山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

1万6,980円から手に入るFire HD 8キラー、8.7型Androidタブレット「Redmi Pad SE 8.7」を試す

「Redmi Pad SE 8.7」。本体色はグラファイトグレー。実売価格は1万6,980円から

 Xiaomiの「Redmi Pad SE 8.7」は、8.7型のAndroidタブレットだ。実売1万6,980円からというリーズナブルな価格で、AmazonのメディアタブレットFire HD 8の競合となる一品だ。

 8型クラスのタブレットはiPad miniが大きなシェアを占める一方、2万円以下の低価格帯はAmazonの「Fire HD 8」も人気が高いが、Google Playストアが使えずアプリの選択肢に乏しいという問題点がある。安さにつられて買ってはみたものの、思っていたことができなかったという声は、レビューでも少なからず見られる。

 今回紹介する「Redmi Pad SE 8.7」は、Google Playストアに対応するほか、セルラーモデルも用意されるなど、Fire HD 8が欠けている多くの機能を満たしており、それでいて価格はほぼ同じ1万円台からと、Fire HD 8の直接のライバルとなる特徴を備えている。

 2024年8月に発売されて以来ロングセラーとなっている本製品について、今回は筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、「Fire HD 8」と比較しつつチェックする。

Fireとほぼ横並びのスペックも汎用性が魅力

 まずは競合であるFire HD 8との比較から。Fire HD 8(以下Fire)は複数のモデルがあるが、今回は比較がしやすいよう、同一容量であるメモリ4GB/ストレージ64GBモデルで比較している。

【表】Redmi Pad SE 8.7とFire HD 8のスペック
Redmi Pad SE 8.7
4GB+64GBモデル
Fire HD 8
(第12世代 - 2024年発売)
メモリ4GBモデル
発売年月2024年8月2024年10月
サイズ(最厚部)211.58×125.48×8.8mm201.9×137.3×9.6mm
重量373g337g
OSHyperOS(Android14ベース)FireOS
CPUMediaTek Helio G85
12nmプロセス、オクタコア
2.0GHz 6コアプロセッサ
RAM4GB4GB
画面サイズ/解像度8.7型/1,340×800ドット(179ppi)8型/1,280×800ドット(189ppi)
通信方式Wi-Fi 5Wi-Fi 5
内蔵ストレージ64GB64GB (ユーザー領域54.0GB)
生体認証顔認証-
バッテリ持続時間
(メーカー公称値)
6,650mAh13時間
スピーカーステレオステレオ
イヤフォンジャック
microSDカードスロット◯(2TBまで)◯(1TBまで)
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
価格(2025年2月現在)1万6,980円1万7,980円

 本製品の解像度はフルHDにも満たない1,340×800ドット(179ppi)だったり、SoCもMediaTek Helio G85というローエンド向けだったりと、スペックは全体的に控えめだ。Wi-Fiも11ac止まりだったりと、価格を優先したと思われる割り切りが随所に見られる。

 もっともこれらの特徴は、Fireとほぼ横並びか、あるいは若干上回っていることが多く、競合製品として捉えるとなかなか興味深い。本製品はGoogle Playストアが使えるため、ハード的に同等以上であれば、汎用性において分があるからだ。

本体外観。前面カメラは短辺側(この写真では左側)にある。アスペクト比は5:3と、Fireよりも若干横長
縦での利用も特に支障はない。左右ベゼルが狭いためFireに比べると細長い印象

 また細部を見ていくと、Fireにない優位性もいくつかある。たとえば顔認証に対応していることや、リフレッシュレートが最大90Hzまで対応すること。またメモリカードが1TBまでではなく2TBまで対応するのも利点だ。セルラーモデルを選べるのもプラス要因だろう。

左側面。スピーカーが配置されている
右側面。イヤフォンジャックとUSB Type-Cポート、スピーカーが配置されている
上面。音量ボタンと電源ボタンが配置されている
底面。カードトレイが配置されている
背面。ヘアライン加工が施されており安っぽくない
背面カメラはやや出っ張りがあるが、段差も緩やかでそれほど邪魔にはならない

 さらに通常速度での充電にしか対応しないFireと異なり、急速充電にも対応する。最大18Wとタブレットとしてはやや控えめだが、Fireは最大5Wなので、かなりの差がある。利用頻度が低いと長期間放置していてバッテリ切れになることは多いので、そうした場合に短時間でバッテリを回復させられるのは便利だ。

重量は公称373g、実測では350gと大幅なズレがある。8型クラスとしては重め

 そして実売価格は1万6,980円、セール時は1万円台前半まで下がるので、スペックはもちろん価格的にもFireの競合となりうる。Fireの購入を検討している人にとっては、気になって当然の存在と言えるだろう。

ベンチマークはFireを圧倒も体感的には同等

 では実機を見ていこう。アプリはGoogle製に加えて、Xiaomiの独自アプリがかなりの割合を占めており、Androidの標準アプリに慣れていると多少の違和感がある。なおGoogle Playブックスなど読書系のアプリはプリインストールされておらず、自前で導入する必要がある。

ホーム画面(1ページ目)。Xiaomiの独自アプリが多い
ホーム画面(2ページ目)。NetflixやTikTokなどのショートカットが並ぶ
Google製アプリのフォルダ。Google Playブックスはインストールされていない
そのほか細かいツール類もフォルダにまとまっている。FMラジオアプリが特徴的

 手に取ってまず驚かされるのはボディの質感の高さだ。Fireなど、この価格帯の製品は樹脂製であることを隠そうとしないボディがほとんどで、独特のチープさを醸し出している。本製品は背面にヘアライン加工が施されており、1万円台の製品とは思えない高級感がある。

Fire HD 8(右)との比較。画面は本製品がひとまわり大きいが、ベゼル幅に差があることから、本製品のほうが細長く見える

 ボディはFireと比べて幅が狭いため、片手で掴むことも十分に可能。これはアスペクト比の関係というよりも、縦向き時の左右ベゼルがスリムなことによるものだ。両者を並べると、ベゼル幅を中心とした外観があまりに違うことに驚かされる。

背面。樹脂製でややチープなFireに比べると本製品は実売1万円台のタブレットらしからぬ高級感がある

 重量は公称373g、実測でも350gとそこそこある。画面サイズが8.7型とFireよりひとまわり大きいので多少重くて当然だが、8.3型のiPad mini(293g)と比べて50gを超える差がついているのは、それらの重さに慣れているユーザーには少々きつい。保護ケースを追加する場合も、なるべく軽量な製品を選んだほうがよい。

厚みの比較。本製品は決して薄いほうではないが、それでもFireに比べるとスリム
幅が狭いことから片手で握ることも容易だ
顔認証を追加できる。もちろんパターンやPINにも対応している

 気になるベンチマークだが、多くのアプリではFireの数十%増し~2倍程度のスコアを叩き出す。あくまでもエントリークラス同士の比較であることに留意する必要はあるが、1万円台のタブレットではFireに及ばないスコアの製品も少なくないので、同等価格帯における本製品のスコアはかなり優秀な印象だ。

「Octane 2.0」でのベンチマーク結果。左が本製品で「14592」、右がFire HD 8で「6982」。倍以上の差だ
「AnTuTu Benchmark V10」でのベンチマーク結果。左が本製品で「266071」、右がFire HD 8で「183998」。倍ほどとはいかないが相当な差がある

 ただし実際の操作中は、このスコアほどの差は感じず、スクロールではカクカクとした動きは発生するほか、画面の自動回転も、向きを変えてから実際に回転するまでワンテンポ遅れがちだ。このほかソフトウェアキーボードの表示も、入力フォームをタップしてから表示されるまでに一拍といわず二拍は間が空く。

 こうした挙動はFireでもないわけではないが、頻度としては本製品のほうが多い。これは自社アプリに対するチューニングが行き渡っているFireと異なり、汎用性が高い本製品は、そうした措置が難しいからだろう。Fireより速い場合もあれば、使うアプリや操作の内容によっては遅い場合もあると考えておいたほうが、いざ手にした時にがっかりしなくて済むだろう。

見開きよりは単ページ表示向け。読書モードも搭載

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

テキストを表示したところ。単行本と同等サイズで、フォントサイズ変更の自由度も高い

 解像度は179ppiということで、Fire(189ppi)とほぼ横並びで、電子書籍向けのデバイスとしては最低限といったところ。テキストであればおおむね問題ないが、細い線や細かいルビなどは、潰れて表示されることがある。

Fire HD 8(右)との比較。アスペクト比の関係で表示エリアはやや縦長となる
表現力の比較。上段左が本製品(179ppi)、右がFire HD 8(189ppi)、下段左がLenovo Legion Tab(343ppi)、右がiPad mini(326ppi)。300ppiクラスの製品との差は明らかだ

 コミックについては、単ページ表示は問題ないが、見開き表示では細部のディティールがつらいと感じることは多い。見開きでの利用頻度が高ければ、予算を上積みしてもiPad mini(326ppi)や、前回紹介した「Lenovo Legion Tab」(343ppi)など、高解像度のモデルを選んだほうがよいだろう。アスペクト比の関係で左右の余白がやや大きめなのも気になるところだ。

コミックを表示したところ。縦向きだと単行本とほぼ同じサイズ

 ただし元の画面サイズが8.7型とFireよりもひとまわり大きいため、同じコミックを表示した場合は、本製品のほうがFireに比べて若干大きくページが表示できるのは利点だ。この画面サイズを始め、Fireに対して絶えず優位性をキープできるように仕様を決定したと思しき箇所は、本製品の随所に見られる。

Fire HD 8(右)との比較。画面サイズの関係で本製品がわずかに大きく表示される
こちらは見開きでの比較。上が本製品、下がFire HD 8。こちらも本製品のほうがわずかに大きく表示される
表現力の比較。上段左が本製品(179ppi)、右がFire HD 8(189ppi)、下段左がLenovo Legion Tab(343ppi)、右がiPad mini(326ppi)。テキスト以上に差が分かりやすい。またFireと比べてもややドットが粗く見える

 なお本製品は「読書モード」なる機能を搭載している。これは一般的なブルーライトカットによる暖色化に加えて、画面全体に紙のようなざらざらしたテクスチャを追加する機能だ。テキストコンテンツでこのモードを有効にすると、文庫本などを読んでいるのと近い感覚で読書を楽しめる。

読書モード。この写真では分かりづらいが、画面にザラザラしたテクスチャ加工が施されている

 テクスチャの強弱は調整できないのと、読書以外のアプリにも適用されるため読書中にほかのアプリと切り替えるとややわずらわしく感じるのが難点だが、紙の本の読書体験に近づけたい場合は、試してみるとよいだろう。

読書モードは設定画面から詳細な設定が行なえる。スケジュール設定にも対応

 なおオン・オフの切り替えは設定画面のほか、アイコンを追加しておけば、クイック設定からも行なえるようになる。

クイック設定にアイコンを追加しておけば「読書モード」を手軽にオン・オフできるようになる

 ところで電子書籍ユースで多少気になるのは、本製品の画面の端が非常に敏感で、誤操作が少なからず起こることだ。具体的には、ページをめくるつもりで左から右へとスワイプしたところ、画面の端をまたいで右方向にスワイプしたとみなされ、ホーム画面と戻ってしまう現象が多発する。

 これは本製品の左右のベゼルがスリムなのも1つの要因だが、前回紹介した8型Androidタブレット「Lenovo Legion Tab」は、本製品と同等のベゼル幅ながらこうした症状はあまり見られず、本製品はややタッチパネルの反応が過敏なように感じられる。

 本製品は前述のように解像度が低いため、電子書籍は画面を縦向きの状態で使うことが多く、それゆえこの問題に遭遇しやすい。慣れで解決しにくい場合は、ページめくりにはスワイプではなくタップや音量ボタンを用いたり、指が画面にかかりにくいよう縁に厚みのある保護ケースを導入するなど、対策するとよいだろう。

高いコスパでFire代替としては候補の最右翼

 以上のように、気になる点はちょくちょくあるものの致命的というわけではなく、また何より高いコストパフォーマンスゆえ、発売からおよそ半年、売れているのも納得できる。Fireのアプリのラインナップでは意図した使い方ができず、予算に制限がある中で選ぶ代替のタブレットとしては、候補の最右翼と言える製品だ。

 またカラーバリエーションも、グラファイトグレー、オーロラグリーン、スカイブルーと豊富なほか、ストレージは128GBモデルもラインナップ。さらにこの手のタブレットとしては珍しくセルラーモデルも用意されている。容量違いのバリエーションしかないFireに比べると選択肢は豊富なので、それも踏まえて選ぶことをおすすめする。

画質比較の項で紹介したLenovo Legion Tab(中)、iPad mini(右)と並べたところ。本製品に比べて高い解像度が売りだが、そのぶん価格も高く、本製品にしておよそ3~4台分となる