福田昭のセミコン業界最前線

2018年の半導体ランキングは2年連続でSamsungがトップ

2018年の半導体ベンダー売上高ランキング。左は市場調査会社Gartner(ガートナー)が2019年1月7日(米国時間)に発表した速報値。右は市場調査会社IC Insightsが2018年11月12日(同)に発表した予測値(一部のみ)。いずれもトップはSamsung Electronics、2位はIntelとなっている。なお青字は、半導体メモリの大手ベンダーを意味する

トップ6社の顔ぶれは前年と変わらず

 年末から年初にかけては毎年、ハイテク市場調査会社のいくつかが、半導体ベンダーの売上高ランキングを発表してきた。この年末年始も、2018年の売上高ランキングを2社が発表した。

 まず昨年(2018年)の11月12日(米国時間)に、市場調査会社IC Insightsが2018年の半導体売上高ランキング(予測値)を公表した。そして今年(2019年)の1月7日(米国時間)には、市場調査会社Gartnerが2018年の半導体売上高ランキング(速報値)を発表した。

 GartnerのランキングとIC Insightsのランキングには扱う半導体企業に違いがある。Gartnerのランキングは外販企業が対象であるのに対し、IC Insightsのランキングはシリコンファウンダリと内製のみの企業を含む。具体的には、IC Insightsのランキングでは4位にシリコンファウンダリ大手のTSMCが入っている。

 TSMCを除くと、IC InsightsとGartnerのランキング順位は、1位から6位(IC Insightsは7位)までのベンダーが完全に一致した。そして1位から4位までは、前年(2017年)と順位が変わらなかった。また順位の変動はあったものの、上位6社の顔ぶれは前年と同じだった。以下に、6位までに入った半導体ベンダーをご紹介しよう。

 トップは半導体メモリ最大手、韓国のSamsung Electronicsである。2017年に初めてトップとなり、2018年もトップを維持した。Gartnerによる売上高の成長率は26.7%、ICInsightsによる成長率は26%で、いずれもかなり高い。

 2位は米国のIntelである。2017年に、Gartnerのランキングではそれまで25年連続で維持していたトップから、2位に後退した。2018年も2位のままで、トップ奪回は成らなかった。Gartnerによる売上高の成長率は12.2%、ICInsightsによる成長率は14%で、2桁成長を達成した。

 3位は半導体メモリ大手、韓国のSK Hynixである。同社は半導体メモリの好景気により、2017年に3位に上昇した。2018年も3位を堅持した。特筆すべきは、成長率の高さだろう。Gartnerによる売上高の成長率は38.2%、IC Insightsによる成長率は41%ときわめて高い。いずれもトップ10社前後のなかではもっとも高い成長率を記録した。

 4位(IC Insightsのランキングでは5位、以下同様)はこれも半導体メモリ大手、米国のMicron Technologyである。同社も半導体メモリの好景気により、2017年に4位にランクアップした。2018年も4位を維持した。Gartnerによる売上高の成長率は33.8%、ICInsightsによる成長率は33%で、非常に高い。

 5位は通信用半導体大手、米国のBroadcomである。2017年の6位から上昇した。Gartnerによる売上高の成長率は7.4%、ICInsightsによる成長率は4%である。

 6位は通信用半導体大手、米国のQualcommである。2017年の5位からランクダウンした。Gartnerによる売上高の成長率はマイナス4.5%、ICInsightsによる成長率はマイナス3%である。トップ10社前後のなかで売上高がマイナス成長となったのは、Qualcommだけだ。

トップSamsungと2位Intelの差が拡大

 Gartnerの発表値によると、Samsung Electronics(以降はSamsungと表記)の売上高は758億5,400万ドル、Intelの売上高は658億6,200万ドルである。両社の差は約100億ドル。Samsungの売上高は、Intelに比べると15%ほど多い。

 2017年にSamsungの売上高とIntelの売上高の差は、約11億ドルしかなかった。売上高の比率では2%だけ、Samsungが多かった。ぎりぎりのトップ奪取だったとも言える。そして両社の差は2018年に、大きく拡大したことになる。

2002年~2018年のIntelとSamsung Electronicsの半導体売上高推移。市場調査会社Gartnerの発表値を筆者がまとめたもの
2002年~2018年のIntelとSamsung Electronicsの半導体売上高比率。Intel/Samsungで示している。半導体売上高の金額はGartnerの発表値を使用した

半導体メモリ好況の余熱がトップ4社のポジションを維持

 ランキング入りした主要な半導体ベンダーの成長率をメモリと非メモリに分けてみると、2017年ほど極端ではないものの、傾向としては変わらず、メモリベンダーの成長率が高い。さらに、売上高トップ4社(TSMCを除く)のなかで3社はメモリベンダーである。2018年は半導体メモリ好況の余熱によってランキング上位が維持されたことがうかがえる。

 非メモリの半導体ベンダーで高い成長が目立つのは、NVIDIAである。2018年の売上高は37%成長と非メモリの上位ベンダーのなかではトップの成長率を記録した。順位は10位で変わらなかったものの、金額では上位ベンダーとの差を一気に縮めている。

主要な半導体ベンダーの2018年における成長率。半導体メモリベンダーの高成長ぶりが目立つ。Gartnerが2019年1月7日に発表した数値と、ICInsightsが2018年11月12日に発表した数値をまとめた

2年連続の2桁成長となった世界の半導体市場

 市場調査会社Gartnerは半導体の売上高ランキングとともに、世界の半導体市場の規模と成長率を速報値として公表している。同社の調べによると2018年に世界の半導体市場は13.4%成長し、4,766億9,300万ドルに達した。2017年の21.6%成長(確定値)に続いて2年連続で2桁成長した。

 世界の半導体市場に関しては、半導体ベンダーの業界団体であるWSTS(世界半導体市場統計)が、毎年春と秋に市場実績と市場予測を公表してきた。最近では、2018年11月27日に市場予測を発表している。

 この発表資料によると、2018年の世界半導体市場は15.9%成長し、4,779億3,600万ドルに達する見込みである。WSTSの公表値では2017年の成長率は21.6%で、Gartnerと同様に2年連続の2桁成長を見込んでいる。なおWSTSの公表値では、さらに前年である2016年の世界市場は成長率が1.1%とほぼ横ばいだった。

前半が加速、後半に減速の2018年

 GartnerとWSTSは、定期的に半導体市場の予測値を見直している。Gartnerはおおよそ3カ月ごとに予測値を修正してきた。WSTSは前述のように予測値を年に2回、公表してきた。

 両者の予測から半導体市場の勢いを見ていくと、2018年の前半は成長が加速され、後半に入ると成長が減速していることがわかる。しかも年末に向け、減速がより急激になる傾向が見える。

 予測値の推移を見ていこう。Gartnerは2017年10月時点では、2018年の世界半導体市場の成長率を4.0%とかなり低く予測していた。それが2018年1月になると成長率を7.5%と上方へ修正した。そして同年4月には、予測値を11.8%成長へと再び上方修正した。続く同年7月には、成長率予測を14.0%とさらに上方へと修正した。2018年前半に成長率は当初の3倍強に上方修正されていることがわかる。

 問題はここからだ。2018年10月にGartnerは、成長率予測を14.4%へと修正する。上方修正ではあるものの、2018年7月までの修正に比べると、明らかに勢いが弱い。そして年末の2018年12月には、予測値を13.4%へと下方修正する。Gartnerが予測値を下方修正するのは、2016年7月に同年の成長率予測を下方修正して以降、初めてのことだ。

2018年の世界半導体市場予測の推移。市場調査会社Gartnerによる予測値を筆者がまとめたもの

 続いてWSTSによる予測値の推移である。WSTSは2017年11月時点では、2018年の世界半導体市場の成長率を7.0%と予測していた。そして2018年6月には、成長率の予測値を12.4%へと上方修正した。さらに、直近の2018年11月には成長率を15.9%に修正した。

 WSTSも2018年11月に発表した市場予測に関する資料で、同年後半に半導体市場の成長が減速しつつあると指摘している。現状を鑑みると、実際には予測値の15.9%成長ではなく、もっと低い成長率にとどまる可能性が高い。

2018年の世界半導体市場予測の推移。半導体ベンダーの業界団体WSTSによる予測値を筆者がまとめたもの

 前半に半導体市場が加速し、後半に減速した大きな要因は、半導体メモリ市況の変化である。半導体メモリ市場はDRAMとNANDフラッシュメモリでおもに形成されている。一昨年(2017年)はDRAMとNANDフラッシュメモリの需給バランスが供給不足の状況にあり、価格が維持あるいは上昇のトレンドにあった。

 しかし2018年に入ると、NANDフラッシュメモリの需給が緩み、価格の低下がはじまった。そして2018年の後半には、DRAMでも需給が緩みはじめた。DRAMの需給バランスは供給過剰へと転じた。

 今年の前半は、NANDフラッシュメモリとDRAMはともに供給過剰と値下がりが続くと、半導体メモリ業界では予測されている。このことは2018年の半導体ランキングで上位4社中3社を占める、半導体メモリ大手の売上高に影響する。昨年と同様の高い成長率は、今年は望みづらい。

 このため、今年の半導体売上高ランキングではIntelがSamsungを逆転する可能性が少なくないと、業界では囁かれている。今年のトップをIntelが奪回となるのか。Samsungがトップを守るのか。行方を見守っていきたい。