Hothotレビュー

名より実を取ったM2 MacBook Pro 13インチ版。性能を重視ならAirよりもやはりこっち

Apple「MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)」(17万8,800円から)

 Appleは「M2」チップを搭載した13.3型ノートPC「MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)」を6月24日に発売した。価格は17万8,800円から。

 本製品は前世代と同じデザインを踏襲しているものの、以下の関連記事にあるように、以前レビューした「MacBook Air (M2, 2022)」とは異なり冷却ファンが搭載されており、現時点のM2搭載機の中で最も高い性能を発揮することが期待できる。

 今回のレビューは製品発売から長い時間が経ってしまっているので、MacBook Airとの性能の違いなどについて注目してご覧いただければ幸いだ。

筐体には低炭素アルミニウム、マグネットには100%再生希土類元素、はんだ付けには100%再生スズ、35%以上の複数の部品で再生プラスチックが利用されている

色褪せないフォルムのボディ、Webカメラは720pで据え置き

 MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)は、OSにmacOS Monterey 12.4、SoCにM2を採用。メモリは8GB/16GB/24GB、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TBのSSDを搭載できる。

 ディスプレイは13.3型IPS液晶(2,560×1,600ドット)を採用。オーディオ機能はステレオスピーカーと3アレイマイクを内蔵している。

 インターフェイスはThunderbolt 3/USB4×2(充電+DisplayPort対応)、3.5mmヘッドフォンジャックを装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.0をサポートしている。

 本体サイズは304.1×212.4×15.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.4kg。58.2Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大17時間のワイヤレスインターネット、最大20時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。

本体天面。カラーはシルバーとスペースグレイの2色を用意
本体底面。吸気口や放熱口などもいっさいないスッキリしたデザインだ
ディスプレイは13.3型IPS液晶(2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)を搭載
キーボードは日本語(JIS)、英語などから選べる
本体前面と本体背面
右側面には3.5mmヘッドフォンジャック、左側面にはThunderbolt/USB 4×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB 4接続時最大40Gb/s、USB 3.1 Gen 2接続時最大10Gb/s)を用意
ディスプレイの最大展開角度は実測135度

 デザインが前世代から変更されていないということで新鮮味はなく、ディスプレイのベゼルの太さにやや野暮ったさは感じるものの、ボディ自体は優美なフォルムだ。また個人的には、Escキーが物理キーとして独立したあとのタッチ対応有機ELディスプレイ「Touch Bar」は使い勝手がいいと感じている。特にディスプレイの輝度や、スピーカーのボリュームをスライドで素早く調整できるのは非常に便利だ。

 その一方、据え置きとなったスペックの中で残念なのが720pのWebカメラ。ビデオ会議の重要性が高くなっている現在だからこそ、「MacBook Air (M2, 2022)」と同等の1080pのWebカメラを搭載してほしかったところだ。

【表1】MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)とMacBook Air (M2, 2022)のスペック
MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)MacBook Air (M2, 2022)
OSmacOS Monterey 12.4
SoCApple M2
8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4)
10コアGPU
16コアNeural Engine
M1より50%高い100GB/sのメモリ帯域幅
Apple M2
8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4)
8コアまたは10コアGPU
16コアNeural Engine
M1より50%高い100GB/sのメモリ帯域幅
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ13.3型IPS液晶
(2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
13.6型IPS液晶
(2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
オーディオステレオスピーカー、3アレイマイク4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク
通信Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB4接続時最大40Gb/s、USB 3.1接続時最大10Gb/s)、3.5mmヘッドフォンジャックMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB4接続時最大40Gb/s、USB 3.1接続時最大10Gb/s)、3.5mmヘッドフォンジャック(ハイインピーダンスヘッドフォン対応)
カメラWebカメラ(720p)Webカメラ(1080p)
バッテリ容量58.2Wh52.6Wh
バッテリ駆動時間最大17時間のワイヤレスインターネット
最大20時間のApple TVアプリのムービー再生
最大15時間のワイヤレスインターネット
最大18時間のApple TVアプリのムービー再生
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
304.1×212.4×15.6mm304.1×215×11.3mm
重量約1.4kg約1.24kg
セキュリティTouch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン)
同梱品67W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)30W USB-C電源アダプタまたはデュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)
カラーシルバー、スペースグレイシルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイト
【表2】MacBook Pro (13-inch, M2, 2022)とMacBook Air (M2, 2022)の価格
MacBook Pro
(13-inch, M2, 2022)
MacBook Air
(M2, 2022)
※8コアGPU
MacBook Air
(M2, 2022)
10コアGPU
メモリ8GB/SSD 256GB17万8,800円16万4,800円20万8,800円
メモリ16GB/SSD 2TB31万8,800円30万4,800円32万800円
メモリ24GB/SSD 2TB34万6,800円33万2,800円34万8,800円
製品パッケージ
パッケージには、本体、67W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)、説明書類、ロゴシールが同梱
67W USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブル(2m)。携帯用に1mぐらいのケーブルもあると重宝する
67W USB-C電源アダプタの仕様は入力100-240V~1.65A、出力20.3V 3.3A、15V 3A、9V 3A、5.2V 3A
本体の実測重量は1384g
67W USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブル(2m)の合計重量は実測261.2g

キーボードの打鍵感は良好、打鍵音は低め。ディスプレイはプロクオリティ

 M2 MacBook Proのキーボードは、キーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.1mm前後。キー構造はパンタグラフ方式。特に前世代からアップデートは実施されていないようだ。

 薄型ノートブックのなかでもM2 MacBook Proのキーボードは薄い部類に入るが、打鍵感は良好。また、底打ちするほど強く叩いても打鍵音は低く抑えられている。フィーリング自体はThinkPadなどとは別物だが、本製品もノートブック用キーボードとしては上質であり、フルスピードで快適にタイピングできると筆者は感じている。

キーピッチは実測19mm前後
キーストロークは実測1.1mm前後
キーボードの押圧力は文字キー(Fキー)が0.48N、Enterキーが0.51N、Spaceキーが0.47N
キーボードバックライトは16段階で、きめ細かに調整できる。また環境光に合わせて自動調整する機能も搭載されている
タッチパッドの面積は実測132×82mm(幅×奥行き)

 Apple製品のディスプレイは、DCI-P3の色空間に準じて定義されたP3(Display P3)と謳われている。カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で計測したところ、sRGBカバー率は100%、sRGB比は134.2%、AdobeRGBカバー率は88.2%、AdobeRGB比は99.5%、DCI-P3カバー率は98.9%、DCI-P3比は98.9%と、液晶ディスプレイとしては非常に広い色域を確認できた。

 「Pro」の名にふさわしく、プロフェッショナルクオリティのクリエイティブワークにも活用できるディスプレイと言える。

実測したsRGBカバー率は100%、sRGB比は134.2%
実測したAdobeRGBカバー率は88.2%、AdobeRGB比は99.5%
実測したDCI-P3カバー率は98.9%、DCI-P3比は98.9%
実測でDCI-P3カバー率98.9%の広色域ディスプレイだけに、グラデーションは実に滑らかだ
ほぼ真横からでも画面になにが映っているのか判別可能。ただ表面処理が光沢なので、外光などの映り込みがやや気になる

 スピーカーは前世代と同じく2基構成のステレオスピーカーということで、スペック上は4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)構成のM2 MacBook Airより見劣りする。

 しかし、実際に聞き比べてみるとキーボード奥のヒンジ部にスピーカーを内蔵したM2 MacBook Airより、キーボード左右の特等席にスピーカーを設置しているM2 MacBook Proのほうが臨場感は高いと感じた。少なくとも2基構成のステレオスピーカーであることを理由に、M2 MacBook Proを避ける必要はないと思う。

ステレオスピーカーはキーボード左右の特等席に内蔵されている
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大81.1dB(50cmの距離で測定)

 スペック解説の際に、Webカメラが1080pではなく、720pに据え置かれたのは残念だとお伝えしたが、明るさや発色という点では室内灯下でもまったく不満はない。画像処理ソフトウェアのチューニングに、iPhoneで蓄積されたノウハウが生かされているのだろう。

 なお、2022年秋リリース予定の「macOS Ventura」では、iPhoneのカメラをMacのWebカメラとして利用できる「連携カメラ」機能が実装されている。それを考えればなおさら、M2 MacBook ProのWebカメラが720pであっても、大きなマイナスポイントとはならないだろう。

ディスプレイ上部にはWebカメラ(720p)を内蔵。撮影中はカメラインジケータが緑色に点灯する。プライバシーシャッターは用意されていない
セルフィーアプリ「Photo Booth」で撮影(室内灯のみ)

冷却ファンを搭載したM2 MacBook Proはピークパワーを長時間発揮

 最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。M2 MacBook Airのレビュー記事では、M1搭載MacBook Airと性能を比較したが、今回はM2 MacBook ProとM2 MacBook Airの違いを見ていこう。

 なお、M2 MacBook Proは10コアGPU搭載M2、16GBメモリ、1TBストレージ、M2 MacBook Airは10コアGPU搭載M2、8GBメモリ、512GBストレージと、メモリとストレージ容量が異なっている点には留意してほしい。

 まずCPU性能だが、Cinebench R23のMulti CoreでM2 MacBook Proが8,743、M2 MacBook Airが8,595と大きな差は見られなかった。しかしMulti Coreを連続10分間実行すると、M2 MacBook Proが8,676、M2 MacBook Airが7,937と前者が約109%相当のスコアを記録した。冷却ファンを搭載したM2 MacBook Proのほうがピークパワーを長時間発揮できることは間違いない。

Cinebench R23.200
Cinebench R23.200実行中のキーボード面の最大温度は39.8℃(室温22.4℃で測定)
底面の最大温度は36.4℃
ACアダプタの最大温度は34.6℃
排気口はヒンジ部分に設けられている
Cinebench R23.200実行中の消費電力は平均31W、アイドル時の消費電力は7.57W

 Geekbench 5.4.2についてはすべてのテストでM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回っているものの、その差はわずかだ。とはいえ、比較的短い時間のベンチマークであっても、冷却ファンは効果を発揮していると言えそうだ。

Geekbench 5.4.2

 GFXBench Metalについてもほぼすべての項目でM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回るスコアを記録した。特に、1440p Aztec Ruins (High Tier) Offscreen、1080p Car Chase Offscreen、1440p Manhattan 3.1.1 Offscreen、1080p Manhattan 3.1 Offscreen、1080p Texturing Offscreenでその差が大きく開いている。

 その一方でTexturingだけは、なぜかM2 MacBook Proのスコアが下回ってしまった。複数回実行してもM2 MacBook ProがM2 MacBook Airを上回ることはなかったのでそのままスコアを掲載するが、あくまでも参考値として捉えていただきたい。

GFXBench Metal

 興味深い結果となったのがストレージベンチマーク。Blackmagic Disk Speed TestとAmorphousDiskMark 4.0のどちらでも、明らかにM2 MacBook Airのほうがライト性能は低いのだ。なおM2 MacBook Airのレビューでも、M1 MacBook Airよりライト性能が下回っていた。M2 MacBook Airのみ、性能の異なるストレージが採用されている可能性が高い。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0

 実際のアプリでは「Adobe Lightroom Classic」、「Adobe Premiere Pro」、「iMovie」で高負荷な処理にかかる時間を計測したが、LightroomでのみM2 MacBook ProがM2 MacBook Airの約53%の所要時間で処理を終えた。今回のM2 MacBook ProはM2 MacBook Airの2倍の16GBメモリを搭載し、先のベンチマークでストレージのライト速度が速いことも分かっている。この2つの要因で、Lightroomでは処理時間が大きく開いた可能性がある。

Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し

 カタログスペックのバッテリ駆動時間はM2 MacBook ProのほうがM2 MacBook Airより長いが、YouTubeを連続再生する今回のベンチマークではわずかではあるが結果が逆転しまった。バッテリの製造上の個体差が、カタログスペックを逆転させる原因になったのかもしれない。とはいえM2 MacBook Proも19時間36分と、Appleシリコンの低消費電力性能を証明する結果を残している。

YouTube動画を連続再生した動作時間

M2 MacBook Proは名より実を取る方に魅力的な通好みのモデルだ

 個人的に惜しく感じているのがインターフェイス周り。14インチと16インチのMacBook ProにはHDMIやSDXCメモリーカードスロットが搭載されている。同じく「Pro」を冠しているだけに、今回のM2 MacBook ProにもせめてSDXCメモリーカードスロットだけでも搭載してほしかった。

 とは言え、外観は前世代そのままのM2 MacBook Proだが、M2を搭載することでパフォーマンスは着実に向上。冷却ファンを搭載していることでピークパワーを長時間維持でき、またストレージのライト性能もM2 MacBook Airより高い。M2 MacBook Proに派手さはないが、名より実を取る方には魅力的な、通好みのモデルと言えよう。