藤山哲人と愛すべき工具たち
速い! 確実に締まる! ネジ頭を潰さない! パナのスティックドリルドライバーが超便利
2020年5月25日 12:09
おそらくPC Watchの読者の多くは、ちょいちょいデスクトップPCをバラしたり、壊れた家電をとりあえずバラして直しちゃう人たちだ。そうに違いないっ! しかもメーカー保証が効かないのに、自分でノートPCのストレージをSSDに変えてみたり、メモリを増設したりする勇者ばっかりだ。
そんな日々の分解や組み立てに精を出すみなさんの悩みが「ネジ回し」。CPUやGPUの世代が大きく変わると、ゼロから1台作ることになる。ノートPCの分解、組み立ても大量のネジ。なんでここのネジを外さないとカバー開けられないんじゃ! と「箱根秘密箱」の様相。
こっちのネジを外したら裏のカバーが外れて、なかにあるネジを外すとキーボードが取れて……、なんてことを繰り替えなきゃならない。しかも元に戻すときも同じ手順を踏んで戻さなきゃならず、「ぐはっ! 前の工程のネジ締め忘れた! 」となれば、今閉めたばかりのネジを何本も外してやり直し。「三途の川の前で石を積むわらべかっ! 」ってぐらい諸行無常。
そんなあなたにオススメしたいのが、パナソニックの「充電スティックドリルドライバー 7.2V(EZ7421)」だ。
価格は23,000円とちょっとお高いが、家電を修理するサービスマンなどに愛されているツールだけに、とにかく使い勝手がいい。
ハンドドライバーが不要になるほどコイツに頼れる
普通のドリルドライバーはと言えば、白黒アニメのSFの光線銃のような「いかにもドリル」ってかたち。ここ数年で遊星ギアを使ったショートモデルが主流になっているが、基本グリップの下に巨大なバッテリを差しこむタイプだ。
しかしコイツはスティックタイプで、デスクトップPCにマザーボードを固定するのにも、スイスイケースのなかに突っ込んで使える。ちょっと硬く締めてあるネジは、キュッ! と最初だけ手動で緩め、あとは電動でグイグイ抜くといったことも。もちろん逆の手回しで増し締めもできる。
一般的な形状のドリルドライバーでもできるのだが、こちらは手首をひねることになるので、何十、何百というネジを緩めると、かなり腕に負担ががかかる。モーターが大きくバッテリも大電流なのでかなり重い。その点スティックドライバーの重さは、550gと超軽量で手首の負担が最小限。だから全然疲れないのだ。
もしトルクが必要な壁にネジを打つ場合などは、グリップをガシャン! と折り曲げると、拳銃タイプに早変わり! これならトルクの反作用に負けることなく、シッカリネジを打ち込める。一般家庭での普段使い(笑)には、小ネジから木工用のコースレッドまで打てるマルチな電動ドライバーだ。
ドライバービットを取りつけるチャックはワンタッチ式。6角形のドライバービットを差し込んで、根元のロックいったん引っ張って解除、ビット差し込んでロックする。前後に大きく左右にわずかな遊びがあるので多少グラグラするが、ドライバーとして使う分には問題ないだろう。
片側がドライバーになっているビットでも、両方がドライバーになっている双頭ビットでも使える。ただし激安電動ドライバーの付属品のロック溝がないビットは使えないので注意してほしい。なお、ドライバービットは、別売になっているので別途買いそろえる必要がある。
あわせて買いたい! ドライバービット
スティックドライバーで使いやすいビットは、長さ10cm程度のビットがいい。5cm双頭ビットだと、ちょっと手元が見えづらいだろう。
筆者が一番なじんだのは10cmものだ。とくに先が細くなっているものがいい。またデスクトップPC組み立てに使うなら、長めの150~200mmがいいだろう。手回しドライバーなら300mmもアリだが、チャックの遊びで先端のブレが大きくなので、このドライバーだとちょっと使いずらいかも。
先端形状は、ドライバービットセットのようなものを買う必要はまったくない。とりあえずいるのは、以下の2つだ。
表記 | 説明 |
---|---|
PH2 | 「2号」や「フィリップス2」、「#2」とも呼ばれる一番よく使うプラスドライバー。 とりあえず、PH2の10cmあたりを買えばいい。だいたい1本600円ぐらい |
PH1 | 「1号」や「フィリップス1」、「#1」と呼ばれるひとまわり小さいサイズ。 ノートPCをいじる場合は必要だが、普通はあまり利用しないので、そのうち買っておけばいい程度 |
ネットでドライバービット購入すると、同じビットが5本も10本もセットになっていることが多い。だけどプロじゃないで、それほど磨耗しない。近所のホームセンターで1本単位で買えばいい。
マイナスはいらないの? という方もいるかもしれないが、最近はまず使わない。どうしても抑えでほしいという場合は、「-5.5」というものがあればいいだろう。
またノートPCの分解だと精密ドライバーが必要になる場合がある。電動ドライバーに慣れないうちは手回しドライバーを使ったほうがいいが、精密のドライバービットもある
PHは数が大きくなると太くなっていったが、精密は0の数が多いほど小さくなる。つまりPH1の次に来る精密ドライバーはPH0、もっと小さくメガネや時計用はPH00、PH000となる。が! 電動ドライバーで使うのはせいぜいPH0まで。PH00を電動でやると確実にネジ頭をツブすことになるので注意しよう。
さらにIKEA家具をよく作るという場合は、以下のドライバービットも用意すること!
表記 | 説明 |
---|---|
PZ2 | ポジドライブ2号と呼ばれるもので、プラスドライバーの+に加えて斜め方向にも溝が切られていて星型になっている |
日本ではあまりなじみのないポジドライブだが、イギリス発祥のネジなのでヨーロッパや北欧でよく使われる。IKEA家具愛用者には必携のドライバービットなので用意しよう。
なおアクリルやアルミ、鉄板や木材に直径数mmの穴を開けたいという場合はドリル用のチャックを用意しよう。チャックの根元は6角シャントになっているので、ドライバービットのようにチャックをワンタッチで取りつけられる。あとは普通のドリルのように、ドリル刃をチャックに固定すればいい。ただ遊びが大きくガタつくので、センターポンチなどで中心出しをシッカリしておくこと。
また木工用のドリル場は、6角シャントになっているものが多いので、そのままドライバーに取り付けOKだ。スティックドライバーでは、木工で最大15mmの穿孔能力がある。
またビットが増えると置き場に困るので、ビットホルダーも一緒に買っておきたい。樹脂に差しこむ安っぽいのもあるけど、おすすめはドライバーのチャックと同じワンタッチ式のヤツだ。
木ネジやコースレッドまで打てるパワフルさ
組み立てPCをはじめとした、溝が刻まれた穴にネジを締めるのはお手の物。スティックタイプのドライバーは、回転数をコントロールができないものが多いが、本製品はインバータで無段階変速ができる。だからトリガで速度を変えると、電車の加速音のような音がして使っていても気持ちがいい。
バッテリ電圧が低く安価なドライバーは、トリガを目いっぱい引いてもだいたいが200~300rpmでノロノロ。でも本製品なら最高900rpmなのでイライラがまったくなし。金属式の石膏ボードアンカーは、何回転もさせて展開し、何回転もさせてネジを抜くのでたいへんだが、900rpmあればイライラも少ない。
しかもクラッチがついているので、ネジを締めすぎもない。M3、M4のユニクロネジなら、クラッチ1にして最高速で打っても、ネジ頭を潰すことがない。これはメッチャ作業がはかどる!
驚くべきは、クラッチが効く(滑る)と自動的に回転が止まる点。クラッチがガガガガッ! と音を立てないので、静かに作業できるのもうれしい。
さらに組み立てPCで便利なのがドライバーの先端を照らすLEDライト。デスクトップマシンは組み立てるときに陰になってしまうネジ穴があるので、ライトで照らせると便利だ。「そんなの数千円で買えるドライバーにもついてるよ!」と思うかもしれないが、パナソニックのライトはトリガーを引いたときだけなく常時点灯モードモある。しかもドリル側面にも高輝度のLEDライトがついているので、広い箇所を照らすのに便利だ。
これらを点灯するボタンは独立しているので、これまた便利に使えるというわけ。本当は暗い部屋などで屋内配線をするのに便利な機能なんだが、組み立てPCにも非常に有効ってことで。
また木工などでコースレッドを打つ場合は、トルクを稼ぐ低速モードにスイッチ1つで切り替え可能。300rpmと遅くなるが最高6.0Nのトルクで打ち込んでくれる。2×4建材ぐらいなら余裕だ。
ちょっと気になる点は、高速と低速モードで使えるクラッチの硬さが異なる点。筆者は、クラッチにペンで塗って使える範囲を示した。
またガンタイプのドリルに慣れているとトリガが少し特殊なので、はじめは正転と逆転を間違えてしまう。
トリガはこのようになっていてパナソニックのロゴが見える側では、前方に倒すと正転の締め、後方に倒すと逆転の緩めになる。しかしこのトリガ反対にもついていて、ダイヤルのようになっているため、正転・逆転が反転してしまうのだ。
いちいちパナソニックのロゴが見える側にあるかどうかを目視するのはめんどうなので、逆側のスイッチには傷を入れて、どちらのスイッチを操作しているのかを、触っただけでわかるようにするといい。
趣味の組み立てPCが効率よく作業できるのはもちろん、業務でこのスティックドライバーを使えば作業効率アップ間違いなし。先日筆者は請負でハードの製作をして、900rpmとオートストップでM4ネジを1,000本ぐらい占めたが、作業の早さと疲れがまったく違う。パナソニックによれば、工場に導入してM4ネジを締めるテストをしたところ、従来品(600rpm)に比べて16%の作業時間を短縮できたという。
筆者の作業では時間を計らなかったが、感覚的にそんな感じだったと思う。しかも筆者の場合は、以前に作業していたのは重いガンタイプドライバーで、クラッチがガガガ! だったので、手首の疲れが圧倒的に軽減された。
またバッテリの持ちも、従来型はM4が770本のところ、本製品は2~300本まで打てるロングラン仕様になっている。
パチモンじゃなくて似てる安いインパクトに要注意!
さてこのドライバー、まったく同じかたちをしている「インパクト」方式がある。これは回転と一緒に打撃を加えることで、ネジの締め付け力を高めるものだが、組み立てPCにとってはかえって不便なので注意したい。こちらをオススメするのは、木ネジやコースレット、タッピングネジを使う場合だ。簡単に言うと電気工事じゃなくて、大工作業系。
またハイコーキ(元日立)やマキタからも似たような製品が発売されている。筆者がパナソニックを強くオススメするのは、長年パナソニックのドリルを愛用しているから(笑)。
というのはジョークで、パナソニック以外のメーカーは、バッテリ式にあわせてコンセント式の工具も作っている。つまりパナソニックは、100Vのコンセント式の工具を一切作らないバッテリ式専門メーカーなのだ。だからバッテリ駆動式のツールは、専門メーカーのパナソニックが一番進んでいるというわけ。