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VAIOがモバイルモニターを本気で作ったらこうなるのか!たった325gの「VAIO Vision+ 14」がすごい

 国内での製造・検査にこだわったジャパンクオリティのノートPCを提供しているVAIOが、新たにモバイルモニター分野へ挑む。その名も「VAIO Vision+ 14」。玉石混淆のモバイルモニター市場の中で、VAIOの製品はどんなものに仕上がっているのか、早速チェックしてみたい。7月1日に受注開始し、発売は7月4日、VAIOストアでの直販価格は5万4,800円だ。

軽すぎ!薄すぎ!余計な要素を排したミニマルデザイン

 薄型・軽量で、室内移動や外出先への持ち運びがしやすいモバイルモニターの人気は高い。ネット通販では解像度やインチサイズ、発色性能に入力インターフェイスの種類など、スペック違いの製品がそれこそ無数に見つかる。とはいえ数が多いだけに、これぞという決定打的な製品に出会うのはなかなか難しい。

 そこへ突如として現れた「VAIO Vision+ 14」。14型、解像度1,920×1,200ドット(60Hz)のアスペクト比16:10、sRGBカバー率100%といった基本スペックを持つモバイルモニターだ。5万円超という価格はVAIOらしいプレミアムな設定だが、数多あるモバイルモニターとの違いはどこにあるのだろうか?

見た目は非常にシンプル

 まずパッケージを開封しての第一印象は「軽すぎ!薄すぎ!」。手に持つとペーパークラフトではないかと勘違いしてしまいそうになる重量は約325g、極限まで絞り込まれた筐体は最薄部約3.9mmで、本当にこれに映像が出力されるのだろうかと心配してしまうほどだ。

最薄部は約3.9mm
試用機の重量は実測320gだった。スペック値よりも5g軽い!
縦横サイズは同じ14型ノートPCのVAIO SX14とほぼ同じ

 しかし、それでいて剛性感は高い。ボディには熱可塑性立体成型カーボンを採用しており、通常は接着されるような内部のボス・リブなども含めて一体整形しているとのことで、これにより高強度と軽量化を両立しているのだとか。表面塗装の質感も高く、このあたりにもVAIOのこだわりを感じさせる。

熱可塑性立体成型カーボン採用のボディ。塗装の質感も高い

 正面にはロゴすらなく、狭額縁のブラック一色という没入感の高い見た目になっている。背面には90度近くまで開くコンパクトなスタンドを備えており、単体で無段階の角度調整をしながら横置き可能だ。物理ボタンはモニターの輝度調整用のものがあるだけで、ほかに電源ボタンもなく、外観要素は極限まで省かれている。

背面にスタンドを備える
ボタンはこれだけ。輝度調整に使用する

Type-C接続オンリーで、PDパススルーに対応

 インターフェイスは右側面にあるUSB Type-Cポート2個のみ。ポート表記は一切なく、徹底してミニマルなコンセプトが貫かれている。

Type-Cポート2個を右側面に用意

 このType-Cポートに機能などの区別はない。好きなほうにケーブル接続するだけで、DisplayPort Alt Mode対応のノートPCなどから映像を映し出せる。一般的なモバイルモニターと同じように、外部電源なしでノートPC本体画面とのデュアルモニター環境を簡単に構築可能だ。

ケーブルを1本つなぐだけでマルチモニター環境に

 では、もう片方のType-Cポートを何に使うのかというと、PDパススルーだ。USB PD対応のUSB充電器(65W以上)から電力供給することで、モバイルモニターを経由してノートPCに給電できる仕組みになっている。

もう1つのType-Cポートに電源をつなぐと、ノートPCに給電できる

 たとえば電源に接続したVAIO Vision+ 14を自宅やオフィスのデスクに置きっぱなしにしているなら、外出先から戻ってきたときにモバイルモニターから伸びているケーブルをノートPCにつなぐだけで、映像を出力しつつノートPCの充電が行なえる。据え置き型のType-Cモニターと似た使い方が可能になるわけだ。

 ただし、残念ながら2系統の映像入力としては扱えない。2台のノートPCからつないだときは最初につないだほうが優先される。

 USBハブ機能もないので、USBメモリなどを接続しても認識されない。スピーカーやイヤフォン端子も非搭載で、あくまでも1台のPCの映像出力(と給電)にフォーカスを当てた設計になっているようだ。

フローティングな縦並びレイアウトも可能な付属カバースタンド

 超薄型&軽量設計に加えてインターフェイスにも工夫を盛り込んだVAIO Vision+ 14だが、特徴的なのはモニター本体だけに留まらない。付属カバースタンドとの組み合わせによってマルチな使いこなしを可能にしているのも大きなポイントだ。

付属カバースタンド(左)

 カバースタンドは、その名の通りVAIO Vision+ 14を持ち運ぶときの保護ケースにもなれば、スタンドにもなる。部分的にマグネットが仕込まれており、所定の手順で折り曲げ、モバイルモニター背面のスタンドを差し込んで固定することで、2パターンのスタイルで活用できる。

開いたカバーの中央に置いて折りたためば……
持ち運びに便利な保護ケースに

 1つは縦置きパターン。Webブラウザやチャットツールなど、縦スクロールがメインのアプリケーションの閲覧性や操作性を高めたいときに便利なスタイルとなる。もう1つはノートPC本体の画面の上に浮いたようにレイアウトする「フローティング」的な配置が可能になるパターンだ。

裏返すようにして組み立て、中央部分に本体スタンドを横から差し込むと、縦置き可能に

 特に後者のフローティング的なレイアウトは、ノートPCとモバイルモニターを横に並べて置くありがちなスタイルと比べていくつかのメリットがある。たとえばモバイルモニターを置いたときに横に広がらず、コワーキングスペースのように使える広さが限られた場所でもマルチモニター環境を整えやすい。

短辺の切り欠きのように見えるところに本体スタンドを差し込むと……
高い位置に浮かぶように固定できる
反対側から見たところ

 また、横長モニター2台が縦に並ぶことになるため視線の移動が少なく済み、左右に体や首を向けることもないので疲労軽減につながる可能性がある。モニター間のマウスカーソル移動も最小限だから、ネットで情報収集しながら資料作成するときも、素材を確認・加工しながら動画編集するときも、縦並びモニターは好都合だろう。

ノートPC画面の上にモバイルモニターが来る形
スペースに余裕がない場所でも、情報収集しながらの資料作成がはかどる

 カバースタンドに差し込んだ状態でモバイルモニター側のスタンドの角度を変えることにより、チルト機能のように上下方向の首振りにもある程度対応できる。ユーザーの視点の高さや姿勢に合わせたレイアウトと微調整までできるという、モバイルモニターの枠を越えた柔軟な使い勝手を実現しているのもVAIO Vision+ 14の特徴だ。

VAIOの価値を体感できる圧倒的魅力のモバイルモニター

 品質へのこだわりもVAIOらしい部分と言える。VAIO Vision+ 14は同社の(フラグシップ)ノートPCと同様に日本国内で生産しており、専任の技術者による検査を経て出荷する「安曇野FINISH」が適用されている。

 127cmの高さからの落下試験を始め、衝撃・振動試験、MIL-STD-810Hに基づいた各種耐久試験も実施しており、堅牢性、耐久性の面で不安はない。日本国内にサポート体制を構築している点も安心だろう。

 高い解像度やリフレッシュレートを求めるエンタメ用途目的だと、スペックは物足りないかもしれない。しかし、モバイルノートを使っているビジネスユーザー向けとして見れば、不満のない機能・性能を備えている。

 一度でもマルチモニター環境に慣れてしまうと、ノートPC単体の狭い画面はストレスに感じてしまうもの。「できれば出先にも外部モニターを持って行きたいと思っていた」という人にはまさに渡りに船のようなモバイルモニターではないだろうか。

 悩ましいのは値段だが、少なくとも薄型・軽量デザインのカッコ良さはほかのモバイルモニターの追随を許さない圧倒的な魅力。多機能な付属カバースタンドと、耐久性およびサポート面の安心感もユニークな点だ。VAIO Vision+ 14が、VAIOならではの価値を存分に体感できる製品であることは間違いない。