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MacBook Airは値下げされたM2世代もイイ。だがM3版には価格差に見合う価値がある。何が変わったのか機能や性能を比較
2024年3月13日 06:21
Apple M3を搭載した「13インチMacBook Air」(以下13インチMBA)、「15インチMacBook Air」(以下15インチMBA)が3月8日に発売された。M2を搭載したMBAは、13インチが2022年7月15日、15インチが2023年6月13日に販売されたが、M3世代のMBAは基本的にはプロセッサの更新となっており、13インチ、15インチが同時に発売されたわけだ。
今回は携帯性の高さで人気の13インチを借用したので、実機レビューをお届けしよう。
SoC、Wi-Fi、ディスプレイ接続台数がアップグレード
13インチMBAは現行製品として、M2とM3を搭載したモデルが販売されている。M2搭載モデルは継続販売であり、標準構成モデルで最大3万円の値下げが実施されている。なお、M2搭載モデルが継続販売されるのは13インチだけで、15インチは販売終了だ(市場在庫を除く)。
13インチMBAのスペックは、OSにmacOS Sonoma バージョン14.4、SoCにApple M3(8コアCPU、10コアGPU、16コアNeural Engine)を採用。メモリは8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB SSDを搭載している。
ディスプレイは13.6型IPSパネル(2,560×1,664ドット、光沢)、オーディオは4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイクを採用。ディスプレイ上部には1080p FaceTime HDカメラ(Webカメラ)が内蔵されている。
インターフェイスはMagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、最大40Gbpsデータ転送対応)、3.5mmヘッドフォンジャックを用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3をサポートしている。
本体サイズは304.1×215×11.3mm、重量は約1.24kg。52.6Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。
13インチと15インチの主な差分は下記の通り。
13インチ | 15インチ | |
---|---|---|
画面サイズと解像度 | 13.6型(2,560×1,664ドット) | 15.3型(2,880×1,864ドット) |
スピーカー | 4スピーカー | 6スピーカー |
バッテリ容量 | 52.6Wh | 66.5Wh |
サイズ | 304.1×215×11.3mm | 340.4×237.6×11.5mm |
重量 | 約1.24kg | 約1.51kg |
一方、M2世代とM3世代の主な差分は下記の通りだ。
Apple M2搭載モデル | Apple M3搭載モデル | |
---|---|---|
初期OS | macOS Ventura | macOS Sonoma |
SoC | Apple M2 | Apple M3 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6E |
外部ディスプレイ | 1台(最大6K/60Hz) | 2台(最大6K/60Hz+最大5K/60Hz) ※2台目はMBAを閉じた状態のみ |
細かなスペックについては下記の表を参照してほしい。
製品名 | MacBook Air(13インチ, M3, 2024) | MacBook Air(15インチ, M3, 2024) |
---|---|---|
OS※発売時 | macOS Sonoma バージョン14.4 | |
SoC | Apple M3 (8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅) | |
メモリ | 8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5) | |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB/2TB SSD | |
ディスプレイ | 13.6型IPSパネル(2,560×1,664ドット、光沢、500cd/平方m、色域P3) | 15.3型IPSパネル(2,880×1,864ドット、光沢、500cd/平方m、色域P3) |
オーディオ | 4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク | 6スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイク |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 | |
インターフェイス | MagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 3/USB4×2(充電、DisplayPort、最大40Gbpsデータ転送)、3.5mmヘッドフォンジャック | |
カメラ | 1080p FaceTime HDカメラ | |
バッテリ容量 | 52.6Wh | 66.5Wh |
バッテリ駆動時間 | 最大15時間のワイヤレスインターネット 最大18時間のApple TVアプリのムービー再生 | |
本体サイズ | 304.1×215×11.3mm | 340.4×237.6×11.5mm |
重量 | 約1.24kg | 約1.51kg |
セキュリティ | Touch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン) | |
同梱品 | デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタまたは30W USB-C電源アダプタ USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m) | デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ USB-C - MagSafe 3ケーブル(2m) |
カラー | シルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイト |
なお価格は最小構成が据え置きだが、上位構成は増減している。たとえば15インチMBAは、8GB/512GBという構成はM3世代のほうが2,000円高い。逆に13インチMBAは、8GB/512GBという構成はM3世代のほうが改訂前価格と比べて1万4,000円安い。このあたりの価格設定は、パーツ価格が複雑に絡み合っているのだと思われる。
前述の通り、M2世代の13インチMBAは値下げを実施した上で併売される。M1世代のMBAが11万5,280円で購入できたことを思い出すとまだ割高感はあるが、材料費・人件費高騰、円安を考慮すればそれなりの価格だと思う。とは言え、できるだけ予算を抑えたいのであれば、15万円切りのM2世代の13インチMBAは魅力的な選択肢だ。
機種名 | 構成 | 現在の価格 | 改訂前価格 |
---|---|---|---|
MacBook Air (15インチ, M3, 2024) | Apple M3 8コアCPU/10コアGPU/8GB/256GB SSD | 19万8,800円 | - |
Apple M3 8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD | 22万8,800円 | - | |
Apple M3 8コアCPU/10コアGPU/16GB/512GB SSD | 25万8,800円 | - | |
MacBook Air (13インチ, M3, 2024) | Apple M3 8コアCPU/8コアGPU/8GB/256GB SSD | 16万4,800円 | - |
Apple M3 8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD | 19万4,800円 | - | |
Apple M3 8コアCPU/10コアGPU/16GB/512GB SSD | 22万4,800円 | - | |
MacBook Air (15インチ, M2, 2023) | Apple M2 8コアCPU/10コアGPU/8GB/256GB SSD | 19万8,800円 | - |
Apple M2 8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD | 22万6,800円 | - | |
MacBook Air (13インチ, M2, 2022) | Apple M2 8コアCPU/8コアGPU/8GB/256GB SSD | 14万8,800円 | 16万4,800円 |
Apple M2 8コアCPU/10コアGPU/8GB/512GB SSD | 17万8,800円 | 20万8,800円 |
入力デバイス、ディスプレイ、スピーカーは変更なし
入力デバイスの使い勝手、ディスプレイやスピーカーのクオリティについてはM2世代からM3世代で変更はない。手短におさらいしていこう。
キーボードのキーピッチは実測19mm前後、キーストロークは実測1.1mm前後。キーストロークは数値的には浅めだが、クリック感はしっかりとある。また日本語配列の文字キーは記号も含めて等幅に揃えられており、すべてのキーに自然に指が伸びる。フィーリングに好みはあると思うが、個人的には気持ちよくタイピングできるキーボードである。
圧力感知機能を搭載した感圧タッチトラックパッドの面積は実測128×80mm。実際には沈み込むことはない触覚フィードバックを採用しているが、操作していて違和感はない。むしろ軽い力でクリック操作を行なえるので、筆者はダイビングボード構造のタッチパッドのほうがごく一部を除いて使いづらく感じている。
13.6型IPSパネルディスプレイは、解像度が2,560×1,664ドット、輝度が500cd/平方m、色域がP3。実際の色域についてはカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」が正常に動作しなかったため計測できなかったが、M2世代の13インチMBAは、sRGBカバー率が99.9%、Adobe RGBカバー率が87.3%、DCI-P3カバー率が97.1%であった。カタログスペックが同一なので、大きな差はない可能性が高い。
M1搭載モデルより最大60%高速は公称通り
M3を搭載したMBAは、M1を搭載したMBAよりも最大60%高速だと謳われている。というわけで今回は、M1、M2、M3搭載MBAのベンチマークスコアを比較してみた。
MacBook Air (13インチ, M3, 2024) | MacBook Air (M2, 2022) | MacBook Air (M1, 2020) | |
---|---|---|---|
SoC | Apple M3 | Apple M2 | Apple M1 |
CPU | 高性能コア×4 高効率コア×4 | 高性能コア×4 高効率コア×4 | 高性能コア×4 高効率コア×4 |
GPU | 10コア | 10コア | 8コア |
Neural Engine | 16コア | 16コア | 16コア |
メモリ | 16GB | 8GB | 16GB |
ストレージ | 512GB | 512GB | 1TB |
OS | macOS Sonoma バージョン14.4 | macOS Monterey バージョン12.4 | macOS Monterey バージョン12.3 |
まずCPUベンチマーク「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)においてM3世代はM2世代の116%、M1世代の132%、「Geekbench 5.3.1」のMulti-Core Score(Apple Sillicon)においてM3世代はM2世代の119%、M1世代の139%のスコアを記録している。AppleはM3のCPU性能はM1より最大35%高速と謳っており、Geekbench 5.3.1ではそれをわずかではあるが上回る結果となったわけだ。
一方、グラフィックスベンチマーク「Geekbench 5.3.1」のCompute(Metal)においてM3世代はM2世代の115%、M1世代の166%、GFXBench MetalにおいてM3世代はM2世代の平均113%(87~139%)、M1世代の平均139%(100~215%)のスコアを記録している。AppleはM3のGPU性能はM1より65%高速と発表しており、Geekbench 5.3.1のCompute(Metal)では公称通りの性能を発揮している。ただし、GFXBench MetalではM1世代の平均139%となっている。テスト項目次第で性能は上下するということだ。
ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」のライトにおいてM3世代はM2世代の144%、M1世代の102%、リードにおいてM3世代はM2世代の108%、M1世代の102%のスコアとなり、「AmorphousDiskMark 4.0.1」のライトにおいてM3世代はM2世代の142%、M1世代の108%、リードにおいてM3世代はM2世代の99%、M1世代の104%のスコアを記録した。M2世代のレビュー記事ではライト性能が低下していることを確認したが、M3世代ではライト、リードともにM1世代よりも性能が上回っているようだ。
実際のアプリについては、「iMovie」で実時間5分の4K動画を書き出す時間を計測したところ、M3世代はM2世代の82%、M1世代の40%相当の所要時間で処理を終えた。「アクティビティモニタ」で見てみるとiMovie動作中はCPUコアだけでなく、GPUコアの使用率も高くなっている。両者の相乗効果によりApple Silicon Macが大幅な処理性能向上を実現しているわけだ。
なおバッテリ駆動時間については、ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16という設定でYouTube動画を連続再生したところ、4時間経過後のバッテリ残量は81%となっていた。単純計算ではバッテリ残量0%までであれば21時間3分動作することになる。さすがにここまでは厳しいとしても、これまでのMacBookのバッテリベンチマークの結果を振り返ると、カタログスペックは楽々クリアできると思われる。
値下げされたM2世代も魅力だが、M3搭載MBAは価格差に見合う価値がある
M3世代のMBAはM2世代から比べるとパフォーマンスの向上は小幅だ。しかし、外部ディスプレイがM2世代の1台(最大6K/60Hz)から、M3では2台(最大6K/60Hz+最大5K/60Hz、2台目はMBAを閉じた状態のみ)と増えており、使い勝手は向上している。
またM2からM3の進化点として、GPUがハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングとレイトレーシングに対応しており、ゲーム体験の向上が期待できる。そして当然のことながら、M3はM2よりもOSのサポート期間が長いはずだ。値下げが実施されたM2世代のMBAも魅力的だが、価格差に見合うだけの実用性と楽しみをM3世代のMBAでは得られるはずだ。
なお、筆者は15インチのM3搭載MBAを「買い物山脈」でレビューする予定だ。テスト項目の要望があればXなどでコメントいただければ、可能な範囲でお答えしたいと思う。