レビュー

軽装備でもちゃんと性能出ます。SupermicroのZ890マザー「C9Z890-MW」

C9Z890-MW

 Supermicroの「C9Z890-MW」は、Intel Z890チップセットを搭載したシンプルなmicroATXマザーボードである。日本国内では記事執筆した3月7日時点においてまだ取り扱いがないようだが、いずれ発売されるだろう。今回はサンプルを入手したので、簡単に紹介したい。

 Intel Z890が投入されてからしばらく経過しているため、C9Z890-MWはかなり後発な部類に入る。Core Ultra 200Sローンチのタイミングではさまざまなアプリで最適化不足の問題があり、性能が振るわなかった。しかし、今は概ね安定しているようで、C9Z890-MWも既に十分にCPU性能が引き出せる。

 Supermicroといえばサーバー向けのマザーボードを手掛けるメーカーだが、本製品はZ890チップセットを搭載していることもあり、LGA1851のCore Ultraシリーズ2をサポートするゲーマーなどもターゲットにした製品となっている。そのため「SuperO」というブランドを冠したものとなっている。

 マザーボードの作りそのものは非常にシンプルで、大掛かりなヒートシンクや派手なRGB LED制御機能はない。強いて特徴的な機能を挙げるとすれば、オンボードの電源およびリセットボタン、POST状況を表示する4つのLED、Wi-FiとM.2 SSDのアクセスLED、電源LEDといった実用性重視のもので、今どきのコンシューマ向けではめずらしい質実剛健な印象を受ける。

付属品なども必要最小限だ
マザーボード正面
電源やリセットボタンをオンボードで搭載する
LEDはついているが、装飾用ではない。電源LEDおよびPOST状況を表示したりする機能的なものだ

 一方で、電源回りはInfineonのソリューションを採用しており、合計11フェーズとなっている。コントローラは「XDPE192C4C」という12フェーズ対応品および「XDPE19284C」という8フェーズ対応品の2系統が使われ、いずれもIntel VR14に対応したデジタル制御タイプ。そして電源回路にはドライバとMOSFETを統合した「TDA21590」(90A)を採用している。

 また、CPUソケットの付近には、ルネサス製のクロックジェネレータ「RC26008」を採用している。派手な機能を削った代わりに、“Core Ultra 200Sのオーバークロックにも対応できるような装備をしっかり整えました”といった印象で、このあたりは玄人好みだろう。

 このほか、有線LANコントローラとしてGigabit Ethernet対応の「Intel 219V」、無線モジュールとしてWi-Fi 7およびBluetooth 5.4に対応した「Intel Wi-Fi 7 BE201」(国によっては異なる可能性がある)、オーディオコントローラにRealtekの「ALC888S」が使われている。

12フェーズ対応のXDPE192C4C
8フェーズ対応のXDPE19284C(写真中央)。その上にある大きいチップがRC26008、左にあるのがIntel 219V
合計11フェーズの電源。各ステージはいわゆるDriverMOSFETのTDA21590が使われている
電源実装は裏面まで及んでいる

 メモリはDDR5が4スロット、容量は1スロットあたり48GBで合計最大192GB、速度は最大5,600Mbps対応。拡張スロットはPCIe 5.0 x16が1基、PCIe 4.0 x4が1基、PCIe x1が1基。x4およびx1はともにエッジフリーなので、x16やx8対応カードなども挿入できる。ストレージインターフェイスはPCIe 5.0 x4(2280または22110)が1基、PCIe 4.0 x4(2280)が1基、SATA 6Gbpsが4基となっており、ほとんどの用途において十分だろう。

 背面インターフェイスは、Thunderbolt 4 1基、USB 3.2 Gen 1 2基、USB 2.0 2基、HDMI出力、DisplayPort、音声入出力と、特にUSB回りが控えめ。ピンヘッダとしてUSB 3.2 Gen 1 1基、USB 2.0 1基、USB 3.2 Gen 2x2 1基が用意されているので、積極的に利用したいところだ。一方でThunderbolt 4の標準装備は、近年対応デバイスが増えていることもあり、個人的にうれしい限りだ。

ソケット付近のアップ。メモリはDDR5が4スロット。ちなみにCU-DIMMへの対応は謳われていない
背面インターフェイス
SATA 6GbpsおよびUSBピンヘッダ部分
バックパネルインターフェイス

よりユーザーフレンドリーになったBIOSと高いパフォーマンス

 UEFI BIOS回りのUIは、サーバー向けでよくある素っ気ないタイプではなく、SuperOブランド製品で一貫してグラフィカルかつユーザーフレンドリーなものを採用している。Z390世代以降で採用されたUIをほぼ踏襲しているため、使い勝手という意味では従来通り及第点だ。

 とはいえ、旧世代から進化がまったくないというわけではなく、たとえばCPUのパフォーマンス設定において、搭載しているCPUクーラーが何なのか(水冷、空冷、リテール)を視覚的に選択するだけで、最適なCPU TDP上限設定を行なってくれるといった他社でもあるような機能が実装され、直感的かつ設定がしやすくなっている。

 また、さすがに世代を重ねただけのことはあって、BIOSの挙動自体も安定している印象。たとえば以前テストした「C9Z490-PGW」の初期バージョンでは、設定を保存せずに終了するとエラーで止まるといった謎のバグがあったが、今回のC9Z890-MWに入っていた「1.1a」ではそういった不審な挙動はなく、安心して使える印象だった。

BIOSインターフェイスはIntel 300シリーズ以来共通
新たにCPUクーラーの選択によるTDP最適化が加わった

 最後に簡単に性能を見ていきたい。今回はDDR5-4800メモリ、Intel Arc A770ビデオカード(Acer Predator BiFrost Intel Arc A770 OC)、1TB SSD(ZETTASTONE CP200、PCIe 3.0 x4対応)、CPUクーラーに240mm簡易水冷(CRYORIG A40 Ultimate)、OSにWindows 11 Pro バージョン24H2などの環境を用意した。ベンチマークとしてCinebench R23、Blender Benchmark、PCMark 10、3DMarkを実施している。ちなみに今回、電源プランは「バランス」に設定している。

 唯一気がかりだった点は、BIOSのデフォルトではResizable BARがオフになっていることだ。近年のビデオカードはResizable BARをオンにすることを推奨しているため、ここは要注意である(今回はオンに設定している)。

Cinebench R23の結果
Blender Benchmarkの結果
PCMark 10の結果
3DMarkの各ベンチマークスコア

 今回はベンチマークの画面キャプチャを掲載する形となっているため、数値比較ができるベンチマークの結果関しては以前のレビュー記事を参照されたいが、Cinebench R23やBlender Benchmarkなどでは概ね過去を上回るスコアを残しており、Intelの公言通りベンチスコアの向上が見られる。ことCinebench R23のシングルコア性能に関しては2,416という高いスコアで、競合や旧世代を寄せ付けない雰囲気だ。

 「Intel Z890チップセット搭載マザーボード」という括りで見れば競合は非常に多いのだが、実はmicroATXフォームファクタに絞ってみると今のところ4製品程度しかない。ハイエンドビデオカードが大型化している昨今、「Mini-ITXでハイエンドゲーミングPC組んだら結局大きさ的にmicroATXとあまり変わらない」状況の中、安価なケースが豊富にあるmicroATXは大いにアリだ。その中でも派手さは不要で質実剛健を求めるならC9Z890-MWは魅力的な選択肢であると言え、日本国内への早期投入に期待したい。