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【教えてVAIO】開発者に教わってきた、USB Type-Cケーブルのトラブル回避方法
- 提供:
- VAIO株式会社
2024年4月12日 06:30
ここ数年でほとんどのノートPCに「USB Type-C」(USB-C)が標準装備され、使い勝手が格段に向上した。データ転送はもちろんのこと、USB充電器からの充電、外部モニターへの映像出力など、「もはやType-Cがないと不便!」という状態になりつつある。
しかし、便利で高機能だからこそトラブルも起きがちなのがType-Cの欠点とも言える。なぜかノートPCに充電できない、映像が出ないなど、USB Type-Cでありがちなトラブルを避けるにはどうしたらよいのか?
それなら実際にノートPCを作ってるメーカーに聞くのが一番だろ!? ということで、長野県は安曇野にあるVAIO本社工場まで突撃し、開発者の方に疑問をぶつけてみることにした。
USB Type-Cケーブルでトラブルを避ける鉄則
USB Type-Cは、データ転送、USB PDでの充電、DisplayPortの映像出力といった規格に対応可能だが、高機能ゆえに市販のType-Cケーブルはちょっとしたカオス状態。このケーブルだと動くのに別のケーブルだと動かない、などといったトラブルが起きやすくなっているのが現状だ。
実際、Type-Cを問わずUSBにはデータ転送だけでも次のような種類があり、規格団体のUSB-IFが名称をコロコロ変えたりするものだから、前述の充電規格などとも相まってユーザーの混乱に拍車がかかっている。
現名称 | 旧名称 | 今後の名称 |
---|---|---|
USB4 | - | USB 40Gbps |
USB 3.2 Gen 2x2 | USB 3.2 | USB 20Gbps |
USB 3.2 Gen 2 | USB 3.1 Gen 2またはUSB 3.1 | USB 10Gbps |
USB 3.2 Gen 1 | USB 3.1 Gen 1またはUSB 3.0 | USB 5Gbps |
しかもType-Cのコネクタを採用するThunderbolt 3またはThunderbolt 4という規格もある。これらはUSB Type-Cと互換性があるので使用する上で問題はないのだが、名称が違うので知識がないユーザーからするとチンプンカンプンだろう。
Type-Cケーブルを使う上でトラブルを避けるにはどうすればよいのか。VAIO株式会社 開発本部の吉田徳文氏は次のように説明する。
「Type-Cケーブルを使うデバイスは非常に多く、いろいろなことができてしまうので、その組み合わせも無限になってしまいます。ほかのPCメーカーも同じだと思いますが、VAIOなら純正のケーブルを使うのが一番確実です。なぜなら自社製品の組み合わせは総当たりで確認しているからです」。
ただ、すべてを純正で固めるのは難しい。もっと長いケーブルが必要になったりといったこともあるだろう。
VAIO株式会社 開発本部の山田祐氏はその点についても承知した上で、「次におすすめするのはType-C対応のモニターやドッキングステーションなどのデバイスに付属しているケーブルを使うことですね。各社さまざまなテストをした上で添付しているケーブルなので、USBの認証(USB-IFによる認証取得)が取れていないケーブルよりは確実に安全です」。
なるほど、やはり素性の不明な激安Type-Cケーブルを使ったりするよりも、ある程度は出所の分かるものを使った方が良いようだ。安く買ったはいいものの、USB PDでの充電や映像出力ができなかった、などということもよくある話だ。
なお、現在販売されているコンシューマ向けのVAIOノートはすべてType-Cポートを備えていて、USB PDでの充電が可能になっているとのことだ。本稿の最後で全ラインナップを紹介しているので確認してほしい。
USB PD 100W対応なのに60W出力と低く認識されてしまう謎
USB PD対応の充電器で100Wと高出力なものを使っているのに、なぜか60Wといった低出力になっている場合がある。それにはきちんとした理由があり、Type-Cは物理的に接続するだけでなく“PCとデバイス間で通信しつつ、互いのネゴシエーションが行なわれる”からなのだが、これについて山田氏が解説してくれた。
山田氏が実演してくれたのが、冒頭で述べたような100WのUSB充電器なのに、ケーブルによってPC側には60Wとしか認識されていないという不思議な状況だ。
「普通のType-Cケーブルで100W出力のUSB充電器を接続すると、出力は60Wになってしまいます。でも“コネクタ部分が少し長くなっている”Type-Cケーブルで接続すると100Wになります。両端がType-CのケーブルはPCやデバイス、ケーブルも含めてお互いのスペックを確認するための信号線(CC: Configuration Channel)があり、これを経由してお互いのスペックをネゴシエートして何ワットで充電するか? などを決定しているんです」(山田氏)。
「最初に使った細いケーブル(下の写真を参照)は“E-Marker”というチップを内蔵していない通常のType-Cケーブルです。このケーブルだと接続先とのネゴシエーションに、E-Markerが現れません。PCとUSB充電器は100Wに対応していても、ケーブルが対応していないと判断され、60Wで給電を開始します。一方で“E-Marker”が内蔵された100Wまで流せる太いケーブルなら、給電経路すべてが100Wに対応しているので100Wで給電が始まります」(山田氏)。
PC用のUSB充電器には、有線マウスのように直接Type-Cケーブルが生えているタイプがある。これらには、「ケーブルに依存して、給電できる電力が変わってしまうことがない」というメリットがある。つまり、充電器は自分自身の一部であるケーブルがどんな性能かを初めから知っているので、給電できる最大の電力をいつでもPCへ提示することができるのだ。
なお、PC側で100Wで認識されているからと言って、そのPCが100Wで充電できるかどうかはまったく別の話だ。どういった電力でPCを充電できるかは、搭載されているコントローラICの仕様によるし、大電流に耐え得る電源回路を備えてなければならない。
そのため、ゲーミングノートならともかく、軽量さを優先するモバイルノートでは現状100Wで充電できるものはあまりないのではないだろうか。実際に14.0型モバイルノートのVAIO SX14では、対応する充電能力は65Wまでとされている。
USBケーブルは延長して使うべきではない
USBケーブルは、最新のUSB4(40Gbps)が最長0.8m、USB 3.1(10Gbps)が最長1m、USB 3.0が最長2~3mなどと、動作保証されるケーブル長が定められている。「そんなこと言っても延長ケーブルだって売ってるし、家で使ってるけど問題なく動いてるよ!」という人は大勢いるはず。
“最大ケーブル長”は、規格上で最高スペックを発揮できる長さ。つまりType-Aでケーブル長3mとされているところを、延長ケーブル2mを足して使った場合、最大5Gbpsの転送速度は保証できないというワケだ。
吉田氏と山田氏は口を揃えて「USBケーブルの延長はおすすめできない」という。
「開発者からするとスペック通りの性能を出したいので、延長はできるだけ避けてほしいというのが本音です。規格外の延長ケーブルも多々ありますが、あくまで“自己責任で転送速度が落ちたり、動作が不安定になることを承知の上で使う”としていただきたいです」(山田氏)。
USBハブやリピータ内蔵ケーブルを使って延長する場合は、別途細々とした制約があるのでここでは割愛するが、要はやり過ぎるとデバイスそのものを認識できなくなることもあるようだ。
たとえば、遠くにUSBプリンタを置きたい、遠くにあるUSB HDDにデータをコピーしたいなどで、5mの延長ケーブルで接続したもののPCはさっぱり認識してくれない、突如デバイスが見えなくなるという場合がまさにこれ!
また、同様に延長ケーブル使ってUSB HDDの書き込みやカメラの写真を転送すると遅いと感じる場合は、延長ケーブルを外して様子を見てみよう。
さらに延長ケーブルや長いケーブルを使ってPCを充電したり、遠くのモニターに表示させたりという場合も注意。
先の説明の通り、Type-Cケーブルは接続するとデバイス間で通信を行なって何ワットで充電できるのかを知ったり、信号線の半分を明け渡して映像信号を流すように切り替えたりしている。
ケーブルが長いとデバイス間の通信ができずに、個々のデバイスが通信できなくなり、結果として充電ができない、低いワット数でしか充電できない、映像が映らないなどさまざまな症状が発生する恐れがある。
極端に延長するとネゴシエート用のCC信号の通信すらできなくなり、USB充電器が安全のために強制的に電源遮断する場合などもあるという。しばらく通電できなくなるため、傍目にはUSB充電器が壊れたように見えるが、コンデンサに溜まった電気をすべて放電させるために10分程度放置し、接続し直せば復活する可能性がある。同じ症状に合ったら試してみてほしい。
挿抜注意! USB充電器から外すのではなくケーブルから外すべし
USB Type-Cは、USB PDで充電を行なっている際に、ケーブルの挿抜で注意が必要のようだ。
山田氏は「たとえば会議室に移動するときは、USB充電器をノートPCに接続したままコンセントから抜いて移動する方は多いと思うんです。実はこれおすすめできません」という。
「なぜなら、コンセントから抜いた後もUSB充電器には電気が残っているためです。これは時間経過で徐々に放電されていくのですが、電圧の低下でUSB充電器が不安定な状態になり、場合によっては誤動作してしまうことが考えられます。PCからUSBケーブルを抜いておけば、こういったリスクを回避できますので、充電器をコンセントから抜く前に、まずPC側のUSBケーブルを抜くことをおすすめします」(山田氏)。
さらに吉田氏は、Type-CケーブルにおけるDisplayPort Alt Modeでの意外なトラブルを教えてくれた。
「Type-Cコネクタは、表裏どちらに差し込んでも通信ができます。実は逆刺しても通信できるように、表裏それぞれにデータ信号線を1セットずつ、計2セット持っているんです。USB 3.2(20Gbps)以降では、2セットの信号線を使って通信速度をこれまでの10Gbpsの2倍にしています。ここまでは問題ありません。
一方、Type-Cコネクタで映像信号を流すDisplayPort Alt Modeでは、信号線2セットのうち片方、または両方をDisplayPort用に割り当てます。データ通信と画像表示の両方を行なうType-Cドックのようなデバイスでは、信号線の片方をDisplayPortに割り当て、もう片方でデータ通信を行なう、Multi Function Display Port Modeとして動作します。映像表示のみを行なうモニターのようなデバイスでは、信号線2セットの両方をDisplayPortに割り当てて動作します。
このように、DisplayPortに割り当てられる信号線の数(=通信速度)は、接続デバイスの機能によって異なります。ですので、モニター直結なら高解像度で表示できるのに、Type-Cドックを経由させるとなぜか低解像度表示……ということが起きるかもしれませんね」(吉田氏)。
滅多に起きないトラブルだとは思うが、とりあえずType-Cドック経由でつなげばOK! というイメージは意外と簡単に覆されてしまうようだ。もし高解像度表示がうまくいかないようなら、試しにPCとモニターを直結してみよう。
スマホ用のバッテリや充電器をノートPCに使えるか?
モバイルノートであれば、大抵は45W以上の出力を持つUSB充電器やモバイルバッテリを使うことを推奨される。もし、それらが用意できない場合に、スマホ向けの15W程度しか出力できないようなものをつないでも充電はできるのだろうか?
吉田氏はVAIOのノートPCならType-Cからの低電力での充電が可能なので「緊急用としてならそういう使い方もあり」という。
「ただ、PCを使いながらだと消費電力が上回ってしまうので、多少稼働時間は増やせるものの、ほぼ無力かもしれませんね。PCの電源を切って一晩かけてゆっくり充電するとかならまだましです。でも充電時間のわりにバッテリ残量があまり増えず、がっかりするかもしれません。あくまでも緊急用です」(吉田氏)。
以上、VAIOの開発者の方からUSB Type-Cに関する身近な疑問について、有用な回答を得られたことと思う。もしもトラブルに遭遇したときは本稿を参考にしていただければ幸いだ。
VAIOは今年で設立10周年、上から下まで隙のないラインナップに
VAIOは2024年7月に設立10周年を迎える。ソニーのPCブランドであるVAIOから独立し、VAIO株式会社として発足。ソニー時代からの生産拠点だった安曇野工場はそのまま引き継がれたものの、会社としての体制は完全に見直され、少数精鋭でのゼロからのスタートとなった。
新生VAIOは、よりビジネスユースに軸足を移し、ソニー時代からのDNAと高品質なハイエンドモバイルを融合した製品群を展開。この10年間でVAIOらしさを損なわない意欲的なノートPCが生み出されてきたのは記憶に新しい。そうしたVAIOへのユーザーの支持もあり、企業としては右肩上がりの成長を続けている。
現在では上位クラスから順にSXライン、Sライン、FラインのノートPCを提供しており、用途や価格に合わせたラインナップが展開されている。
以下に示すように、現状では上から下まで6種類のノートPCが展開されている。VAIOの製品は数が絞られており、ラインナップの分かりやすさが、製品の選びやすさにもつながっている。この中でもVAIO F14とVAIO F16は、これまで同社に欠け気味だった普及価格帯のノートPCとして、VAIOシリーズに新しく加わった注目の存在だ。
VAIO SX12 / VAIO SX14
「VAIO SX12」と「VAIO SX14」は、VAIOが“ハイエンドクラス”に位置付けるSXラインの最新鋭モバイルノート製品。12.5型ワイドと14.0型ワイドの2種類が用意されており、質量1kg前後と軽量かつ、カーボン天板を使用した頑健さなどが特徴。ビジネスパーソン御用達のスペックがウリとなっている。
VAIO S13 / VAIO S15
「VAIO S13」は13.3型ワイドで、「VAIO S15」は15.6型ワイド。それぞれVAIOが“アドバンスト”と位置付けるミドルレンジクラスのノートPCとなる。
VAIO S13はアスペクト比が16:10のWUXGA(1,920×1,200ドット)液晶ディスプレイを採用しつつ、デュアルSIMにも対応。質量は約1kgでモバイルノートとしての性格が強い製品。同じモバイルノートであるVAIO SX12よりもコストを抑えることができる。
VAIO S15は、15.6型ワイドの大画面を生かした据え置きタイプの製品で、Core Hシリーズの高性能プロセッサを採用。ディスプレイは4K HDR液晶を選んだり、メインストレージのSSDに加え、セカンダリドライブとしてHDDを搭載したりできるほか、光学ドライブも装備。ほかのVAIOノートとは違った拡張性がある。
VAIO F14 / VAIO F16
「VAIO F14」と「VAIO F16」は“スタンダード”として位置付けられており、VAIOが「PCの定番」を目指したノートPC。VAIO F14は16:9の14.0型ワイド液晶を、VAIO F16は16:10の16.0型ワイド液晶を採用する。両製品とも13万円台から購入可能というリーズナブルな価格設定の製品だが、上位モデル譲りの静音キーボードや各種生体認証、AIノイズキャンセリング機能などが継承されていて、実用十分なスペックだ。