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たった3分であなたもVTuber!でも、いたってマジメなNEC PCの意欲作「LAVIE NEXTREME Infinity」

LAVIE NEXTREME Infinity

 「誰でも簡単にVTuberになれる」ことで本誌ニュースでも話題になったNECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の「LAVIE NEXTREME Infinity」。PC-9801生誕40周年を機に登場した、ハイパフォーマンスな据え置き向け16型ノートPCの新シリーズだ。最新のスペックに加え「VTuber対応」という飛び道具も備えたこのモデルがどんな実力を秘めているのか、確かめてみたい。今回はメーカーからお借りした店頭販売(カタログ)モデルをベースにレビューする。直販価格は22万880円から。

複雑な設定なしに「バ美肉」完了

 なんと言っても気になるのは、「VTuberになれる」機能がどういうものかだろう。LAVIE NEXTREME InfinityのハードウェアスペックがVTuberに最適化されている……わけではないが、初心者がVTuberとしてデビューするにあたり、最短でそれを達成できるようにするコンテンツや工夫が組み込まれている。

 まずWindowsのスタートボタンをクリックすると、「ゼロからはじめる、VTuberゲーム実況はじめてガイド」というアイコンが目に入る。これをクリックするとWebブラウザが起動しNEC PCの特設サイトが表示される。この特設サイトではVTuberになるために必要な手順を詳しく解説しており、それに沿って操作を進めていけば簡単にVTuberデビューできる、という仕組みだ。

スタートメニューにある「ゼロからはじめる、VTuberゲーム実況はじめてガイド」をクリック
Webブラウザが起動し、VTuberになるための手順を紹介する特設サイトが表示される

 大まかな手順は、自分の姿をCGアバターに置き換えるソフト「3teneFREE」を実行し、次に自分の声をアニメ声風などにリアルタイム変換できる「Voidol2」を起動して好みの声に設定、最後に録画・配信用ソフトの「OBS Studio」をインストール&実行する、という流れになる。

必要な手順は大まかに3ステップ

 「3teneFREE」と「Voidol2」はプリインストールされている。「3teneFREE」はもともと無料で利用できるが、「Voidol2」は有償版(通常価格1万3,200円)と同等の機能をもつため、追加料金不要でフルに使えるのはおトクだ。特設サイトでは、この2つのアプリケーションをWebサイト上のボタンクリックで起動できるようになっているので迷うことがない。

ボタンをクリックすると、プリインストールされた「3teneFREE」や「Voidol2」が起動する
「3teneFREE」が起動したところ
必要な設定は画面右上隅にあるトラッキング設定で、フェイストラッキングとリップシンクを「開始」するだけ
続いて「Voidol2」を起動
ここでは音声入出力デバイスを必要に応じて変更する。「Output」はヘッドフォンを指定した方がよさそう

 「OBS Studio」も、同じくWebサイト上のボタンクリックですぐにインストールが始まり、初期設定された状態で起動できる。この「初期設定されている」というのがミソで、本来ならシーンやソースの設定をしなければ使い始められないところ、最初から「VTuberでゲーム配信」するのに適したシーン・ソース設定がなされているため、手間を大幅に省ける。

「OBS Studio」はバックグラウンドでインストールされ、起動する
最初からシーンとソースが設定され、アバター表示やVoidol2による音声入力も設定済み。あとはゲーム画面などを表示させるだけ

 アバター表示やVoidol2による音声入力も設定済みなので、ユーザーが追加ですべきことはゲームの起動と、そのゲーム画面が表示されるように一部設定を変えることくらい。ただし、特設サイト上の操作手順の説明範囲は「OBS Studioで録画」するところまでなので、YouTubeなどでライブ配信するには「よくある質問」などを参考に配信設定を行なう必要がある。

ライブ配信するための方法は「よくある質問」で知ることができる

 アバター表示や音声変換をしたうえで配信するには、このように複数のアプリケーションを組み合わせなければならず、操作や設定はどうしても煩雑になるものだ。けれど、LAVIE NEXTREME Infinityであれば特設サイトの案内通りに操作・設定していくことで、実にあっさりと「バ美肉」が完了してしまう。記事タイトルにある「3分」というのは大げさに思えるかもしれないが、「OBS Studio」で自分のアバターを表示・録画するところまでであれば、本当に3分でできてしまうはずだ。

 そんなわけで、実際に筆者もLAVIE NEXTREME Infinityを使ってVTuberになってみた。自分の本当の顔や声ではなく、かわいらしいアバターと女性の声に変換されているためか、いつもより思い切ってしゃべれるように思う。服装や照明など見た目を気にする必要もないので気楽だ。なんだか新しい趣味に目覚めそうな……。

VTuberになってみた。今回、背景はゲームではなくあえてPC Watchにしている
LAVIE NEXTREME InfinityでVTuberになってみた

 ただし、これらの処理にはかなりのPC負荷がかかる。「3teneFREE」はカメラ解像度を320×240ドットとし、「Voidol2」は「Synth」を選択して、「OBS Studio」ではフルHD 60fps(背景はWebブラウザのページ表示)の録画設定とした場合、CPUが20%前後、GPUが60%前後の占有率となった。

 この状態からさらに本格的な3Dゲームを同時にプレイしながら、というのは厳しい。ゲームはほかのマシンで動かし、その映像を別途キャプチャ機器で取り込んで録画・配信するのが現実的なスタイルになりそうだ。

VTuberの設定をしたときのPC負荷はご覧の通り。ここでさらにゲームをプレイするとなるとなかなか厳しい

 ちなみに「3teneFREE」では、内蔵Webカメラの映像をもとにした頭部の動きと上半身の傾き、それとカメラ映像や音声をもとにした唇の動き(リップシンク)をアバターに反映可能。VTuberへの第一歩としては十分な機能があると言える。本格的にVTuber活動を広げていくのであれば、腕などの身体の動きもリアルタイムでアバターに反映させられる専用ハードウェアを追加したり、有償版アプリケーションにステップアップしたりすることも検討したい。

Arc A570Mに、4K超の有機ELディスプレイ搭載

シンプルな背面デザイン

 今回試用した型番「XF950/GAB」のカタログモデルは、CPUに第13世代Core i7-13700H(14コア/20スレッド、最大5GHz)を、GPUにCPU内蔵のIris Xe Graphicsを採用し、さらにディスクリートGPUのArc A570M(メモリ8GB)も搭載する。メモリは16GB、ストレージは1TB SSD(PCIe 4.0 x4接続)となっている。

【表1】LAVIE NEXTREME Infinity(XF950/GAB)の主な仕様
LAVIE NEXTREME Infinity(XF950/GAB)
OSWindows 11 Home
CPUCore i7-13700H
(14コア/20スレッド、最大5GHz、Processor Base Power 45W)
GPUIris Xe Graphics
Arc A570M(GDDR6 8GB)
メモリ16GB(DDR5-4800)
ストレージ1TB SSD(NVMe/M.2 SSD、PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ16型有機ELディスプレイ(3,840×2,400ドット、60Hz)
インターフェースThunderbolt 4、USB 3.1×2、HDMI出力、SDXCカードスロット、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1、Gigabit Ethernet
WAN-
カメラ有効約200万画素(1080p)
セキュリティ顔認証(Windows Hello対応)
サウンドステレオスピーカー(2W×2)
キーボード103キーJIS標準配列キーボード
バッテリ駆動時間約9.7時間
充電時間約2時間
同梱品ACアダプタ(最大230W)
サイズ約359.8×254.1×19.9~30.9mm
重量約2.5kg
カラーアルマイトブラック
直販価格22万880円から
ディスクリートGPUとしてArc A570Mを搭載

 使用するGPUについては、処理内容やPC負荷などに応じて自動でCPU内蔵かディスクリートGPUかが選択されるようだ。常にディスクリートGPUを使用する、といったように明示的に設定する手段は本機では今のところ用意されていない。アプリケーションレベルで実装されているものについてはGPUの選択が可能だ。

 ディスプレイは16型の有機ELで、一般的な4Kモニターより縦に広い3,840×2,400ドットの高解像度となっている。DCI-P3の色空間を100%カバーする広色域ディスプレイでもあり、写真や動画を鮮やかに映し出してくれる。ただしリフレッシュレートは60Hzのため、高リフレッシュレートが求められるアクション性の高いゲームは不利かもしれない。

DCI-P3 100%の鮮やかな発色

 インターフェースにはThunderbolt 4と、USB 3.1×2、HDMI出力、Gigabit Ethernet、そしてSDXC対応カードスロット、ヘッドセット端子を装備する。もちろん無線LANはWi-Fi 6Eにも対応。ディスクリートGPUを搭載していることもあり、電源専用端子に接続可能な最大230W出力のACアダプタが付属する。Thunderbolt 4はUSB PDによる給電にも対応するが、パフォーマンスをフルに発揮するには電源端子からの給電が不可欠だ。

右側面にSDカードスロット、USB 3.1、Thunderbolt 4、Gigabit Ethernet
左側面にHDMI、USB 3.1、ヘッドセット端子
電源専用端子に接続する最大230W出力のACアダプタ

 内蔵Webカメラは1080p画質で、Windows Helloの顔認証に対応する。人感センサーも内蔵しており、PCから離れたときに自動で画面を消灯したり、近づいたときに自動で画面をオンにしたり、といった設定も可能だ。

 また、Webカメラの横には独自の「バイオレットライト」も用意されている。自然光に含まれる波長の光を発することで近視の進行を抑制する、というものだが、こればかりは長期間継続使用しないと効果の有無は分からないだろう。

内蔵Webカメラは物理的なプライバシーシャッターを備える(左がシャッター無効時、右が有効時)
人感センサーにより離席と着席のタイミングで画面の自動消灯・点灯が可能
「バイオレットライト」は「F11」キーでオンオフ
「バイオレットライト」オンの状態。Webカメラはシャッターを閉じる必要がある

シリンドリカルステップスカルプチャキーボードを採用

整然と並ぶキーボードレイアウト

 16型クラスのノートPCとして見ると、以上の性能や装備類はハイスペック寄りではあるものの、決して特徴的というほどではない。ただ、筐体やキーボードにはユニークな点がある。ノートPCとしては珍しく「シリンドリカル」かつ「ステップスカルプチャ」なキーボードを搭載しているのだ。

 キートップ中心部がわずかに凹んだ「シリンドリカル」となっているのに加え、キーボード全体を横から見たときには1列ごとに高さが異なる「スカルプチャ」になっていることが分かる。さらに、手前側から奥側にかけて筐体自体の厚みを増すことでキーボードを「ステップ」状にしている。高級メカニカルキーボードに近い構造とすることでタイピングのしやすさを向上させているわけだ。

キー1つ1つが凹んでいる「シリンドリカル」なキートップ
1列ごとに高さと角度を変え、全体的に凹状にすることで「スカルプチャ」に
筐体の奥側ほど厚みを増して「ステップ」状にしている

 原稿執筆などに使用してみたところでも、これまでのノートPCにない打ち心地を実感できた。特に奥行き方向の指の移動が少なく感じられる点はステップスカルプチャの恩恵だろう。いったんホームポジションに手を置けば、最小限の指の動作で快適にタイプしていける。ただし、内部のスイッチはメンブレンのようだ。静音ではあるものの、一般的なメカニカルキーボードほどのストロークはない。

Fnキーは左手前隅にある。見た目としては分かりやすいが、ここをCtrlキーの場所として認知しているユーザーはちょっと戸惑うかも

 タッチパッドはこのクラスのノートPCにしては小さめ。外付けマウスを利用するユーザーが多いことを見越しているのかもしれないが、個人的にはもう少し大きめにしてもよかったのでは、と感じなくもないところだ。

タッチパッドは小さめ。16型クラスということもあるので大きめサイズを期待してしまう

ベンチマークではGeForce RTX 4060搭載機にも迫る場面も

 最後にベンチマークテストでPC性能もチェックしてみよう。いずれのテストもインテルのWebサイトからダウンロードした最新のグラフィックスドライバをインストールしたうえで実行している。というのも、標準インストールのドライバでは「サイバーパンク2077」の起動に失敗したためだ。

 また、最新ドライバでも「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で時々画面がコマ送りになる不具合らしき現象が発生している。Intel Arcシリーズはまだ出始めてそれほど時間がたっておらず個別のゲームに最適化されていないところもある。常に最新のドライバに更新しつつ使いたい。

 とはいえ性能については未知数のところも少なくないArc A570Mということで、特に3D周りのパフォーマンスが気になるところ。今回はいくつかのベンチマークで他社16型ノートPC(Core i9-13900H、GeForce RTX 4060 Laptop GPU)とのスコアとも比較してみることにした。結果から言うと、全体的に見ればかなり健闘している。

【表2】試用機の主な仕様
LAVIE NEXTREME Infinity (XF950/GAB)比較用PC
CPUCore i7-13700H
(14コア/20スレッド、最大5GHz、Processor Base Power 45W)
Core i9-13900H
(14コア/20スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 45W)
GPUIris Xe Graphics
Arc A570M(GDDR6 8GB)
Iris Xe Graphics
GeForce RTX 4060 Laptop GPU
メモリ16GB(DDR5-4800)16GB(DDR5-4800)
ストレージ1TB(NVMe/M.2 SSD、PCIe 4.0 x4)512GB(NVMe/M.2 SSD、PCIe 4.0 x4)
「Cinebench R23」の結果
「PCMark 10 Extended」の結果
「3DMark」の結果

 「PCMark 10」では、「Gaming」以外の項目で比較用PCと同等かわずかに超えるスコア。「Gaming」関連の項目はさすがに劣るものの、それでも3割減程度でそこそこのパフォーマンスを見せている。バッテリによる稼働時間はスペックシート上は約9.7時間。今回のベンチマークテストでは5時間余りで、据え置き前提の16型にしてはスタミナが高めだ。

 「3DMark」では「Time Spy」と「Time Spy Extreme」が比較用PCを超えるスコアを叩き出している。しかし、「Fire Strike」はなぜか「Ultra」だけが好成績で、対して「Night Raid」は4割減のスコアとなっているなど、テスト項目によって最適化にばらつきがあるように感じられる。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果
「サイバーパンク2077」のベンチマークモードの結果

 「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」は、フルHD解像度の結果を見ると、比較用PCとほぼ同等のパフォーマンスを発揮している。ディスプレイ解像度そのままでのプレイは、画質を落とせば許容範囲内になりそうだ。ただし先述の通り、ベンチマーク途中で画面が時々コマ送りになる現象が発生しているため、実プレイにおいてもぎこちない動きになるタイミングがあるかもしれない点は頭に入れておきたい。

 「サイバーパンク2077」のような重量級のゲームソフトでは力不足を感じる。画質「低」でなんとか遊べるかな、といったところだが、やはり快適ではないだろう。レイトレーシングにも対応しているとはいえ、ゲームを楽しむ目的には合わないようだ。

「CrystalDiskInfo」による内蔵SSDの情報
「CrystalDiskMark」による内蔵SSDのベンチマーク結果
「CrystalDiskMark」によるSDカードスロットのベンチマーク結果(UHS-II規格SDカード使用時)

 「CrystalDiskMark」は内蔵SSDとSDカードスロットの両方を対象にテストした。内蔵SSDはリード・ライト性能ともに高く、PCIe 4.0 x4接続のなかでも比較的ハイスペックなものを使用していると考えられる。SDカードスロットについてはUHS-II規格(リード最大300MB/s)のSDカードを使用した結果だが、こちらも260MB/s超となかなか優秀だった。

意欲的な製品で性能十分、だけれどゲームには物足りない?

 これまでほかのメーカーがあまりフォーカスしてこなかった「VTuber」に1つの力点を置いたノートPCというのは、斬新ではあるし、それに必要な設定などを簡単に行なえる工夫もうまくハマっている。VTuberになるために何が必要なのかという前提知識がない人でも、スムーズに「バ美肉」を達成できるだろう。筐体側でシリンドリカルステップスカルプチャキーボードを採用していることとあわせ、意欲的な製品に仕上がっているという印象を受ける。

 GPUにArc A570Mを搭載していることについても、今のところまだイレギュラー感が少々あるものの、性能的には十分満足できるレベルだ。ディスクリートGPUを搭載しながらも「ゲーム向け」と言い切れないのは歯がゆいものの、ビジネス用途で活躍し、一歩進んだエンタメ用途でも楽しませてくれる新たなシリーズの誕生を歓迎したい。