から始める
まずは紛失したiPad miniがどこにあり、どこへ連絡するかを把握するところからはじめる。
今回、幸いにもiPad miniについてはAppleの「Find My(探す)」のネットワークで発見することができた。
今回筆者が紛失したiPad miniはWi-Fi版であり、GPSやセルラーネットワークは利用できないが、Bluetoothを使ったFind My(探す)により発見することが可能だった。
落とし物トラッカーについては、タグのビーコンを受信できる端末がどれだけあるかが重要であるが、世界中に展開されているiOSデバイスが対象となるとその強さを実感できた格好だ。このタイミングで念のため紛失モードを登録しておく。
では、なぜコペンハーゲン国際空港にあるのかという話だ。
筆者は1月7日にコペンハーゲン国際空港発のスカンジナビア航空(SK983)に搭乗し、羽田へ向かっていた。
記憶では、事前にダウンロードしておいたTV番組を機内で視聴していたため、確かに羽田に筆者とともに着いていたのだが、それ以降の記憶はない。
つまり、スカンジナビア航空の折り返し便となるSK984便にて、またコペンハーゲン国際空港まで戻ってしまったと考えられる。
さまざまな場所に問い合わせてみる
日本支社へ問い合わせしてみよう
まずはスカンジナビア航空の日本支社へ電話で問い合わせてみた。
羽田着便については、機内清掃が入るタイミングで紛失物があれば回収されるようだ。
その場合、羽田空港ターミナルインフォメーションもしくは東京税関にて対応してもらうことになるが、今回は万が一の可能性に賭け、代わりに問い合わせをしてもらった。しかし筆者のiPad miniはやはりなかったようで、Find Myの表示通りコペンハーゲン国際空港にある可能性が高いことになる。
ただ、日本支社ではコペンハーゲン国際空港にある荷物については対応できず、コペンハーゲン国際空港にある紛失物専用の警察のメールアドレスを教えてもらった。
しかし、頂いた情報が古く、現在そのメールアドレスは使われていないと返信が来てしまった。こうなってしまってはもう自力で探すしかない。
コペンハーゲン国際空港の遺失物取扱所のシステムとにらめっこ
次にコペンハーゲン国際空港の紛失物について調べていると、紛失物の扱い自体がシステム化されており、空港警察へ提出後3日間、リストに保管されるとのことだ。
このリストで「Tablets and E-Readers」を選択すると、保管されているタブレットの一覧が表示される。ここで筆者のiPad miniがあれば良いのだが、現地のスタッフの方が手動で入力しているからなのか、表記のゆれや誤字が目立つ。
具体的には「IPAD Unknown」という、既に何のiPadなのか判別を放棄しているようなものから、「iPad Mine」という私のiPadみたいな主張が強いデバイスが爆誕するなどさまざまだ。
というわけで、筆者はこの一覧にある「それっぽい」iPadに対して、ひたすら申請を提出してみることにした。
具体的に、どうやって筆者の物と判別するかと言えば「搭乗便名」、「日付」や「本体の特徴」だ。
本体の特徴については自由記述が可能で、どのようなカバーが取り付けられているかなど記述する。信頼できない相手の場合リスクはあるが、ロック解除用のパスコードなど記載も可能だ。
ほかにも本体のシリアルナンバーや写真の添付が可能になっている。
シリアルナンバーについてはメモしていなかったが、Appleデバイスについては自分のApple IDに紐付けしたデバイスのシリアルナンバーを別のデバイスから参照することができた。ほかにもケース付きの写真について、以前記事で使用しようと撮影していた写真があったため、そちらも添付。
あとは見つかった報告を受けるのを待つのみだ。
しかし、結果は全部ハズレ、筆者のiPad miniは見つからなかった。
そして、改めてFind My(探す)を開いてみると、筆者のiPad miniがコペンハーゲン国際空港からコペンハーゲン駅近くの警察署へ移動していた。移動といっても距離はそこまで離れてはいない。
きっと荷物が航空会社から警察に引き渡されたのだろうと考え、引き続き登録されるiPad miniらしきデバイスを申請していく。
しかし、2週間粘ったが引き続きすべてハズレ。Find My(探す)には表示されるが見つからない。
当初は紛失物が多すぎて登録が遅れているだけと考えていたが、さすがにそれは違うのでは? と思うようになってきた。ちょうどそのタイミングでFind My(探す)からの更新が途絶えてしまう。どうやらiPad mini側のバッテリが尽きてしまい探せなくなってしまったようだ。
そろそろ次の手を考えなければいけない。
空港警察ではないコペンハーゲンの警察署に問い合わせる
改めて考えてみると、空港警察が空港外にあるとは考えられない。
筆者の推測だが、当初表示されていたコペンハーゲン国際空港の場所は航空会社のオフィスではなく空港警察で、筆者が申請をしたタイミングでは既に空港警察からコペンハーゲンの警察署に移動するところだったのではないか。つまり来るはずのない場所を必死に調べていたことになる。
というわけで、次はコペンハーゲンの警察へ問い合わせを実施する。こちらは空港警察のようにフォーム化されていないため、メールでの問い合わせになるが、基本的に伝える情報は同じだ。ついでにFind Myのスクリーンショットも添付した。
筆者のiPad mini、見つかる
すると、以下のようなメールが届いた。どうやら筆者のiPad miniが見つかったらしい。
We are pleased to inform you that we have received your item(s) here as lost property.
You can collect at above address.
If someone else collects it on your behalf, they will have to bring a written permission from you.
If you want the item(s) sent by post please transfer to our account the amount of ? Danish Crowns to cover postage. The amount depends where you live.
つまり、実際にコペンハーゲン警察署で受け取るか、郵送で送るか選択ができる。さすがに8,700km離れた土地へ往復する余裕はないため、郵送でお願いすることにした。
宛先となる筆者の住所を伝えると、支払方法としてUSドル、イギリスポンド、デンマーククローネのどれで振り込むか聞かれたため、現地通貨であるデンマーククローネを選択。
最終的に564デンマーククローネ、だいたい日本円で1万2,000円ということになった。
はじめての海外送金
金額については確定したため、あとはデンマークの銀行へ振り込みを行なうだけだ。
海外送金といえば、手数料や手続きが面倒に思えるが、近年はRevolutやWiseといった、気軽に海外送金もできる環境が充実してきている。今回は筆者が普段使用しているRevolutを使い、送金を実施してみることにした。送金手数料も無料となるため心強い。
コペンハーゲン警察からもらった情報は
- アカウント名
- アカウントナンバー
- IBAN
- SWIFT / BIC
の4つ。こちらをRevolutのアプリ上に入力して送金を実施する。
ただ、今回筆者は海外送金が初めてだったため、「海外送金はまだできません」と言われてしまった。どうやらマイナンバーの確認が必要になるらしい。
そういった重要なことは送信ボタンを押す前にアナウンスしてほしい……と思いながら、マイナンバーの確認を実施した。
マイナンバーの確認が終わり、再度送金処理を行なう。今度はうまくいったようだ。
これで送金は完了だ。念のため送金が終わったことをメールで返信し、あとは筆者宅にiPad miniが返ってくることを待つだけだ。
が……1週間経過しても何も反応がない。
ここで筆者の頭には「もしかしてiPad miniをなくしただけでなく、お金も失ったのでは?」と心配になってきたところで、ようやく荷物のお問い合わせ番号が発行された。
これで一安心である。
忘れ物をしないは当然だが、忘れた時にも備えたい
こうして、筆者の元に1往復余分に旅をしたiPad mini(とお土産)が戻ってきたが、手間と費用を考えると当然ながら「忘れ物はしない」ことが重要だ。
しかしながら人間誰しも失敗はするもので、万が一失敗したときの対策についても日々行なっていきたいところだ。
特に今回は折り返し便でコペンハーゲンに戻ってしまったこともあり、Find Myが役に立ったことになる。この情報がなければ、おそらく筆者は羽田空港しか調べることはなかっただろう。
筆者は今回の失敗を教訓に、主要な持ち物については「AirTag」と「Tile」で二重化を進めている。できるだけお世話にはなりたくないが、いつか来てしまうかもしれないその日のためへの悪あがきくらいはしても良いだろう。