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MacBook Airは値下げされたM2世代もイイ。だがM3版には価格差に見合う価値がある。何が変わったのか機能や性能を比較

Apple「13インチMacBook Air」16万4,800円

 Apple M3を搭載した「13インチMacBook Air」(以下13インチMBA)、「15インチMacBook Air」(以下15インチMBA)が3月8日に発売された。M2を搭載したMBAは、13インチが2022年7月15日、15インチが2023年6月13日に販売されたが、M3世代のMBAは基本的にはプロセッサの更新となっており、13インチ、15インチが同時に発売されたわけだ。

 今回は携帯性の高さで人気の13インチを借用したので、実機レビューをお届けしよう。

SoC、Wi-Fi、ディスプレイ接続台数がアップグレード

 13インチMBAは現行製品として、M2とM3を搭載したモデルが販売されている。M2搭載モデルは継続販売であり、標準構成モデルで最大3万円の値下げが実施されている。なお、M2搭載モデルが継続販売されるのは13インチだけで、15インチは販売終了だ(市場在庫を除く)。

 13インチMBAのスペックは、OSにmacOS Sonoma バージョン14.4、SoCにApple M3(8コアCPU、10コアGPU、16コアNeural Engine)を採用。メモリは8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB SSDを搭載している。

 ディスプレイは13.6型IPSパネル(2,560×1,664ドット、光沢)、オーディオは4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイクを採用。ディスプレイ上部には1080p FaceTime HDカメラ(Webカメラ)が内蔵されている。

 インターフェイスはMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、最大40Gbpsデータ転送対応)、3.5mmヘッドフォンジャックを用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3をサポートしている。

 本体サイズは304.1×215×11.3mm、重量は約1.24kg。52.6Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。

 13インチと15インチの主な差分は下記の通り。

【表1】Apple M3搭載MacBook Airの13インチ、15インチの主な差分
13インチ15インチ
画面サイズと解像度13.6型(2,560×1,664ドット)
15.3型(2,880×1,864ドット)
スピーカー4スピーカー
6スピーカー
バッテリ容量52.6Wh
66.5Wh
サイズ304.1×215×11.3mm
340.4×237.6×11.5mm
重量約1.24kg
約1.51kg

 一方、M2世代とM3世代の主な差分は下記の通りだ。

【表2】Apple M2搭載モデルとM3搭載モデルの主な差分
Apple M2搭載モデルApple M3搭載モデル
初期OSmacOS VenturamacOS Sonoma
SoCApple M2Apple M3
Wi-FiWi-Fi 6Wi-Fi 6E
外部ディスプレイ1台(最大6K/60Hz)2台(最大6K/60Hz+最大5K/60Hz)
※2台目はMBAを閉じた状態のみ

 細かなスペックについては下記の表を参照してほしい。

【表3】M3搭載モデルの主な仕様
製品名MacBook Air(13インチ, M3, 2024)MacBook Air(15インチ, M3, 2024)
OS※発売時macOS Sonoma バージョン14.4
SoCApple M3
(8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅)
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ13.6型IPSパネル(2,560×1,664ドット、光沢、500cd/平方m、色域P3)15.3型IPSパネル(2,880×1,864ドット、光沢、500cd/平方m、色域P3)
オーディオ4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク6スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク
通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
インターフェイスMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、最大40Gbpsデータ転送)、3.5mmヘッドフォンジャック
カメラ1080p FaceTime HDカメラ
バッテリ容量52.6Wh66.5Wh
バッテリ駆動時間最大15時間のワイヤレスインターネット
最大18時間のApple TVアプリのムービー再生
本体サイズ304.1×215×11.3mm340.4×237.6×11.5mm
重量約1.24kg約1.51kg
セキュリティTouch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン)
同梱品デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタまたは30W USB-C電源アダプタ
USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m)
デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ
USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m)
カラーシルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイト

 なお価格は最小構成が据え置きだが、上位構成は増減している。たとえば15インチMBAは、8GB/512GBという構成はM3世代のほうが2,000円高い。逆に13インチMBAは、8GB/512GBという構成はM3世代のほうが改訂前価格と比べて1万4,000円安い。このあたりの価格設定は、パーツ価格が複雑に絡み合っているのだと思われる。

 前述の通り、M2世代の13インチMBAは値下げを実施した上で併売される。M1世代のMBAが11万5,280円で購入できたことを思い出すとまだ割高感はあるが、材料費・人件費高騰、円安を考慮すればそれなりの価格だと思う。とは言え、できるだけ予算を抑えたいのであれば、15万円切りのM2世代の13インチMBAは魅力的な選択肢だ。

【表4】主要構成での価格
機種名構成現在の価格改訂前価格
MacBook Air
(15インチ, M3, 2024)
Apple M3
8コアCPU/10コアGPU/8GB/256GB SSD
19万8,800円-
Apple M3
8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD
22万8,800円-
Apple M3
8コアCPU/10コアGPU/16GB/512GB SSD
25万8,800円-
MacBook Air
(13インチ, M3, 2024)
Apple M3
8コアCPU/8コアGPU/8GB/256GB SSD
16万4,800円-
Apple M3
8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD
19万4,800円-
Apple M3
8コアCPU/10コアGPU/16GB/512GB SSD
22万4,800円-
MacBook Air
(15インチ, M2, 2023)
Apple M2
8コアCPU/10コアGPU/8GB/256GB SSD
19万8,800円-
Apple M2
8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD
22万6,800円-
MacBook Air
(13インチ, M2, 2022)
Apple M2
8コアCPU/8コアGPU/8GB/256GB SSD
14万8,800円16万4,800円
Apple M2
8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD
17万8,800円20万8,800円
カラーは今回のミッドナイト以外に、シルバー、スターライト、スペースグレイを用意
ボディは100%再生アルミニウム。全体における再生素材の使用量は、M2世代は40%だったが、M3世代は50%に向上
ディスプレイは13.6型IPSパネル(2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
キーボードは日本語(JIS)。ほか6言語のキーボードに無料で変更可能
本体前面(上)と本体背面(下)
右側面(上)には3.5mmヘッドフォンジャック×1、左側面(下)にはMagSafe 3充電ポート×1、Thunderbolt×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt 3接続時最大40Gb/s、USB 4接続時最大40Gb/s、USB 3.1 Gen 2接続時最大10Gb/s)を用意
ディスプレイの最大展開角度は実測134度
パッケージには本体、デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m)、説明書類、ロゴシールが同梱
電源アダプタは「70W USB-C電源アダプタ」に無料で変更できる。ただし記事執筆時点で、70W USB-C電源アダプタのほうが納期は3日遅かった
電源アダプタの型番は「A2571」。仕様は入力100~240V/1A、出力20V/1.75A、15V/2.33A、9V/3A、5V/3A、容量35W
本体の実測重量は1,227g
電源アダプタとケーブルの合計重量は実測161g

入力デバイス、ディスプレイ、スピーカーは変更なし

 入力デバイスの使い勝手、ディスプレイやスピーカーのクオリティについてはM2世代からM3世代で変更はない。手短におさらいしていこう。

 キーボードのキーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.1mm前後。キーストロークは数値的には浅めだが、クリック感はしっかりとある。また日本語配列の文字キーは記号も含めて等幅に揃えられており、すべてのキーに自然に指が伸びる。フィーリングに好みはあると思うが、個人的には気持ちよくタイピングできるキーボードである。

 圧力感知機能を搭載した感圧タッチトラックパッドの面積は実測128×80mm。実際には沈み込むことはない触覚フィードバックを採用しているが、操作していて違和感はない。むしろ軽い力でクリック操作を行なえるので、筆者はダイビングボード構造のタッチパッドのほうがごく一部を除いて使いづらく感じている。

キーピッチは実測19mm前後
キーストロークは実測1.1mm前後
バックライトは自動的に点灯する
文字キー(Fキー)の押圧力は0.50N
感圧タッチトラックパッドの面積は実測128×80mm
電源ボタンは、指紋認証センサー「Touch ID」一体型

 13.6型IPSパネルディスプレイは、解像度が2,560×1,664ドット、輝度が500cd/平方m、色域がP3。実際の色域についてはカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」が正常に動作しなかったため計測できなかったが、M2世代の13インチMBAは、sRGBカバー率が99.9%、Adobe RGBカバー率が87.3%、DCI-P3カバー率が97.1%であった。カタログスペックが同一なので、大きな差はない可能性が高い。

M2搭載モデルとカタログスペックは同一
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大81.8dB(50cmの距離で測定)。6スピーカーの15インチMBAに比べると、物足りなさを感じる
ディスプレイ上部には1080p FaceTime HDカメラを内蔵。カメラインジケータは配置されているが、プライバシーシャッターはない
カメラアプリ「Photo Booth」で撮影。室内灯下でも明るく、自然な発色だ。ノイズも少ない

M1搭載モデルより最大60%高速は公称通り

 M3を搭載したMBAは、M1を搭載したMBAよりも最大60%高速だと謳われている。というわけで今回は、M1、M2、M3搭載MBAのベンチマークスコアを比較してみた。

【表】検証機の主な仕様
MacBook Air
(13インチ, M3, 2024)
MacBook Air
(M2, 2022)
MacBook Air
(M1, 2020)
SoCApple M3Apple M2Apple M1
CPU高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
GPU10コア10コア8コア
Neural Engine16コア16コア16コア
メモリ16GB8GB16GB
ストレージ512GB512GB1TB
OSmacOS Sonoma バージョン14.4macOS Monterey バージョン12.4macOS Monterey バージョン12.3

 まずCPUベンチマーク「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)においてM3世代はM2世代の116%、M1世代の132%、「Geekbench 5.3.1」のMulti-Core Score(Apple Sillicon)においてM3世代はM2世代の119%、M1世代の139%のスコアを記録している。AppleはM3のCPU性能はM1より最大35%高速と謳っており、Geekbench 5.3.1ではそれをわずかではあるが上回る結果となったわけだ。

Cinebench R23.200
Geekbench 5.3.1(CPU)

 一方、グラフィックスベンチマーク「Geekbench 5.3.1」のCompute(Metal)においてM3世代はM2世代の115%、M1世代の166%、GFXBench MetalにおいてM3世代はM2世代の平均113%(87~139%)、M1世代の平均139%(100~215%)のスコアを記録している。AppleはM3のGPU性能はM1より65%高速と発表しており、Geekbench 5.3.1のCompute(Metal)では公称通りの性能を発揮している。ただし、GFXBench MetalではM1世代の平均139%となっている。テスト項目次第で性能は上下するということだ。

Geekbench 5.3.1(Compute)
GFXBench Metal

 ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」のライトにおいてM3世代はM2世代の144%、M1世代の102%、リードにおいてM3世代はM2世代の108%、M1世代の102%のスコアとなり、「AmorphousDiskMark 4.0.1」のライトにおいてM3世代はM2世代の142%、M1世代の108%、リードにおいてM3世代はM2世代の99%、M1世代の104%のスコアを記録した。M2世代のレビュー記事ではライト性能が低下していることを確認したが、M3世代ではライト、リードともにM1世代よりも性能が上回っているようだ。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0.1

 実際のアプリについては、「iMovie」で実時間5分の4K動画を書き出す時間を計測したところ、M3世代はM2世代の82%、M1世代の40%相当の所要時間で処理を終えた。「アクティビティモニタ」で見てみるとiMovie動作中はCPUコアだけでなく、GPUコアの使用率も高くなっている。両者の相乗効果によりApple Silicon Macが大幅な処理性能向上を実現しているわけだ。

iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し
「Cinebench R23.200」を10分間実行後のキーボード面の最大温度は44.0℃(室温25.1℃で測定)
底面の最大温度は40.4℃

 なおバッテリ駆動時間については、ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16という設定でYouTube動画を連続再生したところ、4時間経過後のバッテリ残量は81%となっていた。単純計算ではバッテリ残量0%までであれば21時間3分動作することになる。さすがにここまでは厳しいとしても、これまでのMacBookのバッテリベンチマークの結果を振り返ると、カタログスペックは楽々クリアできると思われる。

値下げされたM2世代も魅力だが、M3搭載MBAは価格差に見合う価値がある

 M3世代のMBAはM2世代から比べるとパフォーマンスの向上は小幅だ。しかし、外部ディスプレイがM2世代の1台(最大6K/60Hz)から、M3では2台(最大6K/60Hz+最大5K/60Hz、2台目はMBAを閉じた状態のみ)と増えており、使い勝手は向上している。

 またM2からM3の進化点として、GPUがハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングとレイトレーシングに対応しており、ゲーム体験の向上が期待できる。そして当然のことながら、M3はM2よりもOSのサポート期間が長いはずだ。値下げが実施されたM2世代のMBAも魅力的だが、価格差に見合うだけの実用性と楽しみをM3世代のMBAでは得られるはずだ。

 なお、筆者は15インチのM3搭載MBAを「買い物山脈」でレビューする予定だ。テスト項目の要望があればXなどでコメントいただければ、可能な範囲でお答えしたいと思う。