西川和久の不定期コラム
14型と12.6型のデュアル液晶ノート、ASUS「ZenBook Duo UX481FL」
2020年5月7日 11:00
ASUSは5月7日、上下にディスプレイを配置した14型ノートPC、「ZenBook Duo UX481FL」を発表した。プロセッサ/メモリ/ストレージ容量の違いで2モデルあるなか、発表に先駆け上位モデルを試用する機会を得たので試用レポートをお届けしたい。
上下にパネルが2つあるちょっと風変わりなノートPC
一般的に2in1も含めノートPCと言えば、14型辺りまではテンキーなし、手前にパームレストと中央にタッチパッド。15.6型以上になるとテンキーあり、といったものが大半だ。もちろんUMPCのような超小型機だと、物理的なスペースがなく、パームレストやタッチパッドなしのものもある。
しかし今回ご紹介するASUS「ZenBook Duo UX481FL」は、扉の写真からもわかるように、14型に加え長細い12.6型のパネル、その下にキーボード。テンキーやパームレストはなく、右端にタッチパッド……と、他に類を見ないレイアウトだ。未来っぽい雰囲気すら醸し出している。
同社ではこれまで「ZenBook Pro Duo」と呼ばれる15.6型/4K有機ELの同一コンセプトモデルは出荷済だが、このたび14型を追加した格好となる。構成違いで2モデルあり、届いたのは上位モデルだ。おもな仕様は以下のとおり。
ASUS「ZenBook Duo UX481FL」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i7-10510U(4コア8スレッド/1.8GHz~4.9GHz/キャッシュ 8MB/TDP 15W) |
メモリ | 16GB(8GB×2)、2,133MHz LPDDR3 |
ストレージ | SSD 1TB(PCIe Gen3 x2) |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 14型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢/タッチ対応+12.6型ScreenPad Plus(1,920×515ドット)、非光沢/タッチ対応 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics+GeForce MX250(2GB)/HDMI |
ネットワーク | IEEE802.11ax(Wi-Fi6)対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1(Gen 1)×1、USB 3.1(Gen 2)×1、USB 3.1(Gen 2/Type-C)×1、92万画素Webカメラ(Windows Hello対応)、microSDカードリーダ、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 13.9時間(ScreenPad Plus ON)、(70Wh/セル、リチウムポリマー) |
サイズ/重量 | 約323×223×20.4mm(幅×奥行き×高さ)/約1.66kg |
税込価格 | 219,800円 |
プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i7-10510U。4コア、8スレッドでクロックは1.8GHzから最大4.9GHz。キャッシュは8MB、TDPは15W。SKU的には6C/12Tもあるため最上位ではないものの、それでもモバイルPC用としては強力だ。
メモリは2,133MHz LPDDR3 8GB×2の計16GB、ストレージはSSD 1TB(PCIe Gen3 x2)。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphicsと、PascalアーキテクチャのGeForce MX250(2GB)。外部出力用にHDMIを備える。
ディスプレイは非光沢の14型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)/タッチペン対応に加え、ScreenPad Plusと呼ばれる非光沢の12.6型IPS式(1,920×515ドット)/タッチペン対応がキーボードの上にある(ペンはオプション)。Windows的にはマルチディスプレイを上下に配置したかたちだ。
ネットワークは有線LANがなく、IEEE 802.11ax(Wi-Fi6)対応、Bluetooth 5.0。その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 3.1×1、USB 3.1 Type-C×1、92万画素Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力。WebカメラはWindows Helloに対応する。
70Wh/セルのリチウムポリマーバッテリを内蔵し、駆動時間は、ScreenPad Plusオン時13.9時間。サイズは約323×223×20.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.66kg。税込価格は219,800円。
なお下位モデルとしてIntel Core i5-10210U(4C6T/1.6-4.2HGz)、メモリ8GB、SSD 512GBで税込価格182,800円も用意されている。いずれにしても14型としては少し高めだが、パネルが2つと特殊なこともあり妥当なところだろうか。
筐体の多くはアルミニウムで質感が良い。色は仕様上セレスティアルブルーなのだが、見た目は濃いメタリックグリーンと言ったところか。フットプリントは約323×223mmと、14型としてはコンパクトな方だが、重量は実測で1,660g。持つとズッシリ重い。パネルを2枚搭載していることもあり仕方ない部分だろう。全体的にガッチリしており、USミリタリーグレードの耐久性(MIL-STD 810G)を備えている。
全面はパネル中央上にWebカメラ。かなりの狭額縁なのが分かる。左側面に電源入力、HDMI、USB 3.1、USB 3.1 Type-C。右側面にUSB 3.0、音声入出力、microSDカードスロット、ステータスLEDを配置。パネルの傾きは掲載した写真の位置が最大となる。裏は前後に1本バータイプの足と側面も含め手前左右のスリットにスピーカー。付属のACアダプタはサイズ約65×65×28mm、重量195g、出力19V/3.42A。なお、Type-CはPD非対応だ。
14型のメインディスプレイは、非光沢で目に優しく、明るさ(最大300cd/平方m)、発色、コントラスト、視野角全て良好。タッチの反応も良い。さすがに価格だけのパネルが使われている。
対してサブディスプレイの12.6型であるが、コストの問題か、明るさ(最大250cd/平方m)と色域がメインパネルと異なり、写真をご覧いただければわかるようにはっきり違いが出る(ScreenPad Plusの写真の明るさはどちらも最大)。視野角はIPS式とは言え、操作する時の目とパネル(キーボード面)の角度を考えるとカバーしきれない範囲となり、さらにメインパネルとの差が広がってしまう。
このため通常でもキーボードが結構傾く構造になっており、付属のスタンドでさらに傾けるかたちだ。従って色味が重要な表示はサブディスプレイ側には不向きで、後述している電卓などウィジェット系、(絵柄がわかればいい)サムネイル、プレイヤー/ミキサー、動画編集用のタイムラインなどを配置するのが無難そうだ。
キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ(日本語87キー)。3段階の明るさに調整できるキーボードバックライトも搭載している。キートップの質感や気持ち深めの打鍵感など個人的には好み。キーピッチは約18mm。[半角/全角]キーだけ狭いが、ほかは均一となっている。そして右側に2ボタン式のタッチパッドを配置。パームレストはない。
以降、個人的な意見だが、パームレストなしと言うのは意外と入力しにくく、パネルのセンターとキーボードのセンターが合ってないのも違和感を覚える。さらにタッチパッドが右。ポインタ操作は指が離れる上、普通にキー入力して[Enter]キーを押そうとするとほぼTouchPadを叩く……と、慣れの問題もあるだろうが、普段の感覚でそのまま扱うのが難しかった。
ノイズや振動は本体内に2つのファンがあるにもかかわらず、試用した範囲ではまったく気にならなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると後ろ側面に熱を持つものの、手前にはまったく影響はない。
サウンドは裏と側面に音が出るスリットがあり、裏だけのタイプより少しクリアだ。あくまでもノートPCとしてだが、鳴りっぷりもいい。もう少しパワーがあれば良かった。
重めだが質感も良く、いろいろな意味で面白い作りのノートPCであることは間違いない。用途にハマれば普通のものは使えなくなるかも知れない魅力的要素もある。ただ通常位置でのサブパネルの見え方とキーボード/TouchPadのレイアウト……これは好みがわかれるのではないだろうか。
性能の高さに加え、ScreenPad Plusでこれまでにない操作性
初期起動のスタート画面はなし。画面キャプチャからわかるように、タブレットモード自体がオンにできなくなっている。これは上下にパネルが並び、加えて独自のScreenPad Plus用UIを抱えているため、本機独自の仕様だと思われる。
デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。模様が上下につながっているのもなかなか面白い。作動は構成が構成なだけに、サクサク作動し心地よい。
ストレージはSSD 1TBの「Intel SSDPEKNW010T8」。資料によるとシーケンシャルリード/ライト1,800MB/s。後述するベンチマークテストでもほぼそのままのスコアが出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約952.96GBが割り当てられ空き913GB。BitLockerで暗号化されている。
Wi-FiとBluetoothはIntel製。GeForce MX250はGDDR5/2GB、CUDAコア384なのがわかる。
本機固有のScreenPad Plusは、左側に→があり、それをタップするとパネルを表示する。左のアイコンは順に「明るさ」、「タスクグループ」、「アプリ上下スワップ」、「アプリナビゲーター」、「キーボードロック」、「設定」。もちろん、ここにアプリアイコンの追加もできる。タスクグループは、上下に配置するアプリやウィンドウサイズを登録し、一発で起動/配置する機能だ。ウィンドウ移動時に表示する固有のコントロールも用意されている。
上4つ、背景が白いアイコンは、「Quick Key」、「Handwriting」、「Number Key」、「App Deals」。App Deals以外は、ScreenPad Plus(下パネル用)に特化したアプリだ。画面キャプチャのように背景が半透明になったウィジェット的なものとなる。
設定は、輝度、背景を変更、デフォルトウィンドウサイズ、ランチャーボタンを自動的に隠す、ScreenPad Plusのオーガナイザーを有効にする、アクションメニューを有効にする、ScreenPad Plusバッテリセイバー、もっと知る、クイックガイド。デフォルトウィンドウサイズは1/3、1/2、Fullの選択が可能だ。
イメージであるが、PowerDirectorでScreenPad Plusを使った画面を掲載した。下側がタイムラインとなっている。画像関係ならサムネイル、音楽関係ならミキサーを配置する感じだろうか。ただ先に書いたように、パネルの明るさや色域などがメインパネルと異なるため、色味を表現するようなパネルは不向きかと思われる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、「AudioWizard」、「i-フィルター6.0」、「KKBOX UWP」、「McAfee Personal Security」、「MyASUS」、「PhotoDirector」、「PowerDirector」、「ScreenXpert」、「WPS Presentation/Spreadsheets/Writer」など。以前単独アプリであった「Splendid」などはMyASUSに統合されている。
またMyASUS、左側のメニューにある「Link to MyASUS」は、スマートフォンを接続し、「通話とメッセージ」、「共有」、「同期」(Androidのみ)、「スクリーン拡張」(Androidのみ)といった、スマートフォンとの連携機能となる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。
ここのところComet Lake+GeForce MX250搭載機の試用が続いているが、プロセッサのSKUやSSDの性能などによって多少凸凹はあるものの、よく似たスコアになっている。dGPU搭載とは言え、重い3Dゲームは厳しいものの、それ以外の処理であればまったく問題なくこなせるレベルだ。
バッテリ駆動時間はシステム設定そのまま+ScreenPad Plusオンで11時間19分。仕様上13.9時間なのでほぼ近い値となった。この構成でこれだけ動けば、実用上は十分だと思われる。
PCMark 10 v2.1.2177 | |
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PCMark 10 Score | 4,246 |
Essentials | 8,600 |
App Start-up Score | 13,644 |
Video Conferencing Score | 6,163 |
Web Browsing Score | 7,565 |
Productivity | 7,312 |
Spreadsheets Score | 8,299 |
Writing Score | 6,444 |
Digital Content Creation | 3,306 |
Photo Editing Score | 3,493 |
Rendering and Visualization Score | 2,879 |
Video Editting Score | 3,596 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,536 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,736 |
Work Accelarated 2.0 | 5,157 |
Storage | 4,984 |
3DMark v2.11.6866 | |
Time Spy | 1,023 |
Fire Strike Ultra | 459 |
Fire Strike Extreme | 1,363 |
Fire Strike | 2,805 |
Sky Diver | 9,181 |
Cloud Gate | 13,542 |
Ice Storm Extreme | 75,014 |
Ice Storm | 72,343 |
CINEBENCH R20 | |
CPU | 1459 pts(10位) |
CPU(Single Core) | 399 pts(3位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 1,961.995 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1,762.655 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 620.889 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 420.842 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 379.340 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 416.903 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 55.004 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 135.722 MB/s |
PCMark 10/BATTERY/Modern Office | 11時間19分(ScreenPad Plus ON、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準) |
以上のようにASUS「ZenBook Duo UX481FL」は、4C8Tのi7-10510U、メモリ16GB、ストレージSSD 1TB、グラフィックスにGeForce MX250を搭載した14型ノートPCだ。これだけでもかなり高性能な上に、ScreenPad Plusと呼ばれる12.6型1,920×515ドットのサブディスプレイがキーボード上に配置され、上下2画面構成の独特な操作が可能となる。
個人的にはキーボードがディスプレイより左寄り、タッチパッドが右端、ScreenPad Plusの見え方などが気になるものの、ここは用途や個人差もあるだろう。それを差し引いてもノートPCで上下2画面にグッと来た人にお勧めしたい1台だ。