福田昭のセミコン業界最前線
AIを動かす「器」はどう変わる? 2026 VLSIシンポジウムが描く半導体の最前線
2026年1月19日 06:07
半導体の研究開発コミュニティでは、12月と2月に2つの大規模な国際学会が開催される。12月の国際学会はデバイス/プロセス技術の研究成果が披露される「国際電子デバイス会議(IEDM)」、2月の国際学会は集積回路技術の研究成果が集う「国際固体回路会議(ISSCC)」である。いずれも各技術分野では世界最大の規模を誇る。
そして6月にもう1つ、半導体技術に関する大規模な国際学会が毎年、開催される。デバイス/プロセス技術と回路技術の両方をカバーする「VLSIシンポジウム(VLSI)」である。半導体技術の研究開発コミュニティでは、これら3つの国際学会のいずれかで発表することを目指して、研究論文を作成していることが少なくない。
VLSIは最近まで、デバイス/プロセス技術をカバーする「VLSI技術シンポジウム(Symposium on VLSI Technology)」と、回路技術をカバーする「VLSI回路シンポジウム(Symposium on VLSI Circuits)」に分かれていた。「VLSI技術シンポジウム」は1981年に初めて開催された。1970年代後半から日本の半導体メーカーが急速に力を付け、偉大な先輩である米国の半導体メーカーを市場で脅かすようになり始めていた。いわゆる「日米半導体貿易摩擦」である。
日本と米国における貿易摩擦の緩和と、研究開発コミュニティの人的交流を促す目的で、VLSI技術シンポジウムは設立された。日本側を主導したのは東京大学教授(1980年当時)の田中昭二氏、米国側を主導したのはRCA Laboratories(1980年当時)のWalter Kosonocky氏である。最大の特徴は開催地を日本と米国の交互開催としたことだ。この伝統は現在も受け継がれている。1987年には「VLSI回路シンポジウム」が回路技術とシステム技術をカバーする国際学会として併設された。
両シンポジウムは当初、開催地は同じであるものの日程がずれているなど、独自色が残っていた。たとえば2015年に京都で開催されたVLSIシンポジウムでは、VLSI技術シンポジウムが6月15日~18日、VLSI回路シンポジウムが1日遅れの6月16日~19日に開催された。ただしすでに合同の講演セッションが実施されており、交流が始まっていた。
2017年には両シンポジウムの日程が同じとなり、ずれがなくなった。この結果、同一日程でデモンストレーション展示とレセプションを共同開催するようになった。2019年にはワークショップが始まった。そして2022年には、正式に1つのシンポジウムに統合された。
VLSIシンポジウムは西暦の偶数年に米国ハワイ州のホノルル(「ハワイ開催」とも呼ぶ)、西暦の奇数年に京都府京都市(「京都開催」とも呼ぶ)で交互に開催することを通例としてきた。同シンポジウムの実行委員会には米国側と日本側のメンバーがおり、開催地に合わせて地元のメンバーがさまざまな事柄を差配してきた。
VLSIシンポジウムの広報にIEDM取材の報道関係者を活用
そして広報活動の一環としてハワイ開催のときは、前年12月のIEDMでVLSIシンポジウムの委員会(主に米国側チェア)が、翌年6月の開催概要を報道関係者向けに説明するプレスブリーフィングが実施されてきた。最初のプレスブリーフィングは2017年12月のIEDMである。プレスルームで2018年6月のVLSIシンポジウムに関する説明が実施された。プレスブリーフィングの開催は、IEDMの取材登録をしていたプレスメンバーだけに事前に知らされた。
2年後の2019年12月にも、IEDMのプレスルームでVLSIシンポジウムの「プレスブリーフィング」は実施された。ただし残念ながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行により、2020年のVLSIシンポジウムはバーチャル開催となっている。2019年12月のブリーフィングではもちろん、リアル開催を前提に概要が説明されていた。
さらに2年後の2021年12月は、IEDMがバーチャル開催となってしまい、VLSIシンポジウムの事前説明会は実施されなかった。翌2022年6月はVLSIシンポジウムのリアル開催がハワイで復活した。このハワイ開催では、日本からの参加者は出国前と現地で日本の厚生労働省が規定した方式のPCR検査を受けて新型コロナウイルスの陰性証明書を提出しなければならず、かなりの不便さと出費を強いられた。
IEDMも2022年12月にリアル開催が復活した。そして2023年12月のIEDMでは、翌年6月にハワイで開催予定のVLSIシンポジウムに関するプレスブリーフィングが実施された(参考記事)。このときは、説明者に変化があった。米国側だけでなく、日本側の委員会メンバーも2名が参加していたのだ。
さらに2024年12月のIEDMでは、2025年6月に開催されるVLSIシンポジウムの概要が報道関係者向け(IEDMにプレス登録した関係者のみ)に紹介された(参考記事)。京都開催の概要も、半年前のIEDMで報道機関に説明されるようになった。
そして2025年12月のIEDMでも、半年後、すなわち2026年6月に開催されるVLSIシンポジウムの概要が報道関係者向けに紹介された。
投稿論文の締め切りは米国時間2026年1月26日と間近に迫る
VLSIシンポジウムの投稿論文締め切りは2026年1月26日(米国時間)である。従って技術講演会(テクニカルカンファレンス)の一般論文は、現時点では1件も決まっていない。スケジュールでは2026年3月21日までに審査が完了し、同年3月31日までに採択の可否が投稿者に通知される。またレートニュース(速報論文)の投稿締切日は同年3月30日となっている。
そしてレートニュースを含めた一般講演全体の詳細が決定した後に、東京を含めたアジア各地と米国でVLSIシンポジウムの正式な報道関係者向け説明会が開催される。東京における説明会の開催時期は4月中旬が多い。開催形式はオンライン、あるいは対面である。
2026 VLSIはプレイベントを6月14日~15日に、メインイベントを16日~18日に開催
ここからは2025年12月8日夕方にIEDMのプレスルームで開催された「プレスブリーフィング」より、2026年6月に開催されるVLSIシンポジウム(正式名称は2026 Symposium on VLSI Technology and Circuits、略称は2026 VLSI)の概要を説明していく。2026 VLSIの全体テーマは「Advancing the AI Frontier through VLSI Innovation(VLSIのイノベーションを通じたAIフロンティアの進化)」となった。
基本的な日程は前年のVLSIシンポジウムとほぼ変わらない。6月14日がワークショップ、6月15日がショートコース、6月16日から6月18日が技術講演会となる。開催地は前回のハワイ開催と同じ、ホノルルのリゾートホテル「Hilton Hawaiian Village」である。
開催形式は基本的に、対面形式となる。バーチャル参加の登録枠はあるものの、一般講演を録画した映像はインパーソン閉幕後にオンデマンドで閲覧することになる。またインパーソンの参加登録者も録画映像を視聴できる。
インパーソンの登録料金で参加できるサブイベントには、6月15日夕方のデモセッション(一般講演の発表者がテーブルトップ形式で発表内容をアピールするイベント)とレセプション、同日夜のパネル討論会(ジョイントイブニングパネル)をまず予定する。
それから6月17日夜には晩餐会、6月18日昼にはランチョン(昼食と講演)を設けた。
新材料やプロセス、パッケージング、回路設計などがワークショップの候補
日程をもう少し詳しく説明しよう。プレイベントの初日である日曜日は、午後1時~午後5時にワークショップ(ミニ講演会兼討論会)を予定する。前半に3件、後半に3件のワークショップを並列に実施することを考えている。2025年12月31日午後11時59分の締め切りで講演テーマと要約の投稿を募集していた。正式な決定は2026年1月中となる見込み。
候補のトピックスには、「新材料(New Materials)」「新たなプロセス技術と先進パッケージングソリューション(New process technologies and advanced packaging solutions)」「先進回路設計技術(Advanced circuit design techniques)」などが挙がっていた。
ショートコースでAIを活用した設計効率化や設計品質向上などを学ぶ
続く6月15日は、デバイス/プロセス技術と回路技術のショートコース(技術講座)を同時並行で開催する。デバイス/プロセス技術の共通テーマは「Technologies Shaping the Future as Key Enablers for AI(AIの未来を実現するカギとなる製造技術)」である。8件の講演が朝から夕方まで続く。講演テーマには「Advanced CMOS Scaling(先端CMOSのスケーリング)」「DTCO(設計製造協調最適化)」「Heterogeneous/3D integration(異種/3次元集積化)」などを予定する。
回路技術の共通テーマは「AI-Driven Design Acceleration: Learning Across Circuits, Technology, and Yield(AIの活用による設計期間の短縮: 回路、製造、歩留まりを横断的に学習)」である。こちらも8件の講演を予定する。講演テーマには「Opportunities and Challenges of AI in Circuit Design(回路設計におけるAIへの期待と課題)」「Generative AI for Design Automation & System Integration(設計自動化とシステム集積に向けた生成AI)」「Machine Learning and Convex Optimization to Improve Chip Design Quality and Productivity(マシンラーニングと凸最適化がチップ設計の品質と生産性を高める)」などがある。
プレナリーセッションはIntel、SK hynix、MediaTekなどの招待講演を予定
6月16日~18日は、メインイベントである技術講演会を実施する。16日と17日は技術講演会の前に、2件ずつのプレナリー講演(基調講演)を予定する。いずれも招待講演である。2025年12月8日時点では、Micron Technology、TSMC、東京エレクトロンの講演者が決定していた。残るのはOpenAIで、交渉中である。
2026 VLSIでもっとも重要な、一般講演に関する情報はこれからだ。2026年4月に東京で開かれると見られる、報道関係者向けの正式な事前説明会を待ちたい。






















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