NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」
~世界最軽量を実現した約725gのスリムモバイルPC



VersaPro UltraLite タイプVS

6月下旬 発売
直販価格:99,750円



 NECから発表された「VersaPro UltraLite タイプVS」は、10.6型ワイド液晶を搭載したスリムモバイルPCだ。VersaProは、コンシューマ向けのLaVieとは別のビジネス向けブランドであり、VersaPro UltarLiteは、VersaProの中でも特に携帯性を追求したモバイルPCのシリーズである。今回登場したVersaPro UltraLite タイプVS(以下UltraLite タイプVS)は、VersaPro UltraLiteシリーズの4代目となる新製品であり、ビジネス向けモバイルPCで重視される「軽さ・薄さ」をさらに強化したモデルだ。

 その重量はわずか約725gであり、Windows Vista搭載の10.6型ワイド液晶ノートPCとして、世界最軽量を実現している。なお、UltraLite タイプVSは、薄型軽量化を最重視しCPUにAtomを採用しているため、パフォーマンスを重視する用途向けとして、Core 2 Duo/Celeronを搭載する3代目のUltraLite タイプVCは併売される。

 UltraLite タイプVSを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。

●最薄部15.8mm、重さ約725gの超薄型軽量ボディを実現

 UltraLite タイプVSの最大の魅力は、10.6型ワイド液晶を搭載しながら、重さ約725gという超軽量ボディを実現したことにある。携帯性に定評のあるパナソニックの10.4型液晶を搭載した「Let'snote R8」のSSDモデルでも約900gであり、このクラスとしては抜群に軽いといえる。

 筐体は、軽くて丈夫なマグネシウム合金製であり、サイズは258×199×15.8~23.9mm(幅×奥行き×高さ)と薄くてコンパクトだ。実はこのボディサイズは、LuiのPCリモーターノートタイプ(Lui RN)と同じで、デザインもほぼ同じだ。Lui RNの外見はモバイルPCだが、中身はWindows CEベースの機器で、ネットワーク経由でサーバーに接続して使うための製品だ。しかし、UltraLite タイプVSは、Lui RNと同サイズのボディに、フル機能のPCを詰め込んでいる。詳しい内部構造については後で触れるが、その高密度実装技術は素晴らしい。

 ボディカラーはシルバーで、表面はザラザラした仕上げになっているので、指紋などが付きにくい。実際に持ってみたが、その軽さは予想以上であった。単純な重量なら、ソニーのVAIO type Pの方が軽いが、本体のサイズがこちらの方が大きいせいか、持ったときの体感的な重量はこちらの方が軽く感じる。もちろん、いくらボディが軽く薄くても、壊れやすくなってしまっては本末転倒だが、UltraLite タイプVSは、衝撃に強いSSDの採用や、キーボード周りをリブ構造にすることで、頑丈なボディを実現。76cm落下試験や150kg耐圧試験をクリアしており、強度についてもトップクラスだ。ボディもスリムでフラットなので、鞄などへの出し入れもスムーズに行なえる。

 OSは、Windows Vista BusinessまたはWindows XP Professional(Windows Vista Businessのダウングレード権を利用してWindows XP Professionalをプリインストール)の選択が可能だ。今回の試用機ではWindows XP Professionalが搭載されており、十分なパフォーマンスで動作していた。

VersaPro UltraLite タイプVSの上面。メーカーロゴなどもなく、非常にすっきりしたデザインだ「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。DOS/V POWER REPORT誌よりも一回り小さい
試作機の重量は実測で706gしかなかった。カタログスペックでは約725gとなっているので、製品版ではその重量になると思われるVersaPro UltraLite タイプVSの底面。底面もすっきりしたデザインで、メモリスロットカバーなどはない

●AtomとSSD搭載でゼロスピンドルを実現

 UltraLite タイプVSは、CPUとしてAtom Z540(1.86GHz)を搭載。チップセットは、Intelシステム・コントローラー・ハブUS15Wで、VAIO type Pなどと同じ構成だ。メモリはオンボードで1GB実装されており、増設はできない。ストレージとして、64GB SSDを搭載していることも特徴だ。SSDは、HDDに比べて衝撃に強く、薄型軽量で、消費電力も小さいというメリットがあり、携帯性を重視するモバイルPC向きのデバイスである。また、発熱の小さいAtomを採用したことで、ファンレス設計を実現。SSDの搭載とあわせ、モーターなどの機械的に動作するパーツを使用しないゼロスピンドルを実現し、ほぼ無音で動作することも魅力だ。

 ディスプレイとして、10.6型ワイドのスーパーシャインビュー液晶を搭載。解像度は1,280×768ドットで、ネットブックで主流の1,024×600ドットや1,024×576ドットに比べると、縦方向、横方向ともに高く、一般的なアプリケーションを使う際に解像度不足を感じることは少ない。光沢タイプの液晶なので、コントラストは高く、発色も鮮やかだが、環境によっては外光の映り込みが気になることがある。

 キーボードの出来もいい。キーボードは全85キーで、キーピッチは17mm。キーストロークは2.5mmと、本体が薄くとも十分な深さを確保。12.1型液晶搭載のUltraLite タイプVCのキーピッチは17.55mm、キーストロークは2.5mmなので、筐体がコンパクトになったにもかかわらず、ほぼ同等のサイズを実現している。もちろん、キー配列も標準的であり、不等キーピッチもない。さらに、ファンクションキーのF4とF5の間、F8とF9の間に隙間が空いており、打ち間違いを減らせるようになっている。キーボードの下には基板類が一切ないため、長時間使っていてもキーボードが熱くなりにくく快適だ。剛性も高く、中央部を強く打鍵しても、キーボードがたわむこともない。また、BIOS設定で、Fnキーと左Ctrlキーの入れ替えが可能なことも嬉しい。

 ポインティングデバイスとして、現在では少数派となったスティックポインタを採用。スティックポインタは、キーボードの中央に配置されるため、パームレストのスペースを必要としないことが特徴である。UltraLite タイプVSは、基板がキーボードの奥に配置されており、キーボードの手前にパームレストが用意されていないため、スティックポインタを採用したのであろう。スティックポインタの操作性も良好であり、スティックポインタをタップすることで、クリック操作を行なうこともできる。タップ機能は、キーボードのタイピング時には自動的に無効にすることも可能だ。クリックボタンは3つ用意されており、中央がスクロールボタンとなる。スクロールボタンを押しながら、スティックポインタを操作することで、上下左右のスクロール操作を行なえる。

液晶は10.6型ワイドで、解像度は1,280×768ドット。光沢タイプなので、発色は鮮やかだが、外光の映り込みが気になることがあるキーボードは全85キーで、キーピッチは17mm、キーストロークは2.5mm。キー配列も標準的で、使いやすいBIOS設定で、Fnキーと左Ctrlキーの入れ替えが可能
ポインティングデバイスとしてスティックポインタを採用。ボタンは3つ用意されており、中央がスクロールボタンとなる。スクロールボタンを押しながら、スティックポインタを操作することで、上下左右スクロールが可能スティックポインタに関する設定画面。タップやスクロール機能の有効/無効を切り替えられるキー入力時にタップやボタン入力を無効にすることや、タップの感度なども調整可能

●USB 2.0ポートを左右側面と背面に搭載

 UltraLite タイプVSは、携帯性を重視しているため、インターフェイスは必要最小限度のものを搭載している。USB 2.0ポートは3つで、左右側面と背面に1つずつ用意されているので、マウスなどを接続する場合もケーブルの取り回しがしやすい。また、1000BASE-T対応Ethernetも装備している。ただし、外部ディスプレイ端子は備えていないので、プロジェクターなどに接続してプレゼンをしたいという用途には向いていない(USBディスプレイアダプタを利用すれば外部出力も可能になるが)。

 無線LAN機能はIEEE 802.11b/g準拠で、こちらも必要十分といえる。メモリカードスロットとしては、SDメモリーカードスロットを搭載。カードスロットのフタはダミーカード方式だ。薄型軽量化を重視してゼロスピンドル構成を採用しているため、光学ドライブやFDDは搭載していないが、BTO(セレクションメニュー)によって、USB接続の外付けDVDスーパーマルチドライブやDVD-ROMドライブ、FDDの追加が可能だ。

左側面には、USB 2.0ポートが用意されている右側面には、USB 2.0ポートとSDメモリーカードスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている背面には、USB 2.0ポートとEthernetが用意されている
LEDインジケーター類は正面左側に配置されており、本体を閉じていても確認できるようになっているBTOでUSB接続の外付けDVDスーパーマルチドライブを追加することも可能

●薄型ACアダプタは持ち運びに便利

 バッテリは、2セルのMバッテリと、4セルのLバッテリが用意されている。約725gというのはMバッテリ装着時の重量であり、Lバッテリ装着時の重量は約835gになる。LバッテリはMバッテリよりも奥行きが約2cm長く、装着すると本体の後ろに2cmほどはみ出す形になるが、厚みは変わらない。

 AtomとSSDの採用により、消費電力は一般的なモバイルPCに比べて低く、2セルのMバッテリでも公称4.1時間(Windows XP Professionalの場合、Windows Vistaでは3.9時間)の駆動時間を実現。2倍の容量を持つLバッテリでは公称8.2時間の長時間駆動が可能だ(Vistaでは7.8時間)。Lバッテリを装着しても、携帯性はトップクラスであり、駆動時間を重視する人も満足できるだろう。

 ACアダプタは、通常タイプと薄くて軽い薄型ACアダプタの2種類から選択できる。通常タイプでも、ACアダプタ(ケーブルは含まず)のサイズは28×42×93mm(同)、重量は225gと比較的軽いが、薄型ACアダプタ(ケーブルは含まず)のサイズは15.9×45×97mm(同)と薄く、重量は110gと非常に軽い。薄型ACアダプタを選ぶと、価格が通常のACアダプタよりも2,520円高くなるが、本体と一緒に持ち歩くのならやはり薄型ACアダプタがお勧めだ。また、通常タイプ、薄型ACアダプタともにウォールマウントプラグが付属しており、ACケーブルを使わず、ACアダプタを直接壁などのコンセントに取り付けることができるのも便利だ。ウォールマウントプラグは、NECのモバイルPCではしばらく前から標準で付属している機種が増えているが、こうした配慮は嬉しい。

最小構成で装着されているMバッテリMバッテリは、7.2V/2,900mAhの2セル仕様だCDケース(左)とMバッテリのサイズ比較。Mバッテリはかなり小さい
セレクションメニューで選べる薄型ACアダプタ。通常タイプのACアダプタよりも薄くて軽いDVDトールケース(左)と薄型ACアダプタの厚さ比較。薄型ACアダプタの厚さは15.9mmしかないCDケース(左)と薄型ACアダプタのサイズ比較
薄型ACアダプタに付属するウォールマウントプラグウォールマウントプラグのACプラグ側。プラグは折りたためるので持ち運びに便利
薄型ACアダプタにウォールマウントプラグを装着したところケーブル込みのACアダプタの重量は実測で257gであった

●ハガキの半分程度の超小型マザーボード

 

■■注意■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、PC Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


 UltraLite タイプVSの底面側ボディを外すと、マザーボードとSSDが現れるが、写真を見ればわかるように、キーボードの裏には何も基板が実装されていない。マザーボードの裏側には大きなチップはないが、極小サイズのチップ部品が多数使われており、実装密度は非常に高い。マザーボードは10層基板を採用しており、サイズはハガキの半分程度だ。マザーボードの表側には、CPUやチップセットが実装されているが、それらのパーツから発生する熱は、平面方向への熱伝導率が高いカーボングラファイトシートによって素早く拡散され、マグネシウム合金製のボディ全体で冷やす設計になっている。前述したように、UltraLite タイプVSはファンレス設計であり、ファンの音が気になることはない。

UltraLite タイプVSの内部の様子。これは底面を外したところで、キーボードの裏には何も基板が配置されていないことがわかるマザーボードの裏側部分のアップ。極小サイズのチップ部品が多数使われており、実装密度は非常に高い左がSDメモリーカードスロット部分、右がSSD
底面側のボディ。マザーボードの裏側のパーツから伝わる熱もアルミ薄板によってボディ全体に広げる構造になっている底面側の冷却構造部分のアップマザーボードの表側。中央上の大きなチップがシステム・コントローラー・ハブUS15Wで、その下のやや小さなチップがCPUのAtom Z540だ。メモリチップは、その右側の銀色のカバーの下に実装されていると思われる
マザーボードとハガキのサイズ比較。10層基板を採用しており、マザーボードのサイズはハガキの半分程度しかなく、非常に小さい表側ボディのマザーボードに接触する部分にはカーボングラファイトシートが貼られている。カーボングラファイトシートは平面方向への熱伝導率が高く、CPUやチップセットから生じる熱を素早く拡散する試用機には東芝製の64GB SSDが搭載されていた。HDDのフォームファクタに準ずるタイプとは異なり、ケースで覆われていないため、非常に薄い

●常にPCを持ち歩きたいヘビーモバイラーにお勧め

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に日本HP「HP Mini 2140 Notebook PC(1366×768ドット液晶)」、MSI「X-Slim X340 Super」、デル「Inspiron Mini 10」、デル「Inspiron Mini 9」の値も掲載した。

 結果は表にまとめた通りで、PCMark05の総合スコアは、Atom N270を搭載したHP Mini 2140 Notebook PCとCore 2 Solo SU3500を搭載したX-Slim X340 Superのちょうど中間になっている。個別に見ていくと、CPU Scoreは、Atom N270搭載ネットブックに比べて、クロックが0.26GHz上回る分高くなっているが、Graphics Scoreは、Intel 945GSEを搭載するネットブックに比べて6割程度の値しか出ていない。システム・コントローラー・ハブUS15Wに搭載されているグラフィックスコア(GMA 500)はもともと組み込み用コアをベースにしており、Intel 945GSEに搭載されているGMA 950に比べて描画性能は低い。

また、HDD Scoreが18226と非常に高いが、これはSSDを搭載しているためだ。なお、Inspiron Mini 9もSSDを搭載しているが、容量が8GBや16GBと小さく、パフォーマンスもあまり高くない。3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果は、グラフィックスコアが非力なことを反映して、かなり低くなっている。また、今回からCrystalDiskMarkを利用して、ディスクパフォーマンスを計測することにしたが、シーケンシャルリード/ライトともに100MB/s超を記録しており、なかなか優秀な結果だ。CPU性能はそれほど高くはないが、ディスクパフォーマンスが高いため、OSやアプリケーションなどの使用感は快適だ。

【表】VersaPro UltraLite タイプVSのベンチマーク結果

VersaPro UltraLite タイプVSHP Mini 2140 Notebook PC
(1366×768ドット液晶)
X-Slim X340 SuperInspiron Mini 10Inspiron Mini 9
CPUAtom Z540(1.86GHz)Atom N270(1.6GHz)Core 2 Solo SU3500(1.4GHz)Atom Z530(1.6GHz)Atom N270(1.6GHz)
ビデオチップUS15W内蔵コアIntel 945GSE内蔵コアIntel GS45内蔵コアUS15W内蔵コアIntel 945GSE内蔵コア
メモリ1GB2GB2GB1GB1GB
PCMark05
PCMarks185015662101N/AN/A
CPU Score17391482243514691484
Memory Score24562350333822332358
Graphics Score3195461108N/AN/A
HDD Score182265713508638192843
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)4457181552計測不可N/A(1024×600ドットでは628)
CPU Score200242492N/A(1,024×576ドットでは121)N/A(1,024×600ドットでは232)
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH34710101427N/AN/A
LOW55013862094N/A1426
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP8.236.968.16.2337.9
HP31.275.9799.9710.494.47
SP/LP99.9399.9710099.5399.97
LLP99.9799.9710099.9399.97
DP(CPU負荷)50681005065
HP(CPU負荷)5368614764
SP/LP(CPU負荷)4242353733
LLP(CPU負荷)3432282621
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード107.4MB/s未計測未計測未計測未計測
シーケンシャルライト112.4MB/s未計測未計測未計測未計測
512Kランダムリード103.6MB/s未計測未計測未計測未計測
512Kランダムライト102.8MB/s未計測未計測未計測未計測
4Kランダムリード11.03MB/s未計測未計測未計測未計測
4Kランダムライト10.36MB/s未計測未計測未計測未計測

 UltraLite タイプVSの最小構成時の直販価格は99,750円であり、モバイルに特化した製品としてはかなり安い。もちろん、5万円前後で販売されているネットブックに比べると高いが、CPUクロックが高く、64GBの高速SSDを搭載、液晶解像度も1,280×768ドットと高いこと、150kgfの耐圧試験をクリアしていることなど、低価格がウリのネットブックとは、スペックも設計思想も異なる。

 UltraLiteは、常にPCを持ち歩きたいというヘビーモバイラーのための製品なのだ。ネットブックの多くは重量が1kgを大きく超えており、バッテリ駆動時間も2~3時間程度が主流であり、ヘビーモバイラーにはスペック的に物足りなさを感じるだろうが、重量約725gで、バッテリ駆動時間4.1時間を実現し、1,280×768ドット液晶を搭載したUltraLite タイプVSなら、スペックにうるさい人でも満足できるのではないだろうか。

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(2009年 5月 26日)

[Text by 石井 英男]