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モバイルモニター用に“まとも”なスタンドを自作してみた。新幹線や宿泊先で縦横自在に使える優れもの
2025年1月15日 06:13
ここ最近で14型前後の薄型モバイルモニターが続々登場している。筆者が愛用しているのは山善の「14インチモバイルディスプレイ(QMM-140)」。1,920×1,200ドットの16:10画面で、USB Type-Cケーブル1本でモニターへの電源供給と映像信号が送れて、2万円を切るというお買い得品だ。
難点はMini HDMIケーブルのコネクタ周りの樹脂成型がカツカツで添付のケーブルしか使えない点。ただ筆者はコネクタまわりの樹脂をカッターで削って市販品を使えるようにした(保証対象外になるのは覚悟の上!)。
とはいえ、旅先でマルチモニター環境が使えるのは超便利。しかも筆者が技術監修している家電マンガ「宇宙人ムームー」が2025年にアニメ化することが決定。作画資料や絵コンテをチェックすることになり、旅先でも縦長モニターが必須となっている。
ところが!本体添付のモニタースタンドは、チープだったり重すぎたりでイマイチだ。とくに列車内でマルチモニター環境で使えるスタンドがない!ほんとにナイ!だから作ってみた!
これなら新幹線でもOK!京阪のプレミアムカーでもOK!JR東海やJR西日本の新快速でもマルチモニター環境で作業ができる!しかも部品代は、4,000円程度と格安だ。筆者は商品化する気がサラサラないので、これからモバイルでマルチモニターする人も、すでにしている人もぜひ作ってほしい。
工作に使う部品は、電量販店や近所のDIYショップ、100円ショップ購入できるようなもので作ってみた。近くにこれらのお店がなくても、全部通販で手に入るので安心してほしい。ただリアル店舗で、現物のモニターを当てがいながら「これをこーして、あーして」と考えたほうが、汎用性が高いのは確かだ。
(1) 【用意するもの1】スタンド部品関連
(2) 【用意するもの2】プロテクタ部品関連
(3) モニタースタンドの作り方
(4) モニタープロテクターの作り方
(5) マルチモニターがさまざまな環境で使える!
【用意するもの1】スタンド部品関連
エレコムスマートフォン用クリップ式アームスタンド(P-DSCLP15BK)
ちょっと大きめのスマホをクリップに挟んで固定する台。フレキシブルアーム(以降、フレキと記す)になっているので、グニグニ曲げられて足元には分厚い板も挟めるクリップが付いている。
500g程度のモニターなら、宿の机の上で使う分には問題ないけど、揺れる車両で使うとちょっとモニターが揺れるときもある。なるべくフレキが短く、モニターを縦にも横にも固定できる外の長さがいいだろう(筆者が選んだのはフレキ部分が150mm)。
もっと頑丈なのを作りたいなら、工作用の強力なクリップと水道管用のステンのフレキを使って、スマホスタンドに似たようなものを作るといいかもしれない。ただ筆者の見積もりだとそれを作るだけで、部品選びと工作で2日はかかる感じだ。
強力磁石
100円ショップ手に入る一般的な黒い磁石に金属カバー(ヨーク)が付いているもので、30×20mm程度が最低限必要。たまに黒い磁石単体で使われているものがあるけれど、重いモニター用は黒い磁石に金属のヨークカバーが被せてある強力タイプが必須だ。
磁石そのものが手に入らなくても、金属壁に磁石で吸着させるフックの中から磁石を取り出せばOK。100円ショップだと大体ショボい接着剤を使っているので、マイナスドライバでホジホジすると磁石ユニットが取り出せる。
磁石はなるべく四角型のもので、大きさの目安は30×40mmがいい。「耐荷重3kg」って表示のあるヤツが30×40mmの磁石をよく使っいる。
高いモニターなのでがっちり固定して保険をかけたいという場合は、Amazonなどで売っているヨークカバー付きのネオジム磁石がおすすめ。幅30mmで高さ10mmが3つセットになって1,000円ぐらい。
ただネオジム磁石にすると磁力が強力なので、最初は2つから初めて、取り外しに苦労しなければ3個で固定するなどしたほうがよさそうだ(2つの磁石は並べると反発するので1cmほどの間隔も必要)。
ミニホワイトボード(鉄板)
液晶パネルの裏に貼って磁石で固定するためのもの。DIYショップで売っている鉄板は、何も加工していないものが多く錆びやすいので、100円ショップで売られている「ミニホワイトボード」から、鉄板を取り出すのがいい。
薄い鉄板は通常のハサミでも切り取れるので、磁石より少し大き目に切って、モニターの裏に貼り付ける。
またネオジム磁石で本体裏に固定するが、磁力と映像が歪んだりということはない。
両面テープ
モニター側の鉄板に、磁石を付ける場所のガイドをゴム紐で目印するため。磁石だけだと揺れで滑ってしまう可能性もあるが、その磁石のまわりをゴム紐でガードすることでシッカリ設置できる。モニターに鉄板を貼り付ける両面テープは、厚みのある強力タイプがおすすめ。
3~5mm厚のゴムシート
ゴムシートには、いわゆる重いゴムを使ったものと、発泡スチロールのように気泡を含ませた「灰色」の発泡ゴムがある。携帯するので軽い発泡ゴムのシートで、20x20cmぐらいのシートだいいだろう。厚みは3~5mmのもの。
瞬間接着剤
これが一番今回の工作で迷うところ。モニターを支えるアームスタンドの一部をカットして、そこに磁石を取り付けるために使う。
結論からすると「瞬間接着剤」がベストな人が多いはず。ただし互いの接着面がさざざらしていると、瞬間接着剤だとまったく付かない場合もある。このときはエポキシ系の接着剤がおすすめだが、固まるまで時間がかかるのでクリップなどで固定すること。エポキシ系に近く、強力に接着できそうな「セメダインスーパーX」や「コニシ ウルトラ用途SU」シリーズはさっぱりダメだった。
瞬間接着剤は、物にぶつけたりすると磁石が外れやすい(衝撃荷重に弱い)が、どこでも売ってるので外れたらコンビニで接着剤を買って直すを繰り返したほうがいいかも。一番いいのは瞬間接着剤で固定して、さらにタッピングネジ(大体磁石に添付されてるけど、長すぎるのでカットするか短いのを買ってくる)で固定がおすすめ。
【用意するもの2】プロテクタ部品関連
モニタースタンドの作り方
(2)クリップ部分をカットして、磁石が取り付けられる平らな面を作る
ニッパやペンチで折り曲げた場所は、ギザギザして見た目が悪いので、最初はカッターで軽く面をキレイにして、240番,400番、1000番の順に紙ヤスリを掛けるといい。これで断面は自然な感じになる。
(3)切り出した面が平面になっているかを確認する
「スコヤ」という直角定規があると便利だが、直線定規(できれば透明でないもの)でも代用できる。平面を図りたい部分に定規を合わせ、その間から光が透けて見えないかをチェックする。これでビシッ!と平面が出せる。
磁石とスタンドがシッカリ接着できるかはココで決まるので、シッカリ平面を出すこと。光が透けて見えるところは片側かその左右が盛り上がっているので紙ヤスリで微調整していく。これができたら90%は完成したようなモン!
(4)平らな面に磁石を貼り付ける
先にも述べた通り、この接着は万能系の「セメダインスーパーX」や「コニシ ウルトラ用途SU」はまったく刃が立たないので注意。また「超強力」を謳う表面テープもほぼ効かない。
もし確実を期するためにネジ止めする場合は、5mm以上のプラ板で補強する。この時の接着剤はプラモデル用でOK。ネジ止めする際には、あらかじめキリなどで下穴を開けてから、タッピングネジを締めるといい(母材が割れにくくなる)
(8)スタンドとモニターを仮接続してみる
よくありがちなのは、太いUSB Type-CケーブルだとちょっとPCを動かすと、ケーブルに引きずられてモニターが動いちゃう場合がある。そんなときは、ケーブルを柔らかいものに変えたり、磁石をネオジム磁石に変える、後述のガイドを付けるなどして対応するといいだろう。
モニタープロテクターの作り方
モバイルモニターの悩みがもう1つ。市販のケースはたいだいPC用なので大きすぎるし、ソフトケースが多く薄く曲がりに弱いモバイルモニター要にはちょっと心配。
そこで簡単に作れる、液晶保護とモニター自体を曲がりから守るハードケースも作ってみた。
マルチモニターがさまざまな環境で使える!
このモニタースタンドは、クリップ式なので挟めるものがあれば何にても固定できるのが特徴。筆者は、放浪の旅に出て原稿を書いているので、新幹線や電車の中での執筆が多い。なので、今回は電車の中で実験してみた。
まずは東海道新幹線のN700系。テーブルに付けるとPCを置くスペースがなくなるので、机の横にあるアームに固定してみた。若干揺れが発生するとグラつくときもあるが、ノートPCの画面をくっ付けておけばシッカリ揺れも止まった。
また最近は仕事ができるSworkシートがあり、3列シートを2人で広々と使えるシートがある。こんなときは、隣のシートの机も拝借すると広々と仕事ができる。
京阪電車プレミアムカー。京都の出町柳から、大阪の淀屋橋まで運転している京阪電車の特急には、プレミアムカーというシートが連結されている。500円で約1時間程の仕事が可能だ。こちら可倒式のテーブルではなく、窓枠にスタンドを固定してみた。
関西を中心に走る新快速の一部には、京阪電車と同じようなAシートが連結されている。こちらも別料金の600円(チケットレスの場合)で最長滋賀県草津から、兵庫の網干まで仕事ができる。その距離160kmで1時間半にもおよぶ。ここは筆者のベスト仕事プレイスになっている。
東海地方の新快速の313系は、机がないのでちょっと使いにくいが、ロングシートじゃなければ十分仕事環境。最近は古い車両の置き換えとダイヤ改正のおかげで、熱海⇔浜松の各駅停車が増発され転換クロスシートの313系が走っている。
さらに列車を選ぶと、車両端がボックスシートで固定の机がある313系8000番台も走っているので、150km、2.5時間のベスト仕事プレイスも登場!青春18きっぷ中は混雑するので、土日に使える「休日乗り放題きっぷ」(豊橋⇔熱海)2,720円で利用するのがおすすめだ。