藤山哲人と愛すべき工具たち

愛用マウスのソールを劇的改善でツゥルンつぅるんに!

本連載では、家電製品から実験機器の製作、プログラミングなど、幅広いジャンルで活躍するテクニカルライター藤山哲人氏がさまざまな工具をレビューしたり、多少無茶なことにチャレンジしたりしていきます。
最近マウスの動きが鈍くてイライラするなぁ~なんてヒトいません?

 長年マウスを使っていると、だんだんと動かしにくくなってくるように感じたことはないだろうか? おそらくじょじょに軽快さがなくなってくるので、ふと違和感を覚える人は少ないはずだ。

 そう。マウスは長年使っていると、底面のソールに傷や汚れがつき、だんだんとスベリが悪くなる。またマウスパッドも同様。目には見えないが皮脂汚れがびっちりこびりつき、要は表面がアカまみれになって、マウスのすべりを悪くする。ヒィ~!でも、コレ本当。

マウスとマウスパッドは経年劣化っつーか汚れで動きがにぶくなります

 今回はどんなクソマウスでも、つるんツルンに改造できるキットを紹介しよう。誰でも手軽に確実に改造でき、ローションたっぷりのマットプレイのごとくマウスがすべるすべる! あ、ちびっ子にわかりやすいように表現すると、通学路の氷の上を歩くぐらいツルツルだ!

 また次号ではさらなる高見を目指して、トゥルンとぅるんマウスにする自作改造をして見よう。

なぜマウスは滑らかにすべるのか?

 マウスが机の上をスイスイすべるのは、裏側についている何個かのソールの関係している。

マウスによって裏についているツルツルソールのかたちや厚みが違う
長年楕円型を使っているMicrosoft製のマウス
もちろん無線マウスにもついている

 このソール、じつは焦げつかないフライパンでおなじみの、テフロン樹脂なのだ。「テフロン」というのは、デュポンの登録商標なので、各社趣向を凝らして「○○フロン」って言ってるのがテフロンコンパチ品。一般的には「フッ素樹脂」加工なんて呼ばれている。

家具やふすまの戸がよくすべるようにする「カグスベール」、「トスベース」はDIY店などでもよく見かける。コイツはニチアスという会社の「テフロン樹脂」コンパチな「ナフロン樹脂」だ

 焦げないフライパンは、油も引かないのに目玉焼きが焦げつかない。その理由は、フライパンの表面が油を引いた以上にツルツルしているから。マウスの裏に貼ってあるフッ素樹脂のソールも同じで、フライパンと同様でツルツルしている。だからスベリがいいというわけ。

 がっ! フッ素樹脂加工のフライパンは経年劣化し、目玉焼きが焦げ付いてスクランブルになったり、焼きそばの麺がフライパンに全部焦げ付いて、ブチ切れてしまうのはご存知のとおり。マウスも使っているうちに、スベリが悪くなってくる。

新品のマウスについているフッ素樹脂製ソールの顕微鏡写真。微妙なおうとつがついていて、これでさらに滑りやすくなっている
約1年使ったマウスのフッ素樹脂製ソール。おうとつが磨り減ってぺったんこになっている上に、ごみも詰まっている

 新品のマウスのソールを拡大して見てみると、表面がデコボコしてマウスパッドにふれる面積がせまくなっている。でも何年もマウスを使っているとこのデコボコが磨り減って、ソール全体がマウスパッドにふれて動きがにぶくなるというわけ。

 マウスのソールで重要なのは「フッ素樹脂」ってことと「その表面がおうとつ」ってトコ。もともとフッ素樹脂はスベリがいいけど、おうとつがあるとマウスパッドにふれる部分が少なくなり、よりツルツルすべる。

テフロンのシートに粘着テープをつけたものなど販売されているが、これを古くなったマウスに貼りつけてもスベリは改善されない。なぜならおうとつがないから。

 だから「フッ素樹脂がはがれたなら、フッ素樹脂加工してやればいいのでは?」と市販されているテフロンシールを貼ってみたり、フッ素コート材を塗布して見ても、おうとつがないのでスベリが改善されないのだ。

 またマウスパッドを使っている人は、その汚れもマウスの滑りを悪くする。年中手をこすりつけているマウスパッドには、皮脂汚れがたっぷりついている。簡単に言うと、パッドの表面全体にアカを塗りたくっているのと同じ。だから皮脂でべたべたになっているのだ。きんもーっ☆

そのマウスパッド掃除してますか?

 そしてマウスパッドのアカはマウス裏のソールのデコボコの間に入り込み、ネッチョリ密着してしまう。比較的新しいマウス(目安は1年以内)とマウスパッドなら、アルコールでキレイにふき取れば、元どおり軽くなる。

消毒用のアルコールでも燃料用のアルコールでもかまわない。ドラッグストアなどで売っているので、1本用意しておくと便利

 お掃除方法は簡単。マウスの裏面のソールを、ティッシュや綿棒に染み込ませたアルコールでふき取るだけ。気になる場合は、マウス全体や側面の接合面に入り込んだアカも取ってやるといい。

アルコールは皮脂汚れを簡単に落とせるので、これが一番。表面も軽く拭くと驚くほど白くなったりしておもしろい。部屋の壁スイッチなんかも、アルコールで拭くと凄くきれいになる

 一方マウスパッドは、ティッシュにアルコールを含ませて拭けばいい。布系のマウスパッドの場合は、洗濯機にブッ込んで洗うのがいい。

樹脂やビニール系のマウスパッドならアルコールで拭く。布系なら洗濯機で洗うのがいい

光学式は焦点距離があるので最初はキットがオススメ。筆者が試したなかで最高のスベリ!

 アルコールで拭いてもまだ改善されないというマウスは、長年使ってソールの表面にデコボコがなくなってしまった場合だ。そんなときは、ソールを交換する以外に方法はない。

おうとつがなくなってしまったソールは取り替えるほか手段はない

 マウスにこだわりがなければ、数百円で変えるマウスに交換するのが手っ取り早い。しかし長年使って手にしっくりきているマウスを使い続けたいという人も多いはず。

 そんなとき筆者がオススメしたいのが「究極セットIII」というキット。「エアーパッド ソール」と、専用マウスパッド「エアーパッドプロIII」がセットになったものだ。

文字がガチャガチャ書いてあって「最強のマウスパッド」なんて文字も見える。PCショップで見かけたこともあるのでは?

 誰でも簡単に、そして確実にすべるマウスにするなら、筆者の経験上これがオススメ。っつーか、ものスゲーすべるマウスになる。

 PCショップなどでもたまに見かけるが、確実に入手したいなら、Amazon.co.jpかヨドバシカメラのネット通販がオススメ。マウスパッドの大きさで価格は変わるが、標準サイズで2,000円前後になっている。

A3サイズの超大から、15×20cmの標準的なマウスパッドサイズまで4サイズ。加えて通常は厚さ2mmだが、標準サイズよりちょっと小さめで厚さ1.2mmの薄型もある

 このキットを通販サイトで検索すると、「えっ!マウスのソールだけでも手に入るじゃん!藤山の奴メーカーと組んで高いもの買わせようとしてるな!」とお叱りをうけるかもしれない。

 でも注意しなくちゃならないのは、マウスに貼る「ソールの厚み」。

マウスの裏のソールはメーカーやモデルによって、厚さやかたちがいろいろある
マウスに貼るソール「エアーパッド ソール」単体でも販売されているが、楕円と円のかたち以外に、厚みが4種類ある

 マウスの裏には赤や青に光るLEDレーザーが組み込まれているのはご存知のとおり。レーザーも光学系の一種なのでカメラと同じく焦点があり、ソールを張り替えてマウスの高さが変わってしまうと、焦点が合わなくなって、ポインタの動きがガクガクする場合がある。試しにマウスの片方に名刺やカードを2、3枚はさんでみるといい。とたんに動きが悪くなって、使いものにならなくなるはずだ。

マウスとマウスパッドの距離が変わってしまうと、レーザーの焦点が合わなくなり、使いものにならなくなる

 ソールだけ購入する場合は、厚みを0.35/0.45/0.65/0.95mmのなかから指定して購入しなければならない。だから間違った厚さのものを買ってしまうと、買い直さなければならない(筆者の経験上、だいたいのマウスは0.45mmでうまくいくが、ダメなものも多々ある)。

究極セットに添付されている「エアー ソール」は3種類の厚さと、丸と楕円のソールがセットになっている

 でもマウスパッドとセットになったものは、0.35/0.45/0.65mmがそれぞれ6枚、楕円の0.45/0.65mmが4枚のセットになっているので、失敗することがまずない。

 取り替え方法は簡単で、古くなったソールをマウスからはがし、だいたいその厚みと同じものに張り替えればいい。見きわめが難しい場合は、0.45mmを試して見よう。

ピンセットなどでキレイに貼る

 マウスによっては、楕円のソールの場合もあるので、合ったものを選べばよし。ゲーミングマウスだと特殊なかたちをした大型形状になっている場合があるが、基本的にマウスの4点を支持してやるように貼ればいい。

丸と楕円のソールを組み合わせてもOK。これでマウスのスベリは回復した!

 さて「究極セットIII」と銘打たれた製品だけに、付属のパッドのスベリもパネェ! 筆者のPC暦40年のなかで、そのスベリは1位、2位を争うほどだ。表面がざらざらしている上に特殊コーティング(たぶんフッ素加工)してあるので、つるんつるんマウスがすべる。いったん使うとクセになるだろう。

表面がざらざらしているので、マウスのソールとの接触面がさらに少なくなり、つるんツルン! 下は顕微鏡写真
カラーバリエーションも、黒とグレー(半透明)と白(半透明で蓄光)がある。おすすめはグレーか白

 ただ表面がざらざらしているので、手の皮脂油が面に付きやすい。そのため、めがね拭きのような布にアルコールを染込ませて表面を拭いてメンテナンスするといい。ティッシュをオススメしないのは、面がざらざらで紙やすりのようになっているので、アルコールを染込ませたティッシュはボロボロになって面を目詰まりさせてしまうからだ。

 また先代のエアーパッドもそうなのだが、1、2年使っているとパッド表面のコーティングが端からはがれてしまう。ちょうど日焼けした肌の皮が剥ける感じ(笑)。なのでパッドもマウスの足のシーツも消耗品と考えたほうがいい。

 最後に、通販サイトの情報にソールの厚みが抜けていたり、一覧がなかったりと不便なので、筆者独自に製品一覧をまとめてみた。

【表】ソールの種類
型番品名寸法厚み個数パッドサイズパッド厚み
AS-34エアーパッドソール(楕円薄)6×12mm0.45mm12個パッドなしモデル-
AS-36エアーパッドソール(楕円厚)0.65mm
AS-43エアーパッドソール(円薄)6mm0.35mm16個
AS-44エアーパッドソール(円標準)0.45mm
AS-46エアーパッドソール(円厚)0.65mm
AS-49エアーパッドソール(円特厚)0.95mm
PAS-75ロジクール G5/G7用専用品-2セット
PAS-71ロジクール MXレボリューション用
PAQ-01究極セット III 超大6×12mm、6mm【円】0.35/0.45/0.65mm
【楕円】0.45/0.65mm
円各6個
楕円各4個
408×306mm2mm
PAQ-91究極セット III 特大196×252mm
PAQ-61究極セット III 薄142×178mm1.2mm
PAQ-81究極セット III 大174×218mm2mm
PAQ-71究極セット III 標準148×206mm

トゥルン!つぅるん!でマウスがどこまでもすべるエアーホッケーのよう

 使い古したマウスと一般的なマウスパッド、そしてエアーパッドを使った場合で比較してみよう。

 スマートフォンの坂の傾きを測定するアプリを使い、どれだけ傾けたらマウスが滑り出すかで、ツルツル度を調べようってわけだ。

元の状態の有線の軽いマウス+一般的なマウスパッド : 13.9度
元の状態の無線マウス+一般的なマウスパッド : 12.3度
ソール貼り変え有線マウス+一般的なマウスパッド : 7.1度
ソール貼り変え無線マウス+一般的なマウスパッド : 7.2度

 その差は一目瞭然。電池が入って少し重い無線式のマウスだと、さらにツルツル。マウスの鈍重さに困っている方に超オススメしたい。

 1つだけ難点がある。それはあまりにもスベリすぎるので、机自体が傾いているとマウスが滑って行っちゃう点(笑)。まずは机の水平を出してから使うようにしてほしい。

ソール貼り変え有線マウス+エアーパッド : 4.7度
ソール貼り変え無線マウス+エアーパッド : 4.6度

 ただ大学の教室にある長い机(後ろの机からイスを倒すヤツね)だと、手前が少し下がっているときがある。こんな机で使うと、マウスを置くたびに滑り落ちてきちゃうなんてコトも。こんなときは、スベリの悪いノートをマウスパッド代わりに使って対処してほしい。

次回はマウスの極みを目指す!自作の超快適グッズ!

 最近は単4形乾電池やバッテリ内蔵でも動くようにな無線マウスだが、やはり有線マウスに比べると重いので、筆者は有線マウスを使っている。

 しかし!有線で気になるのは先っぽから出ている電線。ときにはキーボードの足に引っかかり、ときには書類に引っかかり、プギャ~!となるときも。

 そんな邪魔な電線を、あたかも無線であるかのようにする自作グッズをご紹介しよう。

なんと家の有線マウスは電線が空中に浮いているのだ!恐れ入ったか!

 またエアーパッド以上にすべるマウスパッドを安く自作する方法などについてもご紹介しよう! 乞うご期待!