買い物山脈
旧MacからM1版MacBook Proに買い換えたらどれくらい快適になるのか?写真のプロが使い比べてみた
2022年6月7日 06:35
- 製品名
- 14.2インチMacBook Pro(M1 Max)
- 購入価格
- 40万9,800円
- 購入時期
- 2022年1月22日
- 使用期間
- 約4カ月
私はパソコン創世記からPC系雑誌の撮影を担当し、カメラマンの中では早くからデジタル化に対応してきた。最初に買った仕事向けのノートPCはVAIO-505で、他社よりもデザインが良かったということもあり、気に入って4台続けて買い替えてきた。
そのうちデジタル一眼レフカメラがノートPCと直接つながるようになり、撮影した写真がすぐさまPCに転送され、PCの大きな画面上で確認できるようになった。撮った写真をその場でクライアントにチェックしてもらったり、簡単な画像補正を行なうなど、現場での重要性が高まったわけだ。
ただ、広告企画などでメーカーが立ち会う場合に、競合先の製品を使っていると、相手にあまり良い印象を与えない。そのため、当時としてはカメラマンを含めたクリエイター=Macという風潮が強くあったことから、いつしか当たり障りのないMacを使うようになっていた。
今回のM1 Max搭載MacBook Proに乗り換えるまでは、2016年の12月に購入した13インチのCore i7搭載MacBook Proを使っていた。とは言え、5年選手ともなると非力さが目立ち、現場での画像処理が多くなったときの効率の悪さや、動画編集で使うAdobe Premiere Proの重たさがストレスになっていた。加えて昨年あたりから、カメラとWi-Fiでつながらなくなったりとトラブルが起きがちだったので、速い速いと話題になっていたM1版MacBook Proの購入へと至ったわけだ。
ここでは、写真撮影という仕事において、M1版MacBook Proが如何に大きな変化をもたらしているかを見せていきたい。
まずは新旧MacBook Proで見た目などを比べてみる
M1版MacBook Proの性能について見ていく前に、まずは私の作業環境を紹介しよう。現場への持ち運び用としてMacBook Proを活用してはいるが、自宅にあるメインマシンは実はWindows搭載の自作PCだ。
現場ではMacBook Pro、自身のスタジオで作業する場合もMacBook Pro、そして自宅で作業する場合はWindows機という塩梅だ。現像アプリ等はMacと同じものが使えるので、OSをまたいでも大きな問題にならないのである。
ただし、これから説明していくようにM1版MacBook Proが速すぎるせいで、Intel版MacBook Proよりも高速だった自宅のWindowsマシンの役割が霞んできてしまっているのは興味深い。
M1版MacBook Pro | Intel版MacBook Pro | 自作PC(Windows 10) | |
---|---|---|---|
購入日 | 2022年1月21日 | 2016年12月 | 2017年 |
CPU | M1 Max | Core i7 (3.3~3.6GHz) | Core i7-7700K (4.2~4.5GHz) |
GPU | M1 Max (32コアGPU) | Iris Graphics 550 | Radeon RX 5500 XT |
メモリ | 64GB | 16GB | 48GB |
メインドライブ | 1TB | 1TB | 1TB |
ディスプレイ | 14.2インチ (3,024×1,964ドット) | 13インチ (2,560×1,600ドット) | EIZO ColorEdge CS2740 (3,840×2,160ドット) |
購入時の価格 | 40万9,800円 | 28万8,800円 | 不明 |
M1版MacBook Proは14.2インチなので一回り大きい。液晶面は実測でIntel版MacBook Proが287×178mm、M1版MacBook Proは301×196mmと、M1版MacBook Proの面積は広くほんの少しではあるが使いやすさが増している。ベゼルが細くなり内蔵カメラ部分が上部のメニューバーの一部を占有しているデザインだ。
M1 Max搭載MacBook Proの性能を比較
それでは、上の表で示したM1版MacBook Pro、Intel版MacBook Pro、Windows PCの性能を比較していこう。
OSの起動速度
まずはOSの起動速度からだ。シャットダウン状態から電源を入れ、デスクトップ画面が出るまでの時間を計測した。
Windows PCは当然OSが異なるため、単純にmacOSとは比較できないが、ほかに多くのストレージなどをぶら下げているということもあり、余分に時間がかかっている可能性はある。Macだけで言えば、M1版MacBook ProはIntel版よりも6秒速い結果となり、最新世代のSSDの高速アクセスが生かされている印象だ。
Camera RawでRAWデータを開く速度
次は、写真のRAWデータを開く速度を比較するために、PhotoshopのCamera Rawでファイルを開く際の時間を測定した。
予想外にIntel版MacBook Proが善戦していた。Windows PCが遅いのは、システムドライブがPCI Express接続のNVMe SSDではなく、SATAのSSDであるためだろう。
RAW現像の速度
さらに、RAW現像で調整を行ない、Photoshop上で画像が開かれるまでの時間を計測した。
動画を見れば分かるが、M1版MacBook ProのRAW現像は本当に一瞬である。調整項目は少なめではあるが、ほかのマシンと比較してたった1枚の現像でこれだけの差が出るのは驚きだ。
Premiere Proでのプロジェクトファイルの展開速度
Adobe Premiere Proのプロジェクトファイルを開く際に、プロジェクトがきちんと表示されるまでの時間を計測してみた。
ここでは、Intel版MacBook Proがかなり弱いことが分かる。Intel版MacBook Proのストレージ自体の速度は、OSの起動時間の比較などから悪くないと分かっているので、CPUの能力差が顕著に出ているのだと思われる。いずれにしてもM1版MacBook Proは10秒を切る圧倒的速さを見せつけていた。
Premiere Proでのエンコード速度
Premiere Proでのエンコードは、1分のプロジェクトで試してみたが、プロジェクトファイルを開く速さを比較した上のグラフと同じく、Intel版MacBook Proがもっとも遅い結果となった。
普通はもっと長めのプロジェクトをエンコードするわけだが、短い動画ですでにこの差がついているのは圧倒的と言える。
旧MacBook Proとディスプレイの画質を比較してみる
Macのディスプレイは昔から綺麗だと言われており、多くの映像関係者が使っている。ただ、過去にさまざまなディスプレイの画質を評価する仕事をしていた時に、その階調性や輝度ムラなどを検証してみると、見た目は綺麗ではあるものの、正直トップレベルとは言えない品質だった。
実際に、これまで使ってきたIntel版MacBook Proの画面上では、絶対の自信を持って画質調整はできなかったので、最終的な調整はEIZOのColorEdgeで行なっていた。
しかし、今回購入したM1版MacBook Proをチェックしてみると、なかなか暗部や明部の階調性が良くなっていることが分かった。
以下がその結果で、左がIntel版MacBook Pro、右がM1版MacBook Proの画面を撮影したものだ。なお、Intel版MacBook Proは使用年数が長いこともあり、購入時からのベストパフォーマンスが出ていないであろうことに注意されたい。
写真を通してみると分かりづらいが、実際並べて直視するとM1版MacBook Proの暗部はRGBで(10.10.10)まで階調が分かるがIntel版MacBook Proは(20,20,20)がなんとか分かる程度だ。明部はどちらも最後まで階調が残っている。色のグラデーションも途中からの落ち込みがIntel版MacBook Proの方が大きいようだ。
次に、グレーRGBで(150,150,150)を表示させてカメラはデイライト(5650K)設定で撮影した。見ての通り、M1版MacBook Pro(右)はややY寄りだが均等なグレーだ。それに比べてIntel版MacBook Pro(左)はBが強くCにも振れている。並べてみるとあまりにも色が違いすぎる。
上記の写真の明るさを揃えてグレースケールに変更。それをトーンカーブで極端なコントラストにしてみた。これによりわずかなムラも大きく見えるようになるのだ。その結果は見ての通りIntel版MacBook Proのムラは酷い物だ。それに比べて極端なコントラストにもM1版MacBook Proのムラはわずかな高性能ディスプレイであることが分かる。
M1版MacBook Proの画質はMacのホームページに書いてある「Liquid Retina XDR。ノートブック史上最高のディスプレイ」というだけあって階調性から彩度そしてムラも少なく予想以上の結果だった。輝度調整で中間ぐらいのほどよい明るさを中心に明るさを前後させても暗部や明部の階調性は保たれている。
自宅やスタジオのPCでの画像調整はハードウェアキャリブレーションのできるEIZO「ColorEdge CS2740」なので、Photoshopでのレタッチなどは問題ないが、Premiere Proでの作業や、いろいろな作業効率を考えると、M1版MacBook Proの効果はてきめんだ。
M1版MacBook Proはカメラマンの欠かせないツールに
M1版MacBook Proは14.2インチで、13インチのIntel版MacBook Proよりもやや重く大きくなり、携帯性は少し損なわれているが、そんなの関係ない! カメラマンにとってはストレスなく仕事ができるスピードの方が圧倒的に優先度が高いからだ。
これからコロナ禍という状況がさらに落ち着きを見せ、日本や世界を気軽に飛び回れる日常が戻ってくることを考えれば、現地から最高の状態に整えた写真データを即座に送ることができるM1版MacBook Proは、現状で最良の選択肢と言えるだろう。今回最新のM1版MacBook Proを購入し、もはやカメラマンにとってM1版MacBook Proは、カメラの次に予算をかけるべき欠かせないツールであると確信した。