Hothotレビュー

PS4以下のサイズにGeForce RTX 4070。パワフルなミニPC「ROG NUC」

PS4 Proとの比較。厚みは同等だが、奥行きは半分程度となっている

 ASUSのゲーミングブランドであるROGから、小型ゲーミングPC「ROG NUC」が登場した。コンパクトにまとめられた筐体は容積が2.5L以下となっており、これはPlayStation 5どころかPlayStation 4シリーズよりも小さいレベル。どんなパフォーマンスを発揮してくれるのか、ゲーム性能を中心にチェックしてみたい。

 8月9日より販売開始予定で、ASUSの直販のほか、PCショップなどで扱われるという。ROG NUCの実売予想価格は、Core Ultra 9 185H&GeForce RTX 4070の上位モデルが35万5,600円前後、Core Ultra 7 155H&GeForce RTX 4060搭載の下位モデルが27万6,600円前後だ。

【訂正】初出時に本日より販売開始予定としておりましたが、ASUSより訂正が入り、8月9日販売開始予定に修正しました。

小型ハイスペックで横置き・縦置きも自在

ROG NUCの正面

 ROG NUCは本体サイズが約270×180×50mmの小型ゲーミングPC。名称に「NUC」とあるものの、Intelが規格化しているNUCの(マザーボード)サイズがおよそ10cm四方、筐体も縦横12cm前後で概ね統一されてきたことを考えると、正確にはNUCではない。NUCの定義が「ミニPC」を表わすものに変わりつつある、ということなのだろうか。

ROG NUCとパッケージ

 それはともかく、ROG NUCにおいてポイントとなるのは内部に収められたハードウェアだ。CPUにはCore Ultraシリーズを、GPUにはCPU内蔵に加えてディスクリートのGeForce 40 Laptop GPUシリーズをそれぞれ搭載する。

 ラインナップは2グレードで、今回の試用機は上位モデルに搭載されるCore Ultra 9 185H(16コア22スレッド、最大5.1GHz、Processor Base Power 45W)と、GeForce 4070 Laptop GPU(GDDR6 8GB)の組み合わせとなっている。スペックとしてはデスクトップPCというよりもノートPCベースだ。

ACアダプタは330W。本体がコンパクトな分、余計に大きく見えるかも

 試用機のメモリは32GB(最大64GB)、ストレージは1TBのSSD(PCIe 4.0 x4、NVMe M.2)となっており、これらはユーザー自身で増設・交換も可能。プラスドライバー1本さえあれば容易に筐体内部にアクセスでき、パフォーマンスアップを図れる。メモリはSO-DIMMが2スロット(試用機は空きなし)、M.2は3スロット(空き2スロット)あり、特にストレージはリッチな構成にしやすい。

背面側のスイッチをスライドすると天板を外すことができ、さらにその下のネジを緩めるとフレームを取り外せる
天板を外したところ
フレームを外したところ
メモリとSSDを換装できる
M.2スロットは2つ空きがあった

 ちなみに内部にアクセスすると、天面側に透けて見えるROGロゴのイルミネーション(ASUS AURA Sync対応)のデザインをカスタマイズできる仕組みになっていることが分かる。

天板は中央部が透けている

 正方形に光るライトの上にROGロゴの形で透過するプレートが載っているだけなので、このプレートを交換することで別のデザインで光らせることができそうだ。今のところは標準のROGロゴと、ライトを完全に隠すプレートが付属しているだけなので、今後オプションとしてデザイン違いが追加される可能性もあるだろう。

天板を外したところにあるROGロゴのプレート
ライトを隠すための交換用プレートが2枚付属している
ASUS AURA Syncに対応し、フルカラーで光らせることが可能

 インターフェイスはThunderbolt 4を筆頭に、USB 3.1×4、USB 2.0×2、DisplayPort 1.4a×2、HDMIと小型ながら多め。有線LANポートは2.5Gigabit Ethernet対応となっている。また、無線LANはWi-Fi 6E対応で、外部アンテナなしで利用できるので筐体のコンパクトさを損なわない。

背面側にThunderbolt 4、USB 3.1×2、USB 2.0×2、DisplayPort 1.4a×2、HDMI×1。有線LANポートは2.5Gigabit Ethernet
フロントはUSB 3.1×2、SDカードスロット、ヘッドセット端子

 このほか、フロント側にSDカードスロットとヘッドセット端子も用意されている。ゲーム目的のPCとして考えれば十分にも思えるが、できればもう1つType-Cポートが欲しかったと思わないこともない。なぜかというと、現在はMUXスイッチやCross Adapter Scan-Out(CASO)などの機能により、ディスクリートGPUで描画した内容をType-CポートのDisplayPort Alt Modeで出力できるからだ。

 細いType-Cケーブルでシンプルにモニター配線でき、筐体のコンパクトさを一層有効活用できるわけだが、この機能を利用するとROG NUC唯一のType-Cポートが塞がるので、他のType-C接続の周辺機器が使えないことになる。USBハブやドッキングステーションを併用する手もあるとはいえ、やはり本体だけで完結させたいものだ。

細いType-Cケーブルで映像出力でき(モバイルモニターなら給電も可)、ディスクリートGPUの描画性能も生かせる

 ところで筐体は横置きすることも、付属のスタンドで縦置きすることもできる。底面にある2個のファンで吸気し、主に背面側から排気する構造なので、少なくとも設置時には吸気面近くに熱源になりそうなものや、風の流れを妨げるものが来ないように気をつけたい。

付属の縦置き用スタンド
縦置きしたところ
底面側から給気する構造なので、遮らないように設置したい
【表】ASUS ROG NUCのスペック
OSWindows 11 Home
CPUCore Ultra 9 185H
(16コア22スレッド、最大5.1GHz、Processor Base Power 45W)
GPUCPU内蔵Intel Arc Graphics
GeForce RTX 4070 Laptop GPU
メモリ32GB (DDR5-5600)
ストレージ1TB (NVMe M.2 SSD、PCIe 4.0 x4)
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.1×4、USB 2.0×2、DisplayPort 1.4a×2、HDMI、SDカードスロット、ヘッドセット端子
通信機能2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
同梱品ACアダプタ (最大330W)
サイズ約270×180×50mm
重量約2.6kg

5種類のゲームで性能チェック、ウルトラワイド高画質もイケる

 では、このミニサイズのPCがどれほどのパフォーマンスを見せてくれるのか確かめてみよう。今回ゲームソフトでのベンチマークは、比較的軽量なものから重量級まで5種類で試した。

 それぞれでフルHD(1,920×1,080ドット)とWQHD(2,560×1,440ドット)に加え、対応しているゲームにおいてはウルトラワイド、UWQHD(3,440×1,440ドット)の解像度でも計測している。

 軽量なゲーム(ベンチマークソフト)としてピックアップしたのは、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(UWQHD非対応)と「Forza Horizon 5」の2つ。中量級には「Palworld」を選んだ。

「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」の結果
「Forza Horizon 5」のベンチマークモードの結果
「Palworld」のテスト結果

 FF14ではどの解像度・画質設定でも快適に遊べると判定され、まだまだ余裕がありそうな印象だ。Forza Horizon 5はウルトラワイド最高画質にしても80fpsを超えており、不満に感じるシーンはない。Palworldについても、DLSSフレーム生成に対応していないにもかかわらずウルトラワイド最高画質で60fps超を記録しており、間違いなく快適だ。

 重量級のゲームとしては「Cyberpunk 2077」と「Starfield」の2つ。Cyberpunk 2077は、ウルトラワイド最高画質が抑えめの数値になった以外は、どれも高フレームレートでプレイが可能だ。一方、Starfieldの結果はやや厳しめで、高解像度・高画質ではシーンによってぎこちなくなる。WQHD以上の解像度だと「中」画質あたりにしておくのが無難だろう。

「Cyberpunk 2077」のベンチマークモードの結果
「Starfield」のテスト結果

 なお、テストにあたってはASUSの専用ユーティリティ「ARMOURY CRATE」で、冷却ファンの動作モードを「Turbo」とした。負荷に応じてファンノイズはもちろん変化するが、風切り音は低周波寄りでそれほど気にならない。ただ、最大回転数に近づくと風切り音に加えて高周波のキーンという音も混じるので、身の回りに置いていると耳障りに感じることもあるだろう。

専用ユーティリティの「ARMOURY CRATE」

 ゲーム以外では、下記の通り「Cinebench 2024」「PCMark 10」「3DMark」などを実行している。最新の(ノートPC系の)ハイエンド構成ということでどれも高いスコアを叩き出しているが、「Cinebench 2024」のシングルコア性能は以前計測したCore Ultra 7 155H搭載ノートPCの結果(スコアは104)とほぼ変わらなかった。代わりにマルチコア性能で差別化しているような形だ(Core Ultra 7のスコアは614)。

「Cinebench 2024」の結果
「PCMark 10」の結果
「3DMark」の結果

 内蔵ストレージはPCIe 4.0 x4接続らしい高速さを発揮してくれたものの、SDカードスロットについては(最大300MB/sのSDカード使用時で)100MB/s以下の転送速度に留まった。デジカメユーザーにとっては少し物足りないかもしれない。

内蔵SSDの「CrystalDiskMark」の実行結果
SDカードの「CrystalDiskMark」の実行結果

リビングのコンソール風エンタメマシンとしても大活躍

 オフィス受付などで時々見かけるミニサイズのビジネスPCのような省スペース性を実現しながらも、ROG NUCはしっかりゲーミングな性能を達成している。メモリとSSDについては増設の余地が残されているのもうれしいところだ。本文で触れたようにType-Cポートが1つのみという点が気になるが、ハブやドッキングステーションで解決することはできる。

 それこそPlayStationなどのコンソールゲーム機のように、リビングのテレビ近くに置いてゲーム専用マシンとして活用するのもアリだろう。ストレージを増設して写真や動画の保管先とし、いつでもテレビで再生できるようにして家庭内の総合エンタメマシンにするのも面白い。

リビングのテレビ近くに置いて家庭のエンタメマシンにするのもおすすめ

 ゲームマシンとして見れば割高感はあるけれど、設置スペースに余裕がなく、それでもゲーミングPCの性能が必要だというユーザーや、ミニで高性能なPCにロマンを感じる人にとっては貴重な選択肢となるのではないだろうか。