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Zenfone 11 Ultraは10の後継ではない。大画面でAI搭載の新たな旗艦スマホだ

ASUS JAPAN「Zenfone 11 Ultra」。価格はメモリ12GB/ストレージ256GB版が13万9,800円、メモリ16GB/ストレージ512GB版が15万9,800円

 ASUS JAPANは6.78型大型有機ELディスプレイを採用した「Zenfone 11 Ultra」を7月3日11時に発表し、予約も開始した。発売日は7月5日だ。Zenfone 8/9/10は5.9型ディスプレイを採用することにより片手で無理なく握れる小型ボディを売りにしてきたが、「Ultra」が追加された「11」では、大画面スマホに路線変更されたことになる。また最近のPCと同様に、AI機能に注力しているのもZenfone 11 Ultraの特徴だ。

 大きな変化なので好みが分かれているだろうが、だからこそ本製品を注目している方は多いはず。今回は詳細スペック、AI機能、パフォーマンス、カメラ画質などについてじっくりとレビューしていこう。

Zenfone 10より体積は119%、重量は131%相当に増加、画面は5.9型から6.78型に拡大

ディスプレイは6.78型LTPO AMOLED(1,080×2,400ドット)

 Zenfone 11 UltraはOSにAndroid 14(Zen UI)、SoCにSnapdragon 8 Gen 3を採用。メモリは12GB/16GB(LPDDR5X)、ストレージは256GB/512GB(UFS 4.0)を搭載している。

 ディスプレイは6.78型LTPO AMOLED(1,080×2,400ドット)を採用。サウンド機能はデュアルスピーカーを内蔵。サウンド規格はHi-Res、Hi-Res Wireless、Dirac Virtuoに対応している。

 カメラは5,000万画素広角、1,300万画素超広角、3,200万画素望遠、3,200万画素セルフィーを搭載。ボディが大きくなった分、背面にトリプルカメラを搭載できたわけだ。

 インターフェイスはUSB 2.0 Type-C、3.5mmコンボジャックを用意。ネットワークは5G(Nano SIMスロット×2)、ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.4、NFC(FeliCa対応)をサポートしている。なおeSIMに対応していない点には注意してほしい。

 本体サイズは163.8×76.8×8.9mm、重量は225g。防水防塵はIP65/IP68。5500mAhのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はWi-Fi通信時約15.9時間、LTE通信時約16.5時間、5G通信時約13.9時間と謳われている。

 前モデル「Zenfone 10」のサイズは146.5×68.1×9.4mm、重量は172g。つまりZenfone 11 Ultraは体積で119%、重量で131%相当に増えていることになる。

カラーはエターナルブラック、スカイラインブルー、ミスティグレー、デザートサンドの4色を用意。ただしメモリ16GB/ストレージ512GB版で選べるのはエターナルブラック、スカイラインブルーのみ
上面にはマイク、下面には3.5mmコンボジャック、Nano SIMカードスロット、USB 2.0 Type-C、マイクを用意
右側面にはボリュームボタン、電源ボタンを配置
パッケージには、本体、専用ケース、USB Type-Cケーブル、SIM取り出しピン、説明書類を同梱
本体ケースにはリサイクル材を50%使用
本体ケースは本体と同じくマット仕上げ。ロゴとモノグラムも本体と同じ位置に施されている
USB Type-Cケーブルの長さは実測90cm
Nano SIMカードスロットには2枚のNano SIMを装着できる
本体の実測重量は221.7g
本体と保護ケースの合計重量は実測241.1g

画面の大型化により視認性、没入感、操作性が着実に向上

 言うまでもなく、ディスプレイの大型化には、視認性、没入感、操作性という点でメリットがある。特に長時間端末を利用したり、ゲームをプレイするのであれば、5.9型よりも6.78型のほうが圧倒的に快適だ。

 またディスプレイの輝度も1,100cd/平方mから2,500cd/平方mへと大幅に引き上げられており、晴れの日の屋外でも実用的な視認性が確保される。これも画面サイズと同じぐらい、大きな改善点と言えよう。

幅は76.8mm。手に余るほどの大きさではない
画面が5.9型から6.78型へと拡大したことにより、一度に表示できる情報量が増えている
ボタンが大きくなった分、押し間違いは少なくなるが、端っこのボタンには指が届きにくい
タッチパネルの操作は画面が大きいほうが快適。またゲームの没入感にも寄与してくれる

 サイズ以外の大きな変更点が新たなAI機能の搭載だ。ご存じの通りPC業界では「AI PC」に注目が集まっているが、Zenfone 11 Ultraには、レコーダーで録音した音声を文字起こしできる「AI文字起こし機能」、オリジナル壁紙を無限に生成する「AI壁紙」、異なる言語の音声通話を自動翻訳する「AI通話翻訳」、映画のような動画を作成する「ポートレート動画」、ギャラリー内の写真をさまざまなキーワードで検索できる「写真のスマート検索」などのAI機能が追加されている。

 ASUSは同社のAI PCにも独自のAIアプリを搭載している。現状、AI対応アプリの数はあまりにも少ないので、PCとスマホのAIアプリを交互に移植などすることにより、両プラットフォームのAIアプリを充実させていくことを期待したい。

初回起動時に表示されるAI機能の紹介は、「ヒント→新しいAI機能」からいつでも再確認できる
レコーダーで録音した音声を文字起こしする「AI文字起こし機能」
異なる言語の音声通話を自動翻訳する「AI通話翻訳」
オリジナル壁紙を無限に生成する「AI壁紙」
ギャラリー内の写真をさまざまなキーワードで検索できる「写真のスマート検索」

 AI関連機能以外にも、音楽や動画コンテンツを楽しむための各種ツールを利用できる「Video Genie機能」、画面内にアプリをフローティング表示する「エッジツール機能」、ゲームユーザーのための統合アシストツール「Game Genie」など独自機能が搭載されている。特に、大画面化されたZenfone 11 Ultraだからこそ、「Game Genie」を有効活用できるはずだ。

音楽や動画コンテンツを楽しむ際の各種ツールを利用できる「Video Genie機能」
画面内にアプリをフローティング表示する「エッジツール機能」
ゲームユーザーのための統合アシストツール「Game Genie」

 6.78型LTPO AMOLED(1,080×2,400ドット)は、輝度2,500cd/平方m、DCI-P3比107%、色精度Delta-E<1、リフレッシュレート1~120Hz(最大144Hz)とスペック上は申し分ない。実際に写真や動画を表示させても鮮やかで、ゲームでの3Dグラフィックス表示も実に滑らかだ。

 唯一の不満点は「Netflix」アプリでHDRコンテンツを再生できないこと。「ROG Phone 8 Pro」も同様だが、せっかくクオリティの高いディスプレイを搭載しているので、できるだけ早く対応してほしいと強く思う。

6.78型LTPO AMOLED(1,080×2,400ドット、388ppi、20:9)は、輝度2,500cd/平方m、DCI-P3比107%、色精度Delta-E<1、リフレッシュレート1~120Hz(最大144Hz)と画質面は申しぶんない
「YouTube」アプリではHDRコンテンツを再生できる
「Netflix」アプリではHDRコンテンツを再生できない

Snapdragon 8+ Gen 2搭載機の138%相当の総合スコアを記録

 パフォーマンスについては、「Snapdragon 8+ Gen 2」を搭載するZenfone 10、「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載するZenfone 9と比較してみた。

 Zenfone 11 UltraはZenfone 10に対して、総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアで138%相当、CPU/Computeベンチマーク「Geekbench 6」のMulti-Core Scoreで128%相当、GPU Vulkan Scoreで182%相当、3Dベンチマーク「3DMark」のWild Life Extremeで138%相当、AIベンチマーク「AI Benchmark」で160%相当のスコアを記録している。

AnTuTu Benchmark V10(総合スコア)
AnTuTu Benchmark V10(CPU、GPU、MEM、UX)
Geekbench 6 CPU
Geekbench 6 Compute
3DMark
AI Benchmark

 記事執筆時点のAnTuTu Benchmarkのランキングと比較すると、今回の総合スコアはトップとなっている。Zenfone 11 UltraはAndroidスマートフォン最高峰のパフォーマンスを備えていることは間違いない。

記事執筆時点のAnTuTu Benchmarkのランキングで1位のスコアを記録

 なおバッテリ駆動時間についてはディスプレイ輝度、ボリューム50%でYouTube動画を連続再生したところ、21時間49分5秒動作した。5,500mAhのバッテリを内蔵しているだけに、処理能力だけでなくスタミナ性能もトップクラスと言える。

ディスプレイ輝度、ボリューム50%でYouTube動画を連続再生したところ、21時間49分5秒動作

 気になったのが高負荷時の発熱。室温27℃でAnTuTu Benchmarkを実行したところ、ディスプレイ面の最大温度は47.0℃に達した。このぐらいの温度に達すること自体は問題ないはずだが、指が触れる側面部が最も高温になるスマホは珍しいと思う。高負荷時にはこのホットスポットを避けて握ったほうがよさそうだ。

高負荷時のディスプレイ面の最大温度は47.0℃
背面の最大温度は46.2℃

実際の色に忠実で、解像感も高いカメラ画質

左が広角カメラ(5,000万画素)、右上が超広角カメラ(1,300万画素)、右下が望遠カメラ(3,200万画素)

 カメラ画質は良好だ。発色は実際の色に忠実で、解像感も高い。また超広角カメラには歪み補正が加えられているが、周辺の歪曲はほとんど気にならない。夜景についてはわずかに露出が高く感じられる写真もあったが、白飛びは抑えられている。

 光の軌跡を記録するライトトレイルは楽しい機能だし、動画撮影時の手ぶれ補正も強力だ。最大30倍のズームはさすがに塗り絵感を否めないが、10倍までであれば40インチ超えのテレビでも鑑賞に堪える精細さが確保されている。望遠カメラが追加されたZenfone 10 Ultraは、従来機より撮影の自由度が向上したことは間違いない。

作例
0.7倍で撮影。イメージ情報:4,160×3,120ドット、シャッタースピード:1/720、絞り:F2.2、感度:ISO101、測光方式:Center weight
1倍で撮影。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/1877、絞り:F1.9、感度:ISO90、測光方式:Center weight
2倍で撮影。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/1530、絞り:F1.9、感度:ISO43、測光方式:Center weight
3倍で撮影。イメージ情報:3,280×2,460ドット、シャッタースピード:1/429、絞り:F2.4、感度:ISO31、測光方式:Center weight
10倍で撮影。イメージ情報:3,280×2,460ドット、シャッタースピード:1/315、絞り:F2.4、感度:ISO25、測光方式:Center weight
30倍で撮影。イメージ情報:3,280×2,460ドット、シャッタースピード:1/211、絞り:F2.4、感度:ISO25、測光方式:Center weight
1倍で撮影。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/3931、絞り:F1.9、感度:ISO69、測光方式:Center weight
1倍で撮影。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/1744、絞り:F1.9、感度:ISO25、測光方式:Center weight
1倍で撮影(夜景モード)。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/20、絞り:F1.9、感度:ISO742、測光方式:Center weight
1倍で撮影(ライトトレイル)。イメージ情報:4,096×3,072ドット、シャッタースピード:1/6、絞り:F1.9、感度:ISO35、測光方式:Center weight
10倍以上のズーム撮影では、被写体を狙うためのプレビューが同時に表示される
手ぶれ補正なし
手ぶれ補正あり(Adaptive)
手ぶれ補正あり(HyperSteady)

Zenfone 11 Ultraは別シリーズと考えるべきだ

 手のひらにすっぽり収まるスマホが欲しいならZenfone 10をお勧めする。このサイズ感を愛するZenfone 10ユーザーなのであれば、買い増ししてもよいだろう。Zenfone 10はフラグシップを小型ボディに凝縮した希少種。こんな端末はめったに現われない。

 しかし、Zenfone 11 Ultraは別シリーズと考えれば魅力的だ。処理性能はAndroidスマホ最高峰で、ディスプレイは大画面&高輝度化。カメラは望遠を加えてトリプル構成となり、その画質もハイレベル。ROG Phoneシリーズ譲りのゲーム関連ユーティリティ「Game Genie」を搭載しつつ、1~120Hz(最大144Hz)のリフレッシュレートを実現しているのでゲーミングスマホとしても優秀。そしてIP65/IP68をサポートしており、おサイフケータイも利用可能と日本のユーザーが重視するスペックも抜かりなし。しいて不満点を挙げるなら、eSIMに対応していないことぐらいだ。

 現代のスマホの潮流に乗ったフラグシップスマホが欲しいのなら、Zenfone 11 Ultraは買って大満足の1台と言えよう。