Hothotレビュー
名より実を取ったM2 MacBook Pro 13インチ版。性能を重視ならAirよりもやはりこっち
2022年9月14日 06:13
Appleは「M2」チップを搭載した13.3型ノートPC「MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)」を6月24日に発売した。価格は17万8,800円から。
本製品は前世代と同じデザインを踏襲しているものの、以下の関連記事にあるように、以前レビューした「MacBook Air (M2, 2022)」とは異なり冷却ファンが搭載されており、現時点のM2搭載機の中で最も高い性能を発揮することが期待できる。
今回のレビューは製品発売から長い時間が経ってしまっているので、MacBook Airとの性能の違いなどについて注目してご覧いただければ幸いだ。
色褪せないフォルムのボディ、Webカメラは720pで据え置き
MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)は、OSにmacOS Monterey 12.4、SoCにM2を採用。メモリは8GB/16GB/24GB、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TBのSSDを搭載できる。
ディスプレイは13.3型IPS液晶(2,560×1,600ドット)を採用。オーディオ機能はステレオスピーカーと3アレイマイクを内蔵している。
インターフェイスはThunderbolt 3/USB4×2(充電+DisplayPort対応)、3.5mmヘッドフォンジャックを装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.0をサポートしている。
本体サイズは304.1×212.4×15.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.4kg。58.2Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大17時間のワイヤレスインターネット、最大20時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。
デザインが前世代から変更されていないということで新鮮味はなく、ディスプレイのベゼルの太さにやや野暮ったさは感じるものの、ボディ自体は優美なフォルムだ。また個人的には、Escキーが物理キーとして独立したあとのタッチ対応有機ELディスプレイ「Touch Bar」は使い勝手がいいと感じている。特にディスプレイの輝度や、スピーカーのボリュームをスライドで素早く調整できるのは非常に便利だ。
その一方、据え置きとなったスペックの中で残念なのが720pのWebカメラ。ビデオ会議の重要性が高くなっている現在だからこそ、「MacBook Air (M2, 2022)」と同等の1080pのWebカメラを搭載してほしかったところだ。
MacBook Pro (13-inch, M2, 2022) | MacBook Air (M2, 2022) | |
---|---|---|
OS | macOS Monterey 12.4 | |
SoC | Apple M2 8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4) 10コアGPU 16コアNeural Engine M1より50%高い100GB/sのメモリ帯域幅 | Apple M2 8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4) 8コアまたは10コアGPU 16コアNeural Engine M1より50%高い100GB/sのメモリ帯域幅 |
メモリ | 8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5) | |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB/2TB SSD | |
ディスプレイ | 13.3型IPS液晶 (2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応) | 13.6型IPS液晶 (2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応) |
オーディオ | ステレオスピーカー、3アレイマイク | 4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 | |
インターフェイス | Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB4接続時最大40Gb/s、USB 3.1接続時最大10Gb/s)、3.5mmヘッドフォンジャック | MagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB4接続時最大40Gb/s、USB 3.1接続時最大10Gb/s)、3.5mmヘッドフォンジャック(ハイインピーダンスヘッドフォン対応) |
カメラ | Webカメラ(720p) | Webカメラ(1080p) |
バッテリ容量 | 58.2Wh | 52.6Wh |
バッテリ駆動時間 | 最大17時間のワイヤレスインターネット 最大20時間のApple TVアプリのムービー再生 | 最大15時間のワイヤレスインターネット 最大18時間のApple TVアプリのムービー再生 |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 304.1×212.4×15.6mm | 304.1×215×11.3mm |
重量 | 約1.4kg | 約1.24kg |
セキュリティ | Touch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン) | |
同梱品 | 67W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m) | 30W USB-C電源アダプタまたはデュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m) |
カラー | シルバー、スペースグレイ | シルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイト |
MacBook Pro (13-inch, M2, 2022) | MacBook Air (M2, 2022) ※8コアGPU | MacBook Air (M2, 2022) 10コアGPU | |
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メモリ8GB/SSD 256GB | 17万8,800円 | 16万4,800円 | 20万8,800円 |
メモリ16GB/SSD 2TB | 31万8,800円 | 30万4,800円 | 32万800円 |
メモリ24GB/SSD 2TB | 34万6,800円 | 33万2,800円 | 34万8,800円 |
キーボードの打鍵感は良好、打鍵音は低め。ディスプレイはプロクオリティ
M2 MacBook Proのキーボードは、キーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.1mm前後。キー構造はパンタグラフ方式。特に前世代からアップデートは実施されていないようだ。
薄型ノートブックのなかでもM2 MacBook Proのキーボードは薄い部類に入るが、打鍵感は良好。また、底打ちするほど強く叩いても打鍵音は低く抑えられている。フィーリング自体はThinkPadなどとは別物だが、本製品もノートブック用キーボードとしては上質であり、フルスピードで快適にタイピングできると筆者は感じている。
Apple製品のディスプレイは、DCI-P3の色空間に準じて定義されたP3(Display P3)と謳われている。カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で計測したところ、sRGBカバー率は100%、sRGB比は134.2%、AdobeRGBカバー率は88.2%、AdobeRGB比は99.5%、DCI-P3カバー率は98.9%、DCI-P3比は98.9%と、液晶ディスプレイとしては非常に広い色域を確認できた。
「Pro」の名にふさわしく、プロフェッショナルクオリティのクリエイティブワークにも活用できるディスプレイと言える。
スピーカーは前世代と同じく2基構成のステレオスピーカーということで、スペック上は4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)構成のM2 MacBook Airより見劣りする。
しかし、実際に聞き比べてみるとキーボード奥のヒンジ部にスピーカーを内蔵したM2 MacBook Airより、キーボード左右の特等席にスピーカーを設置しているM2 MacBook Proのほうが臨場感は高いと感じた。少なくとも2基構成のステレオスピーカーであることを理由に、M2 MacBook Proを避ける必要はないと思う。
スペック解説の際に、Webカメラが1080pではなく、720pに据え置かれたのは残念だとお伝えしたが、明るさや発色という点では室内灯下でもまったく不満はない。画像処理ソフトウェアのチューニングに、iPhoneで蓄積されたノウハウが生かされているのだろう。
なお、2022年秋リリース予定の「macOS Ventura」では、iPhoneのカメラをMacのWebカメラとして利用できる「連携カメラ」機能が実装されている。それを考えればなおさら、M2 MacBook ProのWebカメラが720pであっても、大きなマイナスポイントとはならないだろう。
冷却ファンを搭載したM2 MacBook Proはピークパワーを長時間発揮
最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。M2 MacBook Airのレビュー記事では、M1搭載MacBook Airと性能を比較したが、今回はM2 MacBook ProとM2 MacBook Airの違いを見ていこう。
なお、M2 MacBook Proは10コアGPU搭載M2、16GBメモリ、1TBストレージ、M2 MacBook Airは10コアGPU搭載M2、8GBメモリ、512GBストレージと、メモリとストレージ容量が異なっている点には留意してほしい。
まずCPU性能だが、Cinebench R23のMulti CoreでM2 MacBook Proが8,743、M2 MacBook Airが8,595と大きな差は見られなかった。しかしMulti Coreを連続10分間実行すると、M2 MacBook Proが8,676、M2 MacBook Airが7,937と前者が約109%相当のスコアを記録した。冷却ファンを搭載したM2 MacBook Proのほうがピークパワーを長時間発揮できることは間違いない。
Geekbench 5.4.2についてはすべてのテストでM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回っているものの、その差はわずかだ。とはいえ、比較的短い時間のベンチマークであっても、冷却ファンは効果を発揮していると言えそうだ。
GFXBench Metalについてもほぼすべての項目でM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回るスコアを記録した。特に、1440p Aztec Ruins (High Tier) Offscreen、1080p Car Chase Offscreen、1440p Manhattan 3.1.1 Offscreen、1080p Manhattan 3.1 Offscreen、1080p Texturing Offscreenでその差が大きく開いている。
その一方でTexturingだけは、なぜかM2 MacBook Proのスコアが下回ってしまった。複数回実行してもM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回ることはなかったのでそのままスコアを掲載するが、あくまでも参考値として捉えていただきたい。
興味深い結果となったのがストレージベンチマーク。Blackmagic Disk Speed TestとAmorphousDiskMark 4.0のどちらでも、明らかにM2 MacBook Airのほうがライト性能は低いのだ。なおM2 MacBook Airのレビューでも、M1 MacBook Airよりライト性能が下回っていた。M2 MacBook Airのみ、性能の異なるストレージが採用されている可能性が高い。
実際のアプリでは「Adobe Lightroom Classic」、「Adobe Premiere Pro」、「iMovie」で高負荷な処理にかかる時間を計測したが、LightroomでのみM2 MacBook ProがM2 MacBook Airの約53%の所要時間で処理を終えた。今回のM2 MacBook ProはM2 MacBook Airの2倍の16GBメモリを搭載し、先のベンチマークでストレージのライト速度が速いことも分かっている。この2つの要因で、Lightroomでは処理時間が大きく開いた可能性がある。
カタログスペックのバッテリ駆動時間はM2 MacBook ProのほうがM2 MacBook Airより長いが、YouTubeを連続再生する今回のベンチマークではわずかではあるが結果が逆転しまった。バッテリの製造上の個体差が、カタログスペックを逆転させる原因になったのかもしれない。とはいえM2 MacBook Proも19時間36分と、Appleシリコンの低消費電力性能を証明する結果を残している。
M2 MacBook Proは名より実を取る方に魅力的な通好みのモデルだ
個人的に惜しく感じているのがインターフェイス周り。14インチと16インチのMacBook ProにはHDMIやSDXCメモリーカードスロットが搭載されている。同じく「Pro」を冠しているだけに、今回のM2 MacBook ProにもせめてSDXCメモリーカードスロットだけでも搭載してほしかった。
とは言え、外観は前世代そのままのM2 MacBook Proだが、M2を搭載することでパフォーマンスは着実に向上。冷却ファンを搭載していることでピークパワーを長時間維持でき、またストレージのライト性能もM2 MacBook Airより高い。M2 MacBook Proに派手さはないが、名より実を取る方には魅力的な、通好みのモデルと言えよう。