西川和久の不定期コラム

小型筐体にRyzen 9と32GB/2TBを詰め込んだ10万円ちょっとのミニPC、GEEKOM「NUC A7」

製品写真

 GEEKOMは、Ryzen 9 7940HSとRyzen 7 7840HSを搭載したミニPC「NUC A7」を販売中だ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 9-7940HS/32GB/2TB内蔵のミニPC

 GEEKOMは本連載で初めて取り上げるメーカーだ。同社のサイトを見ると、主にミニPCを扱っているようだ(加えてアクセサリが若干)。ミニPCは8モデルあるが、プロセッサが少し古いものも含まれているので、実質はもう少ないモデル数だろうか。

 今回ご紹介する「NUC A7」の主な仕様は以下の通り。

GEEKOM「NUC A7」の仕様
プロセッサARyzen 9 7940HS(8コア16スレッド/標準クロック4GHz/最大ブーストクロック5.2GHz/キャッシュ L2 8MB, L3 16MB/TDP 35~45W/cTDP35~54W)
メモリ32GB/LPDDR5-5,600MHz
ストレージM.2 2280 2TB
OSWindows 11 Pro
グラフィックスAMD Radeon 780M(12コア/2,800MHz)/HDMI 2.0×2、Type-C×2
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB4×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1 Type-A×3、USB 2.0 Type-A×1、SDカードスロット、3.5mmジャック
サイズ/重量112.4×112.4×37mm、416g(実測)
価格11万8,000円(Ryzen 9 7940HS/32GB/2TB)、9万4,000円(Ryzen 7 7840HS/32GB/1TB)

 プロセッサはAMD Ryzen 9 7940HS。8コア16スレッドで標準クロックは4GHz、最大ブーストクロックは5.2GHzまで上がる。キャッシュは L2 8MB/L3 16MB、TDPは35~45W、cTDPは35~54W。下位モデルとしてRyzen 7 7840HS搭載機も用意されている。

 メモリはLPDDR5-5,600MHzで32GBと大容量。ストレージもミニPCでは珍しくM.2 2280 SSD 2TB(下位モデルは1TB)と大きい。OSはWindows 11 Pro。23H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵AMD Radeon 780M(12コア/2,800MHz)。外部出力用にHDMI 2.0×2とType-C×2を装備。4画面出力が可能だ。

 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB4×1、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.1 Type-A×3、USB 2.0 Type-A×1、SDカードスロット、3.5mmジャック。USBが多めな上にSDカードスロットありはポイントが高い。

 サイズは112.4×112.4×37mm、重量(実測)は416g。iPhone 13 Proとの比較写真からも分かるようにコンパクトだ。

 価格はRyzen 9 7940HS/32GB/2TBで11万8,000円、Ryzen 7 7840HS/32GB/1TBで9万4,000円。内容を考えるとリーズナブルではないだろう。

USB 3.1×2、3.5mmジャック、電源ボタン
電源入力、USB4、HDMI、2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1、USB 2.0、USB 3.1 Type-C、HDMI
左側面にSDカードスロット
かなりコンパクトなのが分かる。4つのゴム足とVESAマウンタ用のネジ穴
付属品のACアダプタ(サイズ約97×65×23mm、重量220g、出力19V/6.32A)、HDMIケーブル、マニュアル
起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Security画面
重量は実測で416g
USB4があるのでケーブル1本で行けるかと思ったがダメで、HDMIとUSBケーブルが必要だった

 筐体はご覧の通りNUCタイプ。ACアダプタを加えても約660gと1kgを大きく下回るので、カバンに入れ持ち運びすら容易だ。

 前面はUSB 3.1×2、3.5mmジャック、電源ボタン。背面は電源入力、USB4、HDMI、2.5Gigabit Ethernet、USB 3.1、USB 2.0、USB 3.1 Type-C、HDMI。加えて左側面にSDカードスロットを配置。付属のACアダプタは、サイズ約97×65×23mm、重量220g、出力19V/6.32A。

 いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4があるのでケーブル1本で行けるかと思ったものの、画面が出ず、またキーボードも認識しなかったので(つまりUSBそのものが動いていない可能性あり。もう1つのType-Cも同様)、もしかすると届いた実機の不都合かも知れない。そのため今回はUSBとHDMIケーブル、2本を使用して接続している。

 内部へアクセスするには、裏のゴム足4つを剥がし、その下にあるネジを外す必要がある。これで裏パネルを外すことができるが、細いケーブル1本が本体側とつながっているため、強く引っ張らないように注意がいる。そして内部にもう1枚仕切りがあり、これも四隅にネジがあるので外すと、SSDとメモリにアクセスできる。ちょっと面倒そうだが、実際やってみると大したことはない。UEFIは起動時、[DEL]キーを押す一般的なパターンでOKだ。

ゴム足4の下にネジがあるので外すと裏カバーが外れる。1本細いケーブルがつながっているので要注意
中にもう1枚仕切りがあり、これも4本ネジを外すとSSDやメモリへアクセスできる

 ファンノイズは耳をかなり近づけると聞こえるものの、一般的な距離であれば問題ないレベルだ。発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかけてもあまり熱を持たない。搭載している冷却機構が優秀なのだろう。

重いゲーム以外なら余裕のパフォーマンス

 初期起動直後は追加アプリや壁紙の変更などもなく、Windows 11 Pro標準のまま。高めのスペックなので非常に快適に動作する。サイズでこんなに快適なの? と驚くほど。

 ストレージは、M.2 2280 2TB SSDの「Acer SSD N5000 2TB」。AcerのSSDは本連載初登場だが、メーカーサイトには情報がない。C:ドライブのみの1パーティションで約1,905GB割り当てられ空き容量1.82TB。BitLockerで暗号化されている。

 2.5Gigabit EthernetはRealtek Gaming 2.5Gigabit Ethernet、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7922、BluetoothもMediaTek製だ。

初期起動時のデスクトップ。追加アプリや壁紙の変更などもなくWindows 11 Pro標準
ストレージはM.2 2280 2TB SSDの「Acer SSD N5000 2TB」。2.5Gigabit EthernetはRealtek Gaming 2.5Gigabit Ethernet、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7922、BluetoothもMediaTek製
C:ドライブのみの1パーティションで約1,905GB割り当てられている。BitLockerで暗号化

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。各スコアからも分かるように、NUCでもハイエンドクラスのパフォーマンスを叩き出している。ヘビーなゲーム以外であれば十分以上に使えるはずだ。

ベンチマークスコア
PCMark 10 v2.1.2662
PCMark 10 Score7,560
Essentials11,385
App Start-up Score16,405
Video Conferencing Score8,667
Web Browsing Score10,380
Productivity10,601
Spreadsheets Score13,573
Writing Score8,280
Digital Content Creation9,713
Photo Editing Score13,222
Rendering and Visualization Score10,172
Video Editting Score6,814
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,631
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.05,652
Storage5,066
3DMark v2.28.8217
Time Spy3,313
Fire Strike Ultra2,358
Fire Strike Extreme4,225
Fire Strike7,971
Sky Diver27,818
Cloud Gate39,821
Ice Storm Extreme177,584
Ice Storm218,430
Cinebench R23
CPU15,931(4位)
CPU(Single Core)1,205(4位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード4862.339 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト4704.933 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1791.771 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト447.252 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード494.040 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト584.982 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード45.927 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト124.530 MB/s

 以上のようにGEEKOM「NUC A7」は、Ryzen 9 7940HSにメモリ32GB、ストレージ2TBを搭載した非常に強力なミニPCだ。大きさの割に静かで熱が出ないのも魅力的。10万円未満に抑えたい時は下位モデルのRyzen 7 7840HS/32GB/1TB用意されている。

 手元に届いた実機はUSB4の不都合があったものの、これがなければNUCタイプのミニPCの中でもかなりオススメだろう。新年度に備えPCを新調したいユーザーにお勧めの1台と言える。