PC短評

Mac mini風筐体でRyzen 9 8945HSを搭載したミニPC「GEEKOM A8」

GEEKOM A8

 昨年(2023年)12月にAMDが「AMD Advancing AI」として発表した、AI PC向けのCPU「Ryzen 8040」シリーズを搭載したミニPCがGEEKOMからも「GEEKOM A8」として登場した。公式サイトでは、Ryzen 9 8945HSで32GBメモリと2TB SSDを搭載するモデルが13万1,300円、Ryzen 7 8845HSで32GBメモリと1TB SSDを搭載するモデルが10万3,900円で発売されており、さらに7月21日まで有効な4,000円引きのクーポンもある。今回は評価用のサンプルとしてRyzen 9 8945HS搭載モデルを手に入れたので早速チェックしていこう。

 GEEKOM A8の本体サイズは約112×112×37mm(ゴム足含む)、シルバーの筐体部分はアルミニウム製で重量は約432g。背面ポート部分はブラックのプラスチック素材だが、筐体のチリガバもなく側面の通気口も整然と並んでおり、高級感すら感じる。付属品はACアダプタとACコード、HDMIケーブル、VESAマウントと簡易マニュアルが付属している。

シンプルなパッケージデザイン、本体は半透明のペリペリフィルムで保護されている
アルミ製の筐体はしっとりした手触りで加工精度も高い
同梱のACアダプタは19Vの6.32Aで120W出力
縦横ともに約112mm
本体重量は実測値で約432g

 CPUは開発コードネームHawk PointからRyzen 8040シリーズの最上位モデルとなるAMD Ryzen 9 8945HSで、グラフィックスはCPUに統合されたRadeon 780Mを搭載。システムメモリはSO-DIMMでDDR5-5600 16GB×2、ストレージはPCI Express 4.0接続の2TB M.2 SSD(2280)、OSはWindows 11 Proがインストールされている。

 インターフェイスは、USB4、USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/PD対応)、USB 3.1×3、USB 2.0、3.5mmオーディオジャック、SDカードスロット、HDMI 2.0×2、2.5Gigabit Ethernet、無線LANはWi-Fi 6EとなるIEEE 802.11 axとBluetooth 5.2に対応。

正面右から電源ボタン、3.5mmオーディオジャック、USB 3.1、USB 3.1 Type-C
背面はUSB 4、USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode/PD)、USB 3.1、USB 2.0、HDMI 2.0×2、2.5Gigabit Ethernet、DCジャック
左側面は通気口のみ
右側面にはSDカードスロットを備える

 本体裏側にあるゴム足は両面テープで貼り付けられているが、両端部分は切り欠きがあり溝にしっかりとハマる構造でぐらつきにくい。ゴム足の下にあるネジ4本を緩めれば裏蓋は簡単に外れる。内側には無線LANのケーブルが取り付けられ、その下にはM.2 SSDの放熱用にしっかりとしたプレートで基板全体が覆われ、中心部分は裏蓋の中心がたわまないようにゴム板が張り付けられているなど、内部も作りがしっかりしている印象だ。

ゴム足の両端は切り欠きでしっかりとハマっている
裏蓋の下にあるのはM.2 SSDの放熱用プレートで四隅のネジで固定されている

 この手のミニPCは秋葉原で見かけないPCパーツが使われていることも少なくないが、放熱用のプレートの下には信頼性の高いCrucialメモリ、SSDは国内で流通していない型番だがAcerブランドで安心感がある。また前面と背面のポート部分には絶縁処理されたクッションが取り付けられ、各ポートへコネクタを接続したときのぐらつきを抑えユーザビリティが向上している。

日本でも人気のCrucialメモリとAcerのSSDが採用されており安心感がある
メモリはCrucial DDR5-5600
ストレージはAcer N7000CN-2TB

 放熱を担うプレートの隅にゴムが付いている。基板を押さえつけるクッション的な何かと思ったが、電源スイッチ裏側にあるLED部分を覆うような形状となっており、LED発光時に周囲へ光が漏れないようにするカバーになっていた。芸が細かいGEEKOM。

SSDの熱伝導およびグラファイトシートが貼り付けられたプレート、隅にゴムが付いている
電源スイッチ裏にあるLEDの光がケース内に漏れるのを防いでいる
ワイヤレスモジュールはAW-XB591NFでMediaTek MT79222搭載

 冷却はAPU側に取り付けられたブロアファンのみで、小さな筐体にこのスペックをよく詰め込めたなと驚く。裏面のDDR5やM.2 SSDの冷却が気になるところだが、今回のテストではサーマルスロットリングは確認されず、また極端なパフォーマンス低下も見受けられなかった。ただし負荷時のファンノイズは大きいため、静かな環境で使う場合は電力設定等を調整すると良いかもしれない。

冷却は薄型のブロアファンOVERCLOCK OVC801005SA

 CPUのアーキテクチャはZen 4で、開発コードネームはPhoenixのリフレッシュ版となるHawk Pointから、8コア16スレッドのRyzen 9 8945HSを搭載。従来からの変更点については、AMDのAI推論アクセラレータであるNPUつまりRyzen AIの処理性能が向上している点にある。たとえばPhoenixの最上位であったRyzen 9 7940HSでは、Ryzen AIの処理性能が最大10TOPSであったのに対し、Hawk PointとなったRyzen 9 8945HSでは最大16TOPSまで向上した。

 GPUはRDNA 3アーキテクチャでCPUに統合されたRadeon 780Mを搭載。12のGPUコアを備え2,800MHzで動作。サンプルのシステムメモリは16GB×2、ストレージは2TBのM.2 SSD、OSはWindows 11 Proとなっている。

 CPUのレンダリングでパフォーマンスを測定するCinebench 2024では、マルチコアは942、シングルコアは104、総合的なパフォーマンスを計測するPCMark 10ではスコア7,557となった。デスクトップPC並みのパフォーマンスで一般的なオフィスタスクはもちろん、32GBの大容量メモリを搭載していることもあり、LightroomやPhotoshopといった画像編集、Premire Proなどの動画編集も問題なく処理できる。

 Unreal Engine 4で開発された話題のオンラインアクションRPG「BLUE PROTOCOL」、同作のベンチマークソフトを使ってFHD解像度における最高画質と低画質の両方のプリセットで計測。最高画質プリセットのスコアは5,115で設定変更を推奨、低画質プリセットのスコアは14,297で極めて快適となり、低画質プリセットならストレスなくゲームをプレイできる。

 スクウェア・エニックスによるMMORPGの代表作ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシーのベンチマークを使い、FHD解像度で高品質(デスクトップPC)設定とした場合のスコアを計測。スコアは4,761で評価は普通、このままの設定でも問題なさそうだが設定を見直せば快適にプレイできるだろう。

 GPUのパフォーマンスを測定する3DMark、Night Raidは31,163、Wild Lifeは18,842、Fire Strikeは7,750、Time Spyは3,329となった。

 Ryzen 9 8945HSは、NPU以外のクロックやキャッシュといった基本的なスペックについては前世代と違いはあまりなく、今話題のAIといった機能の利用が少ないユーザーにとってのメリットは限定的かもしれない。そういった場合は旧モデル最上位であったRyzen 9 7940HSを搭載するモデルの「GEEKOM NUC A7」などの価格も検討したいところだ。

Cinebench 2024のマルチコアは942、シングルコアは104
PCMark 10のスコアは7,557、一般的なアプリケーションだけでなく画像や動画処理ソフトも問題なく動作する
最高画質プリセットのスコアは5,115、レポートの平均フレームレートは37.686
低画質プリセットのスコアは14,297、レポートの平均フレームレートは97.370
設定はFHD解像度で高品質デスクトップPC)、スコアは4,761で評価は普通
内蔵グラフィックス向けのベンチマーク、Night Raidのスコアは31,163
クロスプラットフォーム向けのベンチマーク、Wild Lifeのスコアは18,842
DirectX 11を使用するデスクトップPC向けのベンチマーク、Fire Strikeのスコアは7,750
DirectX 12を使用するデスクトップPC向けのベンチマーク、Time Spyのスコアは3,329