Hothotレビュー

ディスプレイ内蔵タッチパッド採用の「ZenBook 14」はモバイルに最適な2画面ノートPC

ASUS「ZenBook 14」144,500円~

 ASUS JAPANは、5.65型液晶ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」を採用した14型ノートPC「ZenBook 14」を8月20日に発表、8月23日より販売を開始した(ASUS、タッチパッドをディスプレイに使える14/15.6型ノート参照)。

 14型の「ScreenPad Plus」を搭載した15.6型ノートPC「ZenBook Pro Duo」、同じくScreenPad 2.0を搭載した15.6型ノートPC「ZenBook 15」が同時に発表されており、ZenBook 14は今回のラインナップでもっとも小型・軽量、かつリーズナブルなScreenPad搭載ノートPCだ。

 ZenBook Pro Duoより小さいものの、Apple「MacBook Pro」の「TouchBar」より大きく、また通常のWindowsアプリも実行可能なサブディスプレイにもなり、2画面ノートPCとして魅力的なモデルに仕上がっている。結論じみたことをお伝えしておくと、記事執筆中にZenBook 14を購入してしまったぐらいだ。

 さて、今回ASUS JAPANより、14型モデルのなかでもっとも低価格な「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」(直販価格144,500円)を借用した。ScreenPad 2.0の使い勝手、そして最安価なエントリーモデルがどのぐらいの性能を備えているのか、スポットを当ててレビューしていこう。

ZenBook 14/15には合計4モデルがラインナップ

 日本向けには下記のとおり、ZenBook 14は3モデル、ZenBook 15は1モデルが用意されている。

  • 「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」(144,500円)
    14型液晶/Core i5-8265U/RAM8GB/SSD512GB/WPS Office
  • 「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002TS)」(166,500円)
    14型液晶/Core i5-8265U/RAM8GB/SSD512GB/Microsoft Office
  • 「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-8565)」(183,500円)
    14型液晶/Core i7-8565U/RAM16GB/SSD1TB/WPS Office
  • 「ASUS ZenBook 15 UX534FT(UX534FT-A9012TS)」(222,500円)
    15.6型液晶/Core i7-8565U/RAM16GB/SSD512GB/Microsoft Office

 つまりZenBook 14/15にはディスプレイサイズ、CPU、メモリ、ストレージ、Officeの種類が異なる4モデルが存在していることになる。なお14型のCore i7モデルのみ、9月下旬以降発売予定だ。

 14型と15.6型ではこのほかに、ディスクリートGPU、SDカードスロット、テンキーの有無、バッテリ容量が異なっている。ZenBook 14にはGeForce MX250/microSDカードスロット/テンキーなしキーボード/50Whバッテリ、ZenBook 15にはGeForce GTX 1650/SDカードスロット/テンキー付きキーボード/71Whバッテリが採用されている。

 ASUSによれば、GeForce MX 250は内蔵GPUに対してゲームで2倍前後、GeForce GTX 1650は4倍前後のグラフィックス処理能力を発揮するとのこと。3Dゲームを快適にプレイしたいのであれば、ZenBook 15のほうが有利なわけだ。

 とは言っても、右側面のUSB端子がZenBook 14はUSB 2.0、ZenBook 15はUSB 3.0を採用していること以外はインターフェイスの構成、通信機能は同一。ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」のサイズは5.65型とまったく同じだ。ScreenPad 2.0目当てで購入するのなら、14型と15.6型のどちらを選んでもユーザー体験に違いはないと思う。

 なお、もう1つ細かな差異がある。それはストレージの速度。14型のCore i7モデルのみPCIe 3.0 x4接続のSSD、そのほかのモデルはPCIe 3.0 x2接続のSSDが採用されている。OSやアプリの体感速度を決定的に変える違いではないが、ストレージ速度を重視するなら14型のCore i7モデル一択となる。

【表1】ZenBook 14/15シリーズのスペック ※8月30日調べ
ZenBook 14ZenBook 15
製品名ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002TS)ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-8565)ZenBook 15 UX534FT(UX534FT-A9012TS)
OSWindows 10 Home 64bit
CPUCore i5-8265U(1.6~3.9GHz、4コア8スレッド)Core i7-8565U(1.8~4.6GHz、4コア8スレッド)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.10GHz)、GeForce MX250Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)、GeForce MX250Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)、GeForce GTX 1650
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 16GB
ストレージ512GB SSD(PCIe 3.0 x2接続)1TB SSD(PCIe 3.0 x4接続)512GB SSD(PCIe 3.0 x2接続)
メインディスプレイ14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、300cd/平方m、sRGBカバー率100%、光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、141ppi、300cd/平方m、sRGBカバー率100%、光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)
サブディスプレイ(ScreenPad 2.0)5.65型UHD液晶(2,160×1,080ドット、427ppi、輝度非公表、NTSCカバー率70%、非光沢、タッチ対応、スタイラス非対応)
通信IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0
WWAN-
インターフェイスUSB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 2.0、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子USB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 3.0、HDMI、SDカードスロット、ヘッドセット端子
カメラ92万画素
バッテリ容量50Wh71Wh
バッテリ駆動時間約8.2時間約7.8時間約9.4時間
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)319×199×16.9mm354×220×18.9mm
重量約1.3kg約1.7kg
セキュリティ顔認証センサー
ビジネス統合アプリWPS OfficeMicrosoft Office Home and Business 2019WPS OfficeMicrosoft Office Home and Business 2019
同梱品ACアダプタ、製品マニュアル、ScreenPadガイド、製品保証書、専用スリーブ
カラーロイヤルブルー
税別店頭価格144,500円166,500円183,500円222,500円

2018年モデルよりフットプリントが約13%小型化、USB PD非対応は残念

 ここからは基本的にZenBook 14に限定してレビューさせていただく。本製品は天面、パームレスト、底面すべてにアルミニウム合金製の筐体を採用。米国国防総省物資調達規格「MIL-STD-810G」に準拠した落下、振動、高度、高温、低温、多湿環境テストをクリアしていると謳われている。

 またASUSによれば、業界標準を上回る同社内部の品質テストにも合格しているとのことだ。正直、それがどの程度の堅牢性、環境性能を備えているかは具体的には不明だが、少なくとも実際に取り回したり、ディスプレイを開閉したり、タイピングしていて、筐体剛性の高さは実感できる。

 本体サイズは319×199×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.3kg。ZenBook 14の2018年モデルの本体サイズは324×225×15.9mm(同)なので、フットプリントが約13%小型化されたことになる。カタログスペック上の重量は2018年モデルの約1.27kgから約0.03kg増えているが、体感できるほどの差ではないだろう。

 インターフェイスは、USB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 2.0、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子を用意。通信機能は、IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0をサポートしている。

 セキュリティデバイスとしてはWindows Hello対応の顔認証センサーを採用。ディスプレイ上部に92万画素のWebカメラ、アレイマイクとともに、赤外線カメラが内蔵されている。個人的には指紋認証センサーも搭載してほしかったが、どうしても必要ならUSBドングルタイプの指紋認証センサーをUSB 2.0端子に接続すればよいだろう。

 本製品の仕様で残念なのは、USB Type-C端子がUSB Power DeliveryやDisplayPort Alternative Modeをサポートしていないこと。そのためUSB PD対応ACアダプタやモバイルバッテリで充電したり、モバイルディスプレイをケーブル1本で接続できない。ZenBook 14に付属するACアダプタは実測約195.6gと比較的軽量で、ScreenPad 2.0があれば別途モバイルディスプレイを使う機会は少ないかもしれない。しかし、2019年に発売されるノートPCとしては実装してほしかった機能だ。

本体天面(下がヒンジ側)。天板にはASUS定番のスピン加工が施されている
本体底面(上がヒンジ側)。ヒンジ側にあるのは吸気口。6溝のネジが7つ露出しているが、ゴム足のなかにも隠されている可能性が高い
上が本体前面、下が本体背面。本体背面全体に溝が設けられているが、実際に穴が開いていて排気口として機能しているのは左半分だけだ
上が本体右側面、下が本体左側面。右側面に左からヘッドセット端子、USB 2.0×1、microSDカードスロット、左側面に電源端子、HDMI、USB 3.1 Type-A×1、USB 3.1 Type-C×1が配置されている
ディスプレイ面。上部ベゼルが約7mm、左右ベゼルが約4mm、下部ベゼルが約4mmという狭額縁仕様により、画面占有率は約90%を実現している
ディスプレイ上部には、92万画素のWebカメラ、アレイマイク、赤外線カメラが内蔵されている
キーボード面。液晶ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」のサイズは5.65型
排気口から吹き出す熱気はディスプレイ上部に流れる
パッケージには、本体、専用スリーブ、ACアダプタ、説明書類(製品マニュアル、ScreenPadガイド、製品保証書など)が同梱されている
ACアダプタのコード長は実測約225cmと長め
ACアダプタの型番は「AD2087320」。仕様は入力100-240V/1.5A、出力19V/3.42A、容量65W
専用スリーブはジャストサイズ。重量は実測約97.5g。フタは面ファスナーで固定する
書類は、製品保証書、ユーザーマニュアル、ScreenPadガイド、「必ず初めにお読みください」、WPS Officeライセンスカード、WPS Officeのチラシ、i-フィルタのチラシで構成されている(WPS Office同梱モデルの場合)
本体の実測重量は約1,310.5g
ACアダプタの実測重量は約195.6g
システム情報
主要なデバイス
Windows 10のバージョン1903適用後、初期状態に戻したさいのCドライブの空き容量は440.95GB(512GBモデルの場合)
「powercfg /batteryreport」コマンドを実行したところ、DESIGN CAPACITYは50,002mWh、FULL CHARGE CAPACITYは50,394mWhと表示された

ScreenPad 2.0はセカンドディスプレイとして利用したさいに本領発揮

 ZenBook 14/15最大の売りは、5.65型液晶ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」だ。本項ではこの入出力デバイスの使い勝手についてレビューしていこう。

 ScreenPad 2.0には、画面を表示する「ScreenPadモード」、画面を消してタッチパッドとして利用する「タッチパッドモード」、画面とタッチパッドを無効化する「タッチパッドOFF」の3モードが用意されている。この3つのモードは「F6」キーでいつでも切り替え可能だ。

ScreenPad 2.0には「ScreenPadモード」、「タッチパッドモード」、「タッチパッドOFF」の3つのモードが用意

 ScreenPadモードでは、起動時にホーム画面が表示されている。ここにスマートフォンのようにアイコンが並んでおり、ソフトウェアテンキー「Number Key」、手書き入力ツール「Handwriting」、ショートカット入力ツール「Quick Key」、Power Point用コントローラ「Slide Xpert」、Word用コントローラ「Doc Xpert」、Excel用コントローラ「Sheet Xpert」などを起動可能だ。

ScreenPadモードでは起動時にホーム画面が表示されている。画面下部にあるのは「コントロールセンター」

 これらのツールは、メインディスプレイに表示されているアプリで数字、文字、ショートカットキーを入力したり、Officeアプリの操作に利用できる。ただ、見た目は新しいが、これまで慣れ親しんできたPC操作を置き換えるほどのものではないと思う。

 ScreenPad 2.0をもっとも便利に感じたのはセカンドディスプレイとして使ったときだ。メインディスプレイに表示されているアプリのタイトルバーをつかんで少しドラッグすると、2つのアイコンが表示される。マウスカーソルを左のアイコンにドラッグすればアプリをScreenPad 2.0に全画面表示し、右のアイコンにドラッグすればScreenPad 2.0のホーム画面にアプリをピン留め可能。この操作は初回起動時にチュートリアルで解説されるので、すぐにマスターできるはずだ。

アプリのタイトルバーをつかんで少しドラッグすると、ScreenPad 2.0に全画面表示するためのアイコン(左)と、ホーム画面にピン留めするためのアイコン(右)が表示される

 ただしScreenPad 2.0をセカンドディスプレイとして使うさいにはいくつかの制約がある。まず、ScreenPad 2.0にアプリやウィンドウを表示している間は、それらを直接タッチ操作できるが、メインディスプレイを操作するためのタッチパッドとしては機能しない。

 また、タッチパッドとして利用するためには、ScreenPad 2.0を3本指でタップしてタッチパッドモードに移行するか、ScreenPad 2.0の画面下部をタップして「コントロールセンター」を表示し、一番左の「モード切替」アイコンからタッチパッドモードに切り替えなければならない。タッチパッドモードのオン/オフをスムーズに切り替えるのには慣れが必要だ。

 さて、実際にScreenPad 2.0を使ってみて不便に感じたのが、タッチパッドモードを有効にしている間は、画面が暗転して操作できなくなること。マウスカーソル自体はScreenPad 2.0側に移動できるが、操作できるのはメインディスプレイ側だけだ。そのため、ScreenPad 2.0側のウィンドウにサムネイル表示されているファイルを、メインディスプレイ側にドラッグするような操作はできない。このような操作をしたいときには、タッチパッドモードは使わず、マウスなどのほかの入力デバイスを利用する必要がある。

ScreenPad 2.0を3本指でタップすると、画面が暗転してタッチパッドモードに移行する

 もう1つ不便に思ったのが、ScreenPad 2.0の画面を暗転させずにタッチパッドモードを利用する手段がないこと。そのため、メールソフトやSNSのタイムラインを明るく表示したままで、単なるタッチパッドとしては使えない。ASUSによれば前世代のScreenPadよりもシンプル化したとのことだが、さまざまな使い方に対応できるようにカスタマイズ機能はむしろ充実させてほしかったところだ。

 とは言え、マウスを用意しさえすれば、ScreenPad 2.0はセカンドディスプレイとして非常に快適。外づけディスプレイを接続せずに、すぐにデュアルディスプレイ環境を利用できるのは、通常のノートPCに対する大きな優位点だ。ScreenPad 2.0のみの操作にはまだ改善の余地があるが、ユーザーの声を吸い上げて、より便利な入出力デバイスに育て上げてほしいと思う。

これはブラウザをScreenPad 2.0に全画面表示している状態。このときにタッチパッドを操作しても、マウスカーソルは現われない。タッチ操作は可能だが、画面自体が小さいためボタンやリンクが押しにくい
左上から手書き入力ツール「Handwriting」、ソフトウェアテンキー「Number Key」、ショートカット入力ツール「Quick Key」。右下はScreenPad 2.0で開いているアプリを一覧表示する「アプリナビゲーター」で、アプリを切り替えたり、個別に終了できる
左上からWord用コントローラ「Doc Xpert」、Excel用コントローラ「Sheet Xpert」、Power Point用コントローラ「Slide Xpert」。ショートカット入力ツール「Quick Key」はどのアプリでも利用できるが、「Doc Xpert」、「Sheet Xpert」、「Slide Xpert」はMicrosoft Officeアプリ起動時以外は使えない
ScreenPad 2.0は壁紙を変更可能。またセカンドディスプレイとして動作するので利用できるアプリは選ばない。アイデア次第でさまざまな活用方法が見つかるはずだ
コントロールセンターの右下の歯車アイコンをタップすれば設定メニューを開ける
ScreenPad 2.0は輝度、解像度、リフレッシュレートなどを変更可能。またクイックスタートガイドも設定メニューから開ける
ホームポジションに指を置くと、ScreenPad 2.0のほぼすべてが手で隠れてしまう。サブディスプレイとしての使い勝手はZenBook Pro Duoのほうが上だ
マウスを接続すれば、タッチパッドモードを使わずにセカンドディスプレイを操作可能。じっくり長時間作業するさいには、通常のノートPC以上にマウスは必須アイテムだ

フルスピードで入力できるのはテンキーなしのZenBook 14のキーボード

 日本国内向けのZenBook 14/15のキーボードは日本語仕様のみ。テンキーなしのZenBook 14はキーピッチ19.05mm、キーストローク1.4mm、テンキーありのZenBook 15はキーピッチ18.75mm、キーストローク1.4mmのバックライト搭載キーボードが採用されている。どちらもわずかにキーボード面がたわむものの打鍵感は良好。打鍵音も低めに抑えられている。

 どちらのキーボードを好ましく感じるかはユーザー次第だが、個人的にはキーピッチの差は気にならなかった。ただ、Enterキー、BackSpaceキーに密接してテンキーが配列されているZenBook 15のキーボードは少々狭苦しく感じた。筆者がフルスピードで文章を入力できるのは、間違いなくZenBook 14のキーボードだ。

 ScreenPad 2.0はタッチパッドとしては全体が沈み込むダイビングボード構造を採用しているが、クリック感は良好だ。適度なクリック感を備えつつも、ストロークはそれほど深くないので、細やかなマウスカーソル操作もしやすい。総合すると、ZenBook 14/15のキーボード、タッチパッドは、ノートPCの入力デバイスとして上質な部類に入ると言える。

ZenBook 14のキーボードは「¥」キー以外の文字キーはすべて等幅にそろえられている。すべてのキーに自然に指が伸びるキー配列だ
ZenBook 14のキーボードはキーピッチ19.05mm
キーストロークは1.4mm
キーボードバックライトは3段階で調整可能
ディスプレイの最大展開角度は138度。ディスプレイを開くとヒンジ側がせり上がって約3度の斜度が生じる「エルゴリフト」機構が採用されている

スペックを下回った色域、サウンドは14型ノートPCとしては上質

 ZenBook 14には、14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、300cd/平方m、sRGBカバー率100%、光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)ディスプレイが採用されている。実際の色域をディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率91.6%、Adobe RGBカバー率69.2%という値が出た。個人的に購入したZenBook 14でも計測してみたが、sRGBカバー率93.1%にとどまった。

 ColorACにICCプロファイルを読み込むさいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Blackにクリップ(値が飽和)の可能性が見られます」という警告メッセージが表示されたが、カタログスペックのsRGBカバー率100%とは差が開きすぎている。もちろん今回の試用機の液晶ディスプレイの個体差による可能性も考えられる。

メインディスプレイには、14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、300cd/平方m、sRGBカバー率100%、光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)を採用
メインディスプレイは光沢、ScreenPad 2.0は非光沢仕様なので、同じ画像を表示しても色が異なって見える
貸し出し機で実測したsRGBカバー率は91.6%、sRGB比は94.7%
貸し出し機で実測したAdobe RGBカバー率は69.2%、Adobe RGB比は70.2%
個人的に購入したZenBook 14で実測したsRGBカバー率は93.1%、sRGB比は98.3%

 一方サウンド面については、harman/kardon認証を謳うステレオスピーカー(1W×2)を底面左右に内蔵している。音響的には決して有利な場所とは言えないが、14型ノートPCの音としてはかなり健闘しているというのが率直な感想だ。リビングなどで離れた場所から聴くのには物足りないが、目の前に設置してミュージックビデオや映画を楽しむのなら、外づけスピーカーやヘッドフォンを用意する必要はなさそうだ。

底面左右にステレオスピーカー(1W×2)が内蔵されている
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大82.0dB(50cmの距離で測定)

3Dグラフィックス性能を含めればCore i7を搭載するXPS 13より高い性能を発揮

 さて最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

  • 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2115」
  • 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.9.6631」
  • CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
  • CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
  • 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
  • 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマ-ク」
  • 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 紅蓮のリベレ-タ- ベンチマ-ク」
  • 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.2」
  • 「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像
  • 「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し
  • バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
  • バッテリベンチマーク「BBench」

 比較対象としてはデルの「Core i7-8565U」搭載ノートPC「XPS 13」のスコアを掲載している。上位プロセッサを搭載するXPS 13に対して、下位CPU「Core i5-8265U」を搭載しているものの、外部グラフィックスとして「GeForce MX250」を採用している「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」が下剋上を果たせるかどうかという視点から、ベンチマークスコアを見ていきたい。

ベンチマークを実施するにあたっては、総合ユーティリティ「MyASUS」の「ファンモード」を「自動」、「電源モード」を「最も高いパフォーマンス」に設定している。

 下記が検証機の仕様とその結果だ。

【表2】検証機の仕様
ZenBook 14 UX434FLXPS 13
CPUCore i5-8265U(1.6〜3.9GHz、4コア8スレッド)Core i7-8565U(1.8~4.6GHz、4コア8スレッド)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.10GHz)、GeForce MX250Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレ-ジ512GB PCIe NVMe SSD256GB PCIe NVMe SSD
ディスプレイ14型、1,920×1,080ドット(157ppi)
5.65型、2,160×1,080ドット(427ppi)
13.3型、3,840×2,160ドット(331ppi)
TDP15W
OSWindows 10 Home 64bit
サイズ(幅×奥行き×高さ)319×199×16.9mm302×199×7.8〜11.6mm
重量約1.3kg約1.23kg
【表3】ベンチマ-ク結果
ZenBook 14 UX434FLXPS 13
PCMark 10 v2.0.2115
PCMark 10 Score3,933計測不可
Essentials8,0278,575
App Start-up Score10,59412,701
Video Conferencing Score6,8657,445
Web Browsing Score7,1126,669
Productivity6,2246,354
Spreadsheets Score7,2887,702
Writing Score5,3165,243
Digital Content Creation3,305計測不可
Photo Editing Score3,4524,251
Rendering and Visualization Score2,896計測不可
Video Editting Score3,6134,200
PCMark 10 Modern Office Battery Life8時間11分-
3DMark v2.9.6631
Time Spy1,011460
Fire Strike Ultra互換性なし301
Fire Strike Extreme1,354561
Fire Strike2,8001,198
Night Raid10,7425,427
Sky Diver8,6654,750
Cloud Gate13,0939,834
Ice Storm Extreme61,53633,967
Ice Storm66,53443,070
CINEBENCH R15.0
OpenGL81.14 fps54.41 fps
CPU703 cb740 cb
CPU(Single Core)163 cb185 cb
CINEBENCH R20.060
CPU1,518 pts-
CPU(Single Core)399 pts-
FINAL FANTASY XV BENCHMARK
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン2,644(やや重い)1001(動作困難)
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン1,638(動作困難)-
ファイナルファンタジ-XIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマ-ク
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)8,557(非常に快適)-
1,920×1,080ドット 高品質(ノ-トPC)6,277(とても快適)-
ファイナルファンタジ-XIV: 紅蓮のリベレ-タ- ベンチマ-ク
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC)-4,992(快適)
1,280×720ドット 高品質(ノ-トPC)-3,498(やや快適)
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)7,361(非常に快適)-
1,920×1,080ドット 高品質(ノ-トPC)4,817(快適)-
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)7,596(非常に快適)-
1,920×1,080ドット 高品質(ノ-トPC)4,899(快適)-
SSDをCrystalDiskMark 6.0.2で計測
Q32T1 シ-ケンシャルリ-ド1,724.111 MB/s3,518.489 MB/s
Q32T1 シ-ケンシャルライト1,456.463 MB/s1,395.874 MB/s
4K Q8T8 ランダムリ-ド920.687 MB/s565.676 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト417.282 MB/s388.579 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド340.756 MB/s276.542 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト428.589 MB/s432.772 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド42.960 MB/s39.146 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト123.304 MB/s101.843 MB/s
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然19分43秒0612分1秒45
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps7分10秒0510分14秒88
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モ-ド:高パフォ-マンス)
バッテリ残量5%まで7時間16分10秒10時間7分10秒
BBenchにより充電時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モ-ド:最も高いパフォ-マンス)
バッテリ残量5%から50%まで31分29秒45分46秒
バッテリ残量5%から80%まで54分58秒1時間17分13秒
バッテリ残量5%から100%まで2時間19分44秒2時間22分7秒

 まずはCPU単体の処理性能だが、ZenBook 14が意外な健闘を見せた。CINEBENCH R15.0で、XPS 15の740cbに対して、ZenBook 14は約95%に相当する703cbと好スコアを記録した。Core i5-8265Uの性能を最大限に引き出していると言える。

 そしてディスクリートGPUのGeForce MX250の効果は大きく、3DMarkでZenBook 14はXPS 13の133~241%のスコアを記録している。FINAL FANTASY XV BENCHMARKでも、XPS 13の1001に対して、約264%に相当する2644というスコアだ。3Dグラフィックス性能を含めれば、ZenBook 14は上位CPUを搭載するXPS 13より高い性能を発揮するわけだ。

 一方、実アプリでは、Adobe Lightroom Classic CCでZenBook 14がXPS 13の1.64倍、Adobe Premiere Pro CCでは逆にXPS 13がZenBook 14の1.42倍ほど処理に時間がかかっている。処理時間が逆転しているのは、ディスクリートGPUへの最適化度合いが影響していると思われる。

 バッテリ駆動時間は意外な結果となった。ZenBook 14が50Wh、XPS 13が51Whとほぼ同容量のバッテリを搭載しているが、ZenBook 14が7時間16分10秒、XPS 13が10時間7分10秒と3時間弱の差が開いた。ZenBook 14は、ディスクリートGPUとScreenPad 2.0を搭載していることが不利に働いた可能性がある。

 最後に発熱をチェックしてみよう。室温25.2℃の部屋でCINEBENCH R20.060を3回実行したあとの表面温度は、キーボード面が最大40.6℃、底面が最大50.1℃となった。底面の吸気口付近がとくに表面温度が高くなっているので、膝上で長時間利用するさいには低温火傷を避けるためバッグや雑誌などをはさんだほうがよさそうだ。

CINEBENCH R20.060を3回実行したあとのキーボード面の最大温度は40.6℃。なお排気口からの熱気が当たるところは指で触れない場所なので、計測箇所には含めていない
底面の最大温度は50.1℃
ACアダプタの最大温度は36.1℃

新し物好きはもちろん、2画面作業環境を手軽に活用したい方にもってこい!

 ScreenPadのみの使い勝手で比較するなら、もちろん14型のScreenPad Plusを搭載するZenBook Pro Duoのほうが上だ。しかし、スペックが高いぶん高価だし、バッテリ駆動時間やACアダプタのサイズ/重量を考慮すると、モバイル用途には不向き。その点、とくにZenBook 14は小型・軽量で、バッテリ駆動時間もモバイルノートPCとして実用的なレベルだ。

 インターフェイスの仕様には正直不満はある。だが、2画面ディスプレイを搭載しつつ、実用性も兼ね備え、なによりも比較的手ごろな価格で入手できるZenBook 14は、新し物好きにはもちろんのこと、デュアルディスプレイ環境をすばやく&手軽に活用したいという方にもってこいの1台だ。