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買わない理由はもうない。8型にCore i7-1195G7を詰め込んだUMPC最高峰「GPD Pocket 3」

GPD Pocket 3

 今やUMPCですっかり業界をリードする立場となったGPDから、最新のビジネス向けUMPC「Pocket 3」がいよいよIndiegogoでクラウドファンディングが開始された。価格はPentium Silver N6000を搭載したモデルが約7万4,000円、Core i7-1195G7を搭載したモデルが約11万4,000円からとなっている。今回、いち早くCore i7搭載の上位モデルの試作機を入手したので、レビューをお届けしよう。

 なお試作機であるがゆえに、実際の製品とは仕様が若干異なる。1つはGセンサーの有無で、実際の製品はセンサーを搭載するため、タブレットとして使う際など、手動で画面を回転をさせなくてもよくなる。もう1つはインターフェイスのモジュールで、当初はUSB 3.1、KVM、シリアルの3種類としていたが、現在新たにmicroSDモジュールを開発しているとのことで、実際の製品版はmicroSDカードスロット版も用意される模様だ。

従来から大幅に刷新された8型筐体を見る

 GPDの製品はゲーミング向けが「WIN」、ビジネス向けが「Pocket」とはっきりシリーズ分けがなされており、今回のPocket 3は後者となる。前モデルに当たる「Pocket 2」でも、プロセッサやストレージ変更が行なわれたのだが、製品名末尾にSといったサフィックスをつけたりしただけで、ナンバリングに変更はなかった。これは同社が「まったく新しい筐体設計を採用したものにのみ新しいナンバーを付与する」という方針に則ったものである。

 このことからも分かるとおり、Pocket 3では単なるプロセッサの進化のみならず、筐体という根本から刷新を行なっている。最大とも言える変更点が、1,920×1,200ドット(WUXGA)表示対応の7型液晶が、解像度をそのままに8型へと大型化し、2軸ヒンジにより2in1となったことだ。

 Pocket 2までの画素密度が323dpiであったのに対し、Pocket 3では283dpiにまで低下したものの、十分な精細感は保たれており、字が大きくなったことによる視認性向上のメリットが大きい。実際にPocket 2ではスケーリング100%ではややつらく、125~150%まで拡大したほうが実用的であったのだが、Pocket 3では100%表示でもそれほど苦にならない印象だ。

 その代わり犠牲となったのが本体サイズで、Pocket 2はズボンのおしりポケットやジャケット内側の大きめのポケットに難なく収まっていたのに対し、Pocket 3は洋服のポケットに収めるには無理のあるサイズとなった。Pocket 2を洋服のポケットに入れて持ち運ぶ人は少数だと思うが、Pocketという名前を冠しているだけに気になる人もいるのではないかとは思う。

GPD Pocket 2との比較。一回り大きくなって、さすがにズボンのポケットに入るのが無理になった

 もっとも、Pocket 2の派生系である8.9型の「P2 Max」と比べると一回り小さいほか、競合とも言える「OneMix 4」などに比べても小さいので、携帯性は抜群。「PC背負ってます」ということを強調するようなA4ファイルサイズのカバンではなく、小さめのメッセンジャーバッグや女性のバッグに難なく収められる。PCに合わせてかばんを選ぶ必要はなく、普段使っているバッグにサッとしまえる、唯一無二の選択だと言える。

 なお、CHUWIが2019年にリリースした「MiniBook」や、その派生モデルとも言えるFFF SMART LIFE CONNECTEDの「MAL-FWTVPCM1」を手にしたことのあるユーザーなら、Pocket 3に親近感があると思う。それもそのはず、MiniBookの本体サイズは201×128×19mm(幅×奥行き×高さ)だが、Pocket 3は198×137×20mm(同)だからだ。Pocket 3は2軸ヒンジになっていて、後部に換装可能なモジュールを備えているため、9mmほど奥行きが長いが、手にした印象はほとんど同じであった。

同じ8型のGPD WIN Maxとの比較
Pocket 3の方が狭額縁のため若干コンパクト。厚みもWIN Maxほどはない
こちらはP2 Max(左)、Pocket 3(中央)、Pocket 2(右)の比較。ちょうど中間に位置する
重量は実測で736gだ

バックライト搭載となったキーボードは使い勝手が良好!

 今回、本体サイズの変更に伴ってキーボードも大きく変化した。キーボード奥に存在するポインティングデバイスが、Pocket 2の光学トラックパッドからタッチパッドに変更されたので、その分キーボードのスペース圧縮され、一部記号などは2段配列となってしまっている。このあたりは致し方ないところなのだが、実はメインのアルファベットの使い勝手が大きく改善されているのだ。

 Pocket 2のキーボードは、Qから始まる段、Aから始まる段、Zから始まる段でそれぞれキーピッチが異なっていたのが最大の問題であった。具体的にはそれぞれ16.5mm、17mm、15.5mmだった。このため2段目の「K」や「L」付近で大きなズレが生じ、ミスタイプが発生する原因となっていた。

大きく改善されたキーボード。アルファベット部分についてはいびつなキーピッチがなくなり、配置も自然に

 一方でPocket 3のキーボードは、こうしたいびつなキーピッチが完全に廃止された。主要キーは16mm、一部記号キーは14mmだ。また、「Q」の段と「A」の段が半キーずれているような、初代「Pocket」や「WIN Max」にあった問題も解消。Excelユーザーがよく使うであろう「Tab」は「Q」の横にきっちり配置され、「Ctrl」と「CapsLock」を入れ替えて使いたいユーザーのために、Aキーの横にCapsLockを設けた。つまり「やっとビジネスユーザーの心情を理解した」キーボードとなった。

 もっとも、F1~F12のファンクションキーは相変わらずFnキーと数字の段を併用するものとなっているほか、鍵カッコや音引き「-」といった一般ユーザーでも多用しそうなキー、「\」などコマンドプロンプトで多用しそうなキーは最上段に設けられ、「;」や「"」はカーソルの横なので、フルキーボード感覚で使えないのも確かだが、8型のフォームファクタでこれだけの配列を詰め込んだのは大したものだとは思う。

CapsLockとTabキーの搭載は、ユーザーによっては嬉しいポイントだろう
キーピッチは主要のアルファベットが16mm、記号が14mmとなっている

 キーボードの機構の設計自体は「GPD WIN Max」を受け継いでおり、LEDバックライト付きで暗所でも視認可能となっているほか、キーのストロークも深すぎず浅すぎずちょうどいい塩梅。クリック感もしっかりしていて、Pocket 2から静粛性がだいぶ向上している。改善された配列と組み合わせて、タッチタイピングはだいぶしやすくなった。

 筆者は職業柄、キーボードにうるさくこれまでPocketシリーズのキーボードに対してかなり厳しい評価をつけてきたが、Pocket 3のキーボードについては、2016年のUMPCリバイバル以降、8型前後の中では最高の完成度だと評したい。

ポインティングデバイスはタッチ+トラックパッド+ペンに

 その一方でポインティングデバイスだが、先述の通りPocket 2の光学式トラックパッドから、やや小ぶりの普通のトラックパッドとなった。このトラックパッド自体はWIN Maxのそれよりやや広く、62×33mm(幅×奥行き)確保されている。

 なお、トラックパッド自体の物理的な押下によるクリックには対応せず、表面を軽くタップすると左クリック、2本指で軽くタップすると右クリックとなる。それか、本体左側のクリックボタンを利用する形だ。このクリップボタンは、ThinkPadのトラックパッドのボタンに似た柔らかい感触で、長時間利用していても疲れず、使い勝手は良好だ。また、タッチパッドはジェスチャーにも対応し、2本指でスクロール、3本指で全ウィンドウ最小化などもサポートしている。

トラックパッドは62×33mmを確保している。ジェスチャーにも対応している
クリックボタンはThinkPadのそれを彷彿とするデザイン。押し心地も似た印象だ

 ちなみにパームレスト手前ではなく、あえてキーボードの奥にタッチパッドなどを配置しているのは、両手で本体をホールドして操作する際の操作性を向上させたためだという。確かにその通りで、両手で左右をホールドしてあげると、ちょうど親指がその位置にくる。ただ、この姿勢でキーボード操作はやや無理がある。「キーボードを使わないのならこの姿勢でもあり、キーボードを使うならやはり机に置く」といった辺りに落ち着きそうだ。

 本機は液晶が2軸ヒンジによってタブレット形態にもなるわけだが、その際にはタッチもしくはペンを使うことになる。画面が従来の7型から8型に大型化されるのに伴い、画面各所のパーツも大きくなったわけだが、これによってタッチ操作性は大きく向上した。特に7型では画面の端っこにあるアイコンやタイトルバーなどをタップしにくかったが、8型では解消された。

 ペンはMicrosoft MPP2.0プロトコルに対応したものであれば使え、標準では4,096筆圧レベルに対応する。アクティブ方式のため電池が必要だ。ペン先と画面の摩擦がちょうどいい印象で、ツルツル滑りすぎるようなことはなく、適度な摩擦があり書きやすかった。

なぜか右ではなく左ひねりの2軸ヒンジ。ちょっとレアだと思う
タブレットとして使える。試作機ではGセンサーがないため画面を回転させてもこの向きのままで、手動で回転させてやる必要があるのだが、製品版ではGセンサーの搭載により、天地が自動でひっくり返る
付属のペンはMicrosoft MPP2.0に対応し、4,096筆圧レベルとなっている
ペン先は若干滑りにくい素材となっており、書き心地は悪くない

モジュールで差し替えられるインターフェイスの使い勝手

 フォームファクタやキーボードの変更だけでなく、新たにモジュール化され、換装できるインターフェイスも本機のトピックの1つ。このため、他社製品と機能面で大きく差別化する要素となっている。

 モジュールの換装は簡単で、背面のネジ2本を外して、既存のモジュールを抜いて、使いたいモジュールを挿してネジ止めするだけである。接続はポゴピンで行なわれている。ホットスワップへの対応は謳われていないが、試しにUSBとキャプチャモジュールを試してみたところ、起動中でも問題なく換装できた。おそらく内部的にはUSB接続のため問題はないのだろうが、ネジ止めしていることから、安全のためにも電源を落として換装をしたほうが無難だろう。

標準で取り付けられているUSB 3.1モジュール
基本的に内部の信号を出すだけのようだ
シリアルポートのモジュール
こちらは別のポゴピンから接続されている
KVMモジュール
表面実装はあまりなく、ほとんどが裏面実装だが、シールドされており見えない
着脱はネジで行なう
本体側の接続部

 標準でついているUSB 3.1やシリアルポート、製品版にあるとされるmicroSDカードスロットについては、特に説明するまでもないだろう。ここではKVMモジュールについて少し説明したい。

 このKVMモジュール、有り体に言ってしまえば、HDMIのキャプチャ機能に加え、Pocket 3側のキーボードとタッチパッドを、ほかのPCで認識させるのものだ。つまり、Pocket 3はほかのPCのディスプレイとキーボード/マウス代わりとなるわけである。

 利用方法は簡単で、HDMIケーブルとUSBケーブルでKVMモジュールとホストするPCを接続するだけ。HDMIキャプチャはWindows標準のカメラ機能で背面カメラとして認識されるので、カメラを切り替えるだけでHDMIの映像が映る。それ以降は、KVMモジュールのUSB Type-Cと、ホストのUSBを別のケーブルで接続するだけで、接続先のPCの画面をキャプチャで確認しながら、Pocket 3のキーボード/マウスで操作することになる。

 ちなみにHDMIキャプチャ機能は節電のためか、信号が走っていない状態だと、デバイスとしてもカメラとしても認識されないため注意が必要。あらかじめHDMIケーブルを接続して画面を出す準備をしておくことをおすすめしたい。キャプチャの遅延も比較的抑えられているので、違和感なく操作できる印象だった。

 なお、品質は十分であり、少なくとも1,000~3,000円クラスのUSBキャプチャよりは綺麗だ。これなら一眼レフカメラを接続しての配信や高品質なWeb会議も可能ではないだろうか。

Windows 10標準のカメラアプリで「背面カメラ」に切り替えるだけで利用可能。このように画質はそこそこで、テキストの可読性は高い
4K/30Hzまで入力可能なため、単なる高品質なビデオキャプチャとしても利用できる
MINISFORUM X500にWindows 11をインストールし、HDMIに接続したところ、デスクトップの時点で既にHDCPで暗号化されており、表示できないと出てしまった。GPDが想定しているサーバー操作用途では、まずありえないとは思うが……

 そのほかのインターフェイスについては、本体左側面にThunderbolt 4が1基(USB PD 45W給電、DP Alt Mode対応)とHDMI出力、右側面にUSB 3.1を2基、背面に2.5Gigabit Ethernetを装備している。1kgを切るノートPCは薄型化のためにポートの種類をかなり制限していて、USB Type-C/Thunderboltだけという製品も少なくないが、本製品はそれらを一蹴する充実ぶりで、よくぞこの筐体に詰め込んだとただ驚かされるばかりだ。

 本機の右側のヒンジ部には、ご丁寧にもストラップホールが設けられている。ここにハンドストラップを通しておき、右腕に通しておけば、万が一手が滑っても落下を防いでくれる。過去のUMPCで「ここにストラップ(特に通風孔付近)を通せないかな?」と試行錯誤しながら工夫したユーザーもいたかと思うが、本機のさりげない心配りも嬉しいポイントだといえるだろう。

左側面にはThunderbolt 4とHDMI出力
右側面にはUSB 3.1を2基、3.5mmミニジャックを装備する
背面左側には2.5Gigabit Ethernet。右側はモジュールで着脱可能
ストラップホールを装備しているため、ハンドストラップを通せる

8型でCore i7-1195G7搭載。放熱は優秀で性能フル発揮

 キーボードの大幅改善と機能/インターフェイスの充実っぷりだけでもうお腹いっぱい、「買います」と即決するユーザーも多くいるだろうが、忘れてならないのは、本機はCore i7-1195G7という13型以上のノートで多用されるCPUを搭載している点だ。

 初代のPocketはAtom x7-Z8700、Pocket 2はCore m3シリーズと、いずれも省電力に振ったプロセッサであり、いずれも当時のメインストリーム/ハイエンド帯のノートPCと比べると性能的に見劣りするレベルのものであった。7型という限られたサイズで、バッテリ駆動時間と性能の両立は難しいため、これらのプロセッサの採用は必然だったと言える。

 ただ、競合他社でもしばらくはAtomやCeleron、Core m3クラス(いわゆるYシリーズ)までの採用がメインであった。ONE-NETBOOKの「OneGx1 Pro」や「OneMix 4」では、一見Yクラスではないのだが、これはIce Lake世代からYシリーズが型番「0」で終わるモデルになったからというだけであり、7~15Wを前提としたプロセッサであることに変わりはない。

 本機は、12~28WをターゲットにしたCore i7-1195G7を搭載している。プロセッサコアの動作スピードが高速なだけでなく、バス速度もYプロセッサの2倍となっており、性能的には一般的なノートPC向けCPUと比較してなんら妥協なく仕上がっているのだ。

 加えて、TDPを上限の28Wまで引き上げた際には、5GHzというクロックも普通に観測でき、「8年前に5GHzを達したけどTDPは220Wだったな……」と感慨深くもなるものである。

 というわけでいつも通り、「PCMark 10」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「ドラゴンクエストX ベンチマーク」「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark」を実施してみた。本機は標準でPL1が15W、PL2が20Wに設定されているが、BIOSでは設定を変更できるため、PL1とPL2をともに28Wまで引き上げた際の数値も比較用に並べた。なお、28Wに引き上げた際にメモリのクロックも標準の3,733MHzから4,266MHzに引き上げ、性能を最大化してみた。

【表】ベンチマーク結果
機種名GPD Pocket 3
BIOSでのTDP設定PL1=15W/PL2=20WPL1=28W/PL2=28W
CPUCore i7-1195G7
メモリ16GB LPDDR4-373316GB LPDDR4-4266
SSDPCIe 3.0 NVMe SSD 1TB
液晶1,920×1,200ドット表示対応8型
OSWindows 10 Home 21H1
PCMark 10
PCMark 10 Score5,1505,372
Essentials10,04610,696
App Start-up Score14,44516,121
Video Conferencing Score7,7587,841
Web Browsing Score9,0489,681
Productivity7,5137,214
Spreadsheets Score6,4106,502
Writing Score8,8078,006
Digital Content Creation4,9115,454
Photo Editing Score8,7359,288
Rendering and Visualization Score2,7473,323
Video Editing Score4,9375,257
3DMark
Fire Strike4,0615,044
Graphics score4,5845,508
Physics score9,39112,649
Combined score1,5011,991
Night Raid12,92517,466
Graphics score16,81622,757
CPU score5,5937,537
Wild Life6,93913,285
ドラゴンクエストX ベンチマーク
1,920×1,080最高品質9,98412,728
ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク
1,920×1,080ノートPC標準品質5,4006,884
1,920×1,080ノートPC高品質3,9054,522
Cinebench R23
CPU(Multi core)3,7535,069
CPU(Single core)1,3891,493

 比較用のマシンの結果などは掲載していないのだが、標準の状態でもPCMark 10でスコア5,000を上回ったのは立派の一言。TDPを28Wまで引き上げた際には実に5,372に達した。これはGPU非搭載の一般的なモバイルノートをも凌駕する値である。また、3D回りのベンチマークでも分かる通り、Intel Xe Graphicsとなったことで従来とは一線を画す性能を発揮し、軽い3Dゲームなら難なく動作レベルにまで達しているのがお分かりいただけると思う。

 今回はPL2を28W以上に設定した値を試していないため、実際のポテンシャルとしては、冷却機構にこだわったVAIOやレッツノートなどに及ばない可能性はあるのだが、本機はシングルファンというシンプルな放熱機構で8型というサイズであるにも関わらず、TDP 28Wを維持できたのは驚異的だ。実際の動作もかなりキビキビしており、デスクトップPCを操作しているような感触だった。

 負荷中の熱は本体左側奥に集中している。28Wに設定してもその温度は46℃程度だった。サイズからしてPocket 3の放熱はかなり優秀だと言えるだろう。さすがにファンの音そこそこするが、爆音というほどではない。静かなところなど、気になるのであれば「Fn」+「=」キーで静音に設定できる(もちろん、CPU温度上限により負荷時のクロック=性能は低下する)。

Cinebench R23実行中の表面温度。最高で46℃となった

 バッテリ駆動時間は、TDP=28W、画面輝度30%といった設定で、PCMark 10のModern Officeでバッテリテストを実施したところ、4時間22分と出た。TDPを15Wに設定すればもっと伸びると思われるが、実際の利用では4~5時間といったところだろう。さすがに低電力版プロセッサを採用したOneMix 4シリーズなどと比べると見劣りするが、そこは性能とのトレードオフ。「PCの処理が速く終われば早く帰れる」ぐらいの心構えはしておきたい。

趣味のUMPCから実用道具としてのUMPCへ

 UMPCは確かに携帯性には優れているのだが、これまでの製品は性能を妥協したり、操作性を妥協したり、インターフェイスを妥協したりしなければならなかった。特に性能面については、ざっくり「その時代のメインストリームの半分以下の性能」と言って差し支えなかったのではないかとは思う。そのためUMPCは「趣味のマシン」の域を出なかった。

 その点、Pocket 3はついにメインストリームと同等の性能に並んだ。普段ノートで文章作成したり、簡単な写真編集を行なっているユーザーであれば、「小さくなった」ということ以外、同等の感覚で使えるのはかなり大きいのではないかと思う。

 インターフェイスについては、正直メインストリーム以上である。もちろん、KVMモジュール、シリアルポートモジュールは、用途がサーバー管理者や工業機器制御に限定されているため、限られた層にしか届かないだろうが、だからこそのオプションなのだろう。ただ、そこには「単なる趣味のマシン」ではなく「実用的な道具」としてPocket 3を見て、使ってもらいたいというGPDの思惑が垣間見える。

 「今までUMPCをたくさん買ってきたけど、どれもちょっとだけ使って終わっちゃったなぁ」というユーザーや、「UMPCはどこかで妥協していて道具として使いにくかったんだよな」と思っているユーザーこそ、手にしてみてほしいマシンだ。