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モバイルモニター用に“まとも”なスタンドを自作してみた。新幹線や宿泊先で縦横自在に使える優れもの

 ここ最近で14型前後の薄型モバイルモニターが続々登場している。筆者が愛用しているのは山善の「14インチモバイルディスプレイ(QMM-140)」。1,920×1,200ドットの16:10画面で、USB Type-Cケーブル1本でモニターへの電源供給と映像信号が送れて、2万円を切るというお買い得品だ。

 難点はMini HDMIケーブルのコネクタ周りの樹脂成型がカツカツで添付のケーブルしか使えない点。ただ筆者はコネクタまわりの樹脂をカッターで削って市販品を使えるようにした(保証対象外になるのは覚悟の上!)。

 とはいえ、旅先でマルチモニター環境が使えるのは超便利。しかも筆者が技術監修している家電マンガ「宇宙人ムームー」が2025年にアニメ化することが決定。作画資料や絵コンテをチェックすることになり、旅先でも縦長モニターが必須となっている。

 ところが!本体添付のモニタースタンドは、チープだったり重すぎたりでイマイチだ。とくに列車内でマルチモニター環境で使えるスタンドがない!ほんとにナイ!だから作ってみた!

新幹線などの車中でも仕事ができるモニタースタンドを作る!

 これなら新幹線でもOK!京阪のプレミアムカーでもOK!JR東海やJR西日本の新快速でもマルチモニター環境で作業ができる!しかも部品代は、4,000円程度と格安だ。筆者は商品化する気がサラサラないので、これからモバイルでマルチモニターする人も、すでにしている人もぜひ作ってほしい。

筆者愛用の山善「14インチモバイルディスプレイ」(QMM-140)。Amazonで1万9,800円で買える
HDMIコネクタまわりの肉を削れば、付属のケーブル以外も使えるようになる

 工作に使う部品は、電量販店や近所のDIYショップ、100円ショップ購入できるようなもので作ってみた。近くにこれらのお店がなくても、全部通販で手に入るので安心してほしい。ただリアル店舗で、現物のモニターを当てがいながら「これをこーして、あーして」と考えたほうが、汎用性が高いのは確かだ。

【用意するもの1】スタンド部品関連

エレコムスマートフォン用クリップ式アームスタンド(P-DSCLP15BK)

エレコムのスマホ向けアームスタンド「P-DSCLP15BK」を利用。1,000円くらいで買える

 ちょっと大きめのスマホをクリップに挟んで固定する台。フレキシブルアーム(以降、フレキと記す)になっているので、グニグニ曲げられて足元には分厚い板も挟めるクリップが付いている。

 500g程度のモニターなら、宿の机の上で使う分には問題ないけど、揺れる車両で使うとちょっとモニターが揺れるときもある。なるべくフレキが短く、モニターを縦にも横にも固定できる外の長さがいいだろう(筆者が選んだのはフレキ部分が150mm)。

通常は上部のクリップにスマホを挟んで使うが、クリップ部分を改造して磁石を取り付け、磁石でモバイルモニターを固定する

 もっと頑丈なのを作りたいなら、工作用の強力なクリップと水道管用のステンのフレキを使って、スマホスタンドに似たようなものを作るといいかもしれない。ただ筆者の見積もりだとそれを作るだけで、部品選びと工作で2日はかかる感じだ。

強力磁石

 100円ショップ手に入る一般的な黒い磁石に金属カバー(ヨーク)が付いているもので、30×20mm程度が最低限必要。たまに黒い磁石単体で使われているものがあるけれど、重いモニター用は黒い磁石に金属のヨークカバーが被せてある強力タイプが必須だ。

 磁石そのものが手に入らなくても、金属壁に磁石で吸着させるフックの中から磁石を取り出せばOK。100円ショップだと大体ショボい接着剤を使っているので、マイナスドライバでホジホジすると磁石ユニットが取り出せる。

 磁石はなるべく四角型のもので、大きさの目安は30×40mmがいい。「耐荷重3kg」って表示のあるヤツが30×40mmの磁石をよく使っいる。

100円ショップやホームセンターなどで買えるマグネットフック

 高いモニターなのでがっちり固定して保険をかけたいという場合は、Amazonなどで売っているヨークカバー付きのネオジム磁石がおすすめ。幅30mmで高さ10mmが3つセットになって1,000円ぐらい。

 ただネオジム磁石にすると磁力が強力なので、最初は2つから初めて、取り外しに苦労しなければ3個で固定するなどしたほうがよさそうだ(2つの磁石は並べると反発するので1cmほどの間隔も必要)。

Amazonで購入できるネオジム磁石。こちらは40×13.5×5mmのサイズでネジ付き。3つを組み合わせて強さを調整する

ミニホワイトボード(鉄板)

 液晶パネルの裏に貼って磁石で固定するためのもの。DIYショップで売っている鉄板は、何も加工していないものが多く錆びやすいので、100円ショップで売られている「ミニホワイトボード」から、鉄板を取り出すのがいい。

100円ショップで売ってるホワイトボードが安くて便利。磁石が付けばいいので薄いもので構わない

 薄い鉄板は通常のハサミでも切り取れるので、磁石より少し大き目に切って、モニターの裏に貼り付ける。

 またネオジム磁石で本体裏に固定するが、磁力と映像が歪んだりということはない。

両面テープ

 モニター側の鉄板に、磁石を付ける場所のガイドをゴム紐で目印するため。磁石だけだと揺れで滑ってしまう可能性もあるが、その磁石のまわりをゴム紐でガードすることでシッカリ設置できる。モニターに鉄板を貼り付ける両面テープは、厚みのある強力タイプがおすすめ。

ゴムを付けるための両面テープは100円ショップのものでもOK
モニターに鉄板を貼り付ける両面テープは、厚みがある強力タイプがおすすめ。ただし「ブチルゴム」というタイプは、剥がした後が汚くなるので避けたほうがいい

3~5mm厚のゴムシート

 ゴムシートには、いわゆる重いゴムを使ったものと、発泡スチロールのように気泡を含ませた「灰色」の発泡ゴムがある。携帯するので軽い発泡ゴムのシートで、20x20cmぐらいのシートだいいだろう。厚みは3~5mmのもの。

ホームセンターに行くと必ず売っている。厚さは5mm以下にしないと使い勝手が悪くなる

瞬間接着剤

 これが一番今回の工作で迷うところ。モニターを支えるアームスタンドの一部をカットして、そこに磁石を取り付けるために使う。

瞬間接着剤と言えば、アロンアルファ。いろんな種類があるけど一般用という一番安いのでOK

 結論からすると「瞬間接着剤」がベストな人が多いはず。ただし互いの接着面がさざざらしていると、瞬間接着剤だとまったく付かない場合もある。このときはエポキシ系の接着剤がおすすめだが、固まるまで時間がかかるのでクリップなどで固定すること。エポキシ系に近く、強力に接着できそうな「セメダインスーパーX」や「コニシ ウルトラ用途SU」シリーズはさっぱりダメだった。

めっちゃくっ付きそうで、くっ付かないのがスーパーXやウルトラSU。これらは強力という意味でのスーパーやウルトラじゃなく、モノを選ばないっていう意味が強い

 瞬間接着剤は、物にぶつけたりすると磁石が外れやすい(衝撃荷重に弱い)が、どこでも売ってるので外れたらコンビニで接着剤を買って直すを繰り返したほうがいいかも。一番いいのは瞬間接着剤で固定して、さらにタッピングネジ(大体磁石に添付されてるけど、長すぎるのでカットするか短いのを買ってくる)で固定がおすすめ。

【用意するもの2】プロテクタ部品関連

ベルト

 教科書やノートをひとまとめにするブックベルトの類。100円ショップならラッピングや工具、トラベルコーナーにあるベルト。ワンタッチでロックできるのがベスト。

モバイルモニターとプロテクタを一体化させるためのベルト

紙製クリップボードA4判(14インチモニターの場合)

 薄いモニターを補強しつつ液晶画面をキズ付から守るなら、固くて軽い紙製のクリップボードが素材としてベスト。クリップボードは街中でアンケートをするときにA4の紙などが挟んであり、ペンで記入する段ボールやプラスチック製の台のことだ。

ネットで検索する場合は「MDF クリップボード」で検索すれば一発で出てくる。色がついてたり木目が印刷されているのは、両面テープの粘着が弱くなるので、できるだけ薄茶のヤツがいい

モニタースタンドの作り方

(1)スマホスタンドを分解して、スマホを固定するクリップを外す

 根元がグルグル回るボールジョイントになっているので、ネジを外してボール部分ごと外す。

ネジを緩めてクリップを取る。柄の部分とクリップは、滑り止めのゴムを剥がすと、ボールジョイントのアームがネジ止めされているのでこれを外す

(2)クリップ部分をカットして、磁石が取り付けられる平らな面を作る

 ニッパやペンチで折り曲げた場所は、ギザギザして見た目が悪いので、最初はカッターで軽く面をキレイにして、240番,400番、1000番の順に紙ヤスリを掛けるといい。これで断面は自然な感じになる。

欲しいのはこの部分
平らな面を多く作りたいので、凸部分をニッパである程度切断したら、金ヤスリで平らにしていく
最後は240番、400番、1000番の紙ヤスリをかけて接着剤が乗りやすいようにする。あまりザラザラな仕上がりだと瞬間接着剤の着きが悪くなるので注意

(3)切り出した面が平面になっているかを確認する

 「スコヤ」という直角定規があると便利だが、直線定規(できれば透明でないもの)でも代用できる。平面を図りたい部分に定規を合わせ、その間から光が透けて見えないかをチェックする。これでビシッ!と平面が出せる。

直角や垂直、平面を出すときに便利なスコヤ。1,000円ぐらいなので1個あると便利

 磁石とスタンドがシッカリ接着できるかはココで決まるので、シッカリ平面を出すこと。光が透けて見えるところは片側かその左右が盛り上がっているので紙ヤスリで微調整していく。これができたら90%は完成したようなモン!

切り出した面にスコヤや定規を当てて光にかざす。スコヤとの間から光が漏れていなければパーフェクトな平面

(4)平らな面に磁石を貼り付ける

 先にも述べた通り、この接着は万能系の「セメダインスーパーX」や「コニシ ウルトラ用途SU」はまったく刃が立たないので注意。また「超強力」を謳う表面テープもほぼ効かない。

プレスチックの平らな面に瞬間接着剤を数滴たらして接着する。ボンドのように前面にべったりたらすのではなく、5mm間隔ぐらいのしずくで

 もし確実を期するためにネジ止めする場合は、5mm以上のプラ板で補強する。この時の接着剤はプラモデル用でOK。ネジ止めする際には、あらかじめキリなどで下穴を開けてから、タッピングネジを締めるといい(母材が割れにくくなる)

(5)完成した磁石のヘッドをもとに戻す

バラした順番で組み立てる。根元の曲がった部分のネジ穴が緩くなったり、グラグラが気になった場合は瞬間接着剤で補強するといい

(6)磁石の大きさより少し大き目(余白5㎜ほど)に鉄板を切りモニターに貼る

薄い鉄板なので、普通のはさみで切断OK。ただハサミで切断すると切り口が立ったり、尖ったりして、刃物みたいに危険な状態になるため、金づちや固い交互で切断面を叩いてまっすぐにする
より丁寧に施工するならエッジを金ヤスリで少し削って、切断面が丸くなるように加工する

(7)切り出した鉄板をモニターの裏に両面テープで貼る

鉄板をモニターの裏に貼るのは両面テープでOK。超強力タイプがおすすめ。またスタンドを付けたときに、電源や映像ケーブルの邪魔にならないかも考えて貼り付ける場所を決めること
筆者が使っている山善のモニターには、磁石をくっ付ける鉄板とVESAのネジ穴がもともと付いていた

(8)スタンドとモニターを仮接続してみる

 スタンドの磁石をモニターにくっ付けて、実際にノートPCと電源やHDMIケーブルをつないで問題ないかを確認する

 よくありがちなのは、太いUSB Type-CケーブルだとちょっとPCを動かすと、ケーブルに引きずられてモニターが動いちゃう場合がある。そんなときは、ケーブルを柔らかいものに変えたり、磁石をネオジム磁石に変える、後述のガイドを付けるなどして対応するといいだろう。

(9)磁石を囲むようにゴムのガイドを付ける

磁石の形に合わせて、モニターの鉄板にゴムのガイドを付ける。正方形の磁石なら「コ」の字型にガイドを作れば、縦横に対応できる。正方形じゃない場合は、「L」字にして、縦の場合と横の場合のガイドを別途設けるようにするといい

10)縦・横にモニターを設置してみて問題なければ完成

 また新幹線などで実際に使ってみて、揺れる車内ではどうやったら細かい揺れを防止できるかを自分で研究してほしい。筆者はノートPCのモニターをモバイルモニターに当てることで揺れを解消させた。スタンドを2個作ったり、スタンドのフレキを強化するなどいろいろ方法があるはずだ。

実際にスタンドをテーブルなどに挟んでみてうまく使えるかどうかをチェックする。フレキ部分にケーブル止めなどを付けておくと、コネクタ保護にもなる

モニタープロテクターの作り方

 モバイルモニターの悩みがもう1つ。市販のケースはたいだいPC用なので大きすぎるし、ソフトケースが多く薄く曲がりに弱いモバイルモニター要にはちょっと心配。

 そこで簡単に作れる、液晶保護とモニター自体を曲がりから守るハードケースも作ってみた。

(1)クリップボードのクリップを取る

実はこれが一番大変だった!ハトメみたいな感じで厚紙に止めてあるので、ペンチなどでハトメが広がった部分を少しずつ絞って行けば、最後にスポッ!とキレイに外れる
円周を均一に潰していく感じで、良きところでハトメを抜く

(2)クリップボードをモニターに合わせてカット

山善の14インチモニターは、A4判のクリップボードがピッタリだった

 15.6インチだとB4判のクリップボードをカットすることになるはず。

(3)クリップボードにモニターをあてがってゴムのガイドを貼る

スタンドの工作でも使った発泡ゴムを5mm幅ぐらいにカットして、まずはモニターの上部の辺に沿ってガイドを付ける。両面テープよりゴムボンド系の接着剤のほうがいいかも?

(4)モニターの下辺にもガイドをキツめに

 クリップボードをモニターが一体になるようにすれば、液晶面にゴミも入りにくく、衝撃も各辺で分散して吸収されやすくなる。

クリップボードとの隙間に余裕があれば5~10mm幅のゴムでガイドを作って貼る。これでモニターを上辺から差し込んで、下辺で固定できるようになる。

(5)ブックベルトを引っかける溝などをカッターで削る

 布製のケースよりかさばらないし、折れ曲がりにくいので、このモニタープロテクタは超おすすめ。

クリップボードは柔らかいのでカッターで加工できる
へこみを作ることでクリップボードとモニターを一体化させる

マルチモニターがさまざまな環境で使える!

 このモニタースタンドは、クリップ式なので挟めるものがあれば何にても固定できるのが特徴。筆者は、放浪の旅に出て原稿を書いているので、新幹線や電車の中での執筆が多い。なので、今回は電車の中で実験してみた。

横向きはスペース的に難しいが縦ならOK!
Sworkシートなら3列席を2人で使うことができるので、縦置きも横置きもOK!
自由席でB席が空いてたらなら2席使って余裕の作業スペース

 まずは東海道新幹線のN700系。テーブルに付けるとPCを置くスペースがなくなるので、机の横にあるアームに固定してみた。若干揺れが発生するとグラつくときもあるが、ノートPCの画面をくっ付けておけばシッカリ揺れも止まった。

 また最近は仕事ができるSworkシートがあり、3列シートを2人で広々と使えるシートがある。こんなときは、隣のシートの机も拝借すると広々と仕事ができる。

 京阪電車プレミアムカー。京都の出町柳から、大阪の淀屋橋まで運転している京阪電車の特急には、プレミアムカーというシートが連結されている。500円で約1時間程の仕事が可能だ。こちら可倒式のテーブルではなく、窓枠にスタンドを固定してみた。

京阪電車のプレミアムカーはスタンド使わなくてもOK!
近鉄の2階建てビスタカーは2席使って。近鉄の指定席は結構空いてるので隣に人が来ることはほとんどない
JR西日本の225系新快速Aシート。こちらは窓枠に取り付けできて広々
JR東海の313系新快速。机がないのでPCは膝上だけどモニターはひじ掛けに取り付けできた。チョイ狭いかも?

 関西を中心に走る新快速の一部には、京阪電車と同じようなAシートが連結されている。こちらも別料金の600円(チケットレスの場合)で最長滋賀県草津から、兵庫の網干まで仕事ができる。その距離160kmで1時間半にもおよぶ。ここは筆者のベスト仕事プレイスになっている。

ビジネスブースや宿泊先などでも便利に使える!
JR東海のビジネスブース「EXPRESS WORK」はモニターがないところもあるので、Web会議で重宝する

 東海地方の新快速の313系は、机がないのでちょっと使いにくいが、ロングシートじゃなければ十分仕事環境。最近は古い車両の置き換えとダイヤ改正のおかげで、熱海⇔浜松の各駅停車が増発され転換クロスシートの313系が走っている。

 さらに列車を選ぶと、車両端がボックスシートで固定の机がある313系8000番台も走っているので、150km、2.5時間のベスト仕事プレイスも登場!青春18きっぷ中は混雑するので、土日に使える「休日乗り放題きっぷ」(豊橋⇔熱海)2,720円で利用するのがおすすめだ。